東京都カスハラ防止対策〈企業向け奨励金〉の対象取組とNG例【2025年版/40万円】

公開日:2025.08.28 更新日:2025.08.28

2025年4月に施行された「東京都カスタマー・ハラスメント防止条例」に合わせ、中小企業のカスタマーハラスメント対策を支援する奨励金制度が注目を集めています。第1回募集では予定の1,000件を大幅に上回る申請があり、わずか3週間で受付が終了するほどの反響がありました。

今回は、奨励金40万円を確実に獲得するための対象となる取組内容と、よくある失敗例・NG例を詳しく解説します。マニュアル整備から外部人材活用まで、実践的なポイントを押さえて効果的なカスタマーハラスメント対策を実現しましょう。

カスタマーハラスメント防止奨励金制度の概要と支給要件

東京都のカスタマーハラスメント防止奨励金は、常時雇用する従業員が300人以下の中小企業・個人事業主を対象に、1事業者あたり一律40万円が支給される制度です。都内に本店または事業所を有し、継続して1年以上事業を営んでいることが基本要件となります。

支給を受けるためには、令和7年(2025年)4月1日以降に「カスタマーハラスメント対策マニュアルの整備」と「実践的な防止策の実施」の両方を完了する必要があります。単にどちらか一方だけでは要件を満たさないため、計画的な取組が重要です。

実践的な防止策は、録音・録画環境の整備、AIシステムの導入、外部人材の活用の3つから1つ以上選択して実施します。これらの組み合わせにより、実効性のあるカスタマーハラスメント対策体制を構築することが求められています。

申請はjGrants(ジェイグランツ)を利用したオンライン申請のみで、事前にGビズIDの取得が必要です。令和7年度は年3回の募集が予定されており、第2回は9月頃に実施される見込みです。

マニュアル整備で押さえるべきポイントとNG例

カスタマーハラスメント対策マニュアルの整備は、奨励金支給の必須要件です。新規作成または既存マニュアルの改定どちらでも対象となりますが、東京都が定める必須項目をすべて盛り込む必要があります。

対象となる取組のポイント:

マニュアルには条例への言及、具体的な対応指針、エスカレーション手順、従業員保護策などを明記します。単なる章立てや概要ではなく、実際の現場で活用できる具体的な内容が求められます。作成したマニュアルは社内に周知するとともに、基本方針を社外にも周知することが必要です。

社外周知とは、店頭やホームページでの掲示、取引先への通知等により、顧客に対してもカスタマーハラスメント防止の基本方針を明示することを指します。これにより、未然防止効果も期待できます。

よくあるNG例:

最も多い失敗例は、マニュアルの内容が表面的すぎることです。「お客様対応マニュアル」の一部として数行で触れる程度では、専用のカスハラ対策マニュアルとして認められません。また、必須項目の記載漏れや、社内周知を行ったという証跡の不備も審査で問題となります。

さらに、マニュアルを作成しても社外周知を怠るケースがあります。基本方針の社外周知は要件の一部であり、店舗での掲示やウェブサイトでの公開など、顧客が確認できる形での周知が必要です。

研修実施における外部人材活用の成功パターン

外部人材の活用は、実践的な防止策の選択肢の一つとして、多くの企業が選択する取組です。特に社内研修のスポット契約は、比較的取り組みやすく効果的な方法として注目されています。

対象となる取組のポイント:

社内研修では、カスタマーハラスメント防止をテーマとした研修を自社で開催し、外部から専門講師を招へいします。従業員のメンタルケア、接遇対応の向上、条例内容の周知などが主なテーマとなります。申請時点で研修が実施済みであることが条件であり、計画段階では認められません。

研修の講師は、弁護士、社会保険労務士、産業カウンセラー、人材育成コンサルタントなど、カスタマーハラスメント対策に知見のある外部専門家が対象となります。研修実施後は報告書の作成や、研修の様子を撮影した写真の保存も重要です。

よくあるNG例:

最も注意すべきは、他社主催セミナーへの参加契約です。これは対象外とされており、必ず自社主催の研修である必要があります。また、一般的なビジネスマナー研修や接客研修では、カスタマーハラスメント防止に特化した内容でないと認められない可能性があります。

研修時間が短すぎる場合や、受講者が少なすぎる場合も問題となることがあります。実効性のある研修として認められるよう、適切な時間設定と従業員の参加率を確保することが重要です。

外部人材の継続契約と警備契約の活用方法

外部人材の活用には、研修以外にも継続的な相談対応契約や警備会社との契約があります。これらは6か月以上の契約期間が必要であり、より本格的な対策として位置づけられています。

継続契約のポイント:

弁護士や社会保険労務士との顧問契約により、カスタマーハラスメントに関する相談対応体制を構築します。従業員からの相談窓口設置や、実際にハラスメントが発生した際の対応助言などが主な業務内容となります。月額の顧問料を支払う形態が一般的です。

契約書には、カスタマーハラスメント対策に関する業務内容を明記することが重要です。一般的な法務顧問契約では、カスハラ対策に特化した内容であることが判断できない可能性があります。

警備契約のポイント:

適法に営業許可を得た警備会社と6か月以上の契約を締結し、店舗等の警備体制を強化します。暴力的なクレームや威嚇行為に備える人的警備サービスの導入が想定されています。設備のみの契約や家庭向けサービスは対象外です。

よくあるNG例:

継続契約では、既存の顧問契約をそのまま流用するケースがあります。カスハラ対策に特化した業務内容が契約書に明記されていない場合、要件を満たさない可能性があります。また、6か月未満の短期契約や、実際には業務提供が行われていない名目的な契約も問題となります。

警備契約では、機械警備のみの契約を選択してしまうケースがあります。人的警備サービスが含まれていない契約は対象外となるため、契約内容の確認が必要です。

録音・録画環境とAIシステム導入の実践ポイント

機器やシステムの導入による対策は、目に見える形での抑止効果が期待できる取組です。録音・録画環境の整備とAIシステムの導入は、それぞれ異なる特徴を持っています。

録音・録画環境整備のポイント:

カスタマーハラスメント発生時の証拠保全や抑止のため、録音機や防犯カメラなどの機器を新規導入します。令和7年4月1日以降の購入または6か月以上のリース契約が条件となります。導入後は運用ルールの策定と社外への周知が必要です。

運用ルールでは、録音・録画の目的を明確にし、プライバシーへの配慮や盗聴と誤解されない対策を盛り込みます。社外周知では、店舗での掲示などにより、録音・録画環境があることを顧客に知らせます。

AIシステム導入のポイント:

AI技術を用いてカスタマーハラスメント対策に資するシステムを新規導入します。通話内容の自動分析・記録システム、感情解析システム、自動応答システムなどが想定されます。製品パンフレットなどでAI活用とカスハラ対策への有効性を証明できる資料が必要です。

よくあるNG例:

録音・録画機器では、既存設備の更新や家庭用機器の流用がよくある失敗例です。新規導入が条件であり、業務用途に適した機器の選択が必要です。また、機器を導入しただけで運用ルールの策定や社外周知を怠ると、要件を満たさない可能性があります。

AIシステムでは、AI機能が付いているだけの汎用システムを導入してしまうケースがあります。カスタマーハラスメント対策に特化した機能や効果が証明できないシステムは対象外となる可能性があります。

申請書類の準備と審査のポイント

奨励金の申請では、実施した取組を証明する書類の準備が重要です。書類の不備や欠落があると受付されないため、チェックリストを活用した確認が推奨されています。

基本書類の準備:

支給申請書、誓約書、事業所一覧、会社案内、納税証明書などの基本書類に加え、実施した取組を証明する書類が必要です。カスハラ対策マニュアルの全文、社内周知の証跡、選択した実践取組の契約書や領収書、効果を示す資料などを準備します。

書類はすべてPDF形式でアップロードし、個人情報は黒塗りする必要があります。写真はJPEG形式も可能ですが、鮮明で内容が確認できるものを用意します。

審査のポイント:

審査では、マニュアルの内容と必須項目の網羅性、実践取組の実施状況と効果、書類の整合性などが確認されます。必要に応じて追加資料の提出や現地調査が行われる場合もあります。

申請から支給まで約4か月程度の期間を要するため、余裕を持った準備が重要です。支給決定後は奨励金請求書を提出し、約1か月後に指定口座への振込が行われます。

よくあるNG例:

最も多い失敗は、証拠書類の不足や不備です。契約書の日付が要件期間外であったり、研修実施の証拠写真が不鮮明であったりするケースがあります。また、マニュアルと申請書の記載内容に齟齬がある場合も問題となります。

書類の形式不備も審査で指摘される要因です。PDFファイルが開けない、ファイルサイズが大きすぎる、必要な署名・押印が欠けているなど、基本的な要件の確認を怠らないことが重要です。

確実な奨励金獲得に向けた実践的アプローチ

カスタマーハラスメント防止奨励金の確実な獲得には、要件の正確な理解と計画的な取組実施が不可欠です。マニュアル整備と実践的防止策の両方を確実に完了し、適切な証拠書類を準備することで、40万円の奨励金を活用した効果的なハラスメント対策が実現できます。

第2回募集は9月頃に開始予定であり、第1回同様に早期終了の可能性もあります。GビズIDの取得や取組の計画など、事前準備を進めておくことが重要です。本記事のポイントを参考に、従業員が安心して働ける職場環境の整備と奨励金の確実な獲得を目指しましょう。

中小企業にとって、カスタマーハラスメント対策は経営課題の一つとなっています。奨励金制度を有効活用し、従業員の働きやすさと顧客との良好な関係構築を両立させる取組を推進していくことが期待されます。

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