人手不足が叫ばれる昨今において、企業の未来を担う人材育成は、どの企業でも大きな課題となっています。育成が上手くいかない、育成をしても退職してしまうといった悩みを抱えている企業は少なくありません。
本記事では、育成に失敗する原因、育成を成功させるために大切なこと、企業全体として取り組むべきことなどを解説していきます。
目次
企業が育成に失敗してしまう原因としては、主に以下の3点が挙げられます。
それぞれの原因について解説していきます。
人材育成は長期的な視点から行なっていくものです。現場での経験を積んでもらうこともあれば、研修などを通してスキルを身に付けてもらうこともあります。
たとえば、現場での経験を積ませる目的で育成したい人材を現場に配属しても、実業務が忙しく、OJTや研修を受けてもらう時間を作れなければ、意味がありません。この現場ではどのようなことを行うのか、なぜこの業務を行なっているのかなど、仕事の意味や意義を伝えられないまま時間が進んでしまうと、育成が大きく遅れてしまいます。
また、配属された人材に適切なフィードバックが行えないと、自分の仕事の仕方が正しいのかどうかが掴めず、場合によっては間違った進め方を覚えてしまうかもしれません。他にも研修の必要性を訴えても、費用対効果・コストなどの関係から見送られてしまうケースもあります。
人材育成には十分な時間と予算が必要ですが、企業として満足な用意ができていないことも多くあります。
人材育成は自社が求める人物像や身につけて欲しいスキルを明確にして取り組む必要があります。それらが不透明だと、その場しのぎの教育しか身に付かず、会社が求める人材の育成にはつながりませんす。教育を行う上司側、教育を受ける従業員側、双方に対して、どのような人材を必要としているのかを明示することが大切です。
同じビジョンを共有できていないと、育成方法や手段がバラバラになったり、従業員が自分の未来像に不安を感じたり、育成がうまくいかない要因が生まれてしまいます。
評価の指標が曖昧なままだと、従業員のモチベーションは上がりません。何をすれば評価され、どのようなスキルを身に付ければ良いのかがわからないからです。そのような状態では、将来のビジョンや目標を描くことはできず、成長する意欲もわかないでしょう。また、従業員が正当な評価を受けられないと感じてしまうと、退職につながる可能性もあります。
育成が上手くいっていない場合は、現在の人事評価制度を確認してみることも大切です。
実際に部下を育成するのは、直属の上司の役目です。しかし、以下のような特徴を持つ上司だと育成に失敗しやすくなってしまいます。
育成していく中で、全く失敗をしない部下はいませんが、そうした失敗に対して怒りの感情をぶつけたり、呆れたような態度を示したりすると、部下は上司や仕事に対して萎縮してしまいます。
育成段階において、時には叱ることが必要な場面もあるかもしれませんが、怒りをぶつけるような感情的な叱り方は得策ではありません。適切な指導をするためには、理性を保った接し方が求められます。
失敗を懸念して簡単な仕事や責任の軽い仕事ばかりを割り振ってしまうと、部下の成長にはつながりません。時には成長のために、成果を出すのが難しい仕事を割り振るのも上司の大切な役目になります。
平易な仕事ばかりを与えていると、部下の成長につながらないだけでなく、上司からの信頼に不信感を抱いてしまうこともあります。失敗する可能性があったとしても難易度の高い仕事を行う機会を作り、適切にフォローをしながら壁を越えさせる経験も大切です。
頭ごなしに部下の仕事のやり方を否定したり、自分のやり方を押し付けたりするような自分本位な上司では、部下との信頼関係は築けません。考え方も仕事の進め方も、それぞれの個性があります。コミュニケーションを取りながら、部下の個性に合った指導を行うことが求められます。
また、コミュニケーションをうまく取れないと、育成する側の上司とされる側の部下との間で指導に対する感じ方に齟齬が生まれてしまうケースもあります。相手の気持ちによりそえない上司では、うまく部下を育成するのは難しいでしょう。
部下の育成を成功させるために意識すると良いポイントは、以下の3点です。
それぞれの事項について解説していきます。
部下に対して「いつまでにどのようになってほしい」のか、ゴールを明確にすることが大切です。目標を言語化したうえで、いつまでにどのようなスキルを所持して、どのようなポジションに就いていてほしいのか、細分化していきます。ゴールが明確になれば、今何をすべきか、何を優先して取り組むべきかが見えてきます。
また、ゴールが設定されていることで、現在の進捗状況や改善すべき点もわかりやすくなります。KPIを設定して具体的な数字を用いるなど、上司と部下が二人三脚でゴールを目指せるような仕組み作りが大切になります。
会社が人材育成を行う目的は、自社にとって戦力となる人材を育てることです。そのために、部下に対して適切なサポートを心がけましょう。
適切なサポートとは部下の個性に応じて変わってきます。コミュニケーションを多めに取る方が良い人もいれば、どんどん難しい仕事にチャレンジさせた方が良い人もいます。大切なのは、部下をよく観察し、性格やスキル、仕事に対するモチベーションを把握することです。部下のパーソナリティーを理解し、パフォーマンスが発揮しやすい環境を作ることが大切です。
現在、管理者向けの研修サービスが多く提供されています。チームマネジメントが学べるものや、コンプライアンスやロジカルシンキングが学べるものなど、さまざまです。
人材を育成するのは簡単ではありません。自分も成長する気持ちで研修を受講し、必要なスキルを身につけ、適切な育成につなげていきましょう。
研修にはコストがかかりますが、自分に不足しているスキルをピンポイントで受けられる研修などもあります。会社と相談して進めていくと良いでしょう。
企業の成長や存続には人材が不可欠ですので、積極的な人材育成が求められます。育成を成功させるために、まずは以下の3点から取り組んでみてください。
人材育成を成功させるためには、適切な体制の整備が不可欠です。育成を行う社員が育成にかける時間を確保できるように、組織全体で仕事の割り振りを見直す、育成組織を整える専門部隊を用意する、外部講師を採用するなどの手段が考えられます。他にも研修マニュアルの作成やツールを活用して業務を効率化させ、育成時間を捻出する方法もあります。育成する上司側の業務量が過多にならないように、組織全体で育成をサポートする体制を整えましょう。
長期的な視点を持って、人材育成に対して時間と予算をかけていくことが大切です。
育成すべき人材が前向きに取り組めるように人事評価制度を見直すことも大切です。スキルアップや成長した従業員に対して適切な評価ができない評価体制では、仕事に対するモチベーションも上がらず、自発的な学びにもつながりません。スキルが伸びた従業員を適切に評価できる制度になっているか、改めて確認してみてください。
また、指導を行う上司側に対しての評価も同様です。部下を育成したことが評価される体制を整えなければ、現場での育成が後回しになってしまう恐れもあります。評価基準の項目に人材育成の欄を追加し、目標を設定すると良いでしょう。
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人材育成を行う手段は多種多様です。現場で上司に付きながら学ぶ「OJT」や、対象の人材を集合させて研修を行う方法もあります。大切なのは、現場の状況を考慮して最適な育成方法を考えることです。
現場が多忙にも関わらず、人材育成のために研修で社員を集めてしまっては、現場から不満が出てしまいます。昨今では「eラーニング」を用いた研修も広がりを見せています。eラーニングを活用すれば、隙間時間にどこからでも受講が可能になります。さまざまな研修形態を予算等も考えながら検討すると良いでしょう。
求める人材像に対して学ぶ内容を細分化させ、どのような育成手法が良いかを企業として考えることが求められます。
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部下の育成に失敗すると、信頼を失ってしまうばかりか、会社としても大きな損失を受けてしまいます。会社にとって人材は持続的に活動していくうえで欠かせない存在です。
現場に育成を丸投げするのではなく、会社が一丸となってサポートできる体制を整えることが大切です。適切な育成方法を実施するためにも、取り組むべきポイントを明確にしながら進めていきましょう。