目次
人的資本経営とは、従業員を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで中長期的な企業価値向上につなげる経営手法です。従来の人事管理とは異なり、一人ひとりのスキルや知識、経験を将来の成長への投資として戦略的に育成・活用し、特にDXや事業変革に対応したリスキリングを通じて従業員の能力を発展させていくのが特徴です。
この考え方は大企業で先行して注目されましたが、実は中小企業にこそ大きなメリットがあります。従業員100人規模の企業では、一人ひとりの成長が企業全体の競争力に直結するからです。優秀な人材を確保・育成し、その能力を最大化できれば、大企業との差別化や競争優位の確立が期待できます。
経済産業省も「人的資本経営は中小企業の未来を創る上で重要」として、中小企業が「人材」を「人財」に変える経営への支援を積極的に進めています。人材不足が深刻化する中、人への投資姿勢を明確に示すことで、優秀な人材の獲得や定着率向上にもつながるでしょう。
政府は人的資本経営を重要政策として位置づけ、企業の人材投資を後押しする環境整備を進めています。2020年の「人材版伊藤レポート」から始まり、2022年には「人への投資」が骨太方針に明記されました。
特に重要なのが、2022年に公表された「人的資本可視化指針」です。これは企業が自社の人材への取組を分かりやすく開示するためのガイドラインで、上場企業には2023年から情報開示が義務化されています。現在は大企業が対象ですが、今後は中小企業も取引先や金融機関から同様の開示を求められる可能性が高まっています。
この流れは国際的な動向とも連動しており、人的資本情報開示のグローバル基準「ISO30414」では、従業員の多様性、離職率、研修投資額、生産性など具体的な指標での開示が推奨されています。つまり中小企業も、人材への取組を数値で「見える化」し、対外的に評価される時代になってきたということです。
政府は「人への投資促進」を重要政策として位置づけ、税制優遇や助成金の創設・強化を進めています。中小企業が積極的に人材投資に取り組めるよう、以下のような代表的な制度が用意されています。
厚生労働省管轄の従業員訓練支援制度です。企業内で計画的な人材育成やリスキリング研修を実施した際、研修費用や受講中の賃金の一部について助成を受けられます。特にデジタルスキルの習得やDX人材育成を目的としたリスキリングプログラムでは、中小企業の場合、研修費用の75%が補助され、研修中の賃金についても1時間あたり1,000円の助成が受けられます。
サブスクリプション型研修、IT人材育成訓練、大学院での学び直し支援など多彩なメニューが対象となっており、実際にIT企業では本助成金を活用してプロジェクトマネージャー資格取得研修を実施し、助成金24万円受給の支給を受けた事例があります。資格取得後、その社員は管理職へ登用されるなど、スキル向上と人材活用の両面で成果を上げています。
中小企業の生産性向上と賃上げを同時に支援する制度です。設備導入や業務プロセス改善、人材育成研修など生産性向上の取組みを行い、事業場内の最低賃金を一定額引き上げた事業主に対して、投資費用の3/4~4/5が助成されます。人材育成による生産性向上と処遇改善を両立しながら、費用負担を軽減できる魅力的な制度です。
人的資本経営そのものに対する明示的な「加点項目」が全ての補助金で用意されているわけではありませんが、人的資本経営に積極的な企業は結果的に補助金・助成金を活用しやすい傾向があります。
その理由は、政府の支援制度が重視している評価ポイントと人的資本経営の方向性が合致していることです。多くの補助金・助成金は、環境・DX・地方創生などの成長分野への投資、事業再構築、新分野展開、人材育成や賃上げなど、「成長と分配の好循環」における重点項目を優先採択する傾向があります。
人的資本経営に取り組む企業は日頃から教育訓練や処遇改善に力を入れているため、そうした条件を満たしやすく、結果的に採択率が高まるでしょう。賃上げを行った企業には税制上の優遇も用意されており、補助金と組み合わせることで財務面のメリットが一層大きくなります。
人的資本経営は一朝一夕に成果が出るものではありませんが、公的支援を上手に組み合わせることで中小企業でも着実に推進できます。
まずは自社の人材課題を整理し、どのような投資が必要かを明確にすることから始めましょう。次に、その課題解決に活用できる補助金・助成金を調査し、要件や申請時期を確認します。制度によっては計画的な準備が必要なものもあるため、早めの情報収集と準備が重要です。
人に投資し、人が育ち、その人材が企業の成長を導く——この好循環を回すために、国や自治体の支援策を積極的に活用することが、これからの時代に求められる賢明な経営判断といえるでしょう。リスキリングと補助金を組み合わせた人的資本経営への第一歩を、今こそ踏み出してみませんか。
「どのリスキリング・研修が助成対象になるのか分からない」
「賃上げや評価制度と助成金要件の整合をどう取ればよいか悩んでいる」
「申請から実績報告までの事務負担を最小化したい」
――そんなお悩みは、VibesUpの無料相談にお任せください。
まずはお気軽にご相談ください。
貴社に最適な「人的資本経営×補助金・助成金」活用プランをご提案します。