物流業界が取り組むべき社員研修とは?人材育成サービス7選も紹介

公開日:2024.01.19 更新日:2024.01.19

法改正やECサービス利用の増加により、輸送能力不足が課題となっている物流業界。課題解決のためには企業の一番の資本である人材の育成が必要不可欠です。

今回は、物流業界が取り組むべき人材育成研修の内容やおすめ研修サービス、社員研修を実施するうえでのポイントなどを紹介します。

物流業界が抱える課題

物流業界では2024年問題の解決や高度物流人材の育成が喫緊の課題となっています。

輸送能力不足が懸念される「2024年問題」

物流業界の「2024年問題」とは、2024年から適用されるトラックドライバーの時間外労働規制により社会全体の輸送能力不足が懸念されている問題です。

自動車運送事業はこれまで時間外労働の上限規制がなく、トラックドライバーの長時間労働が業界全体の課題となっていました。しかし2019年の働き方改革関連法の施行により労働基準法が改正され、自動車運送事業については2024年4月から、トラックドライバーの時間外労働が年間960時間までに規制されます。


時間外労働の上限規制によりドライバーの労働環境改善が期待されていますが、一方でドライバー1人当たりの輸送量が減り、荷物が納品日までに届かないなど物流の停滞が起きる可能性も示唆されています。

国土交通省の予測では、労働時間規制に伴う具体的な対策を何も講じなかった場合、社会の輸送能力は2024年度で約14%(4億トン相当)、2030年度で約34%(9億トン相当)不足するとされています。

さらに、規制強化によって物流業界の売上減少やドライバーの収入減少、待遇悪化に伴う離職の増加なども発生すると考えられています。

参考:物流の2024年問題について|国土交通省

高度物流人材の育成が鍵

物流企業がドライバーの労働環境改善と輸送能力の維持・向上を両立するには、既存のビジネスモデルやプロセスにとらわれず物流の新しい価値を創出できる「高度物流人材」の育成が鍵となります。

近年は、一般消費者向けのECサービスなど物流を起点とした事業を展開する企業も増加しており、高度物流人材の育成は物流企業に限らず荷主企業や消費者を含む社会全体の利益につながると期待されています。


高度物流人材には物流分野にとらわれない多様な能力が求められますが、国土交通省は特に「デジタル化に対応してデータドリブンで思考する能力」「サプライチェーンを全体最適化の観点からマネジメントする能力」「社会変化に対応し、新技術導入や異分野連携を推進できる能力」などの能力の重要性が高いとしています。

参考:物流起点の価値創造を実現する人材の育成に向けて|国土交通省

物流業界の人材育成に役立つ研修内容

高度物流人材をはじめ、物流業界の人材育成に役立つ社員研修のテーマ例を紹介します。

DX推進

DX(デジタルトランスフォーメーション)は、既存事業の高度化や新規事業の開発、社内業務の効率化など組織にさまざまなプラスの効果をもたらします。

研修テーマとしては、たとえば管理職向けにビジネスデータの分析・活用方法の研修を実施してデータドリブンなサービス設計につなげる、現場リーダー向けに業務のデジタル化の研修を実施して作業効率を上げるなどの取り組みが考えられます。

生産性向上

研修を通して生産性向上に取り組むことで、従業員の労働時間削減や組織の利益拡大につなげられます。労働環境や待遇が改善されれば離職者の減少も期待でき、人手不足・輸送能力不足の解消にも役立ちます。

組織の生産性を上げるためには、従業員一人ひとりのスキル向上と業務プロセスの改善が欠かせません。そのため研修内容としては、たとえばメンバー向けにタイムマネジメント研修を実施する、管理職向けに無駄な業務の洗い出しやAI活用の研修を実施するなどが考えられます。

CS向上

CS(顧客満足度)は企業のイメージや事業の継続性を左右する重要な要素です。グローバル化によって価格やサービス内容による競合との差別化が難しい今、顧客対応は自社の優位性を示せる数少ないポイントでもあります。

CS向上につながる研修としては、たとえばトラックドライバー向けのマナー・接遇研修やクレーム電話対応研修、誤出荷率を下げるヒューマンエラー防止研修などが挙げられます。

マネジメント力強化

管理職や現場リーダーのマネジメント力が向上すれば、チームが安定的な成果を出せるようになり、業績アップや人材定着が期待できます。

マネジメント力強化につながる研修としては、適切な目標設定・管理方法を学ぶ研修や、部下のモチベーションを上げるコミュニケーション研修などが挙げられます。

物流業界向けの社員研修サービス7選

物流業界向けの研修サービスを展開している企業を7社ピックアップし、それぞれの研修の内容や特徴をまとめました。

株式会社インソース|幅広い研修テーマを用意

法人向けの社会人教育事業を展開する株式会社インソースは、物流・ロジスティクス業界向けに生産性向上、CS向上、マネジメント強化、DX推進など幅広いテーマの研修プログラムを提供しています。

研修の実施方法は、講師派遣型の集合研修に加えて、異業種交流型の公開講座やeラーニングもあります。また、研修講師を物流業界出身者に指定することも可能です。

参考:物流/ロジスティクス業界向け研修・サービス|株式会社インソース

株式会社NX総合研究所|プロセスマネジメント研修を実施

物流分野の民間シンクタンクである株式会社NX総合研究所は、集合研修、eラーニング、セミナーなど複数の人材育成サービスを提供しています。  

集合研修では、物流のプロセスを一つのプロジェクトと捉え、プロジェクトマネジメントの考え方を物流業務に活かす「物流プロジェクトマネジメント研修」を受けることができます。

eラーニング「物流eカレッジ」は、物流の基礎知識に加えて、グローバル対応、提案営業などを学習できるサービスです。セミナー「ロジゼミ」では、業界の最新テーマや現場改善事例などの講座を実施しています。

参考:物流人材育成|株式会社NX総合研究所

一般社団法人日本物流団体連合会|セミナー型研修を開催

物流業に関連する情報提供活動や人材育成事業を行う一般社団法人日本物流団体連合会は、1〜2日間のセミナー型研修を毎年複数回開催しています。

2023年の研修テーマは、生産性向上やコスト削減を目的とした物流現場業務改善や、現場力活性化を目的とした物流センター長のマネジメント力強化、新人向けの基礎知識・実務知識解説などでした。

参考:各種人材育成研修|一般社団法人日本物流団体連合会

船井総研ロジ株式会社|コンサルタントによる研修企画

物流専門のコンサルティングファームである船井総研ロジ株式会社では、専門コンサルタントが物流企業各社の事情に合わせたオリジナルの研修プログラムを設計・実施しています。

対応可能な研修テーマは、業界動向・物流部門強化・物流コスト対策・現場改善・人材運用・品質マネジメント・KPI&SLA・中堅管理者など多岐にわたります。

参考:物流・ロジスティクス業界向け研修・講演|船井総研ロジ株式会社

公益社団法人日本ロジスティクスシステム協会|完全オーダーメイド研修を設計

ロジスティクスに関する調査研究や経営指導などを行う公益社団法人日本ロジスティクスシステム協会は、物流企業向けに完全オーダーメイドの社内研修を企画・運営しています。

研修テーマの例としては、業界の最新動向、物流コスト・収支管理、在庫管理、品質・生産性向上、営業開発支援、CSRなどがあります。

参考:社内教育・コンサル|公益社団法人日本ロジスティクスシステム協会

株式会社ロジスティクス・サポート&パートナーズ|階層別研修を豊富に展開

物流に特化したコンサルティング事業を展開する株式会社ロジスティクス・サポート&パートナーズは、新入社員・現場リーダー・センター長・営業課長など階層ごとに研修プログラムを展開しています。

たとえば現場リーダー向けの研修例では、業務改善方法や現場の環境整備、リーダの役割などについて講義で学んだ後、演習として研修期間で達成すべき目標の設定や成果測定を行うカリキュラムが組まれています。

参考:社内教育・研修・講演講師派遣|株式会社ロジスティクス・サポート&パートナーズ

ロジクエスト株式会社|ソフト・ハード両方のスキルを強化

運送・物流業界の社員教育事業を行うロジクエスト株式会社は、リーダーシップや論理的思考などのソフトスキルと、物流の専門知識や経営リテラシーなどのハードスキルの両方を身につける研修体系を採用しています。

たとえば管理職向けには、ソフトスキルとして目標設定力や組織マネジメント力などを強化し、ハードスキルとして物流の関連法規やコスト管理などを学習するカリキュラムとなっています。

参考:人財育成・社員教育|ロジクエスト株式会社

社員研修を成功させるポイント3つ

社員が研修で身に付けた知識やスキルを業務に還元して企業の経営にプラスの効果をもたらすためには、社員研修を実施するうえで守るべき3つのポイントがあります。

経営戦略や人材育成計画に基づいた研修内容にする

社員研修を実施するうえで重要なポイント1つ目は、企業の経営戦略や人材育成計画に基づいた研修内容にすることです。社員研修でありがちな失敗の一つに、研修自体が目的化してしまって講義やプログラムの内容が実際の業務で役に立たないケースがあります。実務に結びつかない研修は教育コストの無駄になり、研修に取り組んだ社員もスキルアップした実感を持ちにくいでしょう。

企業経営や業務改善につながる有意義な研修を行うためには、経営戦略や人材育成計画を軸に、今後どのような人材が必要になるのか、必要な人材を育てるためにはどのような教育をするべきなのかを経営層や人事部で十分整理してから研修内容を組むことが大切です。

自社の業務に沿ったケーススタディを入れる

社員研修を実施するうえで重要なポイント2つ目は、研修内容に自社の業務に沿ったケーススタディを入れることです。ケーススタディがあれば、社員が日頃の業務や職場を思い浮かべながら研修を受けられるため、内容を理解しやすくなります。しかし、事例の内容が自社の業務や職場環境とかけ離れていると、具体的な場面がイメージできず、ケーススタディで学んだ内容を普段の仕事にどう生かせばいいかわからない社員が出てくるでしょう。

他社の社員研修プログラムを利用する場合は、自社の業務・職場環境に合わせたケーススタディを作成してもらえるか企業側に相談しましょう。

社員に研修を受ける明確な目的を持ってもらう

社員研修を実施するうえで重要なポイント3つ目は、社員に研修を受ける明確な目的を持ってもらうことです。どんなに優れた研修プログラムを用意しても、学ぶ側の意欲が低ければ研修の効果は十分に発揮されません。社員のモチベーションを高めるためには、社員に「何のために学ぶのか」という目的意識を持ってもらう必要があります。

研修を実施する前に「担当できる業務が増えてスキルアップにつながる」「よくあるトラブルの対処法が分かる」「昇進・昇格に必要」など研修を受けるメリットや必要性を伝えると、研修に対する社員のモチベーションが上がりやすくなるでしょう。

まとめ

物流業界では将来的な輸送能力不足が懸念されており、高度物流人材を育成する重要度が高まっています。人材育成の一環としてDX推進や生産性向上、CS向上、マネジメント力強化などに関する研修を実施し、社会変化に柔軟に対応できる組織づくりを目指しましょう。


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