社員の「学び」に力を入れるドコモグループは、一歩踏み出す勇気を育む企業内大学「docomo academy」を、2020年から毎年開校しています。年齢、性別、役職に関係なく、グループ社員であれば誰でも参加可能で、受講者は半年間かけて、自分が本気で取り組みたい事業案をつくります。多様なジャンルの著名人による外部講師講話、メンターとの壁打ち、役職・年齢・性別を完全シャッフルしたクラス制など、新しい刺激や気づきを得られるプログラム設計です。 2023年度のdocomo academy参加者である北谷 葉多さんに、プログラムに参加した背景や事業開発スキルのリスキリングについての考えをお話いただきました。
プロフィール
北谷 葉多
テレビ局をクライアントにしたIT企業にて、Webディレクターとして経験を積み、2019年にNTTレゾナント株式会社(2023年7月1日、株式会社NTTドコモに吸収合併)に入社。入社後、NTTドコモが運営するスマートフォン向けポータルサイト「dメニュー」トップのWebディレクターやプロジェクトマネージャーを担当。現在は、「goo辞書」「idraft by goo」「OCN」ポータルサイト中のクイズコーナーなど、複数のサービスのプロダクトマネージャーを務める。2023年10月からdocomo academyに参加。アイドルをテーマにした事業案を検討中。
目次
――まずは、ご経歴についてお聞かせください。
ファーストキャリアは、テレビ局をメインクライアントにしたIT企業で、Webディレクターを務めていました。2019年に、旧NTTレゾナント株式会社に転職し、スマートフォン向けポータルサイト「dメニュー」トップページのディレクションを担当していました。会社がNTTドコモと合併した2023年7月ごろからは、無料で使える辞書・辞典の検索サービス「goo辞書」をはじめ、複数の自社サービスのプロダクトマネージャーを務めています。
――docomo academyに参加した背景を教えてください。
キャリアを重ねるうえで、ちょっとした行き詰まりを感じていて、新しいチャレンジがしたいと考えていたからです。
決して今の仕事がつまらなくなったわけではありませんが、長く同じ職種を続けると、どうしても自分のなかでルーティンができあがってしまい、新しい刺激が少なくなっていると感じていました。このままだと同じ仕事を続けるだけで終わってしまうので、何かを変えなければという焦りのようなものを感じていたのです。
docomo academyの受講生募集の連絡が回ってきたとき、今の自分にぴったりのプログラムなのではと興味を持ちました。事前説明会で、プログラムに携わる人たちからの前向きなメッセージを聞いて「ここでなら何か新しいことが始められるかもしれない」と感じましたね。また、吸収合併されたばかりで、周りに知り合いがいなかったこともdocomo academyに参加した理由の一つです。この機会に社内での人脈づくりをしたいと考えていました。
――docomo academyに参加を決めてから、今に至るまでにどのようなフェーズの変化がありましたか?
参加して2〜3週間は、コミュニティの雰囲気についていけず、困惑する期間でした。コミュニティメンバーや運営の方々とコミュニケーションをとるためのチャットに招待してもらいましたが、自分からはなんの投稿も、コメントもできませんでしたね。docomo academyに関わる誰もがエネルギッシュで、キラキラしていて、入っていけないところがあったのです。
メンターの方と1on1をする機会があったので相談したところ、まずは発信してみるべきだとアドバイスをもらいました。発信をしなければ、自分が興味のある分野に携わる人たちに、自分のことを知ってもらえないと言われたのです。アドバイスをくれた方は、前職で私と同じ業界で仕事をしていた経験があり、この人がそう言うならやってみようかと、投稿やコメントをするようになりました。
発信内容は、凝ったものではなく、日々のインプットをアウトプットするシンプルなものでした。気になるニュースについて私見も交えて、毎日のように投稿をしたのです。発信を続けると次第に抵抗感がなくなり、コミュニティに馴染めるようになっていきました。ある程度コミュニティに馴染んだあとは、さらに発信を強化し、自分の興味のあるテーマについて語る時間をつくったり、事業とは関係のないパーソナルな情報まで発信するようになりました。
――事業構想づくりはどのように進めていったのでしょうか?
何に取り組むべきかを模索するなかで、思い出したのは前職での「心残り」でした。アイドル系の仕事に携わっていたのですが退職時、フリーランスとしてプロジェクトに関わり続けるか、転職してプロジェクトから離れるのかを選ぶことになり、最終的には後者を選んだのです。しかし、アイドルに関する事業は私自身大好きで、やりがいも可能性も感じていました。仮に、事業に関わり続ける道を選んでいたら、今ごろどうなっていたのだろうと考えることもありましたね。
さまざまな講義を受けるなかで、顧客に会いに行く重要性を感じ、行動量を増やしたのが開校から2ヶ月ほど経ったときでした。多くの人に会うなかで、前職時代、一緒にアイドル関連事業に取り組んでいたメンバーにも会いました。結果的には、そこで話したことがきっかけになり、もう一度自分でアイドル関連の事業について考えてみることにしました。
本格的に覚悟が決まったのは、学長である沼田さんから共有された、沼田さん自身のエピソードでした。様々なエピソードを聞き、仕事に対する熱量や覚悟の大きさを感じました。私も何かを決断して前に進まなければダメだと強く思いましたね。そこで、自分の思いを発信しているnoteに「アイドル業界でイノベーションを起こす」と宣言し、覚悟を決めて取り組むようになりました。
それからはひたすら発信とユーザーインタビュー、専門家への相談を繰り返し、事業構想をブラッシュアップしていきました。
――docomo academyがテーマとして掲げる「変革人材」において、プログラムを通して得られたことについて教えてください。
多くのことを学びましたが、思い返すと一番重要な学びだったのは「発信の大切さ」だったかもしれません。とくにアイドル事業に取り組むからには、応援をしてもらうことは非常に重要です。事業に直接的には関係のないパーソナルな情報も含めて、とにかく発信を継続するようにしていました。自分自身について知ってもらうことで、いろいろな人とつながりが持てるようになります。その結果として自分では気がつかなかった課題が見え、さらに市場にフィットしたかたちに修正できるのです。
私自身、もともとは日本のアイドルを海外に向けて発信する事業を考えていましたが、詳しい人から話を聞いて、事業モデルを修正しました。想定していたよりも市場が小さいこと、決済上の問題が起こる可能性があることがわかり、さらに現実的な路線に修正したかたちです。もし、グローバル市場に詳しい人と出会えなければ、いつまでも筋の悪いビジネスモデルにこだわっていたかもしれません。
――事業開発分野でのリスキリングを考えている方に、アドバイスをお願いします。
何か新しいものを立ち上げるときは、行動をしなければ何も変わりません。逆に言えば、一歩踏み出せさえすれば出会いが生まれ、世界が変わる可能性は大いにあります。何かアクションを思いついたときは、躊躇せず、行動をしてもらえるといいのかなと思います。
――最後に、今後の展望についてお聞かせください。
今構想中のビジネスをどのようなかたちであれ、リリースできるよう動き続けるつもりです。
docomo academy自体は2023年10月から始まって、翌年3月には終わってしまいます。その先、事業を続けるのかは当人に任されており、私の場合は、どのようなかたちであれ事業が立ち上がるまで続けるつもりです。具体的には、docomo academyとはまた別の、新規事業創出プログラム「docomo STARTUP」へエントリーをするつもりで、うまくいけばそこで事業化を実現できればと考えています。
docomo academyのおかげで、新規事業づくりのマインドを習得できました。とはいえ、まだまだスキル面では足りていないので、それを補う取り組みに力を入れていければと思っています。いずれにしろ、目標を達成させるには行動しかないと思っています。今回のプログラムで学んだことを活かしながら発信を続け、多くの人を巻き込んで、事業化に向けアクションをし続けたいです。