管理職育成の課題とは?育成のためのステップと事例を解説

公開日:2023.10.06 更新日:2023.10.06

今後の人手不足が深刻になっていくと予想されている現代において、将来的な管理職の候補に頭を悩ませている企業は少なくありません。管理職を育成するためには、候補者のスキルを適切に把握し、最適な研修を受講してもらう必要があります。
本記事では管理職育成における課題から、実際の育成ステップ、成功事例までを解説していきます。ぜひ参考にしてください。

管理職が果たすべき役割とは?

管理職が社内において果たすべき役割は、主に以下の3つに集約されます。

  • 業務管理
  • 労務管理
  • 人材育成

それぞれの役割について具体的に解説していきます。

業務管理

自身の業務に加えて、組織内や部門内の業務管理が求められます。管理職として組織全体がスムーズに機能するように、部下への仕事の割り振りなどを行います。また業務が期限内にきちんと完了するように進捗状況を適宜確認したり、遅れている場合は間に合うようにサポートしたりすることも大事な役割です。
期限内に業務が完了しなかった場合や、与えられた目標に到達できなかった場合は、課題を把握し改善していく役割も担います。自分の業務成果だけではなく、組織や部門の成果も問われるため、管理職は自分の担当業務を詳細まで把握しておく必要があります。

労務管理

部下の労働時間や残業時間などを適切に管理し、心身の健康を守ることも管理職の役割です。他にもハラスメントの予防やメンタルヘルスの管理も重要な業務の一つです。たとえば部下の些細な変化を見逃さないように、常日頃からコミュニケーションを心がけるなど、業務内容以外の部分での管理も求められます。
適切な労務管理の実施によって、働きやすい環境の構築や一部の従業員が不利益を被ることがないような体制を作ることができます。

人材育成

部下を自社の戦力として育成していくことも管理職の役割です。単純に仕事を割り振るだけではなく、部下自身が業務を進める手順や業務に必要なスキル・知識を身につけられるようにしていくことが求められます。
人材育成はどの部下に対しても一律に行うのではなく、対象の部下の能力や適性などをきちんと把握したうえで、それぞれに応じた適切な指導を行います。また部下がスキルアップできるような仕組みや環境作りも大切な役割になります。
なお人材育成は管理職本位で進めるのではなく、自社がどのような人材を求めているのか、育成対象の部下は将来的にどのようなキャリアプランを描いているかなど、コミュニケーションを図りながら進めていくことが大切です。適切にサポートを行うことで、部下が成長すると共に自社の成長にも貢献できます。

管理職育成でよくある課題

企業が管理職の育成を行ううえでよくある課題としては、以下の3つが挙げられます。

  • 管理職を育成する体制が整っていない
  • 経営戦略における管理職育成の優先順位が低い
  • 育成の効果を計る仕組みが整っていない

それぞれの課題について解説していきます。

管理職を育成する体制が整っていない

管理職を育成するためには、社内でしっかりとした体制を構築する必要があります。たとえば育成部隊を編成する、教育制度を整える、人事評価を整えるなどです。自社内である程度のリソースを割かなければ、優秀な管理職を育成することは難しくなってしまいます。
また、どのような候補者を選定すれば良いのかが明確になっていないケースもあります。どのような管理職を育成したいのか、選定基準を明らかにすることも大切です。

経営戦略における管理職育成の優先順位が低い

自社が保有する経営資源を有効活用し、経営目標を達成するための指針となるのが経営戦略です。どのような事業に集中して投資を行うか、どのように他企業と差別化を図るかなど、さまざまな視点から戦略が定められています。
人材育成も経営戦略の中で重要な項目の一つですが、人材育成は長期的な視点での戦略になるため、即効性に乏しく優先順位を低くしてしまう企業も多くあります。また、育成期間中は他の従業員の負担が大きくなり、配慮が必要な点に加え、選定する候補者は自社で優秀な成績を納めている人材であることが多く、現場から離れるデメリットに目を向けてしまって管理職育成につなげられないケースもあります。
このように、経営戦略上で重要にも関わらず、優先順位を低く置き、後回しにしてしまうといった課題を抱えている企業は少なくありません。

育成効果を図る仕組みが整っていない

管理職育成の研修を行なったとしても、その学びを現場で実践できないと意味がありません。学びっぱなしで現場での管理職経験を積めなければ、取り組みの効果が薄くなってしまいます。
また、管理職としてのポジションが用意されていても、効果検証の基準が適切に設けられていない場合もあります。育成効果を図る仕組みは、次章の「管理職を育成するためのステップ」を参考に進めてみてください。

管理職を育成するためのステップ

管理者を育成するためのステップは、以下の4つのステップで進めていきます。

  1. 目的・ゴールの設定
  2. 育成計画の立案
  3. 育成計画の実施
  4. 効果検証

それぞれのステップでの具体的な動きを解説していきます。

目的・ゴールの設定

まずは、目的・ゴールの設定です。自社が求める管理職はどのような姿かを言語化していきます。自社の経営方針を念頭に置いたうえで、市場の変化や今後の予測、育成トレンドなどの情報を収集して、適切な姿を設定していくことが大切です。
たとえばリーダーシップを発揮してもらいたいなら「ビジョン設定力」や「判断力」がある人材、マネジメント力の発揮に期待するなら「人事・労務に関する知識」や「課題解決力」がある人材など、理想の姿に対する必要な項目を細分化してまとめていくと良いでしょう。

育成計画の立案

どのような管理職が必要かを明確にしたら、育成計画の立案に移ります。実際にどのような育成を行うかを考え、OJTや研修計画に落とし込んでいきます。
実際にメンバーを育成するためのコーチング研修や、部内の業務を遂行するための「プロジェクトマネジメント」の研修を受講してもらうといったことも計画に入ってくるでしょう。
また、育成計画を立案した際には、自社のリソースでどこまで補えるのか、外部にアウトソーシングする範囲はどこまでが適切かなども合わせて考えておくことがおすすめです。より専門的な知識やスキルが必要な場合は、外部の専門家と相談しながら進めると良いでしょう。

育成計画の実施

立案した育成計画に沿って候補者の管理職育成を進めていきます。なお、計画を実行する際には、必ず計画どおりに進まないケースが発生すると想定しておくことが大切です。思ったよりも進捗状況が芳しくない、さらに研修に必要な項目が出てきたなど、状況を適宜把握したうえで臨機応変な対応が求められます。
また、出てきた課題はまとめておき、次年度の改善点としてアップデートを行うのも良いでしょう。実施をして課題が出た際は、「今すぐに改善すべきものなのか」「将来的に改善できれば良いものなのか」を整理しておくことで、スムーズな育成計画の進行につながります。

効果検証

育成計画に効果があったのかを検証し、次の育成へと活かしていきます。「各種施策のアンケート結果」や「上司や部下からのフィードバック」などが効果検証に活用できます。
効果を感じられたもの、期待したほどの効果を感じられなかったものを分けていき、それぞれの原因について分析していきます。なぜ効果があったのか、なぜ効果がなかったのか、仮説を立てながら検証をしていくことで、効果的な管理者育成につながります。
また、期待した効果が出なかった施策については、次回以降はどのようにすれば改善ができるかを考え、データを蓄積しておくことも大切です。

管理職育成研修やプログラムを提供している会社3選

管理者育成向けに研修やプログラムを提供している会社を紹介します。

  • 株式会社インソース|3年間で管理職候補の育成と中堅層の底上げを図るプラン
  • 株式会社識学|マネジメントコンサルティング
  • 株式会社リンクアンドモチベーション|管理職研修

株式会社インソース|3年間で管理職候補の育成と中堅層の底上げを図るプラン

株式会社インソースは階層別の研修やIT人材育成の研修など、幅広い研修を行なっている企業です。管理職向けとして「マネジメント研修」や「リーダーシップ研修」があり、研修プランも充実しています。
管理職教育向けとして、3年間の期間にわたって必要なスキルを強化するプランも用意されており、自社の課題に応じた施策を提案してくれます。

提供会社 株式会社インソース
特徴 ・豊富な研修プランを用意
・日本全国に24拠点を構えているため、地方企業にも最適
・課題からプランを提示してくれるため、スムーズな研修が可能
料金 要問い合わせ
研修形式 集合研修
参照 3年間で管理職候補の育成と中堅層の底上げを図るプラン

株式会社識学|マネジメントコンサルティング

株式会社識学は独自の理論に基づいた識学トレーニングを行なっているのが特徴で、幹部社員向けのマネジメント研修などを行なっています。マスタートレーニングと呼ばれており、マンツーマンで行われるのが特徴です。他にも人事向け階層別研修など、自社に合わせたプラン選択も可能です。

提供会社 株式会社識学
特徴 ・独自理論である識学トレーニングを実施
・研修に加えてコンサルティングによって、理解度を深める取り組み
料金 要問い合わせ
研修形式 マンツーマン
参照 マスタートレーニング|サービス紹介|マネジメントコンサルティングの識学

株式会社リンクアンドモチベーション|管理職研修(ストレッチクラウド)

株式会社リンクアンドモチベーションは、組織改善クラウドであるモチベーションクラウドで認知を広げた企業ですが、ストレッチクラウドという管理研修クラウドサービスで管理職向けの研修も行なっています。スキルに加えて意識や意欲をあげるためのカリキュラムになっており、継続的な成長サイクルを提供する仕組みづくりがされています。

提供会社 株式会社リンクアンドモチベーション
特徴 ・スキルに加えて意識や意欲を開発するプログラム
・継続的な成長サイクルを提供する仕組み
・360度評価によって現状を的確に把握
料金 要問い合わせ
研修形式 集合研修
参照 管理職研修・育成ならストレッチクラウド

企業の管理職育成事例2選

管理職育成の事例として、以下の2社を紹介します。

  • 共栄海上保険株式会社
  • トラスコ中山株式会社

共栄海上保険株式会社

1942年に設立した共栄海上保険株式会社では、2016年度から中期経営計画がスタートし、人材基盤の強化を重要事項に挙げていました。その中の施策として、これまで総合職と一般職で分かれていた人事制度を統合し、新たな人材育成体系を整えていきました。
管理職候補者向けの研修では「新任7等級研修」と呼ばれるマネジメント研修を各拠点にライブ配信し、現職のマネージャーでも学び直しを行なえるようにしています。現職向けにも研修の機会を設けることで、管理職候補者と現職のマネージャーのマネジメントにおける共通言語を持てるようになりました。

トラスコ中山株式会社

全国に98箇所の拠点を構えるトラスコ中山株式会社では、自律型人材育成を掲げ、同社で「ボス」と呼ばれる管理職にも立候補制を採用しています。
ボスとして登用されるには、立候補した後に「書類による一次選考」と「人事課長・人材開発課長・総務部長・経営企画部長による面接」が行われ、ボス・チャレンジ生として課長代理や支店長代理といったの役職に就くことになります。管理職の候補として業務を行う中で、上司による評価と周囲の従業員からの評価を合わせた360度評価による「オープンジャッジシステム」などを参考に、ボス人材が選ばれます。
ボスに昇格した後も、360度評価によって他の従業員に評価されると共に、2年に一度の研修を継続することでマネジメントスキルの向上に努めており、成長が続く環境を整えています。

まとめ

管理職を育成を行うためには長期的な視点を持ち、育成環境の整備や人事制度の構築などが必要です。管理職研修を提供している会社は多くありますが、自社がどのような管理職を育成したいのかなどを明確にしなければ、思うような効果は出ないでしょう。

管理職としての意識はもちろんのこと、マネジメントスキルやコミュニケーションスキル、労務に関する知識など、多くの必要なスキルがあります。求める管理職の人材像を明確にし、適切な育成を進めていきましょう。

以下のコラムでも管理職について詳しく解説しています。興味のある方は、ぜひご覧ください。

管理職の役割とは?求められるスキル・なってはいけない人の特徴を解説 | リスキリングナビ

おすすめの
パートナー企業