半年間で“変革人材”の輩出を目指す。ドコモが取り組む、年次も役職も関係ない、社員の可能性を最大限に引き出すプログラム

公開日:2024.04.02 更新日:2024.04.08

通信事業を中心に、多くの人が生活するうえで欠かせないサービスを提供するドコモグループ。社員の「学び」に力を入れており、自己啓発支援制度、ビジネススキルアップのための選択型研修など、研修プログラムは1,700 を越えます。とくにここ数年注目を集めている取り組みが、一歩踏み出す勇気を育む企業内大学「docomo academy」です。株式会社三菱総合研究所が主催する第5回「プラチナキャリア・アワード」において、「優秀賞」である「自己啓発と社員絆の強化」賞を受賞し ており、多くのメディアにも取り上げられています。同社の総務人事部 採用育成 育成担当であり、「docomo academy」の学長を務める沼田 尚志(ぬまた ひさし)さん、総務人事部 採用育成 育成担当の松丸 愛(まつまる あい)さんにプログラムの詳細について伺いました。


取材対象者

沼田 尚志
株式会社NTTドコモ 総務人事部 採用育成 育成担当/企業内大学「docomo academy」学長

松丸 愛

株式会社NTTドコモ 総務人事部 採用育成 育成担当 /企業内大学「docomo acadey」 運営事務局

役職や年次に関係なく、誰もが参加できる“変革人材輩出プログラム”

――初めに「docomo academy」の概要について教えてください。


松丸:社会と企業の繁栄の源泉となる“変革人材”の輩出を目的としたプログラムです。育成対象は、docomoグループの全社員で、参加資格はとくにありません。年齢、性別、役職に関係なく、全員が全力でチャレンジできる場を提供しています。

毎年10月から開校し、週に1回、2時間の外部講師講話を受講してもらいます。お話しいただくのは、様々な業界で日本を代表し、活躍されている方々です。オンラインではありますが、受講生の目の前で体験談に基づいたお話しをしていただくことで、通常業務だけでは得られない広い視野・高い視座を身に着けてもらう狙いです。

並行して、受講者の方々には本気で取り組みたい事業の構想づくりに挑戦いただき、半年かけて一つの事業案をつくってもらいます。構想した事業案は、1月の中間発表を経て、3月に「魂のプレゼン」と題した最終発表会で、docomo academyに通う同期たちの前で発表してもらいます。

――施策の背景について教えてください。


松丸:もともとは新規事業づくりを目的にスタートした取り組みでしたが、2023年度からは「イノベーション・変革を起こせる人材の輩出 」という、より広い目的に変わっています。新規事業立ち上げばかりを狙うのではなく、docomoグループ全体に対してポジティブな影響をもたらす人材の輩出という、より大きな目的を据え直したかたちです。

目的が拡大した背景には、想像以上の卒業生の活躍があります。現在は取り組み開始から4期が終了していて、延べ680名 の卒業生がいます。卒業後、新規事業づくりを継続する人もいれば、既存業務の改善に取り組む人、人脈形成やスキルアップを始める人もいました。人によって挑戦の大きさも、「変革」「イノベーション」の捉え方も違うなか、「こうでなければならない」という具体的なゴールを決める必要はないのだと感じたのです。

受講生が自分の中にある「勇気」に気づく制度設計

――メンバーの動機形成の工夫について教えてください。


沼田:
そもそも我々は「どうすれば社員がやる気を出してくれるだろうか」という考え方はしていません。すべての人が最初から「やる気を出したがっている」という前提に立ち、その素養を最大限引き出すための、コミュニケーションやプログラム設計をおこなっているのです。

たとえば入学式では、受講生の方々の「参加」自体を賞賛し「あなたには勇気がある」というメッセージを強く発信します。docomo academyに参加をしたいと手を挙げた時点で、変革人材になるうえで最も大事な素養である「勇気」があるのだと自覚してもらうのです。

私はこれまで多くの会社と関わってきました。日本を代表する大企業から、急成長を遂げるスタートアップまでさまざまです。その経験から、ドコモのメンバーは、他社と比較してもまったく引けをとらないくらい優秀であることがわかっています。しかし、当の本人たちは、自グループのことしか知らないからか、自分のアクションに自信を持てない傾向があります。そのような状況を打破するのは、業務能力の向上ではなく、道を切り拓く「勇気」をもつことしかないのです。


――プログラム実施の環境整備の工夫はいかがでしょうか。


沼田:
いくつもありますが、代表的なものを2つ紹介します。

1つ目は、外部講師の方が一貫して同じメッセージを伝えていると気付いてもらうようにしています。具体的には、輝いている人とそうでない人の違いは、才能や環境ではなく「挑戦の回数である」と気付いてもらうことです。すでに一定の成功をおさめている人であっても、最初からうまくいったわけではなく、成功するまでアクションを続けたという体験談を伝えることで、受講生たちの「勇気」を後押ししたいと考えています。

2つ目はフラットなコミュニティづくりです。通常業務とは異なる環境で「◯期生」という括りだけしかない、年次も役職も持ち込ませない、誰もが完全にフラットな関係性構築ができる場所づくりをおこなっています。その結果、年齢が一回りも二回りも離れたアカデミー生同士が同じ熱量で交流したり、ネットワークエンジニアと法人営業など、普段なら関わらない職種同士の交流が生まれたりしています。


松丸:
誰もが気兼ねなく自分の考えを表明でき、相手の意見にも真摯に耳を傾けることこそ、究極のダイバーシティのかたちだと思います。その一つの表れとして、チャットツール上での活発なやりとりがあります。docomo academyでは、コミュニケーションのために専用のチャンネルをつくっていますが、そこでは毎日誰かしらが投稿をし、その投稿に対してすごい数のリアクションが寄せられているのです。誰もが自然に、主体的にコミュニティへと参加できているのだと感じます


――伴走やフォローで工夫した点について教えてください。


松丸:
卒業生にメンターとしてアカデミー受講生のフォローアップをお願いしていることは工夫の一つです。受講生の1on1や壁打ちに付き添ってもらっています。メンターの方々には、前年に自分たちがdocomo academyで経験したことを、受講生の方々に120%還元してもらっており、それもまた心理的安全性の高いコミュニティをつくる要素になっていると思います。


沼田:
受講生からすると「挑戦の先にはこんな姿があるんだ」と、身近な未来を知ることができます。メンターたちからしても、過去に教わったことを現役生に教えることで、さらなるモチベーションの向上や、自分の取り組みに対する推進力のアップにつながると思っています。

プログラムの受講者はアクションを起こし、会社から評価をされやすい傾向がある

――プログラムで得られた成果を教えてください。


松丸:
何をもって「成果」と判断するのかは、様々なステークホルダーと常に議論しているところで、今のところ明確に定めているものはありません。

会社の取り組みである以上、なんらかのかたちでビジネスにインパクトを与えられればと思ってはいますが、それがすべてではないとも考えています。これまでで合計680名 の方が、本業があるにもかかわらず、半年間のプログラムに参加し、完走したことも成果です。また、構想した事業案の実現に向けて継続してアクションを起こしていることも成果です。

卒業生を対象にしたアンケート結果も、成果の一つを表しています。卒業後になんらかの行動を実行に移した人が95.9%であり、キャリアに関する意識も高まっているのです。また、業績との関連性 も一定見えてきており、docomo academyに参加しているメンバーは、参加していないメンバーよりもパフォーマンスが高く、評価をされやすいことがわかってきています。

ドコモグループ以外の会社も、参加可能なプログラムへ進化

――プログラムの今後の展望について教えてください。


松丸:
プログラムは毎回アップグレードを重ねており、とくに2024年度からは、ドコモグループのメンバーではない、社外からの受講生受け入れにチャレンジしたいと考えています。ひとまず10社ほどにご参加いただき、各社から最大50名程度の受講生を受け入れる予定です。受講生にとっては、さまざまな背景をもつ人が集まることで、さらなる視野拡大につながると考えています。docomo academyを通して、自らのキャリアに対してオーナーシップをもつ人を増やすことで、社会に対して価値提供ができるのではとも思っています。

他にも、これまで社外の方が中心だった講師役について、その一部をドコモグループのメンバーに任せる「社内認定講師」や、docomo academyの参加企業同士が互いに社員を派遣し合う「越境学習」、事務局に社外のメンバーを受け入れる「共同運営体制」など複数のことに取り組みたいと思っています 。


沼田:
個人的には、docomo academyを日本中の優秀なビジネスパーソンやイノベーターが集まる場所にしたいと思っています。青臭いと思われるかもしれませんが、私はもっと自分自身のことを、もっとすごいことができる人間だと信じています。だからこそ、同じように自分に期待をし、世の中を変えてやると思っている人に会い続け、自分自身をさらに成長させたいのです。


松丸:
私の個人的な目標は、docomo academyが会社に与える影響をさらに高めることです。長年、総務人事で多くの育成プログラムに携わってきたなか、docomo academyは本当に素晴らしい取り組みだと思っています。受講生一人ひとりの表情がたった半年でこれほど大きく変わる場所は、他にありません。多くの卒業生が、副業を始めたり、新しい資格をとったりと、新しいアクションを始めています。その影響が、さらにドコモグループに波及するような流れがつくれるといいなと思っています。

これから、ドコモグループ以外の企業も含め、さらに多くの方にご参加いただき、docomo academyの魅力を体感してほしいです。

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