キッチンカー開業を検討している方にとって、最初に大きな壁となるのが「初期費用」です。車両の購入や改造、調理機材の導入、営業許可の取得など、まとまった資金が必要になります。しかし、国や自治体が用意している補助金や助成金制度を上手に活用すれば、これらの初期費用を大きく抑えることが可能です。本記事では、キッチンカー開業に役立つ国の支援制度・地方自治体の補助金についてわかりやすく解説します。
目次
キッチンカーの開業には、以下のような費用が発生します。
・キッチンカー本体の購入・改造費(150〜300万円程度)
・調理機器や備品の購入費(20〜100万円程度)
・保健所などへの営業許可取得費用
・開業前の広告・販促費
・メニュー開発・試作費用
キッチンカーの開業には、車両の購入・改造費や設備導入、広告宣伝費などを含め、初期費用だけで300万円〜500万円程度かかるケースも珍しくありません。こうした費用の負担を軽減するには、補助金の活用が非常に有効であり、自己資金だけでは重く感じる出費も、補助金によって最大で費用の2/3まで支援を受けられる場合があります。
販路開拓や業務改善に取り組む小規模事業者を支援する補助金です。チラシの作成やホームページの制作、看板の設置、設備導入など、販促活動や効率化にかかる費用の一部を補助してくれます。
【概要】
【対象経費の例】
【ポイント】
・事業支援計画書の発行が必要。申請受付締切前に事務局への提出が必要。
・ウェブサイト関連費は交付申請額の1/4(最大 50 万円)が上限となる。
・1 件あたり100万円(税込)超の機械装置等の購入をする場合、価格の妥当性を確認するため、2者以上からの見積が必要。
中小企業や小規模事業者が、業務効率化や売上アップのためにITツール(POSレジ、会計ソフト、予約システムなど)を導入する際に、その費用の一部を国が補助する制度です。デジタル化を進めたい事業者におすすめです。
【概要】
【対象経費の例】
【ポイント】
・登録された「IT導入支援事業者」を通じてのみ申請が可能。製品も事前に認定されたものから選ぶ必要がある。
・インボイス枠を使えば補助率UP、電子帳簿保存や受発注・決済系のツールが対象。
・賃上げやインボイス対応で上限額150万円上乗せ。
参照:IT導入補助金2025
各都道府県や市町村では、創業支援・移住支援・地域活性化を目的とした独自の補助制度を設けています。以下に、2025年時点で確認できる主な制度を地域別にご紹介します。
都内で創業予定または創業5年未満の事業者を対象に、賃借料や広告費、人件費など創業初期の経費を助成する「創業助成事業」を実施しています。助成額は100万~400万円で、助成率は2/3です。
青森県東北町では、地域商業の活性化と持続可能な地域経済の構築を目的に、町内で創業・事業継続・事業承継を行う事業者に対し補助金を交付しています。事業所の新築・改修や厨房機器、空調、防災設備、キッチンカーなどの設備導入にかかる費用を対象に、最大300万円(税抜)の経費に対して、1/3以内・上限100万円までの補助金を交付しています。
名古屋市では、将来の成長が期待される企業の創業を後押しするため、創業時の経費の一部を助成しています。対象となるのは、従業員の賃金、事業所の整備費、広報・外注費などで、補助金の交付決定後に契約・支払いが行われる経費が対象です。特に従業員賃金は、1人あたり月36万円(日額1.8万円)を上限とし、プロジェクトに直接従事する者が対象となります。
久留米市では、市内の中小企業者によるキッチンカーでの移動販売を支援するため、車両購入・改造費や設備導入費に対し、最大30万円・補助率1/2で補助金を交付しています。対象は、ガス・水道の設置、冷蔵庫やシンクなど車内設備の購入・設置費などで、中古車も対象となりますが、改造費または設備導入費が伴うことが条件です。
自分の事業プランや地域で利用できる補助金を確認しましょう。商工会や自治体のHP、補助金検索ポータルサイトの活用が便利です。
補助金を申請する際には、「なぜキッチンカーを開業するのか」「どのようにして収益を上げるのか」といった事業の目的と収益化の計画を明確に示すことが求められます。具体的には、誰に何を売るのかという想定ターゲットと販売エリア、提供するメニューとその価格帯、さらには売上やコストの根拠を含めた収支計画まで、説得力のある内容にまとめることが重要です。
書類作成に不安がある場合は、行政書士・中小企業診断士・商工会の経営指導員などに相談するのがベストです。採択率を高めるアドバイスが得られます。
ほとんどの補助金は「交付決定前に支出した経費は対象外」となります。スケジュール管理を徹底しましょう。
補助金は開業費用の負担を大きく軽減できる有効な制度ですが、制度の仕組みを正しく理解しないまま申請・活用すると失敗につながるケースも少なくありません。以下によくある注意点と失敗例を整理しました。
補助金の多くは「事前着手禁止」のルールがあり、交付決定通知が届く前に契約・発注・支払いを行った経費は補助対象外とされます。
「先に車両だけ押さえた」「チラシの印刷だけ進めてしまった」といったケースで、せっかくの経費が全額自己負担になってしまうリスクがあります。
補助金を活用する際は、交付決定通知が発行される前に設備やサービスの発注・支払いを行うと補助対象外となるため、必ず交付決定通知が届くまでは一切の契約・支出を控えることが重要です。
また、申請から交付決定までには一定の期間を要するため、納期や開業スケジュールには十分な余裕を持って計画を立てることが成功の鍵となります。
補助金の審査では、「その取り組みが本当に実現可能なのか」「地域や経済にどう貢献するのか」が重視されます。曖昧な内容や実現性の低い計画は審査に通りません。
▼よくある失敗例
・「移動販売を始めたい」だけのざっくりとした目的
・数字(売上予測、コスト構成)が一切ない計画
・ターゲットや販売戦略が不明瞭
▼対策
・誰に何をどう売るか(ターゲット・商品・販路)を具体化
・専門家(商工会、中小企業診断士など)の助言を受けて計画をブラッシュアップ
・必ず数値(売上目標、コスト、利益見込)を入れる
補助金の申請には「書類準備に時間がかかる」「専門機関との調整が必要」など、見た目以上に準備が複雑なケースが多く、ギリギリの対応では間に合わないことがあります。
▼よくある失敗例
・提出直前にgBizID(電子申請ID)が未取得と判明
・必須書類(支援計画書、決算書類など)の準備に手間取り期限切れ
・申請書入力ミスで再提出となり、締切に間に合わず不備扱い
▼対策
・少なくとも申請締切の1ヶ月前には動き出す
・必要書類・提出先を一覧でまとめておく
・商工会やIT導入支援事業者と早めに打ち合わせ
補助金は、正しく活用すれば事業を大きく後押しする強力な支援策ですが、制度への理解が不十分だと不採択や補助金の受け取り不可といったリスクも伴います。成功のためには、事前の情報収集と専門家との連携を重視し、計画的に申請・運用を進めることが重要です。
キッチンカーは、少ない資本で始められる魅力的なビジネスですが、それでも初期費用や準備にはしっかりとした計画が必要です。そんな時に心強いのが、国や自治体が提供する補助金制度。中でも「小規模事業者持続化補助金」や各地域の創業支援制度は、キッチンカー開業にぴったりの支援策です。これらを上手に活用すれば、資金負担を抑えながら理想のスタートが切れます。夢をカタチにするために、補助金という強力な味方をぜひ活用しましょう。