政府が打ち出すリスキリング支援策とは?企業や個人が使える助成金/補助金まとめ

公開日:2023.06.19 更新日:2023.09.14

最近リスキリングという言葉をよく耳にするという人も多いのではないでしょうか。リスキリングは政府が主体となって取り組んでいるものであり、大手企業も積極的に実施しています。

この記事では、リスキリングを行っていくうえで得られる支援の内容や支援事業などについてご紹介していきます。リスキリングを実施しようと考えている人は、この記事を参考にして取り組んでみてください。

リスキリングとは

リスキリングとは、将来使うことになるであろうスキルや知識を身に付けるために学習することです。一般的にリスキリングは企業が社員に対してプログラムや研修を通して行います。リスキリングの目的は、働きながら新しいスキルを習得し、獲得した技術や知識を今後の業務に活用することです。

政府が打ち出すリスキリング支援策

リスキリングは国が主体となって取り組んでいます。岸田首相は今後5年間でリスキリングに対する支援を1兆円投じるとし、2022年10月12日の日経リスキリングサミットでは、リスキリング支援策として3つの柱を発表しました。


  • 転職者や副業者を雇用する企業、非正規雇用を正規雇用に変える企業に対する支援
  • 労働者のリスキリングから転職までの一連を支援
  • リスキリングを実施している企業への支援を強化


このような方針を受け、経済産業省ではデジタル人材育成プラットフォーム「マナビDX」や、AI・IT技術、データサイエンスといった分野の学びを支援する第四次産業革命スキル習得講座認定制度を整えるなど、さまざまな形でリスキリングの支援を実施しています。

他にも、厚生労働省では人材開発に関する助成金制度や給付金制度を充実させており、国をあげてデジタル人材の育成やキャリアアップのためのリスキリングを支援する方針を示しています。

参考:マナビDX

参考:第四次産業革命スキル習得講座認定制度

リスキリング支援の狙いは?

政府はなぜリスキリングの支援に取り組むのでしょうか。ここからは、政府のリスキリング支援政策の狙いについて解説していきます。

生産性の向上と労働者の賃上げ

政府がリスキリング支援を行う理由は、リスキリングで新しいスキルや知識を習得することで生産性を向上させ社会全体の賃上げをするためです。

今までの日本は終身雇用や年功序列といった文化が重視され、新しいスキルを習得しなくとも長期間安定して企業で働くことができました。このような文化が長く続いてきたことが、労働市場の成長が遅延させ、成長分野に対する人材不足にもつながっていると考えられます。


他国と比べてもその差は歴然としています。たとえばアメリカは平均賃金の成長率が1995年から2021年までで約1.5倍、ドイツやカナダも軒並み上昇しているのに対し、日本はほとんど変化していません。

また、G7のなかでは平均賃金がイギリスに次いで2番目に低く、成長率については最下位となっており、非常に大きな問題となっています。


デジタル化が進んでいるなか、日本の中小企業の多くはリスキリングが浸透していません。数十年に渡る賃金の横ばい状態がそれを証明しており、この問題の打破が重要です。

リスキリングを浸透させ生産性が向上すれば、企業の時間あたりの利益の増加につながります。無駄な時間を削減し利益を確保することができれば、企業も労働者に対する給料を上げられます。

結果として社会全体の賃金が上がり、お金の消費がより活性化し、経済の循環もよりよくなるのです。

東京都も取り組むDX人材リスキリング支援事業

DX人材を育成するためのリスキリング支援には、東京都も積極的に取り組んでいます。東京都ではDX人材を育成するための学習プログラムを開催しており、無料で受講できるのが特徴です。

学習プログラムには以下の4つのコースが用意され、それぞれの課題や目的に応じて利用できます。


  • 業務効率化コース
  • データを活用した営業力向上コース
  • 集客・売上向上コース
  • 経営戦略コース


業務効率化コースでは、生産性を上げるために必要なデジタルツールの使い方やアナログで行っていた業務をデジタル化する方法などを学べます。業務に無駄が多いと感じ、その改善を希望する人は、業務効率化コースの受講をおすすめします。

データを活用した営業力向上コースは、営業力や組織力の向上のためのデータ活用スキルを学ぶコースです。DXにおいて重要な鍵となるデータ分析力を身につけられる講座が用意されています。


集客・売上向上コースは、ウェブやSNSなどを駆使して集客を拡大したい人や、過去の売上データを元にさらに利益を生み出したいと考えている人に向けたコースです。このコースでは、マーケティング戦略についての講習が受けられ、顧客の興味を引き付ける要素などを学べます。


経営戦略コースはリスキリングを実施したい企業や組織のマネジメント方法、最新のデジタルを利用して新しいビジネスモデルを創出したい人に向けたコースです。このコースでは、リーダーシップやマネジメントのセオリーについて学習できます。


2022年度、2023年度ともに、5〜6月に募集を行い、7月から開始、翌年の2〜3月までのプログラムとなっています。

参照:【東京都】DX人材リスキリング支援事業 (dx-reskilling-tokyo.jp)

ここからは、企業や個人がリスキリング・学び直しで使用できる助成金・補助金についてご紹介していきます。リスキリングや学びなおしで資格を取得することによって、国から助成金をもらえることがあります。これからリスキリングに取り組もうと考えている場合は、ぜひ、参考にしてみてください。

人材開発支援助成金

人材開発支援助成金は、企業が社員に対してリスキリングを行う際にかかる費用を国が一部助成する制度です。人材開発支援助成金には7つのコースがありますので、目的に応じたコースを利用しましょう。コースは以下の通りです。


  • 人材育成支援コース
  • 教育訓練休暇等付与コース
  • 人への投資促進コース
  • 事業展開等リスキリング支援コース
  • 建設労働者認定訓練コース
  • 建設労働者技能実習コース
  • 障害者職業能力開発コース


申請方法や利用対象者の確認は厚生労働省の公式サイトから確認できますので、事前に確認しておくことをおすすめします。

参考:厚生労働省公式サイト

一般教育訓練給付金

一般教育訓練給付金は、社会人が英検や国家試験などに向けた講座を受講した際に、受講費用の2割を給付金として受け取れる制度です。対象者は雇用保険の期間が3年以上で講義を最後まで受講した者に限ります。

特定一般教育訓練給付金

特定一般教育訓練給付金は、2019年より始まった制度で、対象となっている講座に対して給付金が出るというものです。対象となっているものは国家資格や介護資格に関する講座が多く、給付金額も一般教育訓練給付金と比べて受講費用の4割と高いのが特徴です。


給付金の上限額も一般教育訓練給付金と比べて2倍の20万円となっています。

その分対象講座は非常にレベルが高いため、継続して学習する意思が求められるといえるでしょう。

専門実践教育訓練給付金

専門実践教育訓練給付金は、2014年から開始した制度で給付金が受講費用の5割と非常に高くなっています。上限額も40万円で、資格を取得した際にはさらに受講費用の2割を給付金として受け取れます。


専門実践教育訓練給付金の対象となっている講座は非常に多く、その数は2600以上(※)にもなります。国家資格やAIに関する講座など多岐にわたって指定されているのが特徴です。特定一般教育訓練が業務独占資格の取得を目的としているのに対して、専門実践教育訓練はデジタル技術の発展に適応したデジタル人材を育成することを目的としています。

※令和4年4月時点

まとめ

ここまで、政府や東京都によるリスキリングの支援策、リスキリング支援で得られる助成金などについてご紹介してきました。

リスキリングは国をあげての取り組みであり、サポートする制度は多く存在します。リスキリングを実践したいと考えている人は、この記事を参考に取り組んでみてはいかがでしょうか。

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