観光業界で広がるDXとは?推進理由や成功事例を解説

公開日:2023.05.05 更新日:2023.05.05

近年、観光業界にもDXを推進する動きが強まってきています。観光DXとは、デジタル技術を活用して新しい観光ビジネスの創出や観光の価値を向上させることです。現在では、さまざまな地方・観光地域でデジタル技術を活用した試みが行われています。

この記事では、観光業界に必要とされているDXの推進理由やメリットを解説します。実際に推進して成功している観光DXの事例についても解説していきますので、ぜひ最後までご覧ください。

観光DXとは

観光DXとは、観光事業における業務のなかでデジタル技術を組み込むことにより作業の効率化や新しいビジネスの創出を行うことです。新型コロナウイルスの影響で観光業界は大きなダメージを負いました。

観光の需要が低下しているなか、観光DXを導入することは非常に重要です。観光DXに力を入れることで、より多くの人に観光地を知ってもらう新しいPR方法、観光業界が抱える課題の解決につながります。

観光業界の課題

今やDXは私たちの生活のなかであらゆる分野で溢れています。観光業界も例外ではありません。ここからは、観光業界が抱えている課題を解説します。

人手不足

観光業界の課題のひとつに人手不足が挙げられます。正社員やアルバイトの求人を出してもなかなか応募者がいないのが現状です。一般的な企業とは異なり、就業時間が日によってバラバラであったり、不定休だったりするため、観光業界独特の勤務形態に違和感を覚える人は少なくありません。また、古くから続く旅館や老舗店などの後継者問題も軽視できません。

非効率な業務

勤務形態以外にも、従来の慣習に則った非効率な業務も課題です。現在、多くの小売店や飲食店、病院など、あらゆる業界でオンライン決済が普及してきています。しかし、伝統を重んじる観光業界では、他の業界と比べてデジタル技術の普及が進んでいない面があります。非効率な業務によって時間やコストを無駄にしてしまうだけでなく、旅行者の満足度の低下につながる恐れもあるでしょう。

宣伝方法

日本には魅力的な地方が多くありますが、有名な観光地にばかり人が集まってしまい、他の地方への誘致がうまくできていないのも課題点です。現代では、一人一台携帯を持っており、インターネットとのつながりが以前と比べて強くなりました。インターネットを駆使して地方ならではの強みや魅力をPRすることも重要です。

観光DXを推進するメリット

観光DXを推進することで得られるメリットは多くあります。ここからは、観光DXのメリットについて解説します。

利便性が高まる

観光DXの推進によって旅行者の負担を減らせます。たとえば、オンラインで24時間対応にすることで「いつでも」「どこからでも」旅行の予約ができます。また、事前にオンライン決済を行っておけば、混雑する窓口で決済に時間を割かれるストレスもなくなります。そのほかにも、紙のチケットを電子チケットにすれば紛失のトラブルを防げます。トラブルに対応するスタッフの負担も軽減され、旅行者、旅行業者、双方にメリットがあります。

新しいサービスの創出

従来の旅行といえば、実際に現地に赴くことが普通でした。しかし、観光DXが進めばオンライン観光ができるようになります。直接観光地まで足を運ばずとも、自宅にいながら観光名所や地方の魅力を感じられます。従来の旅行に比べて費用を抑えられるほか、AIの分析により、個々人の嗜好に合わせた最適な旅行先の提案などもできます。観光地に足を運ばなくても貴重な体験ができたり、自分では思いつかないような旅行先の提案を受けたりすることは、今までの旅行とは異なる新しいサービスの創出といえるでしょう。

業務の効率化

デジタル技術を活用し業務を効率化できるのもメリットのひとつです。たとえば、電子決済を導入することでレジ対応の負担を軽減できます。なかには、支払が現金対応のみだと負担に感じる旅行者もいるでしょう。業務を効率化するのは、旅行者側にもメリットがあるのです。また、削減した時間で他の業務が行えるため、従来よりもスムーズに仕事全般を進められるようになります。

効率的に観光地をPRできる

観光DXに取り組むことで旅行者の情報やトレンドなどを把握できるのもメリットのひとつです。旅行者のニーズやトレンドを抑え、需要に沿ったサービスや施策を展開することで、旅行者の満足度向上が期待できます。また、手探りな状態でサービスを模索したり、実施したりすることがなくなり、旅行者に喜んでもらえるようなサービスを効率よく生み出すこともできるでしょう。PR内容を実際の顧客情報をもとに考えるため、従来よりも顧客ニーズに対し正確なアプローチが可能になるのです。

観光DXの事例

観光DXを推進している事例は数多くあります。観光DXの推進に成功している事例を2つご紹介します。

海辺のかくれ湯 清流

「海辺のかくれ湯 清流」は、静岡県の伊豆半島西岸に位置する西伊豆町にある旅館で、美しい海と夕焼けを宿から一望できる旅館として非常に人気です。清流では、業務の効率化を図るために「ポケやど」を導入しました。

ポケやどとは、旅行者がスマートフォンで簡単に宿泊先の館内情報を手に入れられるツールです。ポケやどを導入する前は、販促で印刷した紙を全客室に貼っていました。販促内容が変わるたびに全客室に貼ってある紙を入れ替えなければなたないため、非常に大きな負担になっていたそうです。

ポケやどを利用するようになってからは、貼り換えの作業がなくなったことに加え、販促についての問い合わせも少なくなったため、業務の効率化が進みました。最新の情報に変更する際もポケやどの掲載内容を変更するだけで済むため、以前よりも時間を有効に使えるようになりました。

潮彩きらら赤穂温泉 祥吉

「潮彩きらら赤穂温泉 祥吉」は、兵庫県赤穂市にある旅館で露天風呂や四季をイメージした料理が人気です。祥吉では、とくに忙しくなる食事提供の業務を改善するために「配膳管理システム」を導入しました。配膳管理システムを導入する前は、注文に関するミスが多く旅行客に迷惑をかけてしまうことも多かったようです。

しかし、配膳管理システムを導入することによって人的なミスが減少し、効率的に食事の提供ができるようになりました。顧客の注文状況は全スタッフで共有するため、迅速に対応できます。

観光DXに活用できるサービス

ここからは、観光DXに活用できるサービスについて解説します。観光DXに活用できるサービスは数多く存在し、日々研究が進んでいます。観光庁は、2021年に観光DXをさらに促進させるために「従来の観光サービスとは異なるコンテンツやエリアマネジメントを可能にするデジタル技術の開発事業」「旅行客を増加させるためにデジタル技術を活用した事業」の公募を行いました。

開発事業では、応募の中からいくつかの事業が採用され、実際に検証・実験が始まっています。以下の2つは観光DXに活用できるとして採用された新しいサービスのアイデアです。

XR技術を活用した体験サービス

XRとは、VRやARといった現実世界と仮想の世界をつなげる技術のことです。このXR技術を活用した体験は、実際に神奈川県横浜市のXRバスツアーで実施されているほか、京浜急行電鉄では、過去2回XRの体験ツアーを開催しています。京浜急行電鉄においては、いずれも顧客から高い評価を得ており、XRによる新しいサービスの可能性を感じるきっかけになりました。

顔認証と周遊eチケットの統合サービス

eチケットとは、電子チケットのことです。顔認証とeチケットの情報を統合することで手ぶらで観光・旅行できるようになります。従来とは異なり、紙媒体のチケットが不要なため決済の手間が省け、周遊eチケットで回遊率を向上させるのが目的です。実際に山梨県ではこの顔認証と周遊eチケットを統合させた観光サービスの開発が進められています。

既存のサービスを見直しDX推進を行うことが重要

この記事では、観光DXが必要とされている理由や観光DXのメリット、成功事例を解説しました。DX推進は一般企業だけでなく観光業界でも行われており、年々重要性が高まってきています。観光業界も競争が高まっており、DX推進に乗り遅れると取り残されてしまいます。デジタル技術が生み出す新しい社会を生き抜くためにも、DX推進に力を入れていくことが重要です。DXを導入したいと考える人は、この記事を参考にして取り組みを進めてみてください。

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