データサイエンティストに必要な3つのスキルセットとは?くわしく解説

公開日:2023.12.13 更新日:2023.12.14

会社のDX推進に欠かせないデータサイエンティストですが、具体的にどのようなスキルを備えている必要があるのでしょうか。今回は一般社団法人データサイエンティスト協会が公開している「データサイエンティストスキルチェックリストver5」の内容に則り、データサイエンティストに求められる3つのスキルセットを解説します。

データサイエンティストに必要な3つのスキルセットとは?

データサイエンティストには、大きく分けて「データサイエンス力」「データエンジニアリング力」「ビジネス力」の3種類のスキルが求められます。

データサイエンス力

データサイエンス力は、企業のビジネス課題に関連するデータを情報科学理論に基づいて分析し、課題解決につなげる能力です。企業が効率的にデータを活用できるかどうかはデータサイエンティストの解析能力に大きく左右されるため、データサイエンティストにとって要のスキルと言えます。

データエンジニアリング力

データエンジニアリング力は、データ分析に必要な情報を収集し、分析環境を設計・構築するスキルです。データサイエンスによって導いた仮説を検証するためには、データエンジニアリング力が必要不可欠です。

ビジネス力

ビジネス力は、論理的思考や組織マネジメントなど、事業を円滑に進めて利益を最大化するスキルです。データサイエンティストはビジネスアーキテクトやデザイナーなどとともに企業のDXをリードする人材であるため、一定以上のビジネス力が求められます。

データサイエンス力のスキルチェックリスト

一般社団法人データサイエンティスト協会が定めるデータサイエンス力のスキルチェックリストは「数学的理解」「科学的解析の基礎」など計10個のスキルカテゴリーに分類されています。

一般社団法人データサイエンティスト協会スキル定義委員会「2023年度スキル定義委員会活動報告 2023年度版スキルチェック&タスクリスト公開」を参考に編集部作成

ここでは、各カテゴリーで求められているデータサイエンス力の概要を簡単に解説します。

数学的理解

データサイエンティストには、線形代数や微分・積分、集合論などに関する数学の基礎知識が求められます。特に、ベクトルの内積や行列の積で線形式を表す方法や、確率密度関数から確率を求める方法は必須スキルとされています。

科学的解析の基礎

データサイエンティストには、ベイズの定理や尤度(ゆうど)関数など統計数理に関する基礎知識が求められます。また、さまざまな統計手法を使い分けてデータの偏り・ばらつき、分析結果の関連性・有意性などを正確に把握できる解析能力も必要です。

データの理解・検証

データサイエンティストは、データ分析の目的に対して適切かつ十分な量・質のデータがあるか確認し、複数のデータを俯瞰してデータの本質や変化を見極める力が必要です。また、データを集計・比較する切り口や分析結果の要因を検討するスキルも求められます。

データ準備

データサイエンティストには、標準誤差やサンプリングバイアスを理解したうえで標本の抽出方法を計画し、適切な直行表を選択できる力が求められます。また、外れ値や異常値を検出・除去・変換するデータクレンジングのスキルや、数値を標準化したりダミー変数へ変換したりするデータ加工のスキルも必要です。

データ可視化

データサイエンティストには、分析の目的に合わせて膨大なデータを視覚的にわかりやすくアウトプットする力が求められます。たとえば図表作成において適切な軸を選択したり、BIツールやスプレッドシートなどの図表化ツールを使い分けたりするスキルが必要です。

モデル化

データサイエンティストには、単回帰分析・重回帰分析のモデルを構築したり、データの精度を統計的に評価したりする能力が求められます。また、機械学習においてモデリング手法の選択やパラメータ設定、結果の評価などを適切に行えるスキルも重要です。

モデル利活用

データサイエンティストには、データの異常値を早期に検知・警告する仕組みをつくるスキルが求められます。また、ユーザー属性・アイテム属性などのデータを活用したレコメンド機能を実装するスキルも必要です。

非構造化データ処理

データサイエンティストには、テキストデータを効率的に解析する自然言語処理スキルや、画像処理を実装する技術が求められます。また、映像から画像を抽出したり映像内の物体をトラッキングしたりする映像認識技術や音声データを処理するスキルも必要です。

生成

データサイエンティストには、大規模言語モデルの種類や学習方法の違いを理解して適切に使い分けられる能力が求められます。また、画像生成モデルや大規模言語モデルを利用したオーディオ生成についても理解を深め、自社課題の解決に適した手法を選択できる力が必要です。

オペレーションズリサーチ

データサイエンティストには、マルコフ連鎖の特徴やデータ同化の概念を理解し、シミュレーションで起こりうる問題に対して対処法を考えられる能力が求められます。また、最適化のアルゴリズムを理解し、自社課題に合わせたモデリングができるスキルも必要です。

データエンジニアリング力のスキルチェックリスト

一般社団法人データサイエンティスト協会が定めるデータエンジニアリング力のスキルチェックリストでは、「環境構築」「プログラミング」など計10個のスキルカテゴリーに分類されています。

一般社団法人データサイエンティスト協会スキル定義委員会「2023年度スキル定義委員会活動報告 2023年度版スキルチェック&タスクリスト公開」を参考に編集部作成

ここでは、各カテゴリーで求められているデータエンジニアリング力の概要を簡単に解説します。

環境構築

データサイエンティストは、組織のデータ活用戦略や現場の業務プロセスを加味した分析システムの要件定義を行える必要があります。また、システム改修時のデータモデルの見直しや分析頻度が少ないサービスの削除など、成果を最大化しコストを最小化する環境構築も求められます。

データの収集〜共有(収集・構造・蓄積・加工・共有)

データサイエンティストには、分析に必要なデータを可能な限り収集し、ビジネスプロセスを理解したうえでデータフロー図やテーブル定義書を作成できるスキルが求められます。また、データストアサービスの選定やデータファイルのフィルタリング処理、サーバーから表計算ソフトへのデータ共有などにも対応できる必要があります。

プログラミング

データサイエンティストには、データ処理プログラムの設計・実装やテストケースの作成・実施などプログラミング基礎の習得が求められます。また、他サービスの分析機能や学習済み予測モデルをWeb APIで呼び出して活用するスキルや、構造化照会言語(SQL)を記述・実行するスキルなども必要です。

ITセキュリティ

データサイエンティストには、マルウェアによるリスクを理解し、ハッシュ化やマスキングなどセキュリティ保護の仕組みをシステムに適用できる能力が求められます。また、機密データの不正利用防止を目的に、データの暗号化や復号化にも対応できるスキルが必要です。

AIシステム運用

データサイエンティストには、機械学習プロセスの自動化を可能にするAutoMLを使いこなし、機械学習の開発と運用をスムーズに連携させるスキルが求められます。また、IT業務を効率化する運用手法であるAlOpsについても概要を理解し、障害を未然に防ぐシステムを設計できる必要があります。

生成AI

データサイエンティストには、生成AIの使用目的に合わせたプロンプトやAPIパラメーターの設定に対応できる必要があります。また、大規模言語モデルを利用したコーディングやテスト用ダミーデータの生成、ファインチューニングの実施・評価などのスキルも求められます。

ビジネス力のスキルチェックリスト

一般社団法人データサイエンティスト協会が定めるビジネス力のスキルチェックリストでは、「行動規範」「論理的思考」など計11個のスキルカテゴリーに分類されています。

一般社団法人データサイエンティスト協会スキル定義委員会「2023年度スキル定義委員会活動報告 2023年度版スキルチェック&タスクリスト公開」を参考に編集部作成

ここでは、各カテゴリーで求められているビジネス力の概要を簡単に解説します。

行動規範

データサイエンティストには、企業課題やデータ分析のゴールから逸れずに、粘り強く仮説検証を繰り返すビジネスマインドが求められます。また、データやAIの利活用に関する倫理・法整備の課題を理解したうえで、個人情報保護やデータの秘匿化などコンプライアンスを重視する姿勢も必要です。

論理的思考

データサイエンティストには、データや事象をグループに分けて構造化する能力や、分析結果の意味合いを言語化する能力が求められます。また、レポートやプレゼンテーションを通して他者に論理的に説明できるアウトプット力も必要です。

着想・デザイン

データサイエンティストには、新しいテクノロジーを応用したサービスを企画し、データ活用戦略を考える能力が求められます。特に、近年技術が急速に進歩しているAIについては、セキュリティや著作権など不確実な要素も多く存在するため、導入のリスクやコストについて多角的な視点で検討する必要があります。

課題の定義

データサイエンティストには、自分が担当する事業の課題を整理し、データ分析における優先順位や制約をふまえたうえで目標やタスクの設定を行う能力が求められます。課題を定義するためには、事業の市場規模や収益モデルについても理解を深めておく必要があります。

アプローチ設計

データサイエンティストには、分析に必要なデータへのアクセスを確保し、検証すべき項目を洗い出してプロジェクトの評価方法や成功基準などを設定する力が求められます。また、生成AIの活用において、大規模言語モデルのハルシネーション(事実に基づかない内容が生成される現象)を発見するアプローチも設計できる必要があります。

データ理解

データサイエンティストには、ビジネスの観点から仮説を持って統計データを解釈でき、分析結果の価値を判断できる能力が求められます。また、目盛の記載がないなど不適切なデータ表現に惑わされず、分析結果を正しく解釈できる力も必要です。

分析評価

データサイエンティストには、事業やプロジェクトの狙いに沿った分析結果が出たかどうか判断できる能力が求められます。分析が当初の目的を果たしていない場合は、問題を整理して検証プロセスの見直しや改善案を検討する必要があります。

事業への実装

データサイエンティストには、現場の負担や予算などを考慮しながら、実行可能な施策を考案し事業に実装するスキルが求められます。また、実装においては多くの従業員や専門家の協力が欠かせないため、さまざまな立場の人間を施策に巻き込めるコミュニケーション能力も必要です。

契約・権利保護

データサイエンティストは、一般的な契約の仕組みや生成データ・学習済みモデルの権利保護に必要な対応を理解しておく必要があります。また、生成物に対する責任の所在や機密データの扱い、品質保証などについて契約内容に漏れなくまとめられる能力も求められます。

PJマネジメント

データサイエンティストには、プロジェクトの予算やシステム環境などのリソースを最大限に活用しながら進捗を管理する能力が求められます。また、プロジェクトが計画どおりに進まない場合の対処法を検討したり、適切なタイミングで方針転換を判断する力も必要です。

組織マネジメント

データサイエンティストには、組織内におけるデータサイエンスチームの役割を明確にし、目標設定やタスク調整を行うスキルが求められます。また、チームメンバーのスキルや特性を理解し、チームの目標達成に向けて育成やナレッジの共有に取り組む姿勢も必要です。

データサイエンティストに求められるスキルを一覧表でチェックしたい場合は、一般社団法人データサイエンティスト協会が公開している「データサイエンティストスキルチェックリストver5」を確認してみましょう。

データサイエンティストに求められるスキルレベル

データサイエンティストと一口に言っても、組織内のポジションや経験によって必要とされるスキルレベルはさまざまです。

今回は一般社団法人データサイエンティスト協会が定めるレベル分類に基づき、どの程度のスキル習熟度が求められるのか解説します。

見習いレベル

見習いレベルのデータサイエンティストは、統計数理やデータ分析、機械学習などデータサイエンス領域の基礎知識を一通り習得している必要があります。また、上司の指示の下で基礎的な分析を実施できる能力も求められます。さらに、引き受けた業務を完遂する、結果をすみやかに報告するなどの基本的なビジネス力も必要です。

独り立ちレベル

独り立ちレベルのデータサイエンティストは、過去に取り組んだ経験がある分野の分析や基礎的な分析について、自律的に取り組めるレベルのデータサイエンス力が求められます。また、ビジネス要件定義や担当企画の進捗管理など、プロジェクトの一連の業務をこなせるビジネス力も必要です。

棟梁レベル

組織の分析プロジェクトの主軸を担う棟梁レベルのデータサイエンティストには、大量データの可視化や自然言語処理などの応用的なスキルを持っている必要があります。また、事業の目的や会社のインフラ環境を前提としたデータ戦略の検討、メンバー育成の体制づくりなど組織全体に影響を与えるレベルのビジネス力も求められます。

業界を代表するレベル

業界を代表するトップレベルのデータサイエンティストには、既存手法で解決できない課題へのアプローチや、高難易度の分析プロジェクトへの取り組みが求められます。また、産業課題の明確化、データ分析・AI技術を活用した市場全体のバリューチェーン創出など、産業全体への働きかけも期待されています。

データサイエンティストのスキルを向上させるには?

上記で解説したように、データサイエンティストにはデータサイエンスに関する専門スキルからマネジメントなどのビジネススキルまで多種多様なスキルが求められます。

そのためデータサイエンティストのスキルを向上させるためには、幅広いDX教育コンテンツや、データサイエンスに関する高い実践力を身に付けられる専門のカリキュラムが必要です。

たとえば、株式会社SIGNATEが提供するDX教育サービス「SIGNATE Cloud」は、100件を超えるDX関連講座・コースを収載し、データサイエンティスト育成に特化した専門的なプログラムがあります。また、人気講座「AI・データ活用スキル実践プログラム」はExcelなどによるデータ活用・分析スキルの習得が可能で、身近な業務課題を解決できる人材の育成につながります。
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まとめ

データサイエンティストには「データサイエンス力」「データエンジニアリング力」「ビジネス力」の3種類のスキルが求められます。組織内のポジションや役割によって必要なスキルレベルは変わりますが、データサイエンティストを育成するためには幅広い教育コンテンツと実践力を鍛える専門カリキュラムが重要になります。

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