離職率が高い企業の特徴や原因は?離職率を下げるための改善方法

公開日:2023.09.25 更新日:2023.09.25

離職が少ない職場だからといって、良い職場とは限りません。しかし、離職率は会社を判断する際の重要な指標であることは間違いないでしょう。離職率の高い企業は「何か問題を抱えているのではないか」と見られてしまいます。今回は離職率とは何か、離職率が高い原因や改善をするための方法についてご紹介します。

離職率とは

離職率とは一定期間における離職者数の割合を指します。厚生労働省の令和4年雇用動向調査によると、日本における令和4年の離職率は15.0%です。男女別の離職率は、男性13.3%、女性16.9%でした。就業形態別の離職率は、一般労働者が11.9%、パートタイム労働者が23.1%でした。

厚生労働省「令和4年雇用動向調査結果の概況」より加工して作成

ここで、常用労働者とは、「期間を定めずに雇われている者」または「1ヶ月以上の期間を定めて雇われている者」を指します。一般労働者とは、常用労働者のうち、パートタイム労働者を除いた労働者のことです。

離職率の計算方法

厚生労働省の雇用動向調査では、以下の計算によって離職率を求めています。

離職率=離職者数÷1月1日現在の常用労働者数×100%

離職率が高いとされる基準

まったく離職がない職場は少数であり、離職率の程度が問題になってきますが、自社の離職率が高いかどうかを判断する際は、厚生労働省の雇用動向調査結果の業界別の離職率を参考にすると良いでしょう。令和4年の結果は以下の通りです。

業界 離職率
 宿泊業、飲食サービス業  26.8%
 サービス業(ほかに分類されないもの)  19.4%
 生活関連サービス業、娯楽業  18.7%
 医療、福祉  15.3%
 教育、学習支援業  15.2%
 卸売業、小売業  14.6%
 不動産業、物品賃貸業  13.8%
 運輸業、郵便業  12.3%
 情報通信業  11.9%
 複合サービス事業  11.0%
 電気・ガス・熱供給・水道業  10.7%
 建設業  10.5%
 製造業  10.2%
 学術研究、専門・技術サービス業  10.0%
 金融業、保険業  8.3%
 鉱業、採石業、砂利採取業  6.3%

参考:厚生労働省「令和4年雇用動向調査結果の概況」

業界別離職率は「宿泊業、飲食サービス業」が26.8%と最も高く、「鉱業、採石業、砂利採取業」が6.3%と最も低くなっています。両者の差は4倍を超えています。

中小企業の離職率

ネームバリューがあり、求人募集ですぐに人が集まる大手企業とは異なり、中小企業にとって離職率の高さは深刻な問題です。厚生労働省は新規学卒者の就職3年以内離職率を毎年公表しており、これによると事業所規模(従業員数)と離職率との間に明確な相関関係が見られます。事業所規模と新規大学卒就職者の就職後3年以内の離職率の関係を以下に示します。


■ 新規学卒就職者の事業所規模別就職後3年以内離職率

事業所規模(従業員数) 離職率(大学卒)
 5人未満  55.9%
 5~29人  48.8%
 30~99人  39.4%
 100~499人  31.8%
 500~999人  29.6%
 1,000 人以上  25.3%

参考:厚生労働省プレスリリース(令和4年10月28日)「新規学卒就職者の離職状況(平成31年3月卒業者)を公表します」

企業規模が大きくなるほど、離職率が低下する傾向があります。

離職率が高いことのデメリット

離職率が高ければ、離職者が出るたびに新規採用を行い、業務について一から教える必要があります。また、離職率の高い企業は求職者から敬遠されたり、ブラック企業のイメージを持たれたりします。離職率が高い場合はその原因を探り、対策を講じることが求められます。

離職率が高い企業の特徴や原因

離職率が高い企業の特徴や原因はさまざまですが、以下に挙げる理由のどれかに当てはまるのではないでしょうか。

給料が低い

やりがいや人間関係も働くモチベーションの1つですが、会社で働く理由を尋ねられれば、収入を得るためと答える方が多いのではないでしょうか。期待する給料と実際に得られる給料に大きなギャップがあれば、給料アップのために転職を考える社員がいても不思議ではありません。養う家族がいる社員にとっては、給料が高い・低いは特に重要なポイントです。

ワークライフバランスが取れない

あまりに忙しすぎて、体を休める時間や家族と過ごす時間を十分に取れない職場もあります。このようなワークライフバランスが取れない職場で長期間働き続けると、ストレスを抱えたり、体調を崩したりする可能性があります。小さい子供がいて育児と仕事を両立させなければならない社員は、ワークライフバランスが取れない職場で働くことは難しいでしょう。

人間関係が悪い

職場の人間関係が悪く、離職につながるケースも少なくありません。上司と部下の人間関係やチームのメンバー間の人間関係など、一度人間関係がこじれてしまうと、関係の修復は大変です。職場の人間関係がギスギスしていて、「新しいアイディアを提案しても否定される」「失敗に対して厳しい」「お互いをフォローし合うという意識がない」といった特徴の職場は離職率が高くなります。

キャリアアップの機会がない

キャリアアップの内容はその人によって異なりますが、昇進をキャリアアップととらえる人は多いでしょう。社内におけるポジションを上げたいと考える社員は、ポストの空きがなく、成果を上げても自分のポジションが上がらなければ、やる気を失ってしまいます。

業務の達成感を得られない

最初はこなすのがやっとだった業務も、時間がたてば慣れてきます。しかし、同じ業務を繰り返すだけでは成長がそこで止まってしまいます。本人の成長に応じて、少しずつできる業務を増やしていくことが理想ですが、いつまでたっても同じ業務しか与えられない職場もあります。このような職場では業務の達成感を得られません。

組織の方針に共感できない

組織の方針に共感できず、離職する社員も少なくありません。極端に高い目標を設定し、社員に達成を求める会社も見られます。挑戦的な目標が組織の成長を促す面もありますが、それも程度問題です。目標を設定した明確な理由や根拠が示され、社員が会社の方針に納得できるようにすることが望ましいでしょう。

離職率が高い状態を改善する方法

それでは、離職率が高い状態をどのようにすれば改善できるのでしょうか。主な方法は以下の3つです。

待遇の改善

休日を増やして社員が心身ともにリフレッシュできるようにしたいが、仕事量は減らせないという職場も多いでしょう。デジタル技術の導入によって業務を効率化し、生産性を向上させ、年間所定休日数を増やそうとする企業もあります。定型業務はRPA(ロボティクス・プロセス・オートメーション)で自動化し、臨機応変な対応が求められる非定型業務は人間が対応するといったすみ分けを実現しています。

職場環境の充実

社員一人ひとりが自ら働きやすい環境を整えていくことは重要ですが、会社としても職場環境の充実を図る必要があります。コロナ禍に多くの企業がリモートワークの導入に踏み切りました。コロナの感染法上の位置づけが2類から5類に変更された後も、リモートワークを継続させるという企業は少なくありません。子育て中の社員が仕事と育児を両立できるように、リモートワークで対応できる業務はリモートワークを認めるなど、社員の負担を減らす工夫をしましょう。

採用のミスマッチの防止

会社に対するイメージは入社前と入社後とで違って当然ですが、そのギャップがあまりに大きいと、離職につながります。特に学生の場合は就業経験が浅く、メディアによってつくられたイメージに影響されがちです。競争を勝ち抜いて入社を決めたものの、「こんなはずじゃなかった」と悩む新社会人も少なくありません。採用する側は応募者に対して会社の良い面だけを伝えるのではなく、会社のネガティブな面も伝えておくべきです。

まとめ

今回は離職率の高い企業の特徴などについてご紹介しました。企業規模が小さいほど離職率が高い傾向があり、給料やワークライフバランスに問題がある企業は離職者も多くなります。離職は社員本人だけでなく、会社にとっても大きな損失です。待遇の改善や職場環境の充実など、離職率を下げる取り組みを講じましょう。

おすすめの
パートナー企業