企業が頭を抱える人材流出の原因とは?未然に防ぐ対策について詳しく解説!

公開日:2023.10.04 更新日:2023.10.04

ビジネスの世界において、人材流出という問題は社内の組織力に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
高いスキルや経験を持つ優秀な人材が組織を離れることで、業績への打撃だけでなく、社内の士気低下や知識の喪失など、多角的な問題が生じます。
では人材流出を防ぎ、組織を健全に保つためにはどのような対策が必要なのでしょうか。当記事では、人材流出の原因とその対策について、実際に企業が導入している防止策を踏まえながら詳しく解説します。
ぜひ、最後までご覧ください。

人材流出とは

人材流出とは、自社の人材が退職し他社に流れてしまう状況を意味します。
従来の日本では、新卒で入社した企業で定年まで働くという終身雇用制度が一般的でしたが、現代のビジネス環境では人材の流動性が増し、転職や他企業への就職が一般的になっています。

帝国データバンクの提供する「人手不足に対する企業の動向調査(2023年4月)」によると、正社員の欠員を抱える企業の割合は51.4%でした。業種別では、「旅館・ホテル」が75.5%と最も高く、次いで「情報サービス」(74.2%)、「保守・警備・検査」(67.6%)となっています。
また、非正社員の欠員を抱える企業の割合は30.7%でした。業種別では、「レストラン」が85.2%と最も高く、次いで「旅館・ホテル」(78.0%)となっています。
正社員、非正社員とも小売業、サービス業、その他個人産業が人材流出の上位を占めているという結果となりました。

参考:人手不足に対する企業の動向調査(2023年4月、帝国データバンク)

人材流出が止まらない原因

人材流出が止まらない原因にはさまざまな要因が絡み合っていますが、以下に代表的な原因を紹介します。

労働環境に対する不満

労働環境への不満は、人材流出の大きな原因となっています。長時間労働や過重な業務負荷、働き方の制約などが挙げられます。特にワーク・ライフ・バランスの悪さは、若い世代の人材が企業を辞める要因となるケースが多くあります。

業務内容に対する不満

業務内容への不満も、人材流出の原因の1つです。単調な業務やスキルおよび能力を生かせない仕事に従事することは、やる気やモチベーションの低下につながります。経験や能力を発揮できる業務を提供することが大切です。

人間関係に対する不満

職場内の人間関係の悪化も、人材流出の原因となります。具体的には上司とのコミュニケーション不足やトラブル、同僚との関係の悪化などが挙げられます。良好な人間関係を築くためには、コミュニケーションの活性化やチームビルディングの取り組みが重要です。

給与に対する不満

給与に対する不満も人材流出の原因となります。適切な報酬体系やインセンティブ制度の整備が求められます。競争力のある報酬を提供することで、優秀な人材の定着を図れるようになります。

将来への不安

経済や業界の不安定性、キャリアパスの不明確さなど、将来への不安も人材流出を引き起こす要因です。従業員のキャリア開発や成長の機会を提供することが必要です。

人材流出がもたらす影響とリスク

人材流出がもたらす影響とリスクには以下のような事例があります。

経験のある人材が不足する

経験豊富な人材が退職した場合に、その後任者も同じレベルのスキルを持っているとは限りません。その結果、業務において重要な経験やノウハウが不足し、業務のパフォーマンスが低下するリスクがあります。

採用コストが増加する

人材流出により、新たな人材を採用・育成する必要が生じます。採用活動や教育訓練にかかるコストが増加し、企業の財政負担が大きくなる可能性があります。

企業イメージの低下につながる

多くの優秀な人材が組織を離れると、企業の評判や信頼性が低下する可能性もあります。これにより、その企業の魅力が減少し、優秀な人材の採用も難しくなることが懸念されます。

顧客が離れる

経験豊富な従業員が離れることで、その従業員が担当していた顧客等との信頼関係が揺らぎ、ビジネスの継続が困難になるケースも考えられます。また、顧客へのサービス品質が低下する可能性も否定できません。

人材流出を未然に防ぐための対策

人材流出を未然に防ぐための対策を紹介します。

人事評価制度を再確認する

従業員のモチベーションを高め、長期的なキャリア開発を支援できるような人事評価制度の構築が重要です。給与体系の公平性やキャリアパスの明確化、スキルや達成度に基づく評価などを導入することで、人材の定着へと繋げられます。

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労働時間を見直す

過労やワークライフバランスの悪化は、人材流出の要因となります。働き方改革を進め、労働時間の見直しや柔軟な働き方ができるような体制を整えて、従業員の働きやすさを向上させることが重要です。

会社の福利厚生を充実させる

従業員が働きやすい環境を整えるためには、適切な福利厚生制度の導入も必要です。休暇制度や保険制度の充実、教育制度やキャリア開発の機会の提供など、従業員が安心して働ける環境の整備が推奨されます。

多様な働き方を受け入れる

フレックスタイム制度や在宅勤務など、従業員が自身の生活スタイルに合わせた働き方ができる環境を整えている会社も増えています。柔軟な働き方を尊重し、従業員の働きやすさや満足度を向上できれば、人材が定着していくことが期待できます。

人材流出防止に成功した実際の企業例

人材流出防止に成功した実際の企業例について、その取り組みとともに紹介します。

株式会社レオパレス21 | 効果的な社員研修で労働時間削減

株式会社レオパレス21は、アパートの賃貸と管理に関する賃貸事業、アパートの建築を行う開発事業を展開していますが、不動産業は全業種の中でも比較的離職率が高い傾向にあり、同社では意識的に離職率を下げる取り組みを行いました。

具体的には、労働時間の短縮には高い生産性が必要との考えから、効果的な社員教育を実施しています。以前は研修にコストをかけず、OJTのみの教育を実施していましたが、現在はコストを投じて社員教育を行う体制になっています。

その結果、不動産業界の新卒者の平均離職率15%に対し、同社は9%と大幅な離職率の低下を達成しました。

ニトリ株式会社 | 企業ビジョンの積極的な共有

株式会社ニトリは、家具・インテリア用品の企画・販売、新築住宅のコーディネート、海外輸入品・海外開発商品の販売事業を展開している企業です。

同社では、経営トップの想いや会社の方向性を社内報を通して社員と共有し、社員のキャリア形成の支援、社員同士のつながりの強化、社内コミュニケーションの推進を促しています。
社員は社内交流の機会が増えたことで、より一層積極的に業務へ貢献する姿勢を見せるようになり、その好循環が人材流出防止につながっています。

同社での、社内報を用いた従業員への企業ビジョンの共有は、1979年から続いています。

リクルートホールディングス | 柔軟な働き方ができる環境を整備

リクルートホールディングスは人材派遣、販促メディア、人材メディア、ITソリューションを提供している企業です。
同社では、優秀な社員が能力を発揮できるよう、柔軟な働き方を取り入れています。

具体的な取り組みとして、リモートワークやフレックスタイム制、男性の育児休暇制度、アニバーサリー休暇制度、副業の自由化を導入しました。

このように一人ひとりのライフスタイルに合わせた働き方を取り入れ、優秀な人材が働きやすい環境を整えることによって、人材流出防止を実現させています。

まとめ

人材流出は企業にとって重大な課題ですが、適切な対策を講じることで防止できます。防止対策には、人事評価制度の見直し、労働時間の改善、福利厚生の充実、柔軟な働き方の提供など、多角的なアプローチが求められます。

人材流出防止に成功した実際の事例から学びながら、自社の状況に合った対策を検討してみてください。組織全体の健全な発展を目指し、人材流出対策に取り組みましょう。

以下のコラムでは、人材流出に関連する「離職」や「職場環境」について取り上げています。ぜひ、こちらもあわせてご覧ください。

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