ビジネスプロデューサーとは何か?職業としての魅力と求められるスキル・資質

公開日:2023.12.01 更新日:2023.12.01

最近注目されている「ビジネスプロデューサー」という職をご存知でしょうか?

ビジネスプロデューサーは新しい職業概念です。職務内容や責任範囲は、営業やコンサルタントなどの既存の職ほどには定まっておらず、企業ごとに大きく異なります。

そのため、ビジネスプロデューサーという名前は耳にしたことがあっても、具体的に何をするのかは不明な点も多いでしょう。

本記事では、このビジネスプロデューサーについて、定義と職務内容を整理します。

さらに、必要なスキルや資質にも触れていきます。組織設計や事業企画を担当する方はもちろん、今後のキャリアに迷っているビジネスパーソンにも有用な情報ですので、ぜひ最後までお読みください。

ビジネスプロデューサーとは

ビジネスプロデューサーは、まだ新しい職業概念であり、職務範囲や責任についての明確な定義は存在しません。
ここでは、読者の皆さんに「ビジネスプロデューサー」の輪郭をとらえていただくため、この概念を定義します。また、よく比較される他の職種との違いもまとめます。

ビジネスプロデューサーは「価値を創造するリーダー」

ビジネスプロデュースとは、「社会的課題を取り込み、それを解決する形での構想を描き、その実現に向けた仲間づくりをして連携することで、数千億円規模の事業を創出していくというもの」(ドリームインキュベータ三宅 孝之氏による定義)です。

引用:ドリームインキュベータ

当メディアでは、ビジネスプロデュースを「顧客が感じる価値を明確にし、手持ちのリソース(技術や人材などの経営資源)を活用して実際に機能させる仕組み」とし、これを「持続的に機能させて成果を生み出す者」をビジネスプロデューサーと定義しています。

求められるところは会社や業界ごとに異なるものの、概ね、事業企画、プロジェクト運営、マーケティング、組織運営、交渉などの要素を統合し、これを自律的かつ連動するシステムに仕立て上げて経営成果につなげるのが、ビジネスプロデューサーの役割です。

なお、ビジネスプロデューサーという言葉の登録商標を持つ一般社団法人 ビジネスプロデューサー協会(BPA)は、「ビジネスプロデューサーとは、既成概念を打破する発想力を持ち、異なる価値観や才能あふれる専門分野の人たちを有機的に関連づけ調整する指導者」で「次代を切り拓く才幹あるリーダー」と位置付けています。

引用:般社団法人 ビジネスプロデューサー協会(BPA- ビジネスプロデューサーと経営者や起業家との違い

ビジネスを創造する点で、ビジネスプロデューサーは「起業家」と多くの共通点を持ちます。また、ビジネスの指揮を執る「経営者」とも類似性があります。

ビジネスプロデューサーは、起業家や経営者が持つスキルを要素として持ちます。しかし、起業家や経営者が「自社」を軸とするのに対し、ビジネスプロデューサーは「課題解決」や「新たな価値の創造」に主眼を置きます。

時には、自社や業界などの既存の枠組みに対抗する可能性がある点で、ビジネスプロデューサーは経営者や起業家と異なります。

ビジネスプロデューサーとコンサルタントの違い

ビジネスプロデューサーは「コンサルタント」と比較されることも多くあります。

コンサルタントは一般的に、既存のプロジェクトや事業の問題解決を支援する役割を担います。

一方ビジネスプロデューサーは新しいプロジェクトや事業を創出する役割を果たします。過去のプロジェクトや事業はあくまでも参考に、まったく新しい視点や考え方でビジネスを創出します。

ビジネスプロデューサーと営業の違い

営業職は、顧客の課題を解決するために自社の商品・製品やサービスを売ることが仕事です。製品やサービスを起点とするため、「自社」や「業界」という枠組みから離れるのが難しいのが営業という仕事です。

一方、ビジネスプロデューサーは、顧客起点での課題解決が職務です。そのために、自社や業界といった既存の枠組みを超えることが期待されます。

【注意】ビジネスプロデューサーは和製英語です

ところで、「ビジネスプロデューサー」という言葉は和製英語であるということには、注意が必要です。英語のProduceは単に「製造する、生産する」という意味をもつ言葉で、日本語の「プロデューサー」に内包される「価値を生み出す」という意味合いは含みません。

なぜビジネスプロデューサーが必要とされるのか?

近年、価値創造に意欲的な企業が次々と、ビジネスプロデューサー職を設置しています。

なぜ、ビジネスプロデューサーが注目され、重要視されはじめたのでしょうか?

ビジネスプロデューサーが注目される背景

ビジネスプロデューサーが注目される背景には、高度に複雑化し、迅速な変化が必要なビジネス環境があります。

複雑化したビジネス領域で迅速に動くため、そして未知の領域で挑戦を続けるために、企業は新しい人材の採用、外部の専門家やパートナー企業との連携、さらには異業種との協働などが必要です。

こうした状況下で生き残るためには、多様な専門性を持つ者が有機的に連携し、迅速に解を見つけなければなりません。この「有機的に連携」させる役割がビジネスプロデューサーなのです。

企業がビジネスプロデューサーを必要とする理由

このような環境で、企業が「ビジネスプロデューサー」を求めるのは、必然とも言えるでしょう。

以下では、企業目線をもって「企業がビジネスプロデューサーを必要とする理由」を深掘りしてみます。

理由1 プランニングに「統合」が必要だから

企業、あるいは製品・サービスを顧客に唯一無二の存在として認知されるためには、価値、特徴、強みに一貫性を持たせる「統合プラニング」が必要です。

プロジェクトにかかる要素を「一つの大きな塊」としてビジョンを描き、市場に強力に働きかける計画に落とし込まなければなりません。

そのために、要素を縦断的に俯瞰する役割が必要です。その役割を担うのが、ビジネスプロデューサーです。

 理由2 ステークホルダー間の連携強化が必要だから

ビジネスプロデューサーの役割には「チームづくり」も含まれます。部門間の軋轢を解消し、外部の力を最大限に引き出すことが期待されます。これができてはじめて、市場や社会にインパクトを与える「実行」につながるのです。

理由3 シナジー効果を最大化する必要があるから

それぞれの要素の価値をただ繋ぐだけでは、熾烈な競争に勝ち抜くことはできません。要素をつなげたときに、プラスの相乗効果が得られるようにすることが肝要です。

複数要素を持ち込むことは誰にでもできますが、これが相互にプラスに作用するよう企て働きかける役割は誰にでもできるものではありません。ビジネスプロデューサーには、「シナジー効果の最大化」も期待されているのです。

ビジネスプロデューサーの仕事とは

ここまでの内容で、ビジネスプロデューサーの輪郭をざっくりと掴んでいただけたのではないでしょうか?

ここではより具体的に、ビジネスプロデューサーの仕事を記述します。また、ビジネスプロデューサー職を設置する注目の3社の事例もご紹介します。

ビジネスプロデューサーの仕事

  1. ビジョンを作る

会社や業界という制約を超えた構想を作ります。新しいアイデアやビジョンを膨らませそのアイデアを具体的なプランに落とし込みます。表面的な問題にとらわれず、根本的な課題を探し出す目線を持つことが重要です。

  1. 戦略を作る

市場の動きに基づき戦略を練ります。徹底的な市場分析に基づき、実現への道筋を探ります。

  1. チームをつくる

社内や顧客、パートナー企業などを巻き込むことも、事業の実現には不可欠です。ときには、政府や大学などの専門家と協力できる関係を築くことも重要な仕事です。

  1. ルールを作る

新たなビジネスを生み出すためのルールをつくります。このルール作りは、戦略をスムーズに進行させるためでもあり、既存の慣行を打ち破るものであるべきです。

  1. プロジェクトをマネジメントする

目標達成に対する強いコミットメントを持ち、チームをドライブしてプロジェクトを推進します。最終的には、すべての努力が成果として表れることが最も重要です。

ビジネスプロデューサーの仕事例|富士通の場合

富士通のビジネスプロデューサーは、当社の従来の「営業」から名称変更した新たな職種としてスタートしました。顧客との最初の接点として、これまでリーチできていなかった、社会課題の解決やDXに深く入り込む働きが期待されています。

当社の「営業」は、さまざまなステークホルダーを巻き込みつつ、技術力やノウハウを横断的に駆使して価値提供を行う「ビジネスプロデューサー」に進化したといえます。

具体的には、従来内外の環境のリサーチ、顧客の課題やニーズの理解、プロダクトを軸にした製品・サービスの企画から営業活動までの幅広い業務を含みます。

ビジネスプロデューサーの仕事例|電通の場合

電通の「ビジネスプロデューサー」職は、広告代理店としての立ち位置を軸に、デジタルトランスフォーメーション(DX)支援、新規事業開発など、クライアントの多様なニーズに応える業務の全てを担います。

これには、課題の発見と解決策の模索、社内外の専門スタッフや外部協力会社と連携したチームづくり、スケジュール、予算、KPIの設計から管理に至るまでを含みます。

具体的なプロジェクトとして、大手デベロッパーの記者説明会プロデュースや、動画プラットフォームにおけるブランドの好感度向施策、大手食品メーカーへのマーケティング全般などが挙げられます。

ビジネスプロデューサーの仕事例|博報堂の場合

博報堂のビジネスプロデューサー職は、「社会に対して価値を提案する仕事をしていく」人たちです。マーケティングコミュニケーションに軸足を置きつつ、社会や顧客を取り巻く環境が変化し拡大する中で、「あらゆる観点で“ビジネス”を捉える」視点を持つことが重視されています。

具体的には、課題の特定、戦略の立案、具体的なプロジェクトやキャンペーンの設計と実施、さらに新しい価値を生み出すサービスやコンテンツの開発と、それを顧客に届けるまでの一連のプロセスすべてが、彼らの仕事です。

ビジネスプロデューサーに必要なスキル

ビジネスプロデューサーは、複数のスキルを有することが求められます。それに加え、多様なプロ人材をマネジメントするスキルも必要です。

ビジネスプロデューサーに求められる7つの「力」

ビジネスプロデューサーには、多岐にわたる専門的な知識を軸として実践する力と、多くのステークホルダーと折衝する人間的な力の両方が必要とされます。

もう少し具体的にすると、以下の7つの「力」が求められています。

  1. 計画を実装するための「実現する力」
  2. 知識を得て「知識を活用する力」
  3. 柔軟かつ精緻な「思考する力」
  4. プロジェクトを「運営する力」
  5. 価値を可視化するための「伝える力」
  6. 仲間を支援するための「包容する力」
  7. 現在と未来を描くための「データ分析と解釈の力」

ビジネスプロデューサーに求められる資質

ビジネスプロデューサーには、「自律的に動く」という資質が非常に重要です。

新たな価値を生み出すということは、挫折や軋轢にも多く直面します。「めげずに前に進み続けられる」という資質も重要でしょう。

また、この職は、矛盾する要素を状況によって使い分けることも求められます。たとえば「論理と情熱」「規則と自由」「頑固と柔軟」などです。

一つの視点のみに固執するのではなく、状況によって使い分ける柔軟さと、これを押し通すための「愛嬌」も必要です。

ビジネスプロデューサーのキャリアバックグラウンド

ビジネスプロデューサーとして採用したい人物のキャリアバックグラウンドは多岐にわたります。

以下に挙げるような職務の経験があり、これに別の知識や経験を加えることは、ビジネスプロデューサーとして活躍するうえでの強みになるでしょう。

  • 起業経験:事業および組織をつくったことがある
  • 会社経営:組織を継続的に運営し、価値を創造したことがある
  • マーケティング: マーケット分析やブランド戦略に精通している
  • 営業: クライアントとの関係構築や交渉スキルが高い
  • エンジニアリング: 基本的な技術的知識があり、エンジニアと効率的にコミュニケーションが取れる/新規サービスを設計、開発、実装できる
  • ファイナンス: 予算管理や財務分析ができる

ビジネスプロデューサーは「難しいが面白い」

この記事では、近年注目を集めるビジネスプロデューサーについて詳細に解説しました。

ビジネスプロデューサーは、新規事業の創出から価値の生成までを担当する多角的なリーダーです。この記事を通して、その仕事の面白さ、やりがい、そして挑戦性について理解を深めていただけたでしょうか。

ただし、本記事で提供する情報は一般的な概要に過ぎません。職務の範囲や優先事項は、企業や状況によって異なることがあります。ですから、「ビジネスプロデューサーになることは自分には無理だ」と早計に判断する必要はありません。

現在のキャリア状況を再評価し、今後どのようなスキルや経験を積むべきかを慎重に考慮してみてください。当メディアの他の記事も含め、この情報が皆様のキャリア形成に貢献できるよう願っています。


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