ビジネスチャンスを広げるためのキーワードといえる「ビッグデータ解析」に注目が集まっています。ビッグデータとは、膨大かつさまざまな種類のデータであり、解析することでビジネスに生かそうとする動きが盛んになっています。
ビッグデータを解析して何ができるのか、どのように解析すればいいのか、わからない場合もあるでしょう。
そこで今回はビッグデータ解析の概要や解析のメリット、具体的な分析手法を紹介します。また、ビッグデータ解析を成功させるポイントも解説します。
目次
ビッグデータとは、既存の管理システムなどの技術では、管理・分析が難しい大量のデータ群のことです。
現在ではインターネットの普及やコンピュータの高速処理技術の進化、SNS利用者の増加などにより、大量のデータが生成されるようになりました。
ビッグデータは、情報量が膨大なことに加え、リアルタイム性が高く非定型であるため、従来型のデータベース管理システムでは扱うのが難しいとされてきました。
しかし、近年ではデジタル技術の進歩によってビッグデータの高速分析が可能になり、新しい仕組みの創出や課題解決などにビッグデータを活用できるようになっています。
ビッグデータ解析とは、大量かつさまざまな数値のデータを集合・分類・整理・加工して、目的に応じて成型したり、図表化したりすることです。
また、データの集計だけではなく、分析結果の因果関係の追及や問題解明のためのプロセスも、ビッグデータ解析の一部です。
ビジネスシーンでビッグデータを解析することで、新しい製品・サービスの開発やコスト削減など、目的に応じてデータを活用できるようになります。
ビッグデータの特性は、以下の3つの「V」によって表現されます。
データ量が表現するのは、ビッグデータの情報の膨大さです。ビッグデータは一般的なソフトウェアの能力を超えたサイズのデータとされており、全世界規模では40ゼタバイト(ゼタ=1兆の10億倍)を超えるとみこまれています。
データ速度が表現するのは、データが発生したり、更新されたりする頻度です。ビッグデータは、大量のデータが高速で生み出され、変化していくという特徴があります。
また、ビッグデータはさまざまなデータの集合体です。数値やテキスト、動画、音声、ログ、位置データ、センサーデータなど、あらゆるデータを含むため、Variety(多様性・種類)としても表現されます。
さらに、最近では3つのVにデータの正確さを表すVeracity、データの価値を表すValueを加えた5つの「V」で表現される場合もあります。
ビッグデータの解析には、以下の4つのメリットがあります。
それぞれ詳しく解説します。
業務の属人化を防げるのが、ビッグデータ解析のメリットです。
デジタル化が進まない企業では、勘や経験、度胸が重視され、仕事に生かされるケースが多いため、業務が属人化してしまう傾向があります。
業務が属人化した状況で退職や人事異動が発生した場合、引き継ぎが上手くできず、業務が滞る可能性があります。
ビッグデータ解析によって客観的な判断ができれば、業務の属人化を防げるほか、さまざまな業務にデータを活用できるようになります。
意思決定がスムーズになるのも、ビッグデータ解析のメリットです。
企業における一般的な意思決定には、関係者での会議を繰り返す場合が多く、重要な事柄を決めるのに時間がかかるケースがあります。
データ解析の分析・予測の結果から客観的な意思決定ができれば、重要な判断もスピーディーに行えるでしょう。
事実ベースの施策が可能になるのも、ビッグデータ解析を行うメリットです。
解析したビッグデータは、売上の拡大や新規事業の参入など、重要な施策を立案する場合に大いに活用できます。
客観的な事実に基づいた判断が可能になるため、施策の立案が個人の偏見や一部のメンバーに依存することも防げます。
新しいビジネスチャンスの発見につながるのも、ビッグデータ解析のメリットです。
ビッグデータ解析では各部門が持つデータを合わせて分析します。複数のデータを分析することで、これまでは判明しなかった慣例や傾向などが導き出されることがあり、新しいサービスや製品を開発するきっかけになるなど、新たなビジネスチャンスに繋がる場合があります。
また、業績の向上や企業・顧客の課題を解決する可能性もあります。
データ解析によって新しい価値が生まれるケースが多いのも、ビッグデータ解析に取り組む価値がある理由といえるでしょう。
ビッグデータを分析する場合、さまざまな手法が用いられます。ここでは、ビッグデータの主な分析手法を紹介します。
クロス集計とは、データを属性で分類し、属性の傾向を分析する手法です。マーケティングやアンケートの集計、世論調査など、さまざまな領域で利用されています。
たとえば、マーケティング分野では、クロス集計によってユーザーの年齢や性別、居住エリアなどの属性に分類することで、ユーザーのニーズを把握できます。
クロス集計は複雑な計算が必要ないため、分析手法として扱いやすいのが特徴です。分析したデータの意味が理解しやすいことから、プレゼンテーションでも活用されます。
ロジスティック回帰分析とは、事象の発生確率を予測する手法です。
いくつかの要因から2値(答えが2つしかない値)の結果が起こる確率を説明・予測できます。分析結果は確率となるため、発生を意味する「1」と発生しない「0」の間の数値となります。
マーケティング分野では商品が売れる確率を予測するのに活用されるほか、医療分野での病気の発生確率の分析などにも利用されています。
アソシエーション分析とは、関連性がないように思える複数のデータから相関性を見つけ出す分析手法です。関連分析、マーケットバスケット分析と呼ばれることもあります。
単体のデータからは発見できない法則を見つけ出す分析方法で、通販サイトや小売店の販売戦略立案に使用されています。
アソシエーション分析の成功事例として、スーパーでの顧客の行動データを分析した際、おむつを購入した人は同時にビールも購入することが多いことが判明し、おむつとビールを近い場所に陳列したところ売上がアップした「おむつとビールの法則」というものがあります。
なお、通販サイトで散見される「この商品を購入した人はこちらの商品もチェックしています」という広告は、アソシエーション分析を用いたものです。
クラスター分析とは、分類したデータごとの特徴を分析する手法です。
類似性に基づいて分析するのが特徴で、分類したデータの集団(クラスター)の特性を分析して、マーケティングやブランディングに活用します。
クラスター分析によって、顧客をグループ分けした上で、アプローチしたい年齢層や強化したい商品について仮説を立てられます。また、自社の製品やサービスの市場での立ち位置、シェア、競争力などを割り出すことも可能です。
決定木分析とは、クロス集計を繰り返してデータを分類し、関連性を見出す分析手法です。マーケティングやリスクマネジメントに利用されることが多い分析手法で、「もし○○なら…」という仮説を繰り返すと、その経路が枝分かれすることから、決定木分析と呼ばれます。
たとえば、ある商品が特定の地域でよく売れていることがわかっている場合、他にも要因がないかデータを細かく分類して分析します。男性か女性か、年齢はどれくらいか、独身か既婚者か、といったようにデータを分類することで、商品のターゲット層の絞り込みが可能になります。
主成分分析とは、解析対象となるデータに複数の変数(一定の範囲内で任意の値を取り得る数、xやyで表すことが多い)が存在する場合に使われる分析手法です。
ビックデータ解析では、要因が多いほど正確な分析結果を得られますが、一方で分析が複雑化するデメリットがあります。
主成分分析によって分析対象のデータ変数を限定したり、まとめたりすることで、複雑なデータの分析を単純化できるようになります。
ビッグデータ解析を成功させるためのポイントは次のとおりです。
それぞれ詳しく解説します。
ビッグデータ解析を成功させるポイントの1つが、データの利用目的を明確にすることです。
どのような知見を得たいのかがはっきりしていなければ、データ分析のリソースや手間が無駄になってしまうためです。
ビッグデータにはさまざまなデータが含まれることから、目的に応じてどのデータを分析するのか事前に決めなければなりません。
また、利用するデータによって適した分析手法を選択する点も重要になります。
ビッグデータ解析を行う場合、データを適切に保管する仕組みを作ることも大切なポイントです。
膨大な量の情報を扱うことに加え、情報へのセキュリティを高める必要があるためです。
最近では、解析できるよう最適化されたデータを安全に保管できるDWH(データウェアハウス)というサービスが提供されています。
ビッグデータ解析には欠かせない仕組みといえるため、解析を行う場合は導入を検討した方がいいでしょう。
ビッグデータ解析を成功させるためには、データのクレンジングが必要です。
データが欠損していたり、ノイズが残っていたりする場合、データ分析が適切に行えないためです。
データクレンジングとは、それぞれのデータを分析に適した形状に整える工程で、専門のスキルを持った人材の確保や体制づくりが必要になります。
なお、前述したDWHではデータクレンジングの機能が搭載されているものもあります。
最後に、ビッグデータ解析を導入した企業の実例を紹介します。
EC業界大手の楽天が展開する総合ショッピングモールである楽天市場は、利用者の膨大な行動データが集約されるプラットフォームです。楽天では、利用者の行動データや楽天系列のサービスの利用履歴を紐づけし、利用者に対して精度の高い広告配信を行っています。
また、2018年から提供が開始されたRakuten Airisは、楽天IDとAIが分析した消費行動分析データをマーケティングに活用できるサービスとなっており、購入実績がある人物と類似したユーザーを選んで広告を配信できます。
商品を購入すると予測できるユーザーにターゲティングできることから、効率的なマーケティングが可能です。
世界最大手の半導体メーカーであるIntel(インテル)では、品質テストのコスト削減を目的にビッグデータを活用しています。
製造プロセスで集めたデータを品質テストにフィードバックした結果、品質が疑われるチップにのみ重点的にテストを行えるようになりました。
従来方式では、製造チップの品質確認のために1万9000回のテストを行っていましたが、ビッグデータの活用により300万ドルものコストカットに成功しています。
ビッグデータの解析は企業の競争力強化や課題解決、業務効率化に加え、企業の将来性を見越すために重要な施策といえます。今後はビッグデータ解析を行う企業がさらに増加すると考えられます。
新たなビジネスチャンスを見出すためにも、ビッグデータを解析して自社のビジネスに生かしていきましょう。
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