近年、ITスキルを持つ人材が不足しておりリスキリングが注目されています。日本では2030年に最大80万人ほどIT人材が不足すると予想されているため、IT人材の価値は今後ますます上がっていくでしょう。
この記事では、リスキリングでおすすめなITスキルや資格、スクールについてご紹介していきます。
目次
経済産業省によれば、新しい職業に就くため、または現職で必要とされるスキルの大きな変化に適応するために、必要なスキルを獲得したり、獲得させたりすることが「リスキリング」の定義となっています。
ただし、近年ではデジタル化によって誕生する新しい職業や、これまでとは仕事の進め方が大きく変化すると思われる職業に就くために、スキルを習得することをリスキリングと呼ぶケースが多いようです。
リスキリングは、今後も職業で価値創出し続けられるために求められるスキルを学ぶことで、個人の関心に基づく学び直しや、現職を離れて新たなことを学ぶリカレント教育とは明確に異なります。
リスキリングが注目されている理由の1つが、世界経済会議(ダボス会議)で2018年から3年連続で行われたリスキリングに関するセッションです。
このセッションにおいて、第4次産業革命への対応を目的に、2030年までに全世界で10億人をリスキリングすると宣言されたことから、リスキリングに対する注目度が一気にアップしました。
2023年現在の日本では、企業によるDX推進が促進している状況にあり、DX時代の人材戦略としてリスキリングが重要視されている他、「リスキリングによってDX推進に対応できる人材を自社で確保できる」「生産性向上によって賃上げが実現される」など、さまざまな可能性を秘めている点も、リスキリングが注目される理由となっています。
日本国内では、一部の大手企業でリスキリングが推進されています。ただし、多くの企業でリスキリングについて正しく理解されておらず、社会全体にリスキリングが浸透しているとは言い難い状況です。
また、リスキリングが日本企業にとって難しいと考えられている可能性があります。
たとえば、リスキリングで重要視されるスキルの可視化に対して、日本企業はスキルデータベースやスキルマップへの信頼が低い傾向にあり、うまく活用できない恐れがあります。
また、デジタル技術を業務レベルに高めるコンテンツを探すのに苦労したり、そもそもeラーニングや座学だけでスキルを習得できるのか疑問に感じていたりするケースもあるようです。
そのため、日本国内の多くの企業では、リスキリングへの取り組みに課題を抱えているといえるでしょう。
企業がリスキリングに取り組んだ場合、以下のようなメリットがあります。
リスキリングによって新しいスキルを習得すれば、これまでにない新しいアイデアが生まれやすくなります。
新規事業の創出や新しい商品・サービスの開発、売上の向上につながる他、事業のマンネリ化を防ぐ可能性もあります。
リスキリングへの取り組みは、時代の変化による経営悪化を防ぎ、企業が成長するきっかけになるでしょう。
リスキリングによって習得したデジタル技術を、DX推進に生かすことで業務効率化を実現しやすくなります。
既存業務を効率化できれば、新しい業務や重要な業務に時間を割ける他、残業代の削減にもつながるでしょう。
さらに俯瞰すれば人材不足の解消が実現する可能性があるなど、リスキリングには多くのメリットがあります。
リスキリングによって社内の従業員が新たなスキルを習得した場合、外部から人材を確保する必要がなくなり、人件費の削減効果が期待できます。
また、無駄な業務を省けるようになることで、経費削減につながるケースもあります。
企業で発生するさまざまなコストを削減できるのも、リスキリングに取り組むメリットの1つです。
従業員のリスキリングを企業が支援した場合、従業員のスキルだけでなく、企業に対するエンゲージメントがアップする可能性があります。
企業への愛着心や思い入れが高まれば、離職率が低下し人材が定着しやすくなります。業務へのモチベーションややりがいの向上も期待できます。
ここからは、ミドル・シニア世代に求められるITスキルをご紹介していきます。
ミドル・シニア世代でもITスキルは必要とされています。長年の業務経験とITスキルを組み合わせることで別視点からの新しい発見があったり、ITリテラシーの向上でチーム全体の業務効率化を図ることができます。
またITスキルは転職する際にも非常に大きな武器になります。ITスキルを身につけたいと考えている人は確認していきましょう。
ITパスポートはITスキルを代表する国家資格で、ITシステムに関する基礎的な知識を有していることを証明できます。
また、試験範囲も非常に幅広く、ITに関する知識を深められるでしょう。
試験会場は全国に存在しており基本的に毎週土曜日と日曜日に行われています。
MOSはWordやExcelといったMicrosoft office製品のスキルを有していることを証明する資格です。
試験はビジネスレベルとエキスパートレベルに分けられており、資格の取得を目指す人が多くいます。
ウェブデザイン技能検定は、ウェブデザインに関する知識や技術を有していることを証明する国家資格です。
ウェブデザイン技能検定は1~3級まであり、1級を合格した人には厚生労働大臣より合格証書が発行されます。
試験は年に4回実施されていますが、1級だけは年一回のみの実施となっています。
情報セキュリティマネジメントは、情報セキュリティに関する知識を有していることを証明する国家資格です。
同じ国家資格である情報処理技術試験の新しい領域として生み出されたのが情報セキュリティマネジメントであり、情報セキュリティのみならず情報管理や業務改善といった分野についても学べます。
参考:情報セキュリティマネジメント試験 | 試験情報 | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構
ウェブ解析士は、ウェブ解析をもとにマーケティング戦略を立てることができることを証明する資格です。
現代ではWeb広告も用いた宣伝が多く、その効果も大きくなってきています。
そのため、ウェブ解析士の資格はますます需要が高くなってくるでしょう。
ここからは、リスキリングでおすすめなITスキルをご紹介していきます。
ITスキルを習得したいと考えていてもどのスキルを身につければいいかわからない人も多いのではないでしょうか。そのような人には以下のITスキルをおすすめします。
基本情報技術者試験は、ITスキルのなかでも初級となる資格です。ITスキルの基礎的な知識や技術を身につけていることを証明できますので、IT分野で活躍したい人には資格の取得を強くおすすめします。
試験は春と秋の年に2回実施されており、日本全国で受験できます。合格率は例年20%ほどと非常に難関ですから、しっかりと学習して受験に臨みましょう。
参考:基本情報技術者試験 | 試験情報 | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構
応用情報技術者試験は、基本情報技術者試験の上位に位置する試験です。基本情報技術者試験よりもさらに深い知識と技術が必要とされますが、その分高いITスキルを身につけられます。基本的には基本情報技術者試験を合格した人が、次のステップとするのが応用情報技術者試験です。
試験は基本情報技術者試験と同様に春と秋の2回実施されており、全国で受験が可能です。合格率はやはり20%と非常に低いため、事前学習をしっかりと済ませて受験に挑みましょう。
参考:応用情報技術者試験 | 試験情報 | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構
プロジェクトマネージャ試験は、その名の通りプロジェクトを円滑に進めるために必要となる知識や実践力を測る国家試験です。IT分野のなかでは最も難関とされており、合格率も約10%ほどとさらに低くなります。試験は年一回実施され全国で受験できます。
参考:プロジェクトマネージャ試験 | 試験情報 | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構
システム監査技術者試験は、システムが正常に作動しているか点検・検証できるようにする試験です。ITエンジニアの知識だけではなく監査報告書といった資料を作成する能力も必要とされます。
また、問題点をわかりやすく共有できるコミュニケーション能力も必要とされるのが特徴です。
参考:システム監査技術者試験 | 試験情報 | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構
ネットワークスペシャリスト試験は、ネットワークに関する知識を身につけていることを証明するための試験です。しかし、実務的なスキルや知識の証明にはあまり向いていないため、他のネットワーク資格の取得もおすすめします。
参考:ネットワークスペシャリスト試験 | 試験情報 | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構
ITスキルを身につけたいと考えても効率的に学習しなければ効果はあまりありません。そのため、自分にあった学習方法やスクールを見つけることが重要です。
ここからは、ITスキルが身につく資格やスクールについてご紹介していきます。どのように学習したらいいのかわからない人は確認していきましょう。
MOSはExcelやWord、PowerPointといったMicrosoft officeのスキルがあることを証明する資格です。
試験は一般レベルと上級者レベルの2つがあります。自分にあったレベルを受験しましょう。
tech boostは、オンライン授業と対面授業どちらにも対応しており、実践形式で学習していくのが特徴です。受講期間は3ヶ月から選択することができ、1ヶ月単位で延長できます。
無料の説明会が実施されていますので、気になる人は無料説明会から参加することをおすすめします。
SAMURAI ENGINEERは、マンツーマンでの学習形式でカリキュラムを自分で組めるのが特徴です。
マンツーマンのためモチベーションが下がりにくく、わからないことがあってもすぐに質問できるのが最大の強みです。無料体験レッスンも実施しています。
まずは体験レッスンから参加してみるのも良いでしょう。
ここでは、従業員のITスキル強化をサポートした企業事例をいくつか紹介します。
大手電機メーカーの日立製作所では、2020年から全社員を対象にしたDX基礎教育を実施するためにLXP(学習体験プラットフォーム)を導入するなど、早くからリスキリングに取り組んできました。
東京・丸の内にある本社オフィス内にはボックス型のワークブースが設置されており、約17,000のオンライン講座を受講可能。強化したいスキルを登録することで、最適な教材をAIが提案してくれるため、効率的なリスキリングが可能となっています。
3,000人のデータサイエンティストが誕生し、2022年度末時点でデジタル人財が83,000人に達するなど、大きな成果を挙げることに成功しています。
参考:日本経済新聞|スキル底上げ、高まる組織力自発的学びで商機生む
参考:2万コースが無料で受けられる…日立製作所「業界最大の赤字→過去最高益」の背景に半端ないリスキリング投資
総合商社大手の丸紅では、デジタル人材育成の取り組みとして2020年から「丸紅デジタルチャレンジ」(通称:デジチャレ)を開始しています。
AIやデータサイエンスといった業務で活用可能なデジタル技術を具体的・技術的に理解させることを目的とした研修プログラムとなっており、研修ごとに提示されるビジネステーマに対して、受講者がモデリングやアルゴリズムをコーディングして課題の解決を目指します。
現在では簡易データ分析、データサイエンス、アプリケーションの3つのコースが用意されており、過去3年間で330人が受講したとのこと。実際の業務にも役立っている他、新たなビジネスチャンスにつながるなど、さまざまな効果を生み出しています。
参考:日本経済新聞|スキル底上げ、高まる組織力自発的学びで商機生む
参考:独立行政法人労働政策研究・研修機構デジタル技術に精通する専門人材を内製化して各部署で領域に沿ったデジタル課題解決を行う組織づくりを――丸紅の「デジタルチャレンジ」の取り組み
アメリカの大手ソフトウェア開発・販売会社のMicrosoftでは「Global Skills Initiative」と題したプログラムでリスキリングの機会を無償提供しました。
とはいえ、これは自社の従業員ではなく、新型コロナ感染症拡大に伴い発生した失業者2,500万人に向けて行われたことです。
Microsoftは2020年6月に無償でリスキリング講座の提供による失業者の再就職の支援を発表。現在でも同プログラムは実施されており、就労支援の他、新たにデジタルスキルを取得したい人や新卒学生など、幅広い人を対象にした全世界的なプログラムに進化しています。
参考:Microsoft新たにデジタルスキル取得を目指す方へ
参考:リクルートワークス研究所リスキリングとは-DX時代の人材戦略と世界の潮流-
この記事では、リスキリングでおすすめなITスキルや資格などをご紹介してきました。
IT人材はこれからますます貴重になり、多くの企業から求められるようになります。リスキリングを行いIT人材を育成すれば、新しい価値やサービスを創出できるようになるでしょう。
まだリスキリングを行っていない場合は積極的に実施していくことをおすすめします。
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