企業やチームの目標を達成するために重視されるのがリーダーの存在です。しかし、変化が激しく、予測しづらい現代では、理想のリーダー像が変化しつつあるといえます。
今回は現代における理想のリーダー像について解説します。また、リーダーの役割やタイプ、求められるスキルも紹介します。
目次
現在は「VUCA」の時代といわれています。VUCAとは以下の頭文字を取った造語です。
このように、変化が激しく、予測しづらいというのが、現代社会の風潮といえます。
VUCAの時代では、画一的な方法で目標を達成したり、成果を挙げたりするのは難しいため、後述する関係重視型やビジョン型といったタイプのリーダーが求められています。
チーム内の信頼関係の構築や、明確なビジョンの提示、前向きな動機付けに長けたリーダー像に注目が集まっています。
リーダーは、次に挙げる役割を期待されています。
それぞれ詳しく解説します。
リーダーが担う重要な役割が、チームの方向づけです。
不確実性が高く変化が速い現代では、チームの共通目的にあった価値観や信念をメンバーが持ち合わせ、自律的に行動することが求められるためです。
そのため、リーダーは共通の目的が何かをチームに浸透させ、同じ価値観や行動規範を共有したうえで、リーダーシップを発揮してメンバーが積極的に行動できるよう導く必要があります。
このような組織文化を醸成できれば成果につながりやすく、結果として企業に大きく貢献することになります。
リーダーのもう1つの役割がチームのマネジメントです。
チームには、さまざまな能力を持ったメンバーがおり、メンバーは自分の仕事に対する責任と共にチームに対する責任も負います。そのため、リーダーはメンバー個人とチームの両方の育成を求められます。
チームとして成果を挙げるためには、専門知識や課題を解決する能力が求められますが、すべてのメンバーが同じ能力を持っているわけではありません。
そのため、リーダーはメンバーの組合せによって能力を補完したり、スキルを習得できる機会を設けたりしながら、チーム力を高める必要があります。
また、目標を達成するためには何ができるのかをメンバーに共有し、同じ方向を向いて行動できるよう促します。
マネジメント次第で、個々の能力の集まりを超える成果を生み出す可能性があるため、リーダーの役割は非常に重要といえるでしょう。
リーダーシップとマネジメントは、組織の成果に対して重要な役割を担う点で共通していますが、どのようなポイントを重視するかが明確に異なります。
リーダーシップで重視されるのは次の2点です。
リーダーシップで重要になるのは「将来を見越して明確な方向性を決めること」になるため、定性的(物事における数値化できない部分を捉えること)な能力が必要です。
一方、マネジメントで重視されるのは次の3点です。
マネジメントでは「目標を達成すること」が重要になるため、タスク管理や業務の仕組化といった定量的(物事を数値や数量で捉えること)な能力が求められます。
リーダーのタイプはいくつかに分類できます。ここでは、主なリーダーのタイプを6つ紹介します。
ビジョン型とは、目標を掲げてチームを動かしていくタイプのリーダーです。
リーダーとしてチームが達成するべき目標を明確に提示しますが、目標を達成するための方法や手段は、メンバーに任せるのが特徴です。
目標達成の方法や手段を任せられたメンバーは主体的に行動するため、自律性の高い組織文化が醸成されます。
コーチ型とは、チームメンバーの一人ひとりと関わり、メンバーの想いを尊重した上で目標達成を目指すタイプのリーダーです。
メンバー個人と関係性を構築し、個性に合わせた関わりを重視するのが特徴で、メンバーは自分の長所を発揮しやすくなります。
特に、規模の小さい組織やチームでは、成果を挙げやすくなります。
関係重視型とは、チーム内での関係性を重視するタイプのリーダーです。奉仕型と呼ばれることもあります。
メンバー同士の人間関係の構築に重点を置いており、多くの企業で採用されるリーダータイプといえます。メンバーと同じ目線に立つことで信頼を得やすく、調整力に長けているのが特徴です。
メンバーが関係性を深めながら仕事に取り組むため、お互いの信頼関係が厚く、チームの一体感が生まれやすくなります
民主型とは、仕事の進め方や意思決定の場面において、チームメンバーの意見を積極的に取り入れるタイプのリーダーです。調整型とも呼ばれます。
リーダーはメンバーが意見を主張できるようにサポートするため、メンバーの仕事への参画意識が高まりやすくなるほか、メンバーからの意見が集まりやすいといったメリットがあります。
長期的に生産性を向上させたい場合に効果的なタイプのリーダーといえます。
ベースヒッター型とは、基準の高さや目標をリーダーが実際に行動で示し、メンバーにも同じ基準を求めるタイプのリーダーです。実力型とも呼ばれます。
チームメンバーにスキルや意欲が備わっている場合に有効で、高い成果が求められる場合に採用すべきリーダー像といえます。
リーダーの行動が見本となることから、メンバーを分かりやすく奮起させられる点がメリットです。
強制型とは、目標や仕事の方向性をメンバーに強制するタイプのリーダーで、冷静な判断力が必要です。
メンバーの反発を買うこともありますが、短期的な目標達成を迫られている場合や、災害など緊急時に成果を求められる場合に効果的なタイプとなります。
リーダーとして据える人材には、次に挙げる要素が求められます。
それぞれ詳しく解説します。
リーダーに求められる最も重要なスキルがコミュニケーションスキルです。
社会の不安要素が多い現代において、リーダーはチームの方向性や将来の展望を明示しなければなりません。ただし、同じ内容でも、伝え方や言葉の選び方によってメンバーが受ける印象は大きく異なるため、コミュニケーションスキルが重要になります。
また、相手の意見を正しく理解した上で、自分の意見も伝え、納得してもらったり、着地点を探したりするなど、リーダーのコミュニケーション能力を発揮される場面は多いでしょう。
チームの育成や仕事の運営など、さまざまな場面で必要になるスキルといえます。
情報取集スキルは、現代のリーダーに求められるスキルの1つです。
仕事を進める上で発生する物事や事例に対する観察眼に加え、膨大な情報から正しい情報を選び取る能力が必要です。
また、情報収集力が高いリーダーは、情報のインプット・アウトプットの質が高くなるため、業務の効率化が図れるといったメリットもあります。
目の前で起こっていることだけではなく、市場規模・社会全体に視野を広げながら、さまざまな情報を集められる能力が求められるでしょう。
リーダーには当事者意識も求められます。
仕事上で発生する課題を解決するためのアクションや成果を挙げるために思考するようになり、高いリーダーシップを発揮できるためです。
リーダーの選択によって良くも悪くもさまざまな影響が出ることから、結果に対する責任感も生まれやすくなるでしょう。
課題を発見するスキルや解決するスキルも、仕事を円滑に進めたり、チームをけん引したりするために必要です。
現代においては、環境の変化が速いうえに、さまざまな要因が複雑に絡み合っているため、課題発見の難易度が上がっています。何が課題なのかを適切に見極めて、それらを解決しゴールに導く能力は、現代のリーダーには欠かせないスキルです。
また、業務の複雑化によって、これまでのセオリーが通じないケースも多くなっています。リーダーには困難な課題を解決する力も求められます。
現代のリーダーには、適応力と決断力も求められます。
変化が速い現代では、予測できないようなことが発生する可能性があるためです。
発生する課題の中には、これまでに前例がない事柄が含まれるケースもあり、そのたびにリーダーには決断と対応が求められます。
正しい決断のためには、変化や課題への適応力と、決断して行動する力が必要になるでしょう。
行動力もリーダーに必要なスキルの1つです。
チームとして成果を挙げるためには、仮説を立て、失敗を恐れずに実行する能力が求められます。
もちろん、やみくもに行動するのではなく、情報収集と綿密な仮説の検証に基づいた行動が必要です。
逆に行動を起こさなければ、成果を挙げることも、チームをけん引することもできないため、より大きな課題となってしまう恐れがあります。
リーダーの種類や必要なスキルを理解したうえで、理想のリーダーをどのように育成すればいいのでしょうか。
リーダーを育成するポイントは次のとおりです。
それぞれ詳しく解説します。
リーダーを育てる場合、まずはビジョンを明確にしましょう。
企業が目指すゴールや達成条件を明らかにして、その条件をクリアするためにどのようなリーダーを何名育成するのかを決定します。その上でリーダーとして育成する人材を決めていきます。
リーダー育成は個人を対象にするのではなく、企業の戦略として計画することが大切です。
リーダー育成のビジョンや、育成する人数・人材が決まれば、具体的な育成計画を作成します。
スキルマップなどを利用して、それぞれの人材の現状や伸ばしたいスキルなどを明確にします。また、設定したゴールに到達するまでのスケジュールを設定することも大切です。
どのような教育・研修をどのタイミングで行うのか、細かく設定しておきましょう。
具体的な育成計画が決定したら、実際に人材の教育段階に入ります。育成計画に沿って、社員研修やLXPの活用といった学習機会を提供し、必要なスキルが習得できるよう促します。
ここで重要なのが、育成する人材に育成の趣旨や目的を理解してもらうよう努めることです。趣旨や目的を理解することで、モチベーションの維持や効率的なスキルアップが可能になるためです。
育成中は進捗状況を確認・共有したり、育成対象者をフォローしたりすることも忘れないようにしましょう。
最後に、リーダー育成に活用できる民間のサービスを3つ紹介します。
ライブ動画学習サービスのSchoo(スクー)では、法人向けのリーダー研修サービスを提供しており、これまでに2,000社以上が導入しています。
チームを巻き込み成果を挙げる人材の育成をテーマにした研修では、ビジネスの第一線で活躍するビジネスパーソンからの指導を受けられるのが特徴。リーダーシップの基礎からしっかり学ぶことができ、実務で役立つスキルを習得できます。
また、リーダーシップ強化研修パッケージやコーチング研修パッケージなど、リーダー研修のカリキュラムテンプレートが用意されているほか、管理画面で設定すればすぐに研修を始められるのもポイント。これからリーダー研修を始める場合でも安心して利用できます。
ビジネスコンサルティングや研修プログラムの企画・開発を手掛ける株式会社HRインスティテュートでは、ワークアウト方式のリーダー研修サービスを提供しています。
実在する課題をもとに設定されたテーマに対して、研修で学んだノウハウや手法を用いて、受講者自らがアウトプットを作成する実践型のプログラムとなっているのが特徴です。
課題の解決と人材育成を同時に実現できるよう設計されたプログラムで、リーダーシップの習得、経営意識・価値観の醸成を目指します。
受講者が能動的に課題解決の道筋をアウトプットするため、高いスキルが定着しやすく、ビジネスの成果とも直結しやすい研修サービスとなっています。
参考:株式会社HRインスティテュート|次世代リーダー・ワークアウト
公開型研修サービスのリクルートマネジメントスクールでも、リーダー研修サービスを提供しています。
専門知識や経験や豊富な講師による講義に加え、受講者同士でのグループワークを通じた異業種交流・相互研鑽によって気づきや実践を促す研修コンテンツとなっているのが特徴です。
ポイントを絞った3時間の研修コースや、じっくり学べる2日間コースなど、企業の目的に合わせて選択できるコース設定も魅力となっています。
環境が変化するスピードが速く、業務や関係性が複雑化する現代では、チームを正しい方向に導くリーダーが必要不可欠です。
リーダーに共通して求められる資質はもちろん、企業の目的に応じたタイプのリーダーには、それぞれ異なるスキルが求められる場合もあります。
企業の目標を達成するために必要なリーダーを明確にして、人材を教育できる環境を整えていきましょう。
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