ものづくり補助金は、中小企業や小規模事業者の生産性向上、新製品・新サービス開発、省人化・自動化投資、そして海外展開など、多様な取り組みを支援する、国の代表的な補助制度です。近年は、制度設計や補助枠、要件の見直しが進み、以前とは異なるルールが適用されています。
今回は、最新の公募スケジュールおよび主な変更点を整理し、申請を検討している企業が押さえておくべきポイントをご紹介します。
目次
最新の公募である第22次について、現時点で以下のスケジュールが公表されています。
申請はすべて電子方式(jGrants)で受け付けられており、紙による郵送申請は受け付けられていません。
そのため、申請を検討している場合は、あらかじめGビズIDプライムを取得しておくことが重要です。発行までに一定の時間を要するため、早めの手続きが推奨されます。
今後の公募(第23次以降)については、現時点では詳細が未定であり、公式サイトでの案内を随時確認する必要があります。
最近の制度変更により、従来あった複数の枠が整理され、現在は主に次の枠構成となっています。
新製品や新サービスの開発、生産プロセスの改善などを対象とする基本的な枠です。補助対象経費として、機械装置費やシステム導入費、技術導入費、外注費、クラウドサービス利用費などが含まれます。
補助上限額および補助率は以下の通りです。
| 従業員数 | 補助上限額 |
|---|---|
| 5人以下 | 750万円 |
| 6〜20人 | 1,000万円 |
| 21〜50人 | 1,500万円 |
| 51人以上 | 2,500万円 |
補助率は中小企業で1/2、小規模事業者等で2/3となっています。
また、デジタル化や環境対応など成長分野への進出を目指す「DX/GX型」の取り組みも、この枠の中で評価・支援の対象となります。かつて設けられていた「デジタル枠」「グリーン枠」は廃止され、枠の統合が進んでいます。
海外市場開拓や輸出、海外展開を目的とした投資を支援する枠です。機械装置費だけでなく、海外渡航費、通訳・翻訳費、広告宣伝費なども、要件を満たす場合には補助対象となります。
補助上限額は原則3,000万円、補助率は中小企業1/2、小規模事業者等2/3です。
ものづくり補助金では、単なる設備投資だけでなく、「働く人への待遇改善」や「事業の持続性・成長性」も重視されるようになってきています。最近の公募では、次のような賃上げ・付加価値向上に関する要件と優遇措置が導入されています。
これらの要件を満たせない場合、補助金の交付後であっても返還義務が生じることがあるため、十分な注意が必要です。
最近の公募(19次以降)では、賃上げに前向きな企業を後押しするため、以下のような制度設計が行われています。
これらの措置により、単なる設備投資だけでなく、「企業としての持続可能な成長」と「働く人の待遇改善」を両立しようとする企業にとって、大きなメリットが生まれています。
近年、制度の複雑化および要件強化に伴い、採択率はやや低下傾向にあります。公募回や枠によって差はありますが、全体の採択率はおおむね30%前後というデータもあります。
直近の第19次公募では、全体の採択率が約31.8%となっており、その内訳として、製品・サービス高付加価値化枠は約32.3%、グローバル枠は約24.1%という結果でした。こうした数字からも、いずれの枠においても競争がかなり激しくなっていることがわかります。
そのため、単に「補助金を使いたい」という希望だけでなく、事業計画の緻密さ、賃上げ計画の実現可能性、経営戦略の明確さなどが、これまで以上に重要になってきています。
現在、ものづくり補助金の申請はすべてオンラインで行われており、紙の申請書による郵送は受け付けられていません。
申請にあたっては、あらかじめGビズIDプライムを取得しておく必要があります。取得に時間がかかる場合もあるため、余裕を持ったスケジュールで準備することが求められます。
また、申請書類には、機械装置費・システム導入費だけでなく、技術導入費、外注費、クラウド利用費、専門家経費など、多様な経費が対象となります。どの経費が補助対象となるのかを事前に整理しておくことが重要です。
さらに、補助事業の実施期間や実績報告のスケジュール、他の補助金との併給制限など、申請後から交付後まで一貫した管理が求められます。計画段階から事業完了までのロードマップを描いておくことが、成功の大きな鍵となります。
ものづくり補助金は、単なる設備導入支援にとどまらず、企業の成長力強化・事業の持続性・働き方改善を同時に支援する制度へと進化しています。従来の補助枠の整理、大型投資への対応、賃上げ・待遇改善に関する要件の強化、申請手続きのオンライン化など、直近で大きな制度変更が行われてきました。
これから申請を検討する企業は、次のポイントを押さえておくことをおすすめします。
補助金はあくまで手段のひとつですが、最新の制度を正しく理解し、自社の戦略と整合させることで、大きな設備投資や新規事業の推進につなげることが可能です。ものづくり補助金を上手に活用し、事業の成長を加速させていきましょう。