組織風土が悪い会社の特徴とは?社員に与える影響や対策方法を紹介!

公開日:2024.01.26 更新日:2024.01.26

職場における組織風土は非常に重要な要素で、社員の働きやすさや仕事の効率に影響を与えかねません。

職場の雰囲気が悪ければ、作業の効率が落ち、結果的に企業成績にも悪影響を及ぼす可能性があるため、積極的に良い企業風土を維持することが推奨されます。

しかしながら、どうすれば職場の雰囲気は改善できるのか、どのような職場が理想的なのかと疑問に思う方も少なくないと思います。

そこで当記事では、職場の組織風土が悪化する原因と、それを改善し、より良い状態にするための具体的な対策方法について解説します。

職場の組織風土を改善し、働きやすさと仕事の効率を上げるための助けとしていただければ幸いです。

組織風土とは何か

組織風土とは、その組織が持つルールや価値観、行動基準といった共有された思考や行動のパターンを示す概念です。

組織風土は、視覚的に確認できる事柄から、言語化されていない信念や秩序に至るまで多岐にわたる要素が含まれています。組織内のメンバーのパフォーマンスや動機づけ、職場の雰囲気、人的資源の保持率、組織全体の成果などに影響を及ぼします。

組織風土が重要視されている理由

現代のビジネスシーンで組織風土が重要視されている理由の一つに、終身雇用制度の崩壊により企業と個人の関係性が大きく変化した点が挙げられます。終身雇用制度が当たり前だった頃は、企業側は人材の流出に頭を悩ませる必要がありませんでした。

2003年の派遣法改正により、製造業や医療業務への労働者派遣が認められ、企業の人件費削減政策が進行していきます。これにより、従業員が会社への忠誠心を持ち、企業から長期的な雇用をコミットされるという働き方とのズレが生じることになりました。

参考:改正労働者派遣法の概要-厚生労働省

さらに人材の流動化が顕著となった現代では、ただ単に人材を確保すれば良いというわけにはいきません。働き方改革、リモートワークの推進、ワークライフバランス、ハラスメント、情報セキュリティ、コンプライアンスなど、企業は複雑化するさまざまな課題への対応を迫られています。


一度獲得した人材を維持し続けるためにも、企業は山積する課題に適切に対処すると同時に組織風土を最優先で整備し、社員が働きやすい環境を作る必要があるのです。

ただ、組織風土は組織が持つ長年の成功、失敗経験から成り立っているため、短期間で変更しようとしてもうまくいかない可能性があります。たとえば、「失敗しないための慎重な風土」を「失敗を恐れずに挑戦する風土」に変えようとしても、すぐに結果が出るわけではありません。


新しい組織風土を醸成していくためには、企業は新たな成功や失敗の経験を重ねる必要があります。そのためにも、これまでにない挑戦的な意思決定や計画を立て、新たな経験を生み出すコミュニケーションが求められます。

組織風土が悪い職場の5つの特徴

組織風土が悪い職場には、以下のような特徴があらわれます。

社員同士のコミュニケーション不足が目立つ

社員間のコミュニケーション不足は、一人ひとりの業務理解やスキルに影響を及ぼし、結果的に組織全体の生産性を低下させてしまいます。情報共有が不十分で作業の遅延やミスが起こる、部署間や役職間の意思疎通が不足して業務がスムーズに進まないといったさまざまな問題が生じます。

この状態を放置しておくと、組織全体のパフォーマンスや業績に悪影響を及ぼし、企業の競争力を損ないます。また、コミュニケーション不足は、職場内での信頼関係やチームワークの形成を妨げ、新たなアイデアや革新的な取り組みが生まれにくい環境を作り出すことになります。

結果を出しても正当な評価がされない

社員が結果を出しても正当な評価がされない場合、その企業風土には問題があるといえます。

たとえば、個々の社員が果たした成果や貢献が正しく認識されない、報酬や昇進が実力ではなく役職や年齢によって決まるなど、公平さに欠ける評価体系だと、社員のモチベーションは下がり、努力や創造性も抑制されてしまうでしょう。結果的に、組織全体の業績に悪影響を及ぼすおそれがあります。

意思決定にスピード感が無い

組織の意思決定にスピード感が無いと決断が遅れ、組織全体のパフォーマンスに影響を与える可能性があります。たとえば、新しいプロジェクトを進めたいが、必要な承認が得られずに時間だけが過ぎていくといった状況です。

この問題は、一部の権限を持つ人間だけが意思決定に関与しており、他の社員がそのプロセスに参加できないことが原因となっているケースが多いです。また、組織内での情報共有が不十分である場合も、意思決定のスピードが遅くなる要因になります。

成果を出すために迅速な行動が求められる現代のビジネス界では、意思決定の遅さは大きな問題となります。

失敗が許容されない職場環境になっている

失敗が許されない空気の職場環境では、小さな過ちでも非難され、過ちを犯した者は極度のプレッシャーを感じることとなります。

失敗から学ぶ機会が奪われてしまうと、恐怖心から新たな挑戦を避ける傾向が強まります。これは組織全体の成長を阻害し、創造性や革新性の低下を招く恐れがあります。

サービス残業やハラスメントが日常的に起きている

組織風土が悪い職場では、サービス残業やハラスメントが日常的に起きている状況が見受けられます。労働時間外に働きながらもその報酬を受け取らないサービス残業が常態化している職場は、労働者の権利を尊重しているとはとてもいえません。

逆に、職場内で過度な圧力がかかっている状況が推測されます。

サービス残業やハラスメントのような現象が起きる職場環境は健全でなく、組織としての倫理観が欠如していると考えられます。

組織風土が悪い職場がもたらす4つの悪影響

組織風土が悪いと、職場に多くの悪影響をもたらします。そして、その全てが組織の生産性や社員の満足度に直接影響を及ぼします。

組織風土が悪い職場がもたらす悪影響については以下のようなものが挙げられます。

企業全体の生産性が低下する

組織風土が悪い職場がもたらす悪影響の一つとして、企業全体の生産性が低下する点が挙げられます。

不健全な組織風土は社員の士気を低下させ、モチベーションを奪います。それが結果として生産性の低下を招くことになります。また、職場の緊張や不満が高まると、社員の注意力や集中力が散漫になってミスが増え、仕事の効率が下がる可能性もあります。

これら全てが組織全体の成果に影響を与え、企業の競争力低下につながります。

慢性的な人材不足に陥る

前述したように組織風土が悪い職場では職場環境も悪くなりがちです。そのような職場では社員の離職率が高まるうえに、新たな人材を引きつける魅力に乏しく、採用も難しいでしょう。

結果として企業は人材不足に陥り、その状況を解消するのが困難になります。人材不足は企業の成長を阻害し、ビジネスの継続性に影響を及ぼします。

また、人材不足により社員に過度な負担を強いる可能性があり、社員のストレス増大や生産性の低下を引き起こします。

社員のスキルが伸び悩む

組織風土が悪い職場の特徴として、社員の成長やスキルの向上が十分に促されず、一定のレベルで停滞してしまうケースがよく見られます。この状況は、職場での学びや新たな経験の機会が不足していたり、社員の能力や才能が適切に活用されていなかったりする場合に起こります。

そのような環境下では、社員が自信を持てず、新たな挑戦を避けるようになったり、業務に対するモチベーションが失われたりする事態を招きます。最終的に、企業全体の生産性やイノベーションの低下につながります。

社員の健康状態が悪化する

組織風土が悪い職場では、社員の健康状態の悪化を招くおそれがあります。

過度のストレスや長時間労働、ハラスメントなどの問題が存在する職場では、社員の肉体的、精神的健康が脅かされる可能性が高まります。これらの問題は、仕事に対する情熱や集中力、生産性を低下させ、更には長期的な健康問題を引き起こす可能性があります。

この状況は、個々の社員だけでなく、組織全体のパフォーマンスにも負の影響を及ぼすため、健全な組織風土の構築は、社員の健康を確保し、組織の持続可能な成功を促進するために不可欠といえます。

組織風土が悪い職場を改善するための5つの対策方法

組織風土が悪い職場を改善するためには、以下のような対策を検討してみましょう。

職場の組織風土の現在地を認識する

組織風土を改良するためには、まず自社の現状を認識する必要があります。

組織風土の現在地を認識するためには、適切なリサーチが必要です。社員同士、または社員と改革担当者が議論や、自由に意見やアイデアを交換するブレインストーミングセッションができる環境を作りましょう。

社員が自由に意見を言える場を作ることで、社員の悩みが浮き彫りになり、職場の組織風土の現状が少しずつ見えてきます。

組織文化に影響を与える要因はソフト面、メンタル面、ハード面の3つあり、その中でも人間関係がかかわる要素であるソフト面とメンタル面が、組織文化を形成する要因の中で最も大きな比重を占めています。

組織風土改革への第一歩として現場の社員の声に耳を傾け、現状認識に努めましょう。

挨拶や社内交流の機会を増やす

挨拶や社内交流の機会を増やすことも、組織風土が悪い職場を改善するための対策として効果的です。

挨拶は、社員間のコミュニケーションを円滑にし、相互の尊重を育む基本的な行為です。挨拶は小さな行動ですが、積み重ねによって組織全体の雰囲気を明るくし、社員同士の絆を深める効果があります。

また、社内交流の機会を増やすことで、異なる部署や役職の人々との接点が生まれ、新たな視点やアイデアの共有が可能になります。これは創造性や協調性を高め、組織全体の生産性を向上させる可能性があります。

こうした活動は、社員がお互いを理解し、尊重する環境の創出に寄与します。組織風土が改善され、社員の満足度や業績が向上する可能性が高まります。

社員が十分な休養できる環境を整える

組織風土が悪い職場を改善するための対策として、社員が十分な休息を取れるようにすることは極めて重要です。

過度な仕事は、社員のパフォーマンスを低下させ、モチベーションを奪い、職場環境を悪化させます。また、過労は社員の健康を損ない、長期的な生産性低下につながる可能性もあります。

社員の健康を保つためにも勤務時間の見直しやフレキシブルな働き方の導入、休暇を取得する社風の推進など、職場環境の整備に努めましょう。

組織系統を分かりやすく可視化する

組織風土が悪い職場を改善するための対策の一例として、指揮系統を明確にすることが挙げられます。不明瞭な指揮系統は、組織に誤解や混乱を引き起こし、社員の間でストレスを生じさせる可能性があります。

たとえば組織図を作成し、各社員の役割や責任、上長や部下の関係を可視化することで、誰が何をすべきか、誰に報告すべきかなどが明確になります。これにより社員は自分の役割を理解しやすくなり、業務遂行における迷いや不安の排除につながります。

また、明確な指揮系統は、問題が起きた際の対応や意思決定のスピードを上げるうえでも効果的です。これらは組織の効率性の向上や問題解決力の強化につながり、組織風土の改善に役立つでしょう。

評価基準の仕組みを明確にする

明確な評価基準の仕組み作りも組織風土の改善に貢献します。不透明な評価基準は、社員に混乱や不満を抱かせる要因の一つとなるおそれがあります。

社員がどのように評価され、昇進や報酬にどのように反映されるのかを明確にすることが重要です。これは、社員の業績評価の基準や評価のタイミング、フィードバックの方法などを具体的に示すことにより改善できます。

評価基準が明確であれば、社員は自分が何をすべきか、どのような業績が求められているのかを理解しやすくなります。また、業績評価基準の公平性と透明性が保証されることで、社員の労働へのモチベーションや信頼感が高まり、組織風土の改善につながります。

組織風土が悪い職場環境を改善した企業例

テルモ株式会社

テルモ株式会社は「医療を通じて社会に貢献する」という理念を掲げ、100年の歴史を持つ医療機器メーカーです。

同社は、創立から75年経った90年代半ばに、企業の風土を刷新するために大規模な風土改革を推進しました。


この時期、テルモは3期連続で赤字という厳しい経済状況に直面していました。この状況と向き合うためにも、社内全員が自らを当事者と認識し、楽しみながら働けるような環境を作るための組織風土改革を行いました。

テルモの風土改革は、社員の呼び方を「一人ひとりが主役」という意味をこめて「アソシエイト」に変更することから始まりました。社員の意欲を引き出すための一般社員向け表彰制度の設立や、全国の社員4,200人以上が社長と直接面談するなど、社員一丸となって風土改革はスピーディに進行されました。


風土改革から20年以上が経った現在でも、「アソシエイト」という言葉は深く浸透しており、主体性を持った人材の育成が続いています。

同社では今後、グローバル人材育成や国内外で事業を推進するリーダー育成などをさらに加速していく予定であり、キャリア形成においても自ら考え、行動することを奨励していくとの方針を打ち出しています。

「社内全員が自らを当事者と認識し、楽しみながら働けるような環境を作るための組織風土改革」によって、テルモ社には自律・自立した風土が根付くことになりました。

参考:風土改革によって社員の自律・自立を実現してきたテルモ-リクルートマネジメントソリューソンズ

参考:風土改革の実践例|テルモ|機関誌「RMS Message」(リクルートマネジメントソリューションズ)

キリンビール株式会社

キリンビール株式会社は、国内トップシェアの人気アルコール飲料を製造するキリンホールディングスの主力会社です。

かつて、同社はビール業界でトップに君臨していましたが、2001年に時代と共に変わる消費者の志向に対応できず、業界首位の座を明け渡しました。その後、業績が思うように回復せず、社内では責任を他部署に押し付ける「他責の風土」が蔓延してしまいます。


当時の布施社長は、業績の回復とともに、何よりも生き生きと誇りを持って幸せに働ける社員の姿を取り戻すために、組織風土改革に着手。現状の危機感と反省を共有する目的で、40箇所、900人以上との対話集会を行いました。布施社長は、対話集会の中で顧客を最優先に考える組織風土を構築するというメッセージを伝え続けました。


他にも、20〜30代の若手社員を対象とした社内マネジメントスクール「布施塾」を立ち上げるなど、トップが組織のあるべき姿を強く表明し続けた結果、社員の意識変革に成功しています。

社員の意識変革は企業全体の成長を促進させ、ビール市場全体が縮小傾向にあるにもかかわらず収益が向上。主力商品の一つでもある「一番搾り」は、2019年に過去最高の売上を記録しています。

参考:キリン「一番搾り」過去10年で売り上げNo.1 ビール変革期にヒットする商品の特徴

参考:追悼 キリンビール布施前社長が最後に語った風土改革への思い|日経ビジネス

オルビス株式会社

オルビス株式会社は、化粧品・栄養補助食品・ボディウェア等の通信販売を主力とする企業です。2000年代後半までに急成長を遂げましたが、2010年代に入ると、消費者志向の変化から市場での存在感が低下してしまいます。

そこで2018年に事業変革を行うとともに組織風土改革にも着手します。事業変革の実現のために、「オープンマインド」で「未来志向」な組織風土作りに取り組みました。

この取り組みの核となったのが、「オープンマインド」と「未来志向」な風土作りに必要な行動指針「ORBIS MANAGER STYLE(オルビスマネジャースタイル/通称:OMS)」の設立です。


OMSでで打ち出した考えや行動を日常化させるために、OMSに沿った従業員に対する全社的な表彰や、OMSの行動指針を発揮できているかどうかのフィードバックをマネジメントラインが定期的に行うなど、行動指針をインプットするための取り組みを重ねていきました。

改革は徐々に結果を見せ、「オープンマインド」と「未来志向」な風土は着実にオルビスの組織に根付いていきました。組織の垣根を超えた新たなプロジェクトや自発的な企画も生まれ、近年ではOMSの価値観に共感を抱く人材の採用にも繋がっています。


2020年には人事制度や評価制度を刷新し、年功序列制度を廃止。従業員のキャリア形成の自由度を高め、一人ひとりが能力を解放して、さらなる成長ができるような組織作りを目指しています。「モノ・カネ」に執着せずに「ヒト」のアップデートを最大限に活かし、組織風土改革に成功した事例です。

参考:風土と制度を両輪で変える。「変革エージェント」として組織改革を支えた、HRの進化|オルビス

まとめ

組織風土が悪い状態とは、会社や組織における価値観や行動様式が生産性や職場の雰囲気にまで悪影響を及ぼしている状況を指します。

組織風土が悪い状態には、上からの命令だけを重視し意見を言わない(言えない)文化やパワハラ・モラハラが見逃される環境、過重労働などの問題があり、社員のモチベーションや満足度を低下させ、能力を最大限に発揮できない状況を生み出します。

長期的な視点で見ると、会社の競争力の低下や社員の離職率上昇といった事態の要因となるおそれもあります。

マイナスの企業風土が生み出す課題を解決するためには、経営陣をはじめとして、社員一人ひとりがポジティブな組織風土を作り出すために行動することが重要です。


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