幹部育成の課題や人材の選定基準とは?育成の進め方や企業事例もご紹介

公開日:2023.10.30 更新日:2023.10.30

昨今、働き方の多様化に伴い、組織の社員育成が重要視されています。その中でも幹部育成は、後継者を育て、企業の将来的な成長を担う役割として重要な施策です。

本記事では企業の抱える幹部育成の課題感をはじめ、幹部育成を進める上でのノウハウ、取り組み事例、おすすめの研修会社などを取り上げます。幹部育成に課題を持つ経営層の方や研修内容に悩みを抱える人事担当の方は、ぜひ参考にしてください。

よくある幹部育成の課題感

優秀な幹部を育てることは簡単ではありません。本章では、幹部育成が進まない原因を考えてみたいと思います。

育成する研修体制は整っているが、現場での効果が表れない

幹部育成のための研修体制は整っているものの、研修の効果が表れず、経営幹部を任せられる人材が育たないという課題を抱えている企業が多く見られます。幹部の役割を果たすためには、経営層と同じ視点を持ちながら、組織をまとめ、目標に導く意識や行動変革が必要になりますが、研修内容が座学のみだったり、知識のインプットがメインだったりと、意識や行動変革を促すプログラムになっていないと満足な研修の効果が得られません。

実践的なプログラム設計や研修の効果検証、研修を改善する仕組み作りなどを見直し、育成の精度を高めていく必要があります。

プレイヤーやマネジメントなど、現場の仕事で手一杯

組織規模の小さいスタートアップやベンチャー企業に多い課題ですが、経営幹部候補となる人材はプレイヤーとして、経営幹部はマネジメントとして、目の前の業務で手一杯な状況で、幹部育成の優先度が低くなってしまう場合があります。

経営幹部も、幹部候補となる人材も、多くの仕事を抱えているケースが多いかと思いますが、仕事量をよく確認し、アウトソースなども活用しながら、幹部を育成するためのリソースを確保することが求められます。

幹部候補となる人材の選定基準

幹部育成にあたり、候補となる人材に求められる資質やスキルのうち、代表的なものは以下の通りです。

  • リーダーシップ
  • コミュニケーション能力
  • アントレプレナーシップ
  • 課題発見・解決能力
  • 判断力
  • 論理的思考力

上記に加え、展開する事業分野における経験や実績なども人材を見極めるうえでの判断材料となります。

また、一般的な幹部候補の選定基準も大切ですが、経営幹部に求められるスキル・能力や実際の業務は企業によって異なります。自社が求める経営幹部の人材像を明確にするために、ロールモデルを設定することをおすすめします。

ロールモデルを設定すると、候補者を判断する際の基準となるとともに、若手にとっては明確な目標が定まります。将来の幹部候補となる人材のモチベーションアップも期待できるでしょう。

幹部育成の進め方・ポイント

幹部育成の進め方やポイントを踏まえながら、自社に最適な育成フローやプログラムの構築を進めましょう。

自社の経営戦略やビジョンの確認

まず、経営陣が現状の経営戦略やビジョンを確認しましょう。経営戦略やビジョンは、自社にどのような人材が必要なのか、そして必要とする人材の育成方針や育成方法にも大きく関わるからです。経営戦略やビジョンに変更があるなら、幹部候補に求める人材像や育成プログラムも刷新する必要があります。

なお、未来の会社像を再定義する場合は、経営層だけでなく幹部候補となる人材にも意見を聞いてみるのも良いでしょう。経営層にとっては、新しく新鮮な意見を聞くことができ、幹部候補にとっては会社が自分に寄せる期待が実感でき、モチベーションアップに繋がることでしょう。

幹部候補の役割・要件の明確化

次に、自社の幹部に求める役割や要件を明確にしていきます。経営戦略やビジョンを念頭に置いて、将来必要な幹部の人材像を人間性やスキルなどの切り口から具体化していきましょう。
それぞれの切り口について、必ず必要なもの、あると良いもの、必要ないものなど、優先順位をつけて複合的な観点から確認していくと、自社が求める幹部候補にマッチする人材を見つけ出すことができます。

中長期的な視点も忘れずに、人材要件の定義を行いましょう。

幹部候補の選抜

自社が求める幹部像が明確になったら、幹部候補を選抜していきましょう。幹部候補を選ぶ際には、前述した人材要件にあった人材であることはもちろんですが、将来の会社全体の組織図を思い描き、それぞれの候補が幹部となる際のポジションをイメージすることも大切です。
選抜する方法は、自薦、他薦、採用などいくつかの方法が考えられます。組織の状況や風土なども踏まえ、自社に最適な方法で候補者を選抜しましょう。

なお、社内で幹部候補を選抜する場合、優秀な社員を候補にするケースが多くなります。選抜した後の現場の状況や他の社員の配置なども考慮し、周囲の協力を得ながら人材選定を行う点も組織運営において重要です。

育成プログラムの設計・実施

幹部候補の選抜と並行して、幹部育成プログラムを設計していきましょう。
育成プログラムを設計する際には、幹部候補が経営戦略やビジョンへの理解を深められる仕組み作りを意識すると良いでしょう。たとえば、プログラムの中で経営陣と対話したり、新規事業を立ち上げたりするといった機会を設けます。経営幹部の役割や責任を体感でき、候補者は自社の企業戦略やビジョンを自分ごととして捉えられるようになっていくでしょう。そうした経験を積み重ねることで、経営陣と現場を繋ぐ存在への成長が期待できます。

幹部候補の自立を促す評価・フォローの実施

育成プログラムを実施し、幹部候補が成長していくには、候補者自身がスキルアップに対して意欲的な姿勢を保てるように、評価やフォローの体制を整備しておく必要があります。目指すゴールに定性・定量の両面から適切な評価やフィードバックを実施することで、モチベーションを維持しつつ幹部候補の成長を促せます。

また定期的に、研修成果に応じて育成計画のブラッシュアップを行うと、育成スピードを速められたり、研修プログラム自体の質を高められたりするでしょう。

幹部育成プログラムの取り組み事例

幹部育成のための具体的な研修やプログラムが気になる方も多いのではないでしょうか。幹部育成に取り組んでいる企業の事例をいくつか紹介します。

日本電気株式会社(NEC)

ネットワーク・通信機器の生産・販売をはじめITサービス事業を主軸に展開する日本電気株式会社(NEC)は、NECグループ社員の普遍的な価値観を定めたNECグループバリューをベースに「人財哲学」を策定。人財哲学を基に「NEC社会価値創造塾」を2016年に創設しました。

経営幹部のポジションにつく次世代の育成を目的に、新興国の現場を体感し、そこで得た課題感をどのように経営に反映させていくかを学ぶ実践力の問われる研修を実施しました。
具体的な内容としては、社外から一流の講師、社内からは経営幹部陣が講師となり、経営体験を話してもらう「共創学習」や、受講生が国内外のビジネス現場に出向き、現地課題の解決に向けたプロジェクト活動を行う「現地学習」などがあります。研修の最後には、実践的な学びの集大成として、将来の経営を構想し自分が社長に就任した想定で就任演説を行う「NEC変革プロジェクト」を用意。自分の限界を超えた成長を促進するプログラムとなっています。

株式会社商船三井

さまざまな材料や製品の輸送事業を展開する株式会社商船三井では、2014年より次世代の経営幹部育成に向け、「One MOLグローバル経営塾」を開始しました。同社グループのビジョンを描ける次世代の「グローバル経営幹部」を育成することを目的に、約1カ月半おきに5日程度ずつ、組織運営やリーダーシップを学ぶインプット型のワークショップや小グループでアクションラーニングを行う研修プログラムを3回実施しています。

幹部候補が経営陣と濃密な時間を過ごせる点も特徴的で、各回で経営陣も参加し、受講生との対話をしつつ最終日に「10年後の商船三井を創造する」をテーマに経営陣に対しプレゼンテーションを行う内容となっています。

株式会社堀場製作所

分析・計測機器の総合メーカーである株式会社堀場製作所では、グローバル経営人材の育成に向けて候補者となる人材の母集団の形成を重視しています。30歳前後の選抜社員に海外を経験させる海外公募派遣制度を実施。1年間海外のグループ会社に出向し経験を積ませる制度を長期で継続しています。

その他、同社の各事業セグメントでのグローバル会議に若手社員を参加させ、経験を積ませる機会を設けるなど、挑戦する場を与え、時間をかけて次世代のグローバルリーダーを育成することを重視しています。

幹部育成研修におすすめする実績豊富な社員研修会社

幹部育成に向けたおすすめの社員研修会社を紹介します。

株式会社リンクアンドモチベーション | 経営幹部育成研修

企業の外部環境への適応をテーマに、経営視点を持った人材の育成を支援する株式会社リンクアンドモチベーションの「リンカーン・プロジェクト」。経営層と現場を繋ぐ役割が経営幹部・管理職に求められるという前提のもと、「ビジョンマネジメント」「戦略マネジメント」「PDCAマネジメント」「メンバーマネジメント」などのスキルを磨く研修を提供しています。

研修の特徴としては、半年以上の長期に渡り研修期間を設け、定期的に実践・測定・内省のサイクルを回して、参加者の継続的な変化を促しています。また、目標を定量化することで、現状を把握するフェーズから改善を目指すフェーズにおける解像度を高く維持し、参加者の納得感を得ながら研修を行っていきます。

参考:経営幹部育成研修|リンクアンドモチベーション

株式会社ラーニングエージェンシー | 経営幹部研修

株式会社ラーニングエージェンシーの経営幹部研修は、「経営幹部としての意識の醸成」「経営に関するスキルの習得」を主眼に置いています。経営幹部に求められる意識の変革を促す研修に加え、経営に必要なスキルを1から体系的に学ぶことができます。

ワークショップを交えながら次期リーダーの創出に向けたリーダーシップ養成に必要な知識や経営戦略、マーケティングを体系的に学べる充実したプログラムになっており、対面・オフライン問わず、様々な形式の研修を用意。自社の状況に合わせて、研修をカスタマイズしてもらえます。

参考:経営幹部研修|人材育成・社員研修|ラーニングエージェンシー

株式会社グロービス | グロービス・エグゼクティブ・スクール(GES)

グロービス・エグゼクティブ・スクール(GES)は、株式会社グロービスが運営するプログラムの中で、企業の中核を担うマネジメント層向けに開発された内容となっています。大手企業からの導入実績も豊富で、高い評価を得ています。

業界の最大手企業からの導入実績が豊富で、実践力が身につくプログラムが6つ用意されています。体系的な理論をはじめ、現場に活かせるケースメソッドを理解しながら、リーダーシップに関する学びや新たな気づきを促す研修となっています。
プログラムの中で経営幹部育成に必須の内容が詰まったエグゼクティブ・マネジメント・プログラム(EMP)では、経営視点でスキルとマインドを高めるプログラム(全12回)を用意。プログラムでの学びをレビューする機会も設けられており、主体性を持って受講することができます。

参考:グロービス・エグゼクティブ・スクール

予算に困った際は、助成金利用の検討を!

幹部育成研修の実施を検討するにあたり、予算を懸念される方もいるでしょう。本章では、人材育成を目的とした研修に利用できる「人材開発支援助成金」を紹介します。

人材開発支援助成金

人材開発支援助成金は、厚生労働省による助成金制度です。7つのコースが用意されており、従業員に対して職務に関連した教育や研修を行う場合に経費や賃金を一部助成してもらえます。

  1. 人材育成支援コース
  2. 教育訓練休暇等付与コース
  3. 人への投資促進コース
  4. 事業展開等リスキリング支援コース
  5. 建設労働者認定訓練コース
  6. 建設労働者技能実習コース
  7. 障害者職業能力開発コース

各コースに定められた申請要件を確認のうえ、自社に合うコースを見つけましょう。人材開発支援助成金は、2023年4月から雇用関係助成金ポータルで電子申請が可能となっています。また利用ハードルを下げるために、常に見直しが図られているため、申請を検討される際は最新の情報を確認しましょう。

幹部育成は組織を育てること

幹部育成の本質は、将来の組織成長に向けて現状の組織を成長させていくことです。企業によって多種多様な育成方法が考えられますが、育成に向けて考えるべきこと、実施すべきポイントは同じです。組織、経営陣、幹部候補が共通認識を持ち、将来あるべき企業像に向かって共に成長していく姿勢が、永続的に繁栄する組織を作り出すのです。

記事後半では、経営幹部育成の取り組み事例やおすすめの研修会社について紹介しました。自社の人材育成における課題を外部の事例と照らし合わせたり、専門家の意見を取り入れることで、新たな発想やソリューションが生まれる可能性があります。幹部育成に取り組む際の参考としてみてはいかがでしょうか。


今回は幹部育成をテーマに取り上げましたが、リスキリングナビでは他にも以下のようなコラムを掲載しています。ぜひ、こちらもご覧ください。

経営人材育成の重要性を解説!必要なスキルや課題とは?|リスキリングナビ

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