デジタル技術の急速な発展により、目まぐるしく環境が変化する現代においてDX人材は欠かせない人材となりつつあります。一方、DX人材の必要性は理解していても、DX人材の詳しい定義や具体的な育成方法がイメージできない方もいるのではないでしょうか。
そこで今回は、DX人材の定義や具体的な育成方法について解説します。記事を読めば、DX推進の体制づくりから育成の手法、社外とのネットワーク構築まで網羅的に把握できるでしょう。また、後半ではDX人材の育成に取り組む企業の事例を3つ紹介しています。ぜひ最後までお読みください。
目次
一般的にDX人材とは、DXを推進してビジネスや組織を変革することを目指し、デジタル技術を適切に活用できる人材といわれています。DX人材について明確な定義はありませんが、企業がDXを推進し激しい競争環境で優位性を確立するために欠かせない存在です。
DX人材に必要なスキルについては、下記ページで詳しく解説しています。あわせてお読みください。
関連記事:DX人材に必要なスキルとは?日本企業における人材不足の課題と育成方法
経済産業省によれば、DXの定義は以下のようになっています。
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」
一般的にDXとは企業がAIやITなどのデジタル技術を活用し、新たなビジネスモデルの創出や組織の変革を実現することです。業界を問わず、あらゆる企業や個人がDXを進めています。
どのような分野でもデジタル技術を導入すれば、生産コストの抑制や生産性の向上、業務の効率化といった効果が見込めるでしょう。近年では国をあげてDXの人材育成に取り組んでおり、2022年3月には経済産業省と独立行政法人情報処理推進機構(IPA)によりデジタル人材育成プラットフォーム「マナビDX」が開設されました。
参考:経済産業省|デジタル人材育成プラットフォーム「マナビDX」を開設しました!
DX人材が求められる背景の一つは、将来的なIT人材の人手不足です。経済産業省の「IT 人材需給に関する調査 」によると、2030年には最大約79万人のIT人材が不足するとされています。
参考:経済産業省|みずほ情報総研株式会社「-IT 人材需給に関する調査-」
また「令和4年版情報通信白書」によれば、日本の企業がDXを進める際の課題や障壁の調査(複数回答可)結果において「人材不足」という回答が最も多く、回答者の割合は67.6%です。次いで「デジタル技術の知識・リテラシー不足(44.8%)」「アナログな文化・価値観が定着している(32.6%)」の順に多くなっています。
参考:総務省「令和4年版 情報通信白書 | 第二部 第8節 2-(1) デジタル・トランスフォーメーション(DX)
以上の背景により、近年では企業のDX人材育成が急務となっており、政府も国をあげてさまざまな支援をおこなっています。
DX人材の育成方法として、以下の6ステップがあげられます。
それぞれ具体的に解説します。
まずは社内でDXの推進体制を整えることが重要です。組織全体で協力してDXを推進しなければ、人材育成の効果を発揮しにくくなります。自社におけるDXのビジョンや目標を明確にし、人材戦略に取り入れましょう。DXの推進体制を整えることで、リーダーシップや組織文化を確立し、従業員の学習意欲や当事者意識を高められます。
企業によっては外部の専門機関と提携して人材育成を進める必要があります。DXの人材育成をおこなう場合、社内だけでは最新の技術やトレンドに追いつき、正しい情報を従業員に伝えることが難しい場合があるためです。
DX人材育成に関連する外部のコンサルティング会社や専門機関などに協力を仰ぎサポートを受けることで、効果的なDXの人材育成プログラムを作成できるでしょう。従業員はDXのスキルや知識を効率的に学べます。また外部の視点からアドバイスやフィードバックを受ければ、人材育成のノウハウを吸収できる可能性もあり、自社に多くのメリットをもたらします。
下記のページではDXの人材育成をおこなうパートナー企業を一覧で掲載しています。気になる方はぜひご覧ください。
実際にDX人材の育成に取り掛かる前にスキルを可視化し、従業員一人ひとりのレベルを把握することが重要です。スキルを可視化すれば、自社や従業員における現状と目標のギャップが明らかとなります。これにより個人のレベルと意欲に合わせた育成プログラム作成や、DX推進に向いている人材の発見につながるでしょう。
スキルを可視化したい場合はスキルマップなどを用いると効果的です。DX人材に向いている従業員を選出することや、具体的な研修プログラムを作成する際に役立つでしょう。
関連記事:デジタル人材のスキルマップとは?導入目的や事例、おすすめの資格を紹介
次にカリキュラムをもとにオンライン講座やeラーニングなどを活用してスキルをインプットします。座学でスキルの基礎的な知識を身につけて、組織全体のリテラシーを高めることが可能です。
スキルの可視化で分かった従業員のレベルや学習進捗、モチベーションに合わせて受講してもらう講座を割り振りましょう。座学でインプットすれば、DX人材が必要とするデジタル技術やビジネスモデルなどの知識や理論を理解でき、社内のDX推進施策に対応する力が身につくでしょう。
座学でインプットしたスキルは、OJTによる実践的な経験やフィードバックで定着させます。OJT(On the Job Training)とは、実際のプロジェクトや課題に取り組みながら、スキルをアウトプットできるトレーニングのことです。OJTでスキルを定着させることで、自分の業務でDXをおこなう力が身につくでしょう。
社外とのネットワークを築くこともDXの人材育成に必要な取り組みです。最新の技術やサービスを紹介している会社と交流すれば、デジタル技術のトレンドを知るきっかけとなります。DX関連のコミュニティーに参加すれば、各社におけるDX人材の事例などについて情報交換をおこない、自社の人材育成に活かせる視野や発想力を広げられます。
また、自社の従業員が他社の従業員とDXをビジネスに活かすコンペを開催することも効果的です。社外とのネットワークを築くことで、DX人材は刺激や競争意識を持てるでしょう。
ここではDXの人材育成の事例3選を紹介します。
ここからは3つのDX人材育成事例を詳しく解説します。
関連記事:人材育成によくある課題とは?6つの解決方法と成功事例を紹介
キリンホールディングス株式会社は、キリングループの従業員を対象に「キリンDX道場」を提供しています。キリンDX道場はキリンホールディングス独自のDX人材育成プログラムで、コースは「白帯(初級)」「黒帯(中級)」「師範(上級)」の3つです。それぞれのコースで学べる内容は以下のとおりです。
師範コースの講座は、自分の担当領域においてデジタルリテラシーを身につけるものです。たとえば、マーケティング業務を担当している場合はSEOやSNS広告、データサイエンスなどのスキルを学びます。師範コースを修了した従業員は、自分の担当領域でDX推進を先導できる人材となるようです。
キリンホールディングスの詳しいDXの人材育成について気になる方はぜひ下記ページをご覧ください。
リスキリング事例:キリンホールディングス株式会社
参考:キリンホールディングス|DX人材育成プログラム「キリンDX道場」を7月から開校 | 2021年リンクテキスト
ダイキン工業株式会社は、データサイエンティストなどのDX人材育成を目指して「ダイキン情報技術大学」を設立しています。ダイキン情報技術大学は新入社員から既存社員、役員まで幅広い層の従業員を対象とした人材育成プログラムです。
たとえば新入社員1年目は、データサイエンティストに求められる3つの基礎スキルが「見習い」レベルになることを目指しています。前半は座学中心の講義をおこない、後半は課題解決型中心の演習を実施します。またITパスポートや統計検定2級などの資格取得を促し、従業員の習熟度を確認する工夫もしています。
株式会社みずほフィナンシャルグループは、全社員に向けてDXに関する人材育成をおこなっています。DXの基礎的な知見を学べるオンライン研修や、ITパスポートやデータサイエンティスト検定などの外部資格の取得支援などを実施しています。自社のDX推進に意欲のある従業員に対しては、実践も含めたハイレベルな研修プログラムを揃える予定としています。
また2023年1月に開催された「金融データ活用チャレンジ」にも協賛・参画しています。金融データ活用チャレンジは、みずほを始めとしたさまざまな金融機関のグループ企業が協賛し、デジタル庁が後援したコンペティションです。このコンペティションの開催により、データ分析スキルの育成や未来を担う人材の発掘につながったとしています。
参考:みずほフィナンシャルグループ|DX人材の育成と発掘をめざしてイベントを開催(MIZUHO DX)
DXの人材育成や具体的な方法6ステップ、事例3つを解説しました。DXに知見やノウハウがない場合、DX人材の育成を専門とする企業と提携することで、より効果的にDX人材を育成できるでしょう。DX人材育成のパートナー企業をお探しの方はぜひ下記ページをご覧ください。