中小企業の経営者にとって、「事業承継」や「M&A(合併・買収)」は避けて通れない重要なテーマです。後継者不足や地域経済の持続性といった課題を背景に、国はこれらの取り組みを支援するための補助金制度を整備しています。
今回は、2025年度(令和6年度)版の「事業承継・M&A補助金」について、制度の概要から申請方法、最新の動向までをわかりやすく解説します。
目次
事業承継・M&A補助金は、中小企業や小規模事業者が、事業承継やM&Aをきっかけに設備投資や専門家の活用を行う際、その費用の一部を支援する制度です。
対象となるのは、以下のような多様なケースです。
2025年度は、4つの支援枠で構成され、事業のフェーズや目的に応じて柔軟に活用されました。
事業承継・M&A補助金には、目的やフェーズに応じた4つの支援枠が用意されています。ここでは、それぞれの枠の特徴や補助内容を詳しく見ていきましょう。
(1)事業承継促進枠|5年以内に承継を予定している方に
親族内や従業員への事業承継を予定している中小企業者が対象です。
(2)専門家活用枠|M&Aの仲介やFAの費用をサポート
M&Aの実施にあたり、ファイナンシャルアドバイザー(FA)や仲介業者など専門家の支援を受ける場合に活用できます。
(3)PMI推進枠|M&A後の経営統合・成長に向けた投資を支援
M&Aの成立後、事業の統合や成長戦略を進めるための取り組みを支援する枠です(PMI=Post Merger Integration)。
(4)廃業・再チャレンジ枠|再スタートを目指す事業者に
事業承継やM&Aに伴って事業を廃業し、新たな挑戦に踏み出す中小企業者を対象としています。
2025年度の「事業承継・M&A補助金」は、第12次公募(※2025年9月19日締切)をもって、すでに公募受付が終了しました。今回の公募では、4つの支援枠すべてが対象となり、より幅広い事業者の取り組みが支援対象となりました。
なお、前回の第11次公募(専門家活用枠のみ)では、590件の申請に対して359件が採択され、採択率は約60%でした。
第12次の採択結果は執筆時点ではまだ公表されていませんが、今後の制度継続や再公募に向けて、引き続き注目が集まっています。
申請は、電子申請システム「jGrants(ジャグランツ)」を通じて行います。以下のようなステップで進みます。
採択に向けては、以下の点を押さえて申請書を準備することが重要です。
特に「100億企業要件」などの条件によっては補助上限が大きく変わるため、活用可能か事前に確認しましょう。
この制度は、旧「事業承継・引継ぎ補助金」が再編され、M&AやPMIの支援を強化した形で運用されています。「ものづくり補助金」「IT導入補助金」など他の補助金と併用することで、以下のような効果が期待できます。
今後も事業承継・M&Aに関する課題は全国的に深刻化する見通しです。それに伴い、本補助金制度も以下の方向での進化が期待されています。
申請を検討する場合は、早期の準備と専門家(認定支援機関など)との連携が、成功の鍵を握ると言えるでしょう。
まとめ
事業承継・M&A補助金は、経営の転換期を迎える中小企業にとって大きな後押しとなる制度です。制度を正しく理解し、自社に適した枠組みを選定することで、成長への新たな一歩を踏み出すことができます。補助金の活用に少しでも興味がある方は、ぜひ早めに専門家に相談し、準備を始めてみてください。