クレドとは、組織全体で実践できる具体的な行動指針です。効果的なクレド設定は従業員の倫理観やコンプライアンスへの意識の向上が期待できます。しかし、クレドを導入したものの、失敗してしまう場合が多いのも事実です。
今回はクレド導入の失敗例や、導入成功のポイントについて解説します。また、クレドを導入した事例も紹介します。
目次
クレドとは、ビジネスシーンにおける行動指針です。従業員がどのように行動するべきかを示したのもので、業務中の判断の参考になるものです。
クレドは組織全体で設定されるものであり、部署内やプロジェクトなどで設定される行動指針とは異なります。
クレドが重要視されるようになったのは、企業の不祥事が多発していることが影響しています。
従業員による問題行動がインターネット上で拡散され、不買運動や抗議活動に発展するケースもよく見られます。
このような事態に陥るのを防ぐためにも、企業や従業員の倫理観が重視されるようになっており、ガイドラインとしてクレドを設定するケースが増加しているのです。
クレドによって、従業員のモラル向上やコンプライアンスの遵守を期待できるほか、企業の信条を普及させることができます。
また、企業を取り巻く環境の変化が大きく、従業員がどのように動くべきか判断しづらくなっている状況に対して、クレドを策定して価値観を共有する場合もあります。
クレドは経営理念や企業理念と混同される場合があります。
しかし、クレドや経営理念、企業理念はそれぞれ明確に異なります。経営理念とは、経営者の信条を表すものであり、企業理念は経営理念をもとに企業の価値観を表明するものです。
そして、これらを実践するためのガイドラインとして示されるのがクレドです。
また、経営理念や企業理念は変更されることがほとんどありませんが、クレドは時代や社会の変化・動きに応じて変化するという点も理解しておきましょう。
クレドはとにかく策定すればいいわけではありません。実際にクレドを作成したものの、失敗してしまった事例がいくつもあります。
ここでは、クレド導入がうまくいかなかった事例を紹介します。
1つめは、クレドを取り入れる理由や目的が明確でないケースです。
特に、他社がクレドを採用しているからという理由で導入を目指した場合、失敗する可能性が高いでしょう。
クレドを策定する場合、明確な目的や理由が必要です。目的や理由の一例は次のとおりです。
このような目的や理由があり、それに合わせたクレドを策定することが重要です。また、クレドを従業員に提示する場合、策定した目的・理由を説明しましょう。
2つめは、経営陣だけでクレドを策定した場合です。
策定したクレドが、従業員や組織に受け入れられない場合があるからです。
組織に属するすべての人のガイドラインにするためには、組織全体での議論と理解が必要不可欠です。
3つめはクレドを組織に普及させる努力を怠ったケースです。
クレドを普及させる時間を取らないと、クレドが策定されたことを従業員が知らない、またはクレドの存在を知っているが内容を把握していない、という状況が生まれやすくなります。
クレドは策定だけではなく、認知や普及も重要と理解しておくべきです。
4つめは、策定したクレドの内容に問題があり失敗するケースです。
たとえば、実際にどのような行動を取ればいいのかわからない、クレドからイメージする行動が一致しない、といったケースが考えられます。
わかりやすいクレドを策定するには、事例を提示するなどの対策を講じることが大切です。
5つめは、クレドを導入した後の成果を組織で把握したり、共有したりできていないケースです。
クレドが成果を挙げるまでには時間がかかるため、クレド策定に意味がない、または成果が上がっていないと判断される場合があります。
クレドの採用に組織の一部が疑問を持っている状況では、組織の一体感を生み出すことができず、クレド採用が成功しにくくなってしまいます。
クレドを採用した後に大切になるのは、進捗状況や成果の把握・共有です。組織に良い影響を生んでいることを共有できれば、クレドの策定は成功に近づいていると考えていいでしょう。
クレドは、組織全体の意識や行動が変化してはじめて導入が成功したといえます。ここでは、クレド導入を成功させるためのポイントを紹介します。
クレドの作成は、従業員全体で議論することが成功の鍵となります。
クレドは、組織に属するすべての人の行動指針となるためです。
クレドを作成する場合は、さまざまな部署の代表者や役職者を集めて、組織のあるべき姿について広く意見を求めることから始めます。
その際、企業理念を深掘りしていきながら、組織の果たすべき役割や方向性などを議論していきましょう。
クレドは、読むだけで従業員が行動に移せるものにしなければなりません。
そもそもクレドとは、わかりやすい言葉で示された行動指針です。読んでも内容があやふやなものや、従業員が行動に移しにくいものは、クレドとは呼べないでしょう。
クレドを策定する場合は、行動に移しやすい言葉選びを意識しましょう。
クレドは作成するだけではなく、組織全体で理解・共有する時間を作ることが大切です。
クレドの作成と平行して、考え方の共有を目的にした集会を開いたり、経営者の想いを共有したりして、クレドについて理解してもらうことを意識しましょう。
また、クレドカードを配布して従業員がいつでも見返せるようにしたり、朝礼時にクレドを復唱したりして、周知・普及させる努力を継続していくと良いでしょう。
クレドを理解し、実際に行動した人を評価する仕組みを作ることも重要です。
実際の行動を評価する体制ができれば、クレドはより浸透しやすくなります。たとえば、社内SNSを利用したり、従業員同士で行動を評価できる仕組みを整えたりすれば、従業員の意識改革やモチベーションアップにつながる可能性があります。
クレドを身近に感じられるようにし、実践しやすい環境の整備を意識しましょう。
最後に、クレドを導入して成功した企業の事例を紹介します。
世界最大のヘルスケアカンパニーであるジョンソン・エンド・ジョンソンでは、「我が信条」と題してクレドを策定しています。
顧客や社員、地域社会、株主などの利害関係者に対する責任について記載されたもので、策定されてから60年以上が経過しながらも機能し続けているクレドです。
入社時にはクレドについて学ぶオリエンテーションが実施されるほか、会社の手帳にクレドが記載されていたり、オフィスに張り出されたりするなど、従業員がクレドを意識しやすい環境となっているのも特徴的です。
また、クレドの実践具合やクレドに対する考えが社内で調査され、人事評価の項目に加えられているなどからも、組織全体でのクレドに対する取り組みが浸透していることがうかがえます。
参考:我が信条(Our Credo)|ジョンソン・エンド・ジョンソン
冷凍食品業界大手のニチレイフーズでは、「ハミダス」(とらわれず、明るく)というモットーに加え、クレドとして5つの行動指針を策定しています。
クレドでは、倫理観や食と生活への取り組み、多様性、丁寧なものづくり、成長について提示されています。
また、自分の担当領域を超えて、自発的に取り組む活動として「ハミダス活動」を推進しており、公式サイト内で行動事例を紹介しています。
ハミダス活動は顧客や社会に対する食育活動や環境活動、社会貢献活動に加えて、従業員のためにも行われているもので、ビジョンの浸透や風通しの良い職場環境の構築に良い影響を与えています。
明確な目的に沿ったクレドを策定し、組織に浸透させられれば、従業員の考え方や行動を良い方向に変化させられます。実際にクレドを策定して、従業員が行動しやすくなった事例もあります。
組織の一体感を高めるために、クレド策定を検討してみてはいかがでしょうか。
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