【企業事例あり】イノベーション人材とは?3タイプのスキルや育成方法を解説

公開日:2024.05.28 更新日:2024.05.28

デジタル技術の進化や地球環境問題への対応などビジネス社会が急速に変化する今、各企業においてイノベーション人材の重要性が高まっています。

今回はイノベーション人材のタイプや必要なスキル、企業内の育成方法などを紹介します。

イノベーション人材とは?

まず、イノベーション人材の役割や企業における重要性について解説します。

前例のない取り組みで革新的な価値を創造できる人

ビジネスにおけるイノベーション人材とは、既存の考え方や方法にとらわれない取り組みで革新的な価値を創造できる人です。


イノベーションの対象は製品やサービスだけではありません。事業モデルやサプライチェーン、組織体制などビジネスに関わるすべての要素が変革の対象になります。


イノベーション人材には、市場動向や経営課題などから企業が進むべき方向性を捉えて組織を導く役割が期待されています。

VUCA時代を生き抜くうえで不可欠な存在

イノベーション人材は、社会の変化のスピードが速く先行きが不透明なVUCA(Volatility:変動性、Uncertainty:不確実性、Complexity:複雑性、Ambiguity:曖昧性)の時代を生き抜くうえで企業に不可欠な存在です。


組織や事業を刷新せず既存の方法の延長で企業活動を続けていても、変化が激しい顧客ニーズや社会の流れとの間にズレが生じ、次第に事業の存続・発展が難しくなってしまいます。そのため、企業の新しい価値提供の形を創造できるイノベーション人材の必要性が高まっているのです。

イノベーション人材の種類(スキル)

イノベーション人材は、専門分野によって「ビジネス系」「テクノロジー系」「デザイン系」の3タイプに分かれます。企業がイノベーションを起こすには、3タイプの人材の協働が必要不可欠です。

ビジネス系

ビジネス系のイノベーション人材は、プロジェクトの目的や戦略を設定し、メンバーをまとめながらプロジェクトをリードする役割を担います。


ビジネス系の人材には、ビジネスモデル設計やマーケティングに関する知識が求められます。また、プロジェクトを滞りなく進められるマネジメント力も必要です。

テクノロジー系

テクノロジー系のイノベーション人材は、プロジェクトにおいてデジタル技術の効果的な活用方法を検討し、導入・運用を実現する役割を担います。


テクノロジー系の人材には、AIやIoTなどの最新技術やデータサイエンス、サイバーセキュリティに関する専門知識が求められます。また、サービス設計に合わせてシステムを実装できるエンジニアリング力も必要です。

デザイン系

デザイン系のイノベーション人材は、顧客やユーザーの視点に立ち、活用されやすいサービスや製品のデザインを担当します。


デザイン系の人材には、グラフィックに関する知識・技術だけでなく、顧客ニーズを把握してプロジェクトの課題を発見するスキルや、UI/UXの観点から製品を設計・検証するスキルなども求められます。

イノベーション人材に求められる5つの要素

上記で紹介したいずれのタイプのイノベーション人材にも、「忍耐力がある」「客観的に分析できる」「柔軟な思考ができる」「外部の人間を巻き込める」「内発的な動機がある」の5要素は共通して求められます。

忍耐力がある

企業や組織、事業などの変革は一筋縄でいかないケースが多いため、イノベーション人材には最後まで諦めずにプロジェクトに取り組む忍耐力が求められます。

客観的に分析できる

イノベーションを起こすには組織や市場、顧客の状況把握が必要不可欠であるため、イノベーション人材には自分の感覚や経験だけにとらわれず、データや顧客ニーズなどから客観的に現状を分析できる力が求められます。

柔軟な思考ができる

従来の考え方や方法を繰り返すだけでは変革を起こすことはできないため、イノベーション人材には既存の枠組みにとらわれない柔軟な思考が求められます。

外部の人間を巻き込める

社会に大きなインパクトをもたらすイノベーションは、一社の力だけでは実現できないケースもあります。そのためイノベーション人材には、外部の人間を巻き込み、複数の企業がコラボレーションできる機会をつくる力が求められます。

内発的な動機がある

イノベーション創出には多くの時間と労力がかかるうえ、トップダウン型の意思決定では既存の枠組みを超えたアイデアは生まれません。そのため、イノベーション人材にはスキルや能力だけでなく「企業や組織を変えたい」「事業にイノベーションを起こしたい」という内発的な動機も求められます。

イノベーション人材を育成するには

企業がイノベーション人材を育成するために必要な3つの取り組みについて紹介します。

中長期の育成計画を立てる

イノベーション人材の育成に本格的に取り組むうえでまず必要な取り組みは、年単位でプランニングされた中長期の人材育成計画の設計です。


イノベーション人材に求められる能力は、一回のセミナーや数日間の研修だけでは習得できません。さまざまな業務やポジションを経験しながら少しずつ身に付けていくスキルがほとんどです。


そのため企業は、従業員が業務を通してイノベーション創出に欠かせない能力を確実に習得できるよう、中長期スパンの育成計画を立てる必要があります。

従業員の心理的安全性を高める

イノベーション人材を育成するためには、従業員の心理的安全性を確保することも大切です。


イノベーションは前例のない取り組みであり、通常のプロジェクトよりも失敗するリスクが高いと言えます。それにも関わらず、社内の人事評価制度がリスクをとればとるほど評価が下がる仕組みであれば、従業員の不安は高まりイノベーションに対する姿勢は消極的になってしまうでしょう。評価制度を見直し、従業員がストレスを感じない体制を整える必要があります。


また、イノベーションが生まれやすい職場を目指すなら、従業員同士がお互いの立場や利害を超えて率直な意見を交わせる環境も必要です。

多くの学習・挑戦機会を提供する

イノベーション人材を育成するには、成長意欲が高い従業員に多くの学習・挑戦機会を提供することも重要です。


「忍耐力がある」「外部の人間を巻き込める」などイノベーション人材に求められる能力の多くは、座学ではなく実践や経験の積み重ねで身に付けられます。そのため、外部機関への派遣や事業提案制度の導入など、従業員が能力向上にチャレンジできる機会が多ければイノベーションを起こせる人材の育成につながります。

イノベーション人材育成の企業事例

イノベーション人材の育成に取り組む企業3社の取り組みを紹介します。

日揮ホールディングス株式会社|Baysix制度

日揮ホールディングス株式会社は2021年にグループの長期経営ビジョン「2040年ビジョン」を策定し、人材育成施策として「Baysix制度」を導入しました。


同制度では、入社時点で従業員を「マネジメント人材」「イノベーション人材」「プロジェクト遂行人材」「エキスパート人材」の4タイプに振り分け、入社から6年間で各タイプに求められる基礎知識・経験を身につけさせます。


個人の育成方針が早期に決まることで人材の偏りの予防につながります。また、それぞれの従業員が中長期のキャリアイメージを持って仕事に取り組めるため、個人の自律的な成長も期待できる取り組みです。

参考:人的資本経営コンソーシアム好事例集|経済産業省

三井不動産株式会社|外部派遣研修

三井不動産は2018年にグループの長期経営方針「VISION 2025」を策定し、オープンイノベーション創出を目的とした外部派遣研修を実施しています。年間数名の従業員を大学や民間の長期ビジネス研修に派遣して、社外の人材との交流を通して将来のリーダー候補としての成長を促す狙いです。


また、イノベーション促進施策の一つとして事業提案制度「MAG!C」も2018年度に開始されました。提案したアイデアが最終審査を通過した場合は、社内起業プロジェクトとして本格的な事業化が始まります。また、事業化に向けて複数の外部パートナーのメンタリングサポートを受けられるインキュベーションプログラムも用意されています。

参考:イノベーション創出のためのリカレント教育事例集 企業編|経済産業省

三菱地所株式会社|10%ルール

三菱地所株式会社は2020年に「長期経営計画2030」を策定し、社内のイノベーション促進施策として、業務時間の10%を新規事業の提案や業務効率化など通常業務以外の取り組みに充てる「10%ルール」を適用しています。


また、入社5年目の社員にはデザイン思考研修も実施し、ユーザー視点の商品開発力の強化に取り組んでいます。さらに、オープンイノベーション促進を目的として、従業員の副業解禁や外部の副業・兼業人材の採用なども開始しました。

参考:イノベーション創出のためのリカレント教育事例集 企業編|経済産業省

まとめ

イノベーション人材とは、前例のない取り組みで革新的な価値を創造できる人です。ビジネス、テクノロジー、デザインのそれぞれの専門家が協働することで企業のイノベーション創出につながります。イノベーション人材には忍耐力や柔軟な思考など実践的な能力が求められるため、人材育成では中長期の計画に基づき、職場の心理的安全性を高めたうえで多くの挑戦機会を提供する必要があります。


リスキリングナビでは、本記事の他にも人材育成をテーマにしたさまざまなコラムを掲載しています。ぜひ、あわせてご覧ください。

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