デジタル人材のスキルマップとは?導入目的や事例、おすすめの資格を紹介

公開日:2023.06.22 更新日:2023.06.22

デジタル技術の活用がビジネスの成否を左右するため、どの企業もデジタル人材の獲得や育成に力を入れていますが、その際に役立つツールがスキルマップです。今回はデジタル人材のスキルマップとはどういったものか、導入目的や事例、デジタル人材育成におすすめの資格をご紹介します。

デジタル人材とは

デジタル人材とはデジタル技術を駆使してビジネスに貢献できる人材です。狭義ではAI、IoT、ビッグデータといった先端技術に携わるエンジニアのみを指しますが、広義ではこのようなエンジニアに限定されない、デジタルスキルを有する幅広い人材を含みます。

デジタル人材のスキルマップ

スキルマップとはどういったものかについて説明した後、スキルマップを導入した東京都の事例を取り上げます。

スキルマップを導入する目的

業務で求められるスキルと各社員の持つスキルを一覧にした表をスキルマップ(スキルマトリックス)と呼びます。一口にデジタル人材といっても、部署やメンバーごとに役割・必要とされるスキルは異なります。また、同じ職種のメンバーであっても得意・不得意があります。これらの情報の正確な把握は、人材の適正配置や能力開発に欠かせません。

スキルマップには社員のモチベーションを向上させる効果もあります。スキルマップを用いたメンバーのスキルの可視化により、自分とほかのメンバーとを比較して自分はどこが足りないのか、どういった強みを持っているのかが分かり、学習意欲が高まります。デジタル人材についても、このスキルマップが導入されるケースが増えています。

デジタルスキルマップ(東京都デジタルサービス局)

2022年2月に公表された「デジタル人材確保・育成基本方針」の中で、東京都はデジタルスキルマップの導入を明らかにしました。デジタルスキルマップによってICT職に必要なデジタルスキルを把握し、どの分野の人材が不足または充足しているかを可視化するとともに、人材育成のための研修メニューの決定や人材確保の際に人材に求めるスキルの明確化にもスキルマップを活用したい考えです。

東京都は行政サービスのデジタル化が遅れており、デジタル人材の確保・育成によって、行政サービスの質を向上させるとしています。東京都におけるデジタル人材(ICT職・高度専門人材・リスキリング人材)のうち、ICT職(ICT活用に関するコンサルティング、業務システムの企画・運用などを担当)は2021年度に採用が開始され、「都政とICTをつなぎ、課題解決を図る人材」としてDX推進をリードすることが期待されています。

東京都のデジタルスキルマップは、スキル項目とジョブタイプを定義しています。スキル項目には業務遂行に必要な22のスキル項目とスキルごとに4段階のレベルを設定、ジョブタイプには10種類の職種と職種ごとに備えるべきスキル項目およびレベルを定義・達成度を可視化します。

出典:東京都デジタルサービス局「東京都デジタル人材確保・育成基本方針」

たとえば、ジョブタイプでデータサイエンティストに求められるスキル項目は5つあり、高度な知識・スキルが必須のものとして「データアナリティクス」「データエンジニアリング」、基礎的な知識・スキルが必須のものとして「AIエンジニアリング」、基礎的な知識・スキルが望ましいものとして「サービスデザイン」「プロジェクトマネジメント」が挙げられています。

東京都デジタルサービス局「東京都デジタル人材確保・育成基本方針」を加工して使用

スキル指標の「データアナリティクス」というスキル項目は、「データ」という分類に含まれ、「数学/統計学等のスキルを有し、データ分析から得た洞察を可視化して還元する」と定義されています。そして、スキル項目ごとに、基礎知識がなく、実践経験もない「レベル0」から、行動な専門知識を有する「レベル3」まで4段階のレベルが設定されています。

東京都デジタルサービス局「東京都デジタル人材確保・育成基本方針」を加工して使用

22のスキル項目はManagement、Specialty、Engineering、Foundationの4分野に分かれ、職層ごとに備えるべきスキルおよびレベルがモデル化されています。職員は主事、主任、監督職、管理職と職位が上がるにつれて、Management分野の高いスキルが求められます。

出典:東京都デジタルサービス局「東京都デジタル人材確保・育成基本方針」

デジタルスキルマップは、組織・職員の能力向上・パフォーマンス最大化を実現するタレントマネジメントへの発展も視野に入れ、マクロ視点とミクロ視点の2つから活用します。

出典:東京都デジタルサービス局「東京都デジタル人材確保・育成基本方針」

マクロ視点では、スキル項目・レベルを集計し、上位レベル保有者が不足する場合は、高度専門人材を即戦力として登用する、もしくは中位レベルの職員を重点的に育成します。ミクロ視点では、職員が現在保有するスキルレベルと、目指すジョブタイプに求められるスキルレベルとのギャップを可視化し、上長との1 on 1などを通じ 、スキルレベル向上を図ります。また、プロジェクトに求められるスキルを持つ人材の選抜および適正配置に生かします。

デジタル人材になるためにおすすめの資格

デジタルスキルを身に付けるための方法にはさまざまなものがありますが、資格取得に取り組んでみるのもおすすめです。ここでは、ITパスポートと情報セキュリティマネジメント試験の2つをご紹介します。

ITパスポート(略称:iパス)

ITパスポートは、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が実施する、ITの基礎知識を証明する資格です。AI、ビッグデータ、IoTなどの先端技術やアジャイルなどの新しい手法、経営戦略やマーケティングなどの経営全般、セキュリティやネットワークなどのIT分野、そしてプロジェクトマネジメントといった多岐にわたる分野の知識が試験で問われます。

試験時間は120分、出題される問題数は100問です。ストラテジ系(経営全般)から約35問、マネジメント系(IT管理)から約20問、テクノロジ系(IT技術)の3分野から約45問が出題されます。合格基準は総合評価点が1,000点中600点以上、かつ各分野の評価点がいずれも300点(満点は1,000点)以上でなければなりません。つまり、合格するためには全体で約6割、各分野で約3割の問題に正答する必要があります。

受験手数料は7,500円(消費税込み)、クレジットカード、コンビニエンスストア、バウチャーの3つの中から支払方法を選択できます。バウチャーは、受験料の支払いに使用可能な電子的な前売りチケットで、発行後1年間有効です。ITパスポートはCBT(Computer Based Testing)方式を採用しており、本試験の場合は 試験会場のコンピューターを利用して試験問題に解答します。腕時計を含む時計は試験室内への持ち込みが禁止されていますので注意しましょう(試験の残り時間は受験画面上に表示されます)。

ITパスポートは企業の人材育成などに幅広く利用されています。たとえば、プルデンシャル生命保険株式会社はITパスポート試験の受験を奨励しています。社内各部門とシステム部門の連携によるIT活用を実現するため、部門に関係なく、ITリテラシーを高めるツールとしてITパスポート試験の受験を推進しています。試験の学習を通じて得たITリテラシーは、システムに対する理解を促し、サービスや業務効率の向上に貢献しているそうです。

情報セキュリティマネジメント試験

IPAが実施する資格の中でITパスポートと併せておすすめしたい資格が、情報セキュリティマネジメント試験です。情報セキュリティの重要性が増す昨今、取得を目指されてはいかがでしょうか。

情報セキュリティマネジメント試験は、組織の情報セキュリティ確保に貢献するための基本的なスキルを認定する試験です。本試験では、情報セキュリティに関する基礎的な知識を有し、部門の情報セキュリティ対策の一部を独力、または上位者の指導の下で実現できるレベルが求められます。試験時間は120分、問題は多肢選択式(四肢択一)の科目Aと多肢選択式の科目Bの合計60問が出題されます。受験料は7,500円(消費税込み)です。CBT方式により随時実施されています。

城北信用金庫は、情報セキュリティマネジメント試験を情報リテラシーの底上げに活用しています。同金庫は、本試験は現実的な設定に基づいた内容であり、自分で考える力を養うために適していると評価しています。金融機関は情報漏洩などのリスクに常にさらされており、そのようなリスクに気づく力を受験を通じて身に付けてほしいと考えているそうです。

まとめ

今回はデジタル人材のスキルマップについてご紹介しました。デジタル人材といっても、役割によって期待されるスキルの種類やレベルはさまざまです。スキルマップを導入し、デジタル人材の採用・育成に取り組んでみてはいかがでしょうか。

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