現代ビジネスにおいて人材育成は、企業の成功に不可欠な要素となっています。
しかし多くの企業は、人材育成の取り組みが「うまくいかない」という現実に直面しています。
これを乗り越えるためには、人材育成計画を慎重に策定し正確に実行するとともに、継続的な改善への取り組みが重要です。
この記事では、人材育成が期待通りに進まない場合に生じる問題と原因を整理しつつ、人材育成計画の策定と実施における「うまくいかない」を回避するためのポイントを確認します。
さらに、「うまくいかない」状態からいち早く脱するための、問題特定と改善方法についても考察します。
この記事が、人材育成に関する課題に直面する経営者や人事担当者にとって、より強固な企業基盤を構築するための一助となることを願っています。
目次
ここでは、人材育成に課題を感じている企業の実態を確認し、育成の取り組みが期待通りに進まない場合の影響を整理します。
東京商工会議所の2021年の調査からは、人材育成に課題を感じる企業の現状が浮かび上がってきます。
参考:企業における 採用・人材育成・教育支援に 関するアンケート調査結果|東京商工会議所
大企業では全て、中小企業では87%の企業が、何らかの人材育成の取り組みを行っています。しかし、その対象は非管理職の「新入社員層」「若手層」および「中堅層」が90%以上で、管理職向けの研修は十分だとはいえない状況です。
企業における 採用・人材育成・教育支援に 関するアンケート調査結果|東京商工会議所(一部、加工して作成)
また、大企業・中小企業の両方で「上長等の育成能力や指導意識の不足」と「業務の多忙による時間の不足」が主な課題として挙げられています。中小企業では、「計画的・体系的な育成の欠如」は45%の企業で問題となっており、「人材育成のノウハウがない」と捉える企業も29%に上っています。
出典:企業における 採用・人材育成・教育支援に 関するアンケート調査結果|東京商工会議所
人材育成がうまくいかなことは、従業員の士気やモチベーションの低下を引き起こし、企業のさまざまな側面に悪影響を及ぼします
効果的な人材育成が行われないと、従業員は自分のスキルが十分に評価されていないと感じます。これは、仕事の満足度低下や職場全体の士気の低下につながります。
適切な研修やスキル開発の機会が不足すると、従業員は効率的に業務を遂行する能力を獲得できません。生産性の低下や業務の遅延のリスクを高めます。
自身の成長やキャリア構築の機会が見出せない従業員は、他のチャンスを求めて離職する確率が高まります。高い離職率と人材の流出は、企業にとって費用と時間の両面で大きな負担となります。
スキルや知識の不足は、革新的なアイデアやビジネスの機会を見逃す原因になります。企業の成長機会の逸失にもつながりかねません。
人材育成がうまくいっておらず、支援が不足していると感じた従業員は、企業や経営陣に対して不安と疑念を抱くようになります。
特定の業界や職種では、法的要件を満たすために適切な人材育成が不可欠です。企業が必要な研修や認定プログラムを提供しない場合、法的な問題や規制違反のリスクに直面する可能性があります。
人材育成の取り組みがうまくいかない理由は多岐にわたります。以下に、一般的な問題点とその解決策を整理します。
人材育成プログラムが明確な目標や計画を欠いている場合、成果につながりにくくなります。
企業の戦略的目標と整合する具体的な学習目標を設定し、それに基づいて人材育成計画の策定を行います。
時間的、財政的リソースが不足している場合、人材育成プログラムは効果を発揮しにくくなります。
人材育成に必要なリソースを確保するように努めましょう。
特に時間的な余裕の確保は、従業員の不安を軽減し、成功の確率を高めます。
従業員がキャリア開発に対してモチベーションを感じない場合、学習への参加意欲が低下してしまいます。
従業員の興味や目標に合わせた育成プログラムを提供し、自己成長への動機付けを行っていく必要があります。
学習の進捗や成果に対する定期的なフィードバックがないと、従業員は自分の進歩を把握しにくくなってしまいます。
定期的なフィードバックと進捗評価を行い、従業員が自身の成長を実感できるような体制を整えます。
学んだ知識やスキルが実務に活かされない場合、従業員は学習の意義を感じにくくなります。
また、継続的な学習機会の提供がないと、学んだ内容が忘れ去られてしまう場合もあります。
教育や研修で習得した内容を実務にどのように適用できるかを具体的に示し、定期的に実践する機会を提供します。
繰り返し学習を促進するため活動を組み込み、従業員が学びを定着させられるようにしましょう。
人材育成計画が「うまくいかない」状態を回避し成功に導くためには、戦略的で総合的なアプローチが必要です。
以下に、効果的な人材育成計画策定のヒントを整理します。
戦略的かつ具体的な目標設定により、人材育成計画はより効果的に、かつ企業全体の目標達成に貢献するものとなります。
計画策定にあたっては、まずは企業の長期的なビジョンや目指すべき方向性を理解し、それに基づいて具体的な人材育成の目標を設定しましょう。このとき、単に目標を設定するだけでなく、具体的な成果指標(KPI)として設定することも重要です。
たとえば、特定のスキルや知識の向上、業務効率の改善、従業員のエンゲージメントの向上など、具体的な数値や期限を設けて目標を測定可能にすると良いでしょう。
効果的な人材育成計画は、企業の特定のニーズと従業員個々のキャリア目標に合わせてカスタマイズされるべきです。
これには、従業員の現在のスキルセット、経験、および職務からの要求の詳細な分析と、それに基づいた個別の研修の提供が含まれます。
たとえば、新入社員には基本的なビジネススキルの研修を、経験豊富な管理職にはリーダーシップと戦略的思考の研修を行うなどが考えられます。従業員の個人的な興味やキャリア志向を考慮に入れられれば、よりモチベーションは高まり、効果的な学習結果が得られます。
人材育成計画は、従業員の具体的な職務内容と密接に結びついている必要があります。
従業員が業務で直面する実際の課題や業界特有のスキルを反映した教育プログラムが開発できれば、学びを実践に活かしやすくなるため、従業員自身が育成の重要性を感じやすくなります。
信頼と尊重を基盤にした人材育成計画は、企業全体の成長と発展にとって重要な役割を果たします。
信頼と尊重に基づいた環境では、従業員は自らの意見やアイデアを自由に表現し、積極的に学習に取り組むようになります。また、従業員が互いを尊重し合い、協力的な関係を築くことで、チーム全体の生産性や創造性が向上します。
データは、従業員の能力開発を効果的かつ効率的に進めるための強力なツールです。
計画は、従業員のパフォーマンス評価などの客観的なデータを基に、個々のスキルギャップに対応させるように策定しましょう。効果の定期的な評価や、必要に応じた調整も重要です。
人材育成計画を成功に導くためには、計画の実施段階で効果的なアプローチが必要です。
学びを業務に適用する機会により、従業員は理解を深め、知識を実践的なものに変換できます。
学習した内容を実際に業務で使うと、従業員はその学習に対してより強い関心を持ち、さらに積極的に学習に取り組むようになります。実務への直接的な応用は、従業員のモチベーションを高め、学んだスキルや知識を定着させる手段です。
従業員からのフィードバックは、進捗の確認、問題の特定、および必要な支援の提供のために必要です。また、従業員へのフィードバックは、モチベーションを高め、改善の機会を提供します。
学習成果を共有し達成を祝うことで、学習者は自分の努力と成長が認められていると感じます。学びの共有は、成長を促進する文化の土台となり、従業員および経営陣の理解と支持にもつながります。
企業や業界が直面する変化に対応するためには、人材育成計画も進化させ続ける必要があります。継続的な改善は、時代や技術、および業務ニーズの変化に対応するうえで重要です。
テクノロジーの活用は、従業員にとっても企業にとってもコスト効率の良い手段です。
従業員は場所や時間、学習スタイルを選択できるため、自分のペースで学習できます。デジタルツールを使った教育は、従来型教育に比べて安価であり、評価も確認しやすくなる点で、企業にもメリットがあります。
ここからは、人材育成の問題を早期に特定する方法と、改善方法に焦点を当てます。
人材育成の取り組みがうまくいっているかどうかを判断するためには、効果測定が不可欠です。
効果測定により、研修が従業員のスキル向上やパフォーマンス改善にどのように影響しているかを客観的に評価できます。
また、効果測定は、どのような研修が効果を発揮するかを判断するうえでも有効です。
以下に、人材育成を評価するための主要な方法を紹介します。
育成プログラムの効果を総合的に把握するためには、定量データと定性データを組み合わせることが重要です。
方 法 | 内 容 |
---|---|
パフォーマンス評価 | 従業員の業務成果や目標達成度を定期的に評価し、研修の影響を測定する。
- 業績指標(KPIs): 売上目標達成率、新規顧客獲得数、プロジェクト完了 率、新規顧客獲得数、従業員の離職率など。 - 品質指標: 時間当たりの生産量、製品の不良率(製造業)、顧客満足度、 クレームの数、顧客からのフィードバック(サービス業)など - 効率指標: タスク完了までの時間、サービス提供量、コスト削減率など |
自己評価とピア評価 | 従業員自身(自己評価)や同僚による評価(ピア評価)を実施し、研修の効果 やスキルの向上を客観的に確認する。 |
フィードバックとアンケート | 研修後に従業員からのフィードバックやアンケートを収集し、プログラムの質 や効果を評価する |
行動変容の観察 | 研修後、従業員の行動や態度の変化を観察し、研修が実際の業務行動にどのよ うな影響を及ぼしているかを評価する。 |
ビジネス成果との関連 | 企業全体の目標達成にどのように貢献しているかを分析する。企業業績、顧客 満足度の向上、生産性向上が含まれる。 |
人材育成計画が成果を上げていない場合は、以下の改善策を検討しましょう。
改善を試みる際は、小さな修正や改善からはじめることが大事です。たとえば、研修内容の微調整、学習方法の小規模な変更、フィードバックプロセスの改善などから始めるのが良いでしょう。
ステップ | 改善の内容 |
---|---|
1. 問題点の特定 | 具体的な問題点や課題を特定し、それが発生する原因 を分析する。 |
2. アプローチの見直し | 学習方法、コンテンツ、スケジュールの見直しを行 い、従業員に適したアプローチを採用する。 |
3 リソースの追加 | 必要に応じてリソースやサポートを追加する(個別指 導、学習教材等)。 |
4. コミュニケーションの強化 | 従業員と定期的に対話し、彼らのニーズや懸念をより 深く理解する。 |
5. 継続的なモニタリングと評価 | 改善策を実施した後も、継続的なモニタリングと評価 を行い、必要に応じてさらなる調整を行う。 |
この記事では、企業が人材育成を実施するにあたって直面する、「うまくいかない」という課題に焦点を当てました。
人材育成が期待通りに進まない場合に生じる問題と原因、改善のポイントを確認したうえで、人材育成計画の策定、および実施におけるポイントを整理しました。
人材育成は、策定も実施も難易度が高く、環境変化や従業員の反応に合わせた調整が必要な「繊細な取り組み」です。
残念ながら、どんな企業も「うまくいかない」状況を完全に避けるのは不可能です。しかし、企業や従業員に適した計画を策定し、継続的に細やかな改善を加えることで、大きな失敗を回避できます。
本記事を参考に、貴社ならではの人材育成計画を策定・実行し、企業基盤の強化につなげていただければ幸いです。
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