事業承継・M&A補助金Q&A30問|対象企業・補助率・申請方法を専門家が解説

公開日:2025.11.28 更新日:2025.12.11

中小企業における「後継者不在による黒字廃業」が深刻な社会課題となる中、国はその対策として「事業承継・M&A補助金」制度を設けています。

この補助金は、事業の引継ぎを契機に、新たな取り組みを始める中小企業を支援するものです。

本記事では、制度の概要や対象者、補助内容、申請方法など、よくある疑問をQ&A形式で30項目にわたって解説します。

目次

制度の概要と背景

Q1. 事業承継・M&A補助金とは何でしょうか?

中小企業が親族内承継やM&A、従業員承継などを行う際に必要となる費用を支援する補助金です。承継後の新たな取り組みに対する支援に加え、M&A時の専門家費用や、廃業に伴う整理費用まで、事業承継のさまざまな場面を幅広くカバーしています。

Q2. 後継者不在やM&Aを考えている中小企業にとって、どんな課題を解決できる制度ですか?

多くの中小企業が、後継者不足によって黒字でも廃業を選ばざるを得ない現状に直面しています。また、M&Aを通じた事業承継を進めようとしても、専門家費用や新事業への投資など、初期コストが大きな負担になるケースも少なくありません。

事業承継・M&A補助金は、こうした実務上の障壁を乗り越えるための資金支援として活用でき、次の一歩を踏み出す後押しとなる制度です。

対象企業・申請者の条件

Q3. 補助の対象となる企業に制限はありますか?

補助の対象となるのは、中小企業基本法で定められた「中小企業者」または小規模事業者です。業種や資本金、従業員数によって判断されます。例えば、製造業なら「資本金3億円以下、従業員300人以下」などの規模定義があります。

Q4. 個人事業主は対象になりますか?

青色申告を行っている個人事業主は対象です。白色申告の場合は補助対象外となります。

Q5. 事業承継にはどのような種類がありますか?

代表的な事業承継の形としては、親族への承継(親族内承継)、従業員への承継(従業員承継)、そして第三者によるM&A(第三者承継)の3つがあります。

本補助金では、これらの承継形態に応じた支援メニューが用意されており、それぞれの状況に合わせて申請することができます。

Q6. 補助対象となる「新たな取り組み」とはどのような内容ですか?

補助金の対象となる「新たな取り組み」とは、事業承継をきっかけに行う商品開発、ITの導入、新たな販路の開拓、生産体制の見直しなど、経営の革新につながる取り組みを指します。

これまで通りの事業を引き継ぐだけでは対象にならず、承継後に何らかの前向きな変化を起こすことが求められます。

対象となる取組・補助内容

Q7. M&Aのコストも補助対象になりますか?

はい、一部の費用は補助対象となります。たとえば、M&Aを進める際のアドバイザー費用、企業価値評価(バリュエーション)、デューデリジェンスなどの専門家費用は、「専門家活用枠」で補助の対象となります。

一方で、株式の購入費用や事業資産の取得費用、地代・不動産購入費などは補助対象外とされています。あくまで支援の対象は、M&Aの準備・検討・実行に伴う専門的な支援費用に限られます。

Q8. 最大でどれくらいの補助金を受けられますか?

経営革新枠および専門家活用枠では、原則として上限600万円までの補助を受けることができます。ただし、一定の要件(従業員の賃上げ計画の実施など)を満たした場合は、経営革新枠に限り上限額が800万円に引き上げられます。

また、廃業・再チャレンジ枠は最大150万円まで補助されます。枠の併用によって、総額で800万円超の支援を受けられるケースもあります。

Q9. 補助率を最大2/3まで引き上げるには、どのような条件が必要ですか?

原則、補助率は1/2以内ですが、次のいずれかの条件を満たす場合は、最大で2/3以内まで引き上げられます: ⚫︎小規模事業者であること ⚫︎直近の営業利益率が物価高騰などの影響で低下していること ⚫︎赤字を計上していること ⚫︎私的整理などの事業再生を実施していること

これらの条件に該当するかどうかは、申請時に提出する決算書や証明資料で確認されます。

申請方法・提出書類

Q10. jGrantsを使って申請する際に注意すべきことはありますか?

はい、申請には経済産業省の補助金申請システム「jGrants(ジェイグランツ)」を利用する必要があります。事前にGビズIDプライムアカウントを取得しておくことが必須です。

申請フォームには正確な情報を入力し、指定されたファイル形式や様式に従って必要書類をアップロードしてください。書類の体裁や命名規則が要件に合っていない場合、差し戻しや不備扱いになることがありますので、公式の申請マニュアルに沿って丁寧に準備を進めましょう。

Q11. 専門家活用枠では、どのような専門家の費用が補助対象になりますか?

M&Aの実施に必要な専門家のうち、国の「M&A支援機関登録制度」に登録された事業者が補助対象となります。具体的には、M&Aアドバイザー、ファイナンシャルアドバイザー(FA)、仲介業者、弁護士、税理士、公認会計士などが該当します。

登録されていない事業者に支払った費用は補助対象外となるため、依頼先が登録機関であるかを事前に確認することが重要です。

Q12. 廃業・再チャレンジ枠では、どのような費用が補助されますか?

M&Aが成立しなかった場合や、不採算部門の廃止を伴う事業承継の際に発生する各種費用が補助対象となります。具体的には、廃業に伴う登記費用、在庫処分費、設備の解体・原状回復費などが対象です。

これらの費用は「廃業・再チャレンジ枠」で申請することで、最大150万円までの補助を受けることができます。

補助金の支払・経費処理

Q13. 補助金はいつ支払われますか?

補助金は、補助事業が完了した後に実績報告書を提出し、その内容が審査・確定されたのちに、申請者名義の銀行口座へ振り込まれます。

この補助金は後払い方式のため、事業実施時点では必要な経費をいったん全額自己負担で支出する必要があります。

Q14. 補助金は前払いしてもらえますか?

いいえ、できません。補助金はすべて後払い方式となっており、申請者がいったん全額を立て替える必要があります。事業完了後に実績報告を提出し、審査を経て確定した金額が支払われます。

Q15. 補助対象経費には相見積もりの取得が必要ですか?

はい、原則として補助対象経費ごとに複数の事業者から相見積もり(複数見積)を取得する必要があります。

特に設備購入や委託業務など高額な支出については、価格の妥当性を示すために2社以上の見積もりが求められます。

Q16. 補助事業の期間内にすべて完了しなければなりませんか?

契約・発注・納品・支払いまで、すべて補助事業期間内に完了していることが必要です。

認定支援機関・書類準備

Q17. 認定支援機関とは何ですか?

認定支援機関とは、「認定経営革新等支援機関」として中小企業庁の認定を受けた、公的な支援機関のことです。補助金申請の際には、事業計画の妥当性や実現可能性について、この認定支援機関による確認と「確認書」の発行が必要となります。

商工会・商工会議所、地域金融機関、税理士、公認会計士、中小企業診断士などが該当し、申請者の計画策定をサポートしてくれる重要なパートナーです。

Q18. 必要書類はどのようなものがありますか?

事業計画書、確認書、決算書(または確定申告書)、納税証明書、登記簿謄本などが必要になります。

税務・経費区分

Q19. 課税対象になりますか?

補助金は収益に計上されるため、法人税等の課税対象となります。

Q20. 補助対象となる経費にはどのような制限がありますか?

はい、補助対象経費には明確なルールが定められており、対象外の経費を含めて申請すると不採択や減額の対象になる可能性があります。

たとえば、土地や建物の取得費、株式の購入費、借入金の返済、役員報酬、税金、罰金、現金払いなどは補助対象外とされています。

また、同一の経費について他の補助金と重複して申請することも禁止されています。補助対象となる経費かどうかは、公募要領の「補助対象経費一覧」で必ず確認しましょう。

審査・加点・採択率

Q21. 補助金申請の審査では、どのような点が評価されますか?

外部有識者による審査では、以下のような観点が重視されます。

計画の実現可能性:5年間の事業計画が現実的かつ達成可能か

経営革新の有効性:承継後の取り組みに新規性や改善効果があるか

承継の確実性:後継者の選定や実行体制が整っているか

地域経済への貢献:地域雇用や取引先との関係維持などに資するか

これらに加え、「加点項目」に該当する取り組みがある場合は、採択の可能性が高まります。

Q22. 審査時に加点される要素にはどのようなものがありますか?

本補助金には、申請内容に一定の条件を満たす場合に加点評価が受けられる「加点項目」が設定されています。主な加点要素は以下のとおりです。

私的整理の実施:事業再生ADRや債権放棄を含む私的整理手続を行っている場合

適切な会計ルールの適用:中小会計要領・中小会計指針に基づく会計処理を行っている場合

認定計画の取得:経営力向上計画や経営革新計画の認定を受けている場合

地域貢献の実績:地域内での仕入・販売が多い、地域プロジェクトに参画している等

地域おこし協力隊の活用:承継者が協力隊員である、または自治体からの委嘱がある場合

これらに該当する場合は、必ず証明書や関連資料を添付して申請してください。

Q23. 申請した場合の採択率はどの程度ですか?

過去の実績では、全体で50〜65%程度の採択率となっており、他の補助金制度と比べると比較的高めです。ただし、採択されるかどうかは、事業計画の内容や書類の正確さに大きく左右されます。

他制度との併用・制限

Q24. 類似する他の補助金と併用できますか?

同一事業や同一経費で、他の国の補助金と併用することはできません。たとえば、事業再構築補助金や小規模事業者持続化補助金などと重複して申請することは不可です。内容が明確に区分されていれば併用可能な場合もありますが、申請前に確認が必要です。

Q25. 地方自治体の補助金と併用できますか?

はい、同一経費に対して補助が重複しないようにすれば、地方自治体の補助金と併用することは可能です。ただし、国と自治体の補助金で同じ費用を計上すると「二重補助」とみなされ、交付が取り消される場合がありますのでご注意ください。

Q26. 補助対象外となる経費にはどのようなものがありますか?

補助対象外の経費には、株式取得費、役員報酬、税金、罰金、現金払いの支出、リース・レンタル費用(※一部除く)などがあります。

また、証憑書類が不十分な経費や、補助事業と直接関係のない支出も対象外となりますので注意が必要です。

特殊ケース・実例・メリット

Q27. 事業承継が完了していなくても申請できますか?

申請は可能ですが、後継者がすでに決定していて、承継計画が具体的かつ実行可能であることが条件です。また、補助事業期間内に承継が完了する見込みである必要があります。

Q28. 廃業枠のみでの申請は可能ですか?

はい、可能です。廃業・再チャレンジ枠は、単独で申請することができます。ただし、経営革新枠の中に廃業費用を含める場合は、「廃業費のみ」での申請はできません。その場合は、経営革新の取組が必須になります。

Q29. 補助金を活用した具体的な成功事例はありますか?

はい。たとえば、ある旅館では従業員が後継者となり、補助金を使って浴場を改修し、日帰り入浴事業を新たに展開しました。

また、建築業の企業が取引先をM&Aで承継し、補助金でレーザー加工機を導入して新サービスを立ち上げた事例もあります。

いずれも、事業承継をきっかけに新たな取り組みへとつなげた成功例です。

Q30. 事業承継・M&A補助金にはどのような活用メリットがありますか?

承継やM&Aの実行時に必要な投資資金や専門家費用の一部が補助されることで、資金面の負担を軽減できます。さらに、承継後の新事業や設備投資に取り組みやすくなり、経営の刷新や成長のチャンスにつながります。認定支援機関との連携によって、経営計画の精度向上や実行支援も期待できます。

まとめ

「事業承継・M&A補助金」は、事業の引継ぎを単なる世代交代にとどめず、経営革新や地域経済の活性化へとつなげることを目的とした、国の支援制度です。

最大800万円の補助を受けられる枠もあり、承継後の新規事業、M&Aに伴う専門家費用、廃業にかかる各種費用など、幅広い経費が対象となります。

後継者問題に直面する中小企業や、M&Aを通じて事業の拡大・再構築を目指す企業にとっては、資金面の支援だけでなく、事業計画のブラッシュアップや専門家との連携を通じた経営力強化のチャンスにもなります。

制度の内容や申請準備には一定のハードルがありますが、認定支援機関と連携し、よくある質問のポイントを押さえながら進めることで、採択の可能性を高めることができます。

承継・再構築のタイミングを有効に活かす手段として、本補助金をぜひ戦略的にご活用ください。



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