【2025年版】事業承継・M&A補助金を完全解説|4つの事業枠・補助率・対象経費・最新動向

公開日:2025.11.28 更新日:2025.11.28

中小企業の経営者にとって、「事業承継」や「M&A(合併・買収)」は避けて通れない重要なテーマです。後継者不足や地域経済の持続性といった課題を背景に、国はこれらの取り組みを支援するための補助金制度を整備しています。

今回は、2025年度(令和6年度)版の「事業承継・M&A補助金」について、制度の概要から申請方法、最新の動向までをわかりやすく解説します。

制度概要|事業承継やM&Aをきっかけに成長を支援する補助金とは?

事業承継・M&A補助金は、中小企業や小規模事業者が、事業承継やM&Aをきっかけに設備投資や専門家の活用を行う際、その費用の一部を支援する制度です。

対象となるのは、以下のような多様なケースです。

  • 経営者が交代する「親族内承継」や「従業員承継」
  • M&Aによる他社からの「事業引継ぎ」
  • M&A実行後の統合プロセス(PMI)に向けた体制整備
  • 廃業を経て新たな事業に挑戦する「再チャレンジ」

2025年度は、4つの支援枠で構成され、事業のフェーズや目的に応じて柔軟に活用されました。

4つの支援枠を徹底解説|補助率・上限・対象経費の違いとは?

事業承継・M&A補助金には、目的やフェーズに応じた4つの支援枠が用意されています。ここでは、それぞれの枠の特徴や補助内容を詳しく見ていきましょう。

(1)事業承継促進枠|5年以内に承継を予定している方に

親族内や従業員への事業承継を予定している中小企業者が対象です。

  • 補助上限額:800万円(賃上げ実施で1,000万円まで)
  • 補助率:中小企業は1/2、小規模事業者は2/3以内
  • 対象経費:設備投資、外注費、委託費、旅費など
  • 主な要件:事業承継の計画があること、および承継後の生産性向上につながる取り組みが明確であること

(2)専門家活用枠|M&Aの仲介やFAの費用をサポート

M&Aの実施にあたり、ファイナンシャルアドバイザー(FA)や仲介業者など専門家の支援を受ける場合に活用できます。

  • 補助上限額:600〜800万円(一定要件を満たすと最大2,000万円)
  • 補助率:1/3〜2/3(買い手・売り手によって異なります)
  • 対象経費:仲介手数料、デューデリジェンス費用、表明保証保険料、セカンドオピニオン費用など
  • 注意点:対象となるのは「M&A支援機関登録制度」に登録された業者に限られます

(3)PMI推進枠|M&A後の経営統合・成長に向けた投資を支援

M&Aの成立後、事業の統合や成長戦略を進めるための取り組みを支援する枠です(PMI=Post Merger Integration)。

  • 補助上限額

     - 専門家活用:150万円
     - 事業統合投資:800〜1,000万円(賃上げ実施で上限引き上げあり)

  • 補助率:1/2〜2/3以内
  • 対象経費:設備費、外注費、委託費、専門家費用など

(4)廃業・再チャレンジ枠|再スタートを目指す事業者に

事業承継やM&Aに伴って事業を廃業し、新たな挑戦に踏み出す中小企業者を対象としています。

  • 補助上限額:150万円(他の枠と併用申請した場合は上乗せ可)
  • 補助率:1/2または2/3以内
  • 対象経費:在庫廃棄費、解体費、原状回復費、リース解約料、移転費など

2025年最新公募動向

2025年度の「事業承継・M&A補助金」は、第12次公募(※2025年9月19日締切)をもって、すでに公募受付が終了しました。今回の公募では、4つの支援枠すべてが対象となり、より幅広い事業者の取り組みが支援対象となりました。

  • 第12次公募期間:2025年8月22日(金)~9月19日(金)17時まで
  • 補助上限・補助率:賃上げ実施や「100億企業要件」など、条件に応じて上乗せ措置あり

なお、前回の第11次公募(専門家活用枠のみ)では、590件の申請に対して359件が採択され、採択率は約60%でした。

第12次の採択結果は執筆時点ではまだ公表されていませんが、今後の制度継続や再公募に向けて、引き続き注目が集まっています。

申請の流れと注意点|jGrantsから電子申請、事前発注はNG

申請は、電子申請システム「jGrants(ジャグランツ)」を通じて行います。以下のようなステップで進みます。

  1. 公募開始
  2. 電子申請(jGrantsにて)
  3. 採択通知・交付決定
  4. 契約・事業実施
  5. 実績報告・補助金請求

注意点

  • 交付決定前の発注・契約はNG(対象外になります)
  • 証憑類の準備が重要(契約書・見積書・請求書・領収書など)
  • 後払い方式のため資金繰りの確保が必要
  • 審査では「事業の成長性」や「賃上げ計画」も重視

採択されるためのポイントとは?|準備と戦略がカギ

採択に向けては、以下の点を押さえて申請書を準備することが重要です。

  • 後継者・譲受者の明確な準備状況
  • 事業の成長戦略や統合後のビジョン
  • 専門家活用やM&A支援機関との連携体制
  • 生産性向上・賃上げ等の具体的な数値目標

特に「100億企業要件」などの条件によっては補助上限が大きく変わるため、活用可能か事前に確認しましょう。

他の補助金との違い・併用戦略

この制度は、旧「事業承継・引継ぎ補助金」が再編され、M&AやPMIの支援を強化した形で運用されています。「ものづくり補助金」「IT導入補助金」など他の補助金と併用することで、以下のような効果が期待できます。

  • PMI後の設備投資を「ものづくり補助金」でカバー
  • システム導入は「IT導入補助金」で対応
  • 人材育成には「人材開発支援助成金」なども検討可

制度の展望と今後の注目点

今後も事業承継・M&Aに関する課題は全国的に深刻化する見通しです。それに伴い、本補助金制度も以下の方向での進化が期待されています。

  • PMI支援のさらなる拡充
  • 賃上げ達成を条件とした補助上限の引き上げ
  • 採択率の低下に伴う、書類の質と専門家支援の重要性増大
  • デジタル化・省力化投資との横断的活用の推進

申請を検討する場合は、早期の準備と専門家(認定支援機関など)との連携が、成功の鍵を握ると言えるでしょう。

まとめ

事業承継・M&A補助金は、経営の転換期を迎える中小企業にとって大きな後押しとなる制度です。制度を正しく理解し、自社に適した枠組みを選定することで、成長への新たな一歩を踏み出すことができます。補助金の活用に少しでも興味がある方は、ぜひ早めに専門家に相談し、準備を始めてみてください。

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