働きやすい職場環境を整備することは、企業の生産性向上や従業員の離職率低下につながる重要な取り組みの1つです。一方、重要性は理解していても、「具体的にどのような職場環境を目指せばいいのかイメージしづらい」と悩む方もいるでしょう。
そこで今回は、働きやすい職場環境の特徴やメリット、具体的な改善方法を詳しく解説します。本記事を読めば、従業員が快適に働ける環境について把握し、自社に合った改善方法を見つけるヒントをつかめるでしょう。後半では、職場環境を改善するための取り組み事例も紹介しているので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
職場環境とは、従業員が働く職場を取り巻く環境のことです。
労働安全衛生法第71条により、企業は従業員の安全と健康を確保するため、快適な職場環境を形成するため努力しなければなりません。
具体的には、オフィスの明るさや室温、レイアウトなどの物理的な要素から、従業員の自己裁量権、人間関係などの精神的な要素まで、仕事に関わるすべてのものが含まれます。
働きやすい職場環境の具体的な特徴を5つ解説します。
働きやすい職場環境の特徴として、適切な距離感で人間関係が醸成され、コミュニケーションが取りやすい職場があげられます。
たとえば、社内の意見交換や上司へフィードバックを求めることにストレスがなく、円滑に業務を進められる環境です。ただし、毎週の飲み会の開催や隣席の従業員から頻繁に話しかけられるなどは、見かけ上は良好でも本人が苦痛を感じる場合もあります。
働きやすい職場では、適切な距離感でコミュニケーションが取られ、その方法は企業の文化や風土によって異なります。
快適な作業環境は、従業員の心身にかかる負担が軽減され、一人ひとりの生産性向上に寄与します。具体的には、暑さや寒さを感じることのない快適なオフィスや、トイレや休憩室が清潔な施設などがあげられます。これらの環境は、肉体的・精神的ストレスの軽減につながり、従業員は集中力を保って効率的に作業へ取り組めます。
柔軟な働き方ができる職場環境は、自社への満足度向上やモチベーションアップが見込めます。仕事とプライベートのバランスを取りやすく、メンタルや身体的な健康を維持できるためです。
たとえば、リモートワークやフレックスタイム制度を導入している場合、勤務地や就業時間の制約が少なくなります。育児や親の介護が必要な従業員は日常生活にかかる負担が軽減され、働き続けることも比較的容易となるでしょう。
有給休暇などを取得しやすい雰囲気であれば、家族と過ごす時間を増やしたり趣味やスキルアップの勉強に没頭したりと、プライベートの充実も図れます。
業務効率化が実現した職場環境は、従業員の負担軽減やモチベーションアップが見込めます。
AI技術を実装して単純作業を自動化したり、紙の書類を電子化しクラウド上で一元管理にしたりと、業務効率化の方法は企業によってさまざまです。
働きやすい職場ではわずらわしい単純作業が削減されるため、より重要度の高い業務に注力でき、従業員は意欲的に業務へ取り組めます。
自社の方向性や価値観を共有しつつ、従業員が自分の成長や働く意義を実感しながら働けるよう、人材育成制度が充実している環境も働きやすいといえます。また具体的なプログラムや、わかりやすい評価基準を示していれば、従業員は将来のキャリアに明確なイメージを持てます。従業員一人ひとりが成長できる機会をつくり、正当な評価を受けられる職場環境を整えることで、不満の声が上がることやモチベーション低下の防止につながります。
人材育成プログラムの設計方法や具体例については、下記ページでも詳しく解説しています。
人材育成の考え方や目的とは?目標の設定方法や進め方、課題解決方法を紹介!
働きやすい職場環境を構築するメリットとして、以下の3つがあげられます。
働きやすい職場環境では離職率の低下が期待できます。内閣府の「就労等に関する若者の意識」によると、以下の順に離職理由が多くなっています。
参考:特集 就労等に関する若者の意識|平成30年版子供・若者白書(全体版) - 内閣府
従業員がスキルアップや仕事への貢献を実感できる職場環境は、やりがいや自分の成長を感じ、帰属意識を持って業務に取り組めます。個々のライフスタイルに合わせられる柔軟性があれば、結婚や育児、病気などの事情があっても働き続けることが容易となるでしょう。
適切な人間関係を醸成し、従業員がストレスなく働ける環境を築けば、もめごとや対立などのトラブル防止につながります。コミュニケーションが活発に行われたり、同じ目標に向かって行動できたりと、共通認識や信頼関係のある状態で行動しやすくなるためです。また、トラブルが起こった場合の対処法を考えておけば、もめごとや対立が起こっても迅速に解決し、業務に支障をきたすリスクを抑えられます。
働きやすい職場環境は、従業員の作業効率やモチベーションアップが期待でき、個々のパフォーマンスが向上します。たとえば、オフィス環境のレイアウトに無駄がなく、室内の温度や湿度、衛生面での管理が適切に行われていれば、集中力の維持やストレス低減につながるでしょう。個々の生産性が高まることで、自然と企業全体の生産性向上が期待でき、事業拡大やコスト削減などの効果が見込めます。
職場環境の具体的な改善方法を4つご紹介します。
ストレスチェックとは、労働衛生法第66条に基づき、従業員が50人以上の事業場を対象に年1回の実施が義務付けられたストレス検査のことです。
形式的にストレスチェックを導入するのではなく、検査結果の数値を分析し、職場環境を改善する施策立案に役立てましょう。たとえば、集団ごとの検査結果を分析すれば、業務負担に偏りがある部署に気づき、具体的な施策立案に役立てられる可能性があります。ストレス要因の明確化・施策の実施・分析/検証のPDCAサイクルを回すことで、より働きやすい職場環境を構築できるでしょう。
オフィス環境を整備すれば、従業員は快適に業務へ取り組めます。オフィス環境の改善では、従業員にヒアリングを行い、意見と取り入れることが重要です。たとえば、「照明の明るさや騒音が気になる」「休憩室とオフィスは分けてほしい」などがあげられます。職場環境のレイアウトを適切に設計すれば、従業員の生産性向上の効果を高められるでしょう。
ITツールを導入すれば、煩雑な作業の自動化/省人化が実現でき、従業員の業務負担が軽減されます。ITツール導入の効果を高めるためには、自社の職場環境における課題を明確にすることが重要です。、「バックオフィスの書類管理や経理処理に負担がかかる」「従業員のモチベーションを可視化したい」といった課題が明確になれば、ITツールを選定する際の判断材料となり、どのサービスが費用対効果を高められるのかを見極める際に役立ちます。
人材育成プログラムとは、自社が求める人材を育成するため、対象者や教育手法、スケジュールなどを定めた計画のことです。具体的には、専門家の講義や集団研修、OJT、資格取得の支援などがあげられます。人材育成の目標やスケジュールを具体的に計画し、従業員のスキルアップを支援すれば、自社への満足度や共感を高めることにつながります。
人材育成ブログラムの設計方法や具体例については、下記で詳しく解説しているのでぜひご覧ください。
職場環境を改善するための取り組み事例を3つご紹介します。
株式会社サイバーエージェントは、2016年6月に健康推進室を立ち上げ、健康的な働き方を推進するさまざまな施策に取り組んでいます。
たとえば、特定の曜日はリモートワークを行う「リモデイ」や、業務の見直しにより効率化を図る「棚卸会議」などです。他にも、女性活躍を推進するため、女性特有の体調不良や妊活のための特別休暇「エフ休」、専門家へ直接相談できる「妊活コンシェル」など、あらゆる従業員が働きやすい職場環の改善に努めています。
日本航空株式会社(JAL)では、職場環境を改善する取り組みとして、両立支援制度を導入しています。
両立支援制度は、育児や親の介護などと仕事の両立を支援するものです。具体的には、フレックスタイム制度や育児・介護のための休暇や休職制度、両立支援セミナーの開催などがあげられます。男女問わず制度を活用でき、ワークライフバランス実現に向けた風土の醸成を行っています。
参考:ワークスタイル変革|サステナビリティ|JAL企業サイト
KDDIでは、従業員一人ひとりが自律的に学べる職場環境を構築するため、オンライン学習サービス「Schoo」を導入しています。情報収集や業界理解に向け、7,000以上のコンテンツを場所や時間に縛られずに学習でき、自分のレベルに応じて学べる環境を整えました。学習進捗のグラフや視聴時間のランキング共有を行い、学びのモチベーションを維持できる取り組みも行っています。
参考:KDDI株式会社様| 導入事例 | オンライン研修・人材育成 - Schoo(スクー)法人・企業向けサービス
Schooの具体的なサービス内容については、以下で詳しく解説しているので気になる方はぜひご覧ください。
職場環境を改善することで、従業員のモチベーションアップや企業の生産性向上といった効果が見込めます。職場環境の改善は、ITツールの導入や人材育成プログラムの作成、オフィス環境の整備など、さまざまな方法によって実現可能です。「無駄な業務を省きたい」「社内に良好な人間関係を築きたい」など、企業の課題によって改善施策は異なります。
効果的に職場環境を改善するためには、自社の課題や求める人材などを明確にし、適切な施策を展開することが重要です。ぜひ本記事を参考にしながら、職場環境の改善に取り組みましょう。