【事例あり】IT業界の働き方改革|メリットや具体的な行動例も解説

公開日:2024.01.16 更新日:2024.01.16

働き方改革の重要性が叫ばれる現在、IT業界も例外ではありません。働き方改革の目的の一つは企業と従業員の関係性をよりよいものにすることであり、激務が常態化しているIT業界にこそ必要だとも言えるでしょう。今回は、IT業界における働き方改革の重要性やメリット、具体的な行動例について紹介します。

IT業界における働き方改革の重要性

働き方改革が実現すれば、企業の将来性は確実によりよい方向に進みます。ここでは、IT業界における働き方改革の重要性について解説します。

需要が増すIT人材を確保できる

近年、企業のDX推進の取り組みが促進されていますが、現状ではDXを十分に活用できている企業は多いとは言えない状況です。DXを進めるにあたっては、質の高いIT人材が必要となりますが、今後のIT人材の需要に対して人手は不足していく状況が推測されています。

出典:「IT 人材需給に関する調査」(経済産業省)

IT業界で活躍する貴重な人材が、長時間労働など過酷な職場環境を要因として離職してしまうのは、社会的にも企業的にも大きな損失です。働き方改革を推進することで労働者が心身ともに健康に働ける環境を整えれば、離職率が下がると共に、採用率の向上も期待できます。

働き方改革によって新しい価値観が生まれる

働き方改革の実現によって、これまでIT業界では見られなかった新しい価値観の創出に繋がる場合があります。たとえば、昨今、耳にする機会が増えた男性の育休に対する周囲からの理解も「新しい価値観」の一つだと言えます。エンジニアなどの職種においては、人手不足から育休取得を躊躇する人も少なくありませんが、このような意識の変化も働き方改革がもたらす恩恵のひとつです。

働き方改革がもたらす恩恵のひとつです。

働き方改革で生産性が向上する

生産性の向上は、働き方改革がもたらす特に重要な効果のひとつです。たとえば、外国人労働者の受け入れも生産性向上につながります。IT業界において、高い技術力を持つ外国人労働者も多く、エンジニアとして活躍している例も少なくありません。外国人労働者を適切な労働条件で雇用し、公平に業務にあたれる環境を整えることで、彼らの高い技術力が活かされ、生産性の向上が期待できます。また、前述したIT人材不足の解消の一助にもなります。

IT業界で働き方改革を実践する3つのメリット

IT業界での働き方改革の重要性に続いて、メリットについて解説します。

従業員がプライベートの時間を増やせる

IT業界において特に問題視されるのが、長時間労働です。長時間労働を強いられることによって、家族と過ごす時間やリフレッシュできる時間を確保できない従業員は少なくありません。働き方改革を推進し、労働時間が減少すれば、家でゆったりと寛ぐ時間も増え、適度な息抜きができます。趣味を持ったり、家族や友人と娯楽を共有したりする時間ができれば、業務にも気持ちを切り替えてあたることができます。業務効率も向上していくでしょう。

従業員の離職防止に繋がる

IT業界に限った話ではありませんが、従業員が何らかの理由で健康に働けなくなってしまうケースもあるでしょう。たとえば、子育てや家族の介護などやむを得ない家庭の事情によって出勤が難しくなった時に、リモートワークの制度があれば、従業員は都合に合わせて働き方を選択できます。IT業界は比較的リモートワークを取り入れやすい業態と言えますので、企業側が理解を示し、従業員が働き続けられる環境を整えることで、貴重な人材の離職防止に繋がります。

なお、特定の従業員に対する特別扱いという認識を与えないために、周囲の社員に対する配慮も忘れないようにしましょう。従業員が安心して働き続けられるように、よりそう姿勢が大切です。

優秀な人材を得やすくなる

積極的な働き方改革は自社のブランディングに繋がります。働きやすい企業だと認識されれば、優秀な人材からのアプローチが増し、人手不足の解消が期待できます。IT企業ではどれだけ先進的な事業を行っているかという点も求職者のリサーチポイントですが、働きやすさや、いわゆる「ホワイト企業」を求めている人が多いのも事実です。優秀な人材を確保するためにも、積極的な働き方改革は必要不可欠と言えるでしょう。

IT業界の働き方改革を実践するための具体的な行動

IT業界において働き方改革を実践するために必要な行動について解説します。

上層部が率先して働き方を改善する

従業員が働き方改革を実践しやすいように、上層部が自ら働き方を変える必要があります。たとえば、定時退社を促す制度を作ったとしても、上司が残業していては部下は退社しにくいでしょう。上司が率先して働き方改革を実行する姿勢を見せるとともに、従業員全員に働き方改革に関する知識や意識を浸透させることが大切です。

残業時間をこれまでより厳しく管理する

IT業界で常態化している残業については、まずは厳しく管理する体制が必要です。1分単位で残業時間を申請する制度を設ける、「みなし残業制度」を撤廃するなど、従業員全員が残業時間への意識を高める必要があります。従来以上に厳しく残業時間を管理し、残業して当たり前という風潮がなくなるように努めなければいけません。それとともに日々のタスク管理の徹底を促すことも重要です。

業務経験者をアサインし業務効率化を図る

長時間労働の原因の一つとして挙げられるのが、業務効率の悪さです。業務効率を上げるためには、経験者や有識者のアサインが欠かせません。新規プロジェクトを立ち上げたり、新しい顧客からの提案を受けたりした時に、知識も経験もないメンバーで対応するのは望ましくありません。わからない事を1から調べたり、徒労に終わってしまうかもしれないトライアンドエラーを繰り返したりしていては、労働時間は無駄に長くなってしまいます。新規案件に取り組む際には、その業務に詳しい人材、あるいは経験者をアサインしましょう。顧客側の有識者から意見をもらうのも良いでしょう。ゼロイチでスタートするのではなく、土台を固めてから業務を進めることが肝要です。

開発作業の前に顧客とのすり合わせを密におこなう

システム開発をおこなう前に、顧客と念入りにコミュニケーションを取ることも作業の効率化や長時間労働の是正に繋がります。開発の前段階であれば容易に修正できる部分も、ある程度進行してからストップがかかれば全てやり直しになってしまいます。顧客が求めているものを事前に明確にしておきましょう。大事なのは、作業に取り掛かる前に話し合いを重ねることです。これを疎かにすると、途中まで開発していたものが全て台無しになるといった惨事が起きてしまいます。顧客との意思疎通は必ず怠らないようにしましょう。

従業員のスキルを上司が把握しておく

上司は従業員のスキルをしっかり把握しておきましょう。たとえば手が足りなくなった時、迅速にふさわしいスキルを持った人材をアサインする必要があるからです。誰がどのくらいのスピードで環境に適応しているのか、これまでのプロジェクトでの成果はどの程度だったかなど、個々のスキルを把握しておけば、何かあった時でも即座に対応できます。

また、従業員のスキル把握は横の繋がりから知ることもできます。上司だけで把握しようとせず、エンジニア同士で密に連携をとったり、意識的にコミュニケーションを増やす機会を設けたりするなど、意思疎通の図れる職場環境を意識して整えましょう。もちろん、上司と部下の間で話しやすい雰囲気を作っておくことも重要です。

働き方改革の一環としてリモートワークを取り入れる

リモートワークは今となっては珍しくない働き方のひとつになりました。IT業界では遠隔で行える業務が多く、SlackやZoomなどのツールを活用すればスムーズなコミュニケーションも行えます。通勤の必要がなくなったり、残業が発生した場合でも在宅であれば適度に息抜きができたりするなど、心身のストレスが軽減される点は大きなメリットと言えます。

IT業界の働き方改革の企業事例3選

実際にどのような企業が働き方改革を成功させているのでしょうか。3社の事例をご紹介します。

freee株式会社

freee株式会社はクラウド会計ソフトなどを提供しているIT企業です。freeeは特に子育て支援に力を入れています。その一環として、「つばめっ子クラブ」というものがあり、発足当初はエンジニアが中心として子育てをするメンバーのサポートを目的としたサークルのようなものでした。子育てで業務が困難になった人の代わりに、他のメンバーがタスクを引き受けるといった取り組みが行われていたのが始まりです。その輪が徐々に広がり、社内に浸透していきました。

そのほかにもさまざまな取り組みを行っています。たとえば、AekyoHour(全社集会)という集まりは月に2~3回、火曜日に開催され、チームの褒めるべきところ・改善すべきところを改めて確認し、よりよいパフォーマンスに繋げるためのものです。こうした取り組みによって、会社全体の透明性が保たれています。

参考: 福利厚生 | 採用情報 | freee株式会社

参考:エンジニアが発案した、社員も家族もハッピーになる育児制度「つばめっ子クラブ」 | 採用情報 | freee株式会社

株式会社メンバーズ

株式会社メンバーズはデジタルマーケティング事業を支援しているIT企業です。2016年より「みんなのキャリアと働き方改革」という三カ年計画を開始し、月平均残業時間を28.1時間から14.9時間に減少させることに成功しています。具体的には、社内外においてテレビ会議ができる環境を整えたり、残業削減推進に向けて全部署で社員の意識と行動の改革を促すワークショップを実施したりといった取り組みを行いました。


残業時間の減少に成功した一方で、売上高は上がっており、残業時間の削減と売上アップの両方を同時に成功させたモデルケースと言えるでしょう。働き方改革として、前述した残業削減推進の取り組みの他に、社員の年収増加を目標に掲げた施策も行っています。その取り組みにおいて、業績評価項目に「生産性向上目標」を追加した点や、「評価の飛び級制度」を設けて昇進に対する期待感が増した点は、売上アップにも繋がっていると言えるのではないでしょうか。

参考: メンバーズ、3カ年計画「みんなのキャリアと働き方改革」を推進月平均残業時間15時間と年収27.5%アップを同時実現し、通期業績において売上利益とも過去最高を更新

株式会社メルカリ

株式会社メルカリはフリマアプリ「メルカリ」の企画・開発・運用を行っているIT企業です。従業員の働きやすさを第一に考え、コアタイムなしのフレックス制を導入しており、さまざまな休暇や休業の制度も整っています。

また、充実した育児サポートと共に、高額な不妊治療に対するサポート制度や、キャリアを優先しつつも妊娠や出産を諦めない選択を応援する卵子凍結費用の補助なども行っています。会社が社員を大切にしている姿勢を実感できるような体制が整備されています。

参考: ベネフィット | 採用情報 株式会社メルカリ

まとめ

近年、働き方改革を実行している企業は増えています。政府からの提言ももとに、自社にあった働き方を考えてみましょう。従業員がよりよい環境で働けるように働き方改革を進めることは、IT業界でも決して無視できない動きです。この記事を参考に、自社の働き方改革推進を目指していただければと思います。


リスキリングナビでは、本記事の他にもさまざまなキーワードのコラムを掲載しています。ぜひ、合わせてご覧ください。

IT人材育成の具体的なステップと注意点を解説!おすすめの研修サービスも|リスキリングナビ

リスキリングでおすすめなITスキルは?資格やスクールについてもご紹介!|リスキリングナビ

職場環境改善とは?具体的な取り組み方・アイデア・事例を紹介|リスキリングナビ

離職率が高い企業の特徴や原因は?離職率を下げるための改善方法|リスキリングナビ

従業員のエンゲージメントが低い原因とは?高め方や企業の実例を紹介|リスキリングナビ

おすすめの
パートナー企業