多くの企業にとって、次世代を担う管理職の育成は重要な課題です。しかし、育成の手順がわからなかったり、人材を選抜できなかったりするなど、スムーズにいかないケースが散見されます。
そこで今回は管理職候補を育成する方法や育成時のポイント、活用しやすい研修サービスなどを紹介します。
目次
管理職候補とは企業の将来の管理職を担う人材のことで、一般的には入社15年未満の中堅社員を指すケースが多いといえます。
部署の方針決定や部下の指導を行うなど、管理職は重要な役割を担う存在であるため、管理職候補の育成は企業にとって重要な課題の1つです。
少子高齢化による労働人口の減少により、多くの業界・企業で人材が不足している状況にあり、スキルや経験が豊富な人材はもちろん、若い人材を確保するのも難しいのが現状です。
しかし、数十年先の企業経営を見据えて人材育成に取り組まなければ、企業が立ち行かなくなる可能性もあることから、次世代の管理職の育成が求められるのです。
このように、人材育成を含めた人材戦略は会社存続に欠かせない重要事項といえます。
管理職候補は誰でもいいわけではありません。
企業に所属する社員の中から、勤続年数の長さや人事での評価内容、管理職としての適性など、さまざまな要素を考慮して総合的に判断して選抜する必要があります。管理職の適性を測るために、一般教養を問う試験を実施するケースもあります。
企業によって選定基準は異なるものの、自社での管理職候補の選定基準は明確にしておくことが重要といえるでしょう。
管理職候補の育成は重要であるものの、うまく育成ができない企業が多い傾向にあります。管理職候補が育たないのは、以下のような理由があるからです。
それぞれ詳しく解説します。
そもそも中堅社員の人数が少ないため、管理職候補を育成できない場合があります。
将来の管理職を担ってほしい30代の中堅層が少なく、能力が高い人材が出てこない場合、管理職候補の育成以前に選抜することすら難しくなるかもしれません。
このようなケースでは、中堅社員の底上げを図るための教育を実施したり、採用戦略を見直したりする必要があるでしょう。
管理職候補となる中堅社員が管理職に対して良いイメージを持っていない場合も、管理職候補が育ちにくくなります。
就職氷河期やリストラを目の当たりにしたことが影響し、専門職志向の中堅社員が多い傾向にあるためです。
また、中間管理職の業務負担の大きさが企業の課題となっており、管理職はたいへんな仕事というイメージが先行しているケースもあります。
管理職に対してのイメージがわかない中堅社員が多い場合も、管理職候補の育成ができないケースに繋がります。
どのような役割を担い、具体的に何をするのかわからないためです。
管理職としてキャリアアップした後、どうなるのかイメージできないため、管理職候補となるのを避けたがる社員もいます。
この場合は、管理職の役割や部署間の関係性、昇進した後の道筋について説明し、キャリアアップのイメージを持ってもらうことが重要になります。
これまでプレイヤーとして勤務してきた社員は、チームを俯瞰して見られない場合があります。
特に所属人数が多い組織においては、受け身で仕事に取り組む場合が多く、チーム全体を見る力に欠けやすくなります。
このような人材を管理職候補として育成する場合、個人での成果だけではなく、チームとして成果を出すための考え方や方法論を理解してもらう必要があるでしょう。
これまでのキャリアにおいてマネジメント経験をあまり積めなかった場合も、管理職候補を育てるのが難しくなります。
企業の方針や業務の性質上、失敗が許されないために大きな仕事を任されない、組織のフラット化によってリーダーの役割を求められない、といった環境にいる場合、マネジメント経験やその基礎となるような経験は中々積めないでしょう。
管理職はプレイヤーとは異なるスキルや知識が必要になるため、実際に経験していなければどのようにマネジメントすればいいのかわからないことが多いのです。
研修やセミナーなど座学での教育に加えて、プロジェクトや部署を任せるような実践的な教育が必要になるでしょう。
管理職候補を選ぶ場合は、適性の有無を把握することが重要です。以下のような人材は、管理職候補として向いているといえるでしょう。
それぞれの特徴について解説します。
ヒューマンスキルが高い人材は、管理職候補としての適性があります。
ヒューマンスキルとは良好な人間関係の構築や、円滑なコミュニケーションのために必要なスキルの総称です。
部署内のメンバーをまとめて率いるリーダーシップや人間関係を維持するためのコミュニケーションスキル、関係者と調整・交渉するためのネゴシエーションスキルの他、プレゼンテーションスキル、コーチングスキル、ヒアリングスキル、向上心などが含まれます。
いずれも管理職として業務をスムーズに進めるために必要なスキルといえます。
セルフマネジメントスキルが高い人材も、管理職に向いています。
セルフマネジメントスキルとは、目的や目標を達成するために、自分の感情や行動を管理できるスキルのことです。自分をコントロールできるからこそチームメンバーのマネジメントが可能になり、メンバーのメンタルや体調面も気に掛けられます。
また、セルフマネジメントに長けている人は、モチベーションや集中力を高めるスキルを持っている他、課題や困難に直面したときに柔軟に対応できたり、タスク管理や時間管理にも長けていたりするなど、管理職として求められるスキルの多くをすでに習得している可能性があります。
論理的思考力が高い人材も管理職に向いています。
論理的思考力(ロジカルシンキング)とは、物事を結論と根拠に分け、論理的なつながりを捉えて物事を理解する考え方です。
論理的思考力を習得していると、自分の考えを相手にわかりやすく伝えられる他、物事の因果関係を理解して考えられるため、トラブルが発生した場合の原因を特定したり、問題を解決したりする能力も高いといえます。
管理職は部下や上長、クライアント、関係者などと関わる場面が多く、それらの人に自分の考え方や方向性を正しく伝えなければなりません。論理的思考力が高ければ、同じニュアンスで物事を伝えられるため、仕事をスムーズに進められます。
企業で管理職候補を育成する場合、以下の流れに沿って育成することが重要です。
管理職候補の育成は、目的や理想像を明確にすることから始めます。
管理職に何が求められているのか、どのようなスキルが必要になるのかをはっきりさせることで、育成方針や育成方法を具体化できるためです。
育成する目的がないままでは、管理職候補を選抜したり、どのように育成するかを決めたりするのは難しくなります。
企業の戦略やビジョンを参考に、どのような管理職を育成したいのか考えましょう。
次に、実際に育成する管理職候補を選抜します。
社内公募や上長からの推薦、人事評価を参考にした判断、あっせん、選抜者サイドによる発掘など、さまざまな選抜方法があります。
それぞれの企業に合った方法で育成する人材を選びましょう。
管理職候補を選抜したら、育成計画を立案します。
外部機関を利用した研修や訓練を実施したり、自社や他社の経営者からの談話を聞いたり、実際の事業の責任者へ異動したりするなど、さまざまな育成方法があります。
育てたい方向に見合った育成方法を選択しましょう。
育成計画が決まれば、実際に育成するフェーズへと移行します。
候補者に研修や訓練、セミナーへ参加させたり、実践的な教育でマネジメント経験を積ませたりしましょう。
研修や訓練が終了した後は、管理職候補者へのフォローを行います。研修内容を振り返るフォローアップ研修を実施すれば、研修内容を定着させやすくなるでしょう。
また、研修後にスキルテストやヒアリングを実施して、研修の効果を測定することも大切です。効果が薄い場合は育成計画の見直しを検討した方がいいケースもあります。
管理職候補を育成するポイントとして、以下の4つが挙げられます。
管理者候補を育成する場合は、どのような管理者を目指すべきか理解してもらうことが重要です。
期待されている行動や役割を候補者に説明し、候補者が理解してから育成計画を実践しましょう。
また管理職候補に役割や動き方を理解させるには、OJTで管理職の仕事を代行してもらい、実際に体験する方法が有効です。ただし、代行が難しい場合は、疑似体験によって役割を示す方法もあります。
管理職候補を育成する場合は、企業内の管理職を見本として示すことも大切です。
マネジメントスキルが高いリーダーや、人材育成に長けた人をロールモデルとして示せば、どんな管理職を目指すのかが理解しやすく、育成の目標や方向性を設定しやすくなります。
また、見本となった人物がいれば、候補者は自分が習得すべきスキルを把握しやすくなるでしょう。
管理職候補を育成する場合は、候補者の強みと弱みを自覚させることが重要です。
管理職候補を評価する手段として、いくつかのシミュレーションを実施してマネジメント能力を評価するアセスメント研修というものがあります。
アセスメント研修を実施すれば、管理職に必要なスキルに対して、候補者の現状のスキルを把握できるため、得意なことや足りないスキルを明確にできます。
今後の育成における目標がわかりやすくなる他、管理職候補者のモチベーションにつながる可能性もあるため、企業側・本人を含め、候補者の現状は把握しておきましょう。
管理職候補を育成する場合は、挑戦的な経験を積ませることを意識しましょう。
管理職候補を教育する場合、テキストや動画、セミナーによる学習や研修を利用するケースが多くあります。しかし、実践でしか養えないスキルも多い点から、現場での経験も重要といえます。
意図的に他部署へ異動させるなど、管理職としての職務を実行できるチャンスを与えられるよう調整してみましょう。
管理職候補の育成方法にはさまざまなものがありますが、民間の研修サービスを活用して、管理職に必要な知識やスキルを習得する方法もあります。
ここでは、管理職候補の育成に活用できる3つの研修サービスを紹介します。
講師派遣型研修事業を展開する株式会社インソースでは、管理職候補者向けの研修サービスを提供しています。
職場のメンバーを指導・育成・鼓舞しながら、業務を推進するリーダーになるためのスキルを習得できるプログラムで、具体的には管理職補佐・後輩育成・業務推進などを円滑に行うために必要なスキルを学びます。
上記の研修プログラム以外にも、女性管理職や中級管理職、上級管理職などを育成する研修も実施しており、必要に応じてさまざまな研修を活用できます。
参考:insource|管理職候補者向け研修~リーダーの役割と必要なスキル編(1日間)
人材サービス大手のマイナビグループ傘下のマイナビ研修サービスでは、管理職候補者や新任管理職、現任管理職を対象にした、チームとして成果を出すためのスキルを学べる研修サービスを提供しています。
組織の理念や目標をチームへ浸透させることや業務マネジメント、リスクマネジメント、チームの活性化、部下の育成などについて学ぶことで、チームで成果を挙げるという意識を持てるようになるプログラムとなっています。
企業としては生産性や業績の向上を期待でき、管理職にとってはチーム目標の達成や、部下の成長によってマネジメント業務に集中できるようになるなど、さまざまなメリットが期待できる研修です。
人事・組織コンサルティングや人材開発事業などを展開する株式会社NEW ONEでは、管理職候補や現職の管理職などを対象にした新任管理職研修サービスを提供しています。
プレイヤーから管理職への意識転換を図り、管理職として求められるマネジメント方法や役割を理解することを目的にした研修となっています。
研修期間が長く、初日のキックオフミーティングの後はマネジメントを実践する期間が約1ヶ月半設けられているのが特徴です。その後、1日のフォローアップを挟んで再度1ヶ月半の実践研修を行います。
職場でのマネジメントを実践・体感することで、管理職に昇格してから最初の3ヶ月で求められる役割の基準が理解でき、スムーズに管理職へと移行できます。
参考:90日で成果を出すマネジャーへ 新任管理職研修 | 企業研修サービス | 株式会社NEWONE
管理職候補の育成は欠かせない人材戦略であるものの、簡単にはいかないものです。まずは自社が求める管理職像や候補者の選抜基準を明確にすることから始まるべきでしょう。管理職候補を育成する手順やポイント、活用できるサービスについて把握しておくことも重要です。
本記事を参考に、企業が将来存続できるような管理職候補の育成に取り組みましょう。
リスキリングナビでは、本記事の他にも管理職や幹部、経営人材についてのコラムを掲載しています。ぜひ合わせてご覧ください。
管理職の役割とは?求められるスキル・なってはいけない人の特徴を解説 | リスキリングナビ
管理職のあるべき姿とは?求められる能力やスキルの育成方法 | リスキリングナビ (reskilling-navi.com)
経営人材育成の重要性を解説!必要なスキルや課題とは? | リスキリングナビ