将来の企業や組織を牽引する幹部候補の育成は、経営者や人事担当者の悩みの種となりやすいものです。会社の将来に大きく影響する事案でありながら、どうすれば求める幹部を育成できるのかはっきり分からない場合があるためです。
そこで今回は、幹部候補を選抜したり、育成したりする方法や、幹部候補に必要なスキル、幹部育成に活用できるサービスについて解説します。
目次
幹部候補とは企業において将来的に上位管理職や要職に就き、成果を出すことを期待される人材のことです。
幹部とは組織の中心を担う人のことで、一般企業の他、公務員や自衛隊などでも同じように表現されます。
幹部候補が必要になる理由は次の通りです。
企業や組織では、上記の理由から新たな人材を確保するのが難しくなっている状況です。
しかし、現在の経営陣しか経営の方向性のかじ取りができない場合、トラブルや経済状況などへの対応が難しくなる他、将来の企業の成長スピードが鈍化したり、企業・組織の弱体化につながったりする恐れがあります。
最悪の場合、企業が倒産する憂き目に合うケースもあります。企業や組織を存続させるためにも、幹部候補となる人材の獲得・育成が重要視されているのです。
幹部候補に求められるスキルとはどのようなものなのでしょうか。必要な能力は多岐にわたるため、主に求められるスキルを一例として紹介します。
リーダーシップとは、先頭に立って周りや組織を引っ張る力のことです。
リーダーシップを発揮して業務を遂行するためには、周りの人から信頼され、目標のために部下を導いたり、サポートしたりしなければなりません。
部下が付いていきたいと感じるような人間的魅力や仕事力があれば、幹部候補としての適性があるといえるでしょう。
幹部候補には課題発見力や課題解決力も求められます。
課題発見力とは、日々の業務で発生する課題を見つける能力のことです。そして、見つけた課題の原因を究明して解決するスキルが課題解決力です。
業務を進める上でトラブルが発生することは多々ありますが、どのように対応して解決するかが重要になります。
また、潜在的なリスクから発生の可能性があるトラブルを予見したり、未然に防いだりする力も必要です。
正しい情報を集めて俯瞰的な視点から判断する力があれば、周りや部下を正しい方向に導くことができるでしょう。
幹部候補にはロジカルシンキングの能力も求められます。
ロジカルシンキングとは、ある事象に対して矛盾がないように順序立てて考えたり、体系的に整理して考える方法です。「論理的思考力」と呼ばれることもあります。
ロジカルシンキングが求められるのは、複雑な問題に対処して効果的な解決策を見つけるために必要だからです。
ロジカルシンキングができれば、事実に基づいた合理的な意思決定が可能になる他、感情に左右されないため、意思決定の根拠が明確になります。
明確で説得力のあるコミュニケーションができれば、組織を成功に導きやすくなるでしょう。
幹部候補にはストレスに対する耐性も必要です。
リーダーや管理職として組織を導く立場では、大きなプレッシャーが掛かる状況で意思決定をする必要があるためです。
また、一般社員のような勤怠管理ではなくなる場合もあり、勤務時間が長くなることも少なくありません。
幹部候補には、ストレスが掛かりやすい環境で自分の精神を保ち、かつ健康も管理できる能力が求められます。
幹部候補に求められるのがコミュニケーション能力です。
幹部ともなると取引先や他の部署の幹部、自社以外の関係者など、さまざまな場面で社内外の人物とコミュニケーションを取る機会があります。
立場上、少しのコミュニケーションで相手の意図をくみ取る必要に迫られる場合がある他、コミュニケーションが部署全体の方向性やビジネスに影響を与えるケースもあります。
周囲との信頼関係を築きやすくなり、業務の円滑化につながるため、コミュニケーションスキルは欠かせない能力の1つといえるでしょう。
幹部候補にどのようなスキルが求められるのか理解したところで、実際に幹部候補をどのように選べばいいのでしょうか。
具体的な選抜方法は以下の通りです。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
幹部候補は、経営陣や人事部、従業員などから、社内で推薦を受けて選抜する場合があります。
実務能力が高い人物や周りからの評価が高い人物が選ばれる場合がほとんどです。自社について理解した従業員からの推薦となるため、会社の方針から外れた人材が選ばれるリスクが少ないというメリットがあります。
ただし、社内推薦では選ぶ側の視点に注意しなければなりません。
直属の上司が現場に残したいと考えるばかりに、優秀な社員を推薦しない可能性がある他、経営層が実務の様子をはっきり把握せずに人材を推薦するケースも考えられます。
上記のようなリスクがあることを把握した上で、社内推薦を行うかどうか判断しましょう。
社内公募とは、幹部候補を社内で募集し、立候補した人物を選抜する方法です。
自発的な姿勢があるため、人材育成の効果が高くなりやすいのがメリットです。
また、自社内の人材であれば、組織内で培ってきた経験や知識を生かしやすく、幹部に必要な要件を満たしやすいといえます。
ただし、幹部候補としてふさわしい人物かどうかは、しっかり見極める必要があるでしょう。
幹部候補を外部から獲得するのも1つの方法です。
経験豊富な人材を中途採用で獲得したり、新卒者を幹部候補として採用したりする方法があります。
中途採用の場合、経験や実績があるケースが多いため、育成コストが掛からないメリットがあります。一方、組織でのやり方になじめない場合は退職する恐れがあります。
新卒採用は社会経験がほぼないため、自社のカルチャーに染まる人材を育成できるのがメリットです。ただし、実際に幹部となるまでにかなり時間が掛かるというデメリットがあります。
ここでは、幹部候補を育成する方法を解説します。具体的な人材育成の手順は次の通りです。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
幹部候補の育成や選抜の前段階として、幹部に求める要件を明確にする必要があります。
どのようなポジションに幹部候補を置くのか、幹部として何を求めるのかをはっきりと決めることが大切です。
その際、企業の経営戦略や将来的なビジョンを考えながら、どのような特性が必要かを考えます。要件が決まったら、あわせて人事の評価制度も整備しておくといいでしょう。
中長期的な視点でさまざまな視点から議論するようにしましょう。
ポストや幹部に求める要件が決定したら、幹部候補を選抜します。
選抜に対して不満が出ないよう、できるだけ公平な選抜プロセスを考えることが大切です。
また、自社内に幹部候補になりうる人材がどれくらいいるのか、事前に把握しておきましょう。自社内の人材だけでは物足りない場合は、外部から人材を獲得することも考えなければなりません。
要件に合った幹部候補を選抜するために、適切な選抜方法を選びましょう。
幹部候補の選抜が完了したら、候補者を育成する具体的な方法を決めていきます。
習得してほしいスキルや学んでほしい知識に合わせて、最適かつ効率的な方法を組み合わせることが大切です。
なお、幹部候補を育成する場合、経営戦略やマネジメントスキルなど求められる能力を網羅できる育成計画であることが求められます。具体的な取り組み例は次の通りです。
育成計画が立案できれば、実際に育成を開始します。育成中は上司や先輩社員からの指導やアドバイスを受けられる機会を提供したり、フィードバック、フォローができるような環境を整えたりしましょう。
また、短いスパンでの育成目標の設定や、育成の成果に対する評価基準なども整備する必要があります。
幹部候補が自らスキルアップして成長できるよう、環境整備と適切な教育の提供を意識しましょう。
育成計画を推進しながら、候補者への評価やフィードバックを行います。候補者がどのように成長しているか、どのようなポイントを改善する必要があるか、育成側の立場として意見したり、アドバイスを提供したりします。
また、育成計画が適切だったか評価することも重要です。
効果が薄い、適切ではないと判断された育成方法については、内容や方法を再検討して改善する必要があります。
なお、育成から離脱してしまった候補者に対してはフォローやサポートを欠かさないようにしましょう。
最後に、幹部候補の育成に活用できるサービスを紹介します。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
株式会社インソースが提供する「insource コア・ソリューションプラン」では、さまざまな組織の課題を解決に導いてきたプランを紹介し、各社の悩みにあわせた最適なプランの紹介をしてくれます。
幹部候補育成に活用できる研修としては、次期幹部候補の管理職を対象に、経営に必要なスキルを習得できる「幹部候補の考え抜く力を鍛え経営力を強化するプラン」があります。
年6回の研修を通じてクリティカルシンキング(批判的思考)や多面的な思考力を習得できるよう設計されているのが特徴。さまざまな思考のフレームワークを学ぶことができ、回を重ねるごとにレベルが上がる研修で無理のないステップアップが可能です。
コア・ソリューションプランでは幹部候補の人数や幹部育成の予算に合わせて、最適な方法やコストになるようプラン内容を提案してもらえるため、安心して研修を利用できるでしょう。
他にも、変革マインドを醸成する研修プランや、管理職を目指す意識を醸成する研修プランなど、さまざまな研修プランが提供されています。
参考:管理職向け 幹部候補の考え抜く力を鍛え経営力を強化するプラン|insource
株式会社日本能率協会コンサルティングが手掛けるJMACラーニングでは、次世代の経営人材候補を対象に、視野・視座・視点を経営陣と対等なレベルにまで引き上げることを目的にした研修サービス「次世代経営人材育成研修」を提供しています。
研修終了後にはこれまでの視野の狭さを把握できる他、強い課題認識を持つことができます。
インプットと実践的なアウトプットに加え、経営陣を交えたアプトプットの場を設けるのが特徴。経営トップとの直接的なやりとりを通じて、幹部候補としての自覚を高められるようになります。
参考:~次の経営幹部候補育成を狙う~「次世代経営人材育成研修」|JMACラーニング
株式会社リンクアンドモチベーションでは、経営視点を持った幹部候補を育成するための研修サービス「リンカーン・プロジェクト」を提供しています。
経営者と現場の間に企業経営の問題があり、その間をつなぐことが幹部に求められる役割であるという前提のもと、必要なスキルや知識を習得できる内容になっているのが特徴です。
具体的には、経営幹部に求められるビジョンマネジメントや戦略マネジメント、PDCAマネジメント、メンバーマネジメントの知識とともに、ビジョンを実現するための総合的なスキルを学べます。
幹部候補の育成は多くの企業や組織にとって至上命題となっています。また、人材の確保が難しい現代においては、できるだけ早く幹部候補育成に取り組むべきといえます。
求められるスキルや選抜方法、育成方法を理解して、将来の経営を任せられる幹部の育成に着手しましょう。
また、幹部候補の育成には民間のサービスを利用するのも1つの方法です。自社の育成方針に合致したサービスがあれば、積極的に利用してみましょう。
本記事では幹部候補の育成に焦点を当てましたが、リスキリングナビでは本記事の他にも人材育成に関するコラムを多数掲載しています。
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