中小企業庁が主導する「新事業進出補助金」は、新たな事業展開を後押しすると同時に、従業員への賃上げによる経済効果の波及も狙った制度です。
本記事では、その中でも特に重要な「賃上げ要件」に焦点を当て、2025年度第2回公募の内容と実務上のポイントを解説します。点を項目ごとにわかりやすく整理しました。
目次
「新事業進出補助金」では、新たな事業の実施に加え、補助事業終了後3〜5年間にわたる持続的な賃上げが申請要件とされています。
次のいずれか一方を満たす必要があります。
⚫︎一人当たり給与支給総額の年平均成長率が、所在地の都道府県における過去5年間の最低賃金上昇率以上であること(例:広島県では約3.2%)
⚫︎全従業員の給与支給総額の年平均成長率が2.5%以上であること
「給与支給総額」とは、基本給・手当・賞与など、従業員に実際に支払った賃金の合計額を指します。役員報酬、外注費、福利厚生費、退職金などは含まれません。
また、「一人当たり給与支給総額」は、フルタイム換算した従業員数で割って算出します。パートやアルバイトも勤務時間に応じて適切に換算する必要があります。
補助事業終了後の3〜5年間の計画期間中は、毎年、自社の最低賃金を地域別最低賃金より30円以上高い水準に設定することが義務付けられています。
この「+30円ルール」は、特にパートやアルバイトなど時給制の従業員が多い企業にとって大きな影響を与えます。最低賃金が毎年見直されるたびに、社内最低賃金もそれに応じて+30円以上に引き上げる必要があるため、人件費増加を前提にした計画設計が求められます。
新事業進出補助金には、より高い水準の賃上げに取り組む企業に対するインセンティブとして、「賃上げ特例」制度が設けられています。
この特例を活用することで、補助金の上限額が通常より増額されるという大きなメリットがあります。
以下の2つの要件をすべて満たした場合、「大幅賃上げ特例」が適用されます。
⚫︎給与支給総額の年平均成長率が6.0%以上
⚫︎事業場内最低賃金を毎年50円以上引き上げる
たとえば、従業員20名以下の企業であれば、通常の上限額2,500万円が3,000万円に増額されます。
ただし、この特例は達成のハードルが高い制度でもあります。無理のある計画では審査で加点対象になったとしても、実現可能性が低いと判断されれば不採択となる可能性があります。
そのため、申請時には数値の根拠や実施体制を具体的に示し、現実的に達成可能な内容かどうかを慎重に検討することが重要です。
賃上げ要件は必須条件です。申請書の計画が要件を満たしていない場合、審査前に申請が却下される可能性があります。
また、数値の調整などで形式的に要件を満たしていても、後の調査で不備が見つかれば「虚偽申請」とみなされ、不採択や今後の申請制限につながるおそれがあります。
返還による資金的な損失に加えて、「目標未達の企業」としての印象が残ることで、今後の補助金申請や取引先からの信用にも影響が出る可能性があります。
無理のない計画を立て、実現可能性を十分に見極めたうえでの申請が重要です。
持続的な賃上げを実現するには、制度としての仕組みづくりが欠かせません。
基本給や等級制度の整備、昇給ルールの明確化により、計画的な昇給が可能になります。
特に、賞与ではなく基本給の底上げを中心とすることで、安定した成長率が実現しやすくなります。
賞与や決算手当などの一時金も「給与支給総額」に含まれるため、賃上げ達成の手段として有効です。
ただし、一時的な支給に頼りすぎると「継続的な賃上げ」が難しくなるので、
基本給とのバランスを考慮し、持続性のある計画を立てましょう。
外注費は「給与支給総額」に含まれないため、業務を外注化しすぎると要件未達となるリスクがあります。
必要に応じて外注を活用しつつも、社内人材への還元を重視した人件費計画が求められます。
事業拡大に合わせて人員を増やすことで給与支給総額の増加が見込めます。
特に、総額ベースの要件(年2.5%以上の成長)を目指す場合に効果的ですが、低賃金の人員を増やしすぎると「一人当たり」の指標には逆効果となるため注意が必要です。
自社がどちらの指標で達成を目指すかを明確にし、採用と給与設計のバランスを取りましょう。
申請書(事業計画書)を作成する際は、以下の項目を具体的かつ一貫性のある形で記載することが重要です。
⚫︎賃上げの目標数値(例:3年間で一人あたり○%増など)
⚫︎根拠となる収支計画や利益見通し
⚫︎賃上げの原資をどう確保するか
⚫︎従業員への周知・合意形成の方法
たとえば、「売上増により○万円の利益を確保し、そのうち△万円を基本給の引き上げに充てる」といった形で、収益と人件費の関係を明確に示すと、実現性の高い計画として評価されやすくなります。
賃上げ特例を活用する場合は、毎年の昇給額とその原資、販売計画との連動性、補助事業終了後も続く賃上げ方針などを、具体的かつ整合性のある形で記載する必要があります。
あわせて、最低賃金+50円を維持するための制度設計や、全社的な情報共有・運用体制にも触れておくと、審査において好印象を与えることができます。
「新事業進出補助金」は、単なる設備投資や新サービス導入を支援する制度ではありません。
その背景には、企業の成長を従業員の処遇改善へとつなげる政策的な狙いがあります。
このため、賃上げ要件は制度の中核をなす重要な要素であり、その実現可能性は審査における大きな評価ポイントとなります。
単に数字を合わせるのではなく、事業の成長に伴って自然に人件費が増加する仕組みとして計画を構築することが、採択への近道となるでしょう。
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