企業が継続的に成長するためには、組織をけん引するリーダーの存在が必要です。しかし、リーダーを育成したくても、うまくいかないケースが多いのも事実です。
そこで今回は、次世代のリーダーを育成する方法について解説します。また、リーダー育成する際のポイントや手順、事例、研修サービスなども紹介します。
目次
リーダーとは、定めた目標を達成するために、複数の人を導く人材を指します。
リーダーの存在や能力が事業に与える影響は大きく、リーダー次第でメンバーのモチベーションやパフォーマンスが変わります。
また、組織が同じ方向を向いて団結し、共通の目標を達成するためにも、集団の力を引き出せる優秀なリーダーが必要になるため、どのような人材をリーダーとして選出するかは、企業にとって大切なポイントです。
近年は、高度情報化や科学技術の進歩、人材の多様性の高まり、働き方の変化など、企業を取り巻く環境の変化が目まぐるしい状況です。これらに柔軟かつスピーディーに対応できるリーダーが求められているといえます。
企業の成長に貢献するリーダーは、どのような企業においても求められる人材ですが、リーダー育成に苦労している企業が多いのも事実です。
なぜ、リーダーはうまく育たないのか、その理由は次に挙げる通りです。
それぞれ詳しく解説します。
そもそも、リーダーを育てること自体、とても難しいことです。
なぜなら、性格やスキル、経験、個性などは、人によって異なり、画一的な教育方法が適していないからです。
対象となる人物の個性を生かせる教育方法を採用するために、対象者の強みや弱みを把握した上で、強みを存分に生かせるような教育が必要になるでしょう。
現場の負担が増大する懸念があるのも、リーダーがうまく育たない理由の1つです。
候補者として選抜される人物は、所属する部署内で大きな戦力になっているケースが多いといえます。
育成のために候補者が現場を離れてしまうと、部署内での業務や売上などに支障をきたすケースも考えられ、育成を後回しにされる場合もあるでしょう。
ただし、育成期間は中長期にわたるケースがほとんどです。
企業の将来の発展に向けたリーダー育成の必要性を社内全体に周知し、理解してもらうことが重要になるでしょう。
リーダーを目指す人材が少ない場合も、育成に苦労するでしょう。
近年では働き方が多様化していることから、社会人の企業への帰属意識が低下している傾向にあり、個人を優先した行動を取る人材も多くなっています。
パーソル総合研究所が発表した「人材開発白書2017」によれば、リーダー志向を持つ人の割合は社会人全体の30%を下回り、リーダー志向を持つ人の割合は35歳を過ぎると急激に減少することがわかっています。
つまり、そもそもリーダーになることを望む人は多くはないのです。
リーダーを育てたい場合に重要になるのが、20代の若い社員に対する裁量および自己決定の機会の提供です。小さなことからでもいいので、リーダーシップを発揮できる環境を整備することも、リーダー育成には大切な要素といえるでしょう。
社内で候補者を選抜する際の基準や教育環境が整っていない場合も、育成はうまくいきません。
候補者の選抜基準がなければ、ポテンシャルの高い社員を選抜できず、育成環境が整備されていないと、人材を選抜できても優秀なリーダーとして教育するのは難しいでしょう。
適切な候補者を選び、教育できる環境を整備することが重要です。
リーダー育成の懸念点の1つが、育成の効果がわかりづらいことです。
人材の育成は定量的な成果が見えづらく、成果として表れるのは数年先になることも珍しくありません。しかし、リーダー育成に対する理解が欠けている場合、短期的な成果が求められるケースがあります。
企業によっては、学んだ知識やスキルを発揮できる場面が少なく、実践的な経験を積めないため、育成の効果を判断できない場合もあるでしょう。
リーダー育成は長い目で判断することが大切です。学習と実践を繰り返しながら、リーダーを育てていくことを意識しましょう。
社内でリーダーを育成する際に意識するべきポイントを紹介します。
それぞれ詳しく解説していきます。
リーダーを育てたい場合は、企業全体で取り組む意識が重要です。
リーダーの教育を担当するのは人事部となる場合が多いですが、社内全体にリーダーを育てる必要性を明確に提示して、協力体制を構築することが大切になります。
また、役職上位者が教育のために行動したり、人事評価制度の見直し、教育制度の整備を行ったりすれば、リーダーを育成しようとする雰囲気を醸成できます。
長期的な視点でリーダーを育てるためにも、企業全体の課題として取り組んでいきましょう。
リーダーを育てる場合は、長期的な視点も大切です。リーダー育成は短期間で完了できるものではないからです。
短期間での成果を求めて、知識を詰め込みすぎたり、成長を促しすぎたりすると、かえって逆効果になる恐れがあります。
場合によっては、候補者の心身に影響してしまうこともあるでしょう。
リーダーとして教育する場合は学びと実践を繰り返しながら、中長期的に取り組むのが鉄則である点を理解しましょう。
リーダーを育てる場合は、何を求めるのかを決める必要があります。
実際に存在するリーダーを前例としたり、企業のビジョンに沿ったリーダー像を提示したりすることで、育成対象者に対して何をどのように教えるべきかを明らかにするためです。
ただし、リーダーになることを望まない人が社内に多い場合でも、リーダー候補者の基準を引き下げてはいけません。会社の衰退を招く要因となる恐れがあるため、注意しましょう。
リーダー候補者の選定基準を明確にすることも重要です。
明確な選定基準を設定すれば、将来的に複数の候補者を選抜・育成できる可能性があります。
また、候補者のプレッシャーやストレスを軽減するためにも、役員や他の従業員が納得できる状況を作らなければなりません。
企業側とリーダー候補の両方にメリットがある点から、候補者の選定基準を定めることは、リーダーを育てるための大切な要素となります。
加えて、リーダーを正当に評価する仕組みを構築すれば、リーダーのモチベーションを向上させられるでしょう。
リーダーを育成する前に、候補者に対して事前に説明しておきましょう。
なぜリーダー候補に抜擢したのか、どのように育成していくのか、事前の説明による相互理解を深めることが大切です。
また、リーダーになるとどのようなメリットがあるのかを説明すれば、候補者のモチベーションが上がり、教育に積極的に取り組めるようになります。
が、幅広い業務や役割を任せるということです。
これまでに経験がない業務を経験させたり、新規事業の立ち上げや部署を横断するプロジェクトなど、難易度の高い役割を任せたりすることで、さまざまな知識やスキルを体得できるからです。
また、リーダーとしての自覚が芽生えやすくなる他、育成者の視野が広がる可能性もあります。
リーダーを教育する環境整備の一環として、幅広い業務や役割で経験が積めるような体制を整えておくべきでしょう。
リーダーの育成期間中は、候補者をしっかりサポートすることが大切です。
リーダーには目に見える成果が求められるため、リーダーになった場合はもちろん、育成中でもストレスやプレッシャーを感じることが多いでしょう。
悩みを抱えながらリーダー教育を行ってもうまくいかず、心を病んでしまう恐れもあります。
企業側は候補者を常に気に掛け、サポートできる体制を整えておきましょう。外部からメンターとなるコーチを付け、企業側・外部の両方からサポートするのもおすすめです。
リーダーの育成は時間を掛けて計画的に行うことが大切です。ここでは、リーダーを育てるための手順について解説します。
リーダー育成の第一歩は、社内で長期的な協力を得ることから始めます。そのためにも、リーダーを育てる必要性を提示して社内に周知しましょう。
次に、具体的にどのようなリーダーを育成するかを考えます。リーダーの条件・要件を分かりやすく決めておけば、計画的なリーダー育成ができます。
リーダーに求められるものはさまざまですが、リーダーシップスキルやマネジメントスキル、経営管理に関する知識などが挙げられます。
リーダーに求める条件などが明確になれば、実際にリーダーの候補者を選抜します。
実務能力や評価・実績に加えて、リーダーになりたいという意欲、基礎的な能力、ポテンシャルなどを考慮して選抜しましょう。
具体的な方法としては、候補者を広くリストアップして徐々に絞るロングリスト・ショートリスト方式や、立候補者を募るといった方法があります。
リーダー候補者を選抜した後に、育成計画を立案します。データの活用やヒアリングなどで、候補者本人の強みや弱みを考慮した上で育成計画を考えることが大切です。
なお、トレーニングには経営知識を習得するトレーニングと、実戦経験を積むトレーニングの2種類を盛り込みましょう。
経営知識を習得させたい場合は、社外研修や役員経験者によるセミナーなどを受講させるのが有効です。
実務経験を積ませたい場合は、現状のスキルや知識ではこなすのが難しい役職やポジションに就かせるストレッチアサインメントがおすすめです。配属先の移動や部署を横断するプロジェクトなどを担当する機会を提供することで、リーダーや経営者としての器を育てられるでしょう。
候補者が継続的に学び続けるには、教育の動機付けが重要です。
育成を始める前に、候補者に対してリーダーとしての役割の他、育成を実施する理由や選抜した理由、リーダーになるメリットなどを明確に伝えて、モチベーションを向上・維持できるよう働きかけましょう。
ここまでの準備が完了したら、計画した内容に沿ってトレーニングを実践します。
育成期間は長期間にわたるケースが多いため、候補者をサポートする体制を充実させる必要があります。
また、育成内容は個人の成長と成果にフォーカスしたプログラムを提供することが重要です。
トレーニングを実施している間、企業側は候補者をモニタリングします。
設定した目標に近づいているか、育成が負担になっていないかなどを確認して、定期的にフォローすることが大切です。
求めるポジションによっては経営者がメンターとなり、個別指導を行うことで育成効果が高まる可能性もあります。
育成中のモニタリングやフィードバックによって、課題や問題が見つかった場合は改善策を検討して育成内容に盛り込みます。
この際、育成方法の仕組みと候補者の両方の視点を持って改善点を洗い出すことが重要です。
次に、リーダー育成を実施している企業の実例を3つ紹介します。
分析・計測機器メーカーの総合メーカーである株式会社堀場製作所では、社内大学「ホリバ・カレッジ」による各事業分野の専門講座を開設しています。
業務内容に応じた6つの学科、年間約140講座が運営されており、従業員がさまざまな分野について主体的に学べる環境が整っています。全体の運営は社員・役職者・役員が担当するなど、全社体制で運営されているのが特徴です。
他にも、多くの若手社員を海外に送る海外公募派遣制度や、グローバル経営会議に若手社員を参加させるなど、さまざまな方法で人材育成に取り組んでいます。
世界最大級の総合海運企業である株式会社三井商船では、2015年にグループ共通の価値観として「MOL CHART」を制定し、社員それぞれの判断の根拠として自律自責型人材の育成に活用しています。
次代の経営幹部育成のための社内スクール「One MOLグローバル経営塾」を開催しており、同社の役員をメンターに据え、グローバルリーダーとしての目線を学びながら、10年先を見越したテーマを提言としてまとめているのが特徴です。
加えて、語学講座や海外赴任研修制度、経営リテラシー習得のためのスクールなど、さまざまな制度によってグローバル人材の育成を図っています。
日本電気株式会社では社会価値を創造し続ける社員の育成・組織風土の醸成を目指し、経営者候補を育成する「NEC社会価値創造塾」を開設しています。
社内外の講師との対話や国内の介護、地方創生の現場など、さまざまな体験や学びを通じて、受講者自身がNECのトップとなった場合に、企業をどのように変革するかを考えさせることをテーマにしています。
新興国や日本が抱える課題を当事者として体験させることで、リーダーとしての内省や変容、成長を促す取り組みによって、次世代のリーダーを育成しています。
最後に、リーダー育成のための研修サービスを提供する企業を2つ紹介します。
株式会社ホスピタリティ&グローイング・ジャパンは、小売・サービス業に特化した研修サービスや教育・人事・経営に関するコンサルティングを展開する企業です。
同社が提供する「GA Premium」は、現場での課題解決能力を習得できる体感型研修サービスです。ロールプレイとディスカッションによって能動的に知識を学べることに加え、学んだ内容を現場で即実践できます。
また、豊富な講座が体系化されているため、さまざまな研修を受講できるのが特徴。異業種での交流も可能となっています。
参考:GA Premium | 株式会社ホスピタリティ&グローイング・ジャパン
株式会社Schooは、学び続けることをテーマにオンライン研修サービスを提供する企業です。講座数が約8,000本と豊富でさまざまな研修に対応できる他、自己啓発に効果的な内容の講座を毎日配信しています。知識・スキルを学ぶ研修と、自分を研鑽する自己啓発の両方に対応できるのが特徴です。
リーダー向けの研修パッケージでは、コミュニケーションスキルやリーダー向けキャリアデザインなどについてのカリキュラムが用意されており、リーダーに求められるスキルや知識を体系的に学習できます。
参考:オンライン研修・eラーニング研修 - Schoo(スクー)法人・企業向けサービス
企業がリーダーを育成する場合は、ポイントや手順を抑えることが重要です。社内の協力体制を構築し、計画性のある育成を実施すれば、将来を託せるリーダーを育成できるでしょう。
また、外部の協力を得ることもリーダー育成には大切な要素となります。現在ではリーダー育成のためのさまざまな研修サービスが提供されているので、本記事を参考にしながら、自社のリーダー育成に適したサービスを探してみてください。
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