人材開発支援助成金は、企業が従業員に対して実施する職業訓練にかかる経費や、訓練中に事業主が支払う賃金の一部について、国が助成する制度です。
この記事では、経営者や人事担当者の方から寄せられる代表的な疑問を30項目にまとめ、わかりやすく解説します。
目次
人材開発支援助成金は、企業が従業員の職務に関連するスキルを高めるために実施する研修や訓練に対して、研修費用や研修中に支払う賃金の一部が支給される制度です。対面・オンラインを問わず、社外講座や社内研修など幅広い形式が対象となります。
雇用保険の適用事業所であり、雇用保険に加入している従業員を雇用している企業であれば、業種や企業規模を問わず本制度を利用できます。ただし、労働保険料を滞納していないことなど、いくつかの共通要件を満たす必要があります。
雇用保険の被保険者が対象です。正社員に限らず、要件を満たす有期契約社員やパートタイム社員も含まれます(一般に役員等は対象外)。
雇用保険の適用事業主であること、対象の従業員が雇用保険の被保険者であること、そして労働保険料の滞納がないことが基本的な要件です。さらに、助成金の申請にあたっては、職業能力開発計画を策定し、職業能力開発推進者を選任・社内に周知しておくことが求められます。
対象となる訓練には、新入社員向けの導入研修や管理職研修、IT・DX分野のスキルアップ研修、資格取得のための講座など、職務に関連するさまざまな内容が含まれます。なかでも代表的な「人材育成支援コース」では、OFF-JTによる訓練を10時間以上実施することが基本的な要件とされています。
社内で実施するOFF-JT(業務外での研修)も、助成対象として認められています。一方、日常業務の中で指導を行う一般的なOJTは原則として対象外です。ただし、厚生労働大臣の認定を受けた「認定実習併用職業訓練」など、OJTとOFF-JTを体系的に組み合わせた訓練であれば助成の対象となります。その場合、ジョブ・カードの活用や訓練計画の策定など、所定の要件を満たす必要があります。
オンライン研修やeラーニングも助成の対象となります。ただし、受講時間や修了状況を客観的に証明できるよう、受講ログや修了証などの記録を適切に残しておく必要があります。
受講料、外部講師謝金、教材費、会場費等の訓練経費と、訓練時間に対応する賃金の一部が対象です。自社実施で経費が発生しない場合でも、賃金助成のみの申請ができます。
助成率や時給単価は年度・コース・企業規模で異なります。中小企業が優遇され、重点・高度分野では助成率や単価が上がる設計です。具体の数値は該当コースの最新パンフレット(年度版の一覧表)で必ず確認してください。
多くのメニューで中小企業の経費助成率・賃金助成単価が高めに設定され、負担軽減が図られています。
1事業所が1年度に受給できる助成額は上限1億円です。大規模実施を計画する場合は、上限と費目の配分を事前に試算しましょう。
①計画届の提出 → ②訓練の実施 → ③支給申請という三段階です。計画届の受理は支給を保証するものではなく、審査は支給申請後に一括で行われます。
訓練開始の6か月前から1か月前までの期間に提出します(新規雇入れ直後など一部の例外あり)。締切日ではなく提出可能期間で運用される点に注意してください。
所在地を管轄する都道府県労働局に提出します。地域ごとに案内や運用が異なる場合があるため、初回は担当窓口の指示に従って段取りを確認すると安心です。
可能です。厚生労働省の雇用関係助成金ポータルから電子申請できます。利用にはGビズIDの取得が必要です。
訓練の申請では、計画段階と支給申請段階で提出する書類が異なります。計画時には、計画届、対象者一覧、カリキュラム、契約書や見積書などが必要です。支給申請時には、申請書や実績報告書に加え、出勤簿、賃金台帳、受講記録、領収書などを提出します。これらは「計画→実施→支払い→勤務実績」が一貫して確認できるように整えておくことが求められます。
訓練終了後に支給申請(原則、終了日の翌日から2か月以内)を行い、審査を経て入金されます。資金繰りには、訓練後に入金となるタイムラグを見込んでおくと安全です。
公式パンフレット・様式・チェックリストに沿って準備すれば自社運用が可能です。ただし、初回や大規模設計では、要件の解釈や証憑の整備にあたっては、専門家の支援を受けることで申請の確実性が高まります。
申請は可能です。追加で研修を実施する場合は、別途計画届を提出すれば対応できます。なお、多くの訓練では、1人の従業員につき1年度あたり最大3回までが申請上限となっています。定額制訓練については、対象となるメニューを合算して3回までとカウントされます。
人数の上限は特に決まっていませんが、研修の運営や会場の規模、受講者の理解度などを考慮して、適切な人数を設定することが大切です。計画と実施に食い違いがないようにしましょう。
雇用保険の被保険者であれば、正社員だけでなく契約社員やパートタイマーなど雇用形態にかかわらず対象となります。特に、非正規雇用の方に対しては、キャリアアップや職場への定着を促すうえでも有効な制度です。
業務として会社が命じる研修は、労働時間として扱われ、通常どおり賃金を支払う必要があります。そのうえで、支払った賃金は所定の条件を満たせば賃金助成の対象となります。なお、就業時間外に従業員が任意で参加する研修は、賃金助成の対象とならない場合があります。
外部の研修サービスを利用した場合も助成の対象となります。受講料や教材費、外部講師への謝金などが経費助成の対象に含まれます。申込書や契約書、請求書・領収書などの証拠書類は、計画届と関連づけて保管しておく必要があります。
経費が発生しない場合でも、賃金助成だけを申請することが可能です。その際は、研修の実施が形式的なものと見なされないよう、研修時間や目標、評価方法を明確にし、記録をしっかり残しておきましょう。
同じ費用に対して複数の制度から支援を受けることはできませんが、費用の用途や対象を分けていれば、他の制度と併用できる可能性があります。併用を検討する場合は、あらかじめ費用区分を明確にしておくと安心です。
自己都合で退職した場合でも、研修が実施され要件を満たしていれば、基本的にその研修に対する助成金が無効になることはありません。ただし、賃上げなどが条件となる加算分については、受給に影響することがあります。
所轄労働局に事前相談のうえ、所定の変更手続を行います。無断変更は不支給・返還のリスクがあるため、必ず公式手順に従ってください。
原則返済不要の給付です。不正や虚偽が判明した場合は、返還や加算金等の対象になります。
提出期限の超過や書類不備、研修計画と実施内容の不一致は、申請時によくある失敗例です。計画届の提出は研修開始の6か月前から1か月前まで、支給申請は終了翌日から2か月以内が期限です。これらを守り、出勤簿や賃金台帳、受講ログ、領収書などの必要書類を計画内容と矛盾しない形で整理・保管しておくことが大切です。
専門家に相談することで、要件の解釈や証拠書類の準備、スケジュール管理を正確に進めやすくなり、不支給のリスクや社内の負担を抑えることができます。特に、制度の初めての導入時や、複数の助成コースを併用する場合、年度をまたぐような計画を立てる場合などに効果的です。
人材開発支援助成金は、企業の人材投資を強力にサポートしてくれる国の制度です。特に中小企業にとっては、コストを抑えながら社員のスキルアップを実現できる貴重なチャンスです。
ただし、申請には一定の準備と注意が必要です。今回のQ&Aで疑問が解消された方は、ぜひ制度の活用を前向きにご検討ください。不安な場合は、専門家への相談や無料セミナーなども活用すると良いでしょう。
厚生労働省「人材開発支援助成金」総合ページ(制度全体・各コース案内・Q&A・様式)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/d01-1.html?utm_source=chatgpt.com
令和6〜7年度版 パンフレット/詳細資料(要件、10時間要件、手続、上限等)
https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/001514280.pdf?utm_source=chatgpt.com
雇用関係助成金ポータル(電子申請)とGビズIDの案内
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/index_00060.html?utm_source=chatgpt.com
「自社に合った研修が助成対象になるか知りたい」
「計画届の作成や提出期限の管理に不安がある」
「複数の訓練を年度内にどのように設計すればよいか迷っている」
こうしたお悩みをお持ちの方は、株式会社VibesUp(バイブスアップ)の無料相談をご活用ください。
当社は、人材開発支援助成金の活用支援において、製造・IT・サービス業など幅広い業種での実績を有しており、以下のようなサポートをワンストップで提供しています。
⚫︎助成対象となる訓練メニューの選定
⚫︎研修設計とジョブ・カードの整備支援
⚫︎計画届・支給申請書の書類作成代行
⚫︎出勤簿・受講ログ・領収書など証憑整理の支援
⚫︎電子申請(GビズID)対応の実務サポート
単なる申請代行にとどまらず、人材育成と生産性向上の両立をめざす実効的な研修・助成設計を提案いたします。初回導入や大規模設計をご検討中の企業様も、お気軽にご相談ください。