クラウド人材とは?必要なスキルや育成研修サービスを紹介

公開日:2024.03.19 更新日:2024.03.19

サーバーやソフトウェアを使わずインターネットを介して利用できるクラウドサービスの普及が進む中で、クラウド人材の需要も高まっています。

そこで今回は、クラウド人材の重要性や必要なスキルを解説します。また、クラウド人材の育成方法や研修サービスも紹介します。

クラウド人材とは?

まず、クラウド人材の役割や、クラウド人材の需要が高まっている背景を解説します。

クラウドの設計・導入・運用に対応できる人材

クラウド人材とは、自社または顧客の事業に適したクラウドシステムやクラウドサービスを設計・導入・運用できるIT人材です。

クラウド技術の進化に伴い、クラウドサービスを利用する企業は年々増加しています。2022年の総務省の調査によると、クラウドサービスを「全社的に利用している」と回答した企業は全体の44.8%に上り、前々年(39.3%)や前年(42.6%)よりもクラウドのビジネス活用が進んでいる傾向が見られます。

出典:令和4年通信利用動向調査報告書(企業編)|総務省

今後クラウドサービスを利用する企業はさらに増えると予想されており、クラウド人材の需要もますます高まっていくと考えられています。

クラウド人材不足がDXの妨げに

クラウド導入のニーズは高騰しているもののクラウドを扱えるデジタル人材が社会全体で不足しており、これが企業・組織のDXが進まない要因の一つとなっています。

たとえば、2025年度までに全国の自治体の住民情報を国・地方自治体共通のクラウドに移行する政府主導の計画にも、クラウド人材不足の影響が出ています。読売新聞の調査によると、121の自治体のうち約3割が2025年度までに移行を完了できない見込みであり、移行に伴う課題の一つとしてデジタル人材確保の難しさが挙がっています。

クラウド人材不足を解消するため、システム開発を行うITベンダーや自社専属のエンジニア獲得を狙う企業の間ではクラウド人材の育成が大きな人事課題となっています。

参考:地方公共団体情報システム標準化基本方針|デジタル庁

参考:「政府クラウド」25年度末までの移行、121自治体の3割が困難…人材不足・費用高額など課題|読売新聞オンライン

クラウド人材に求められるスキル

クラウドシステムを導入・運用する役割を担うクラウド人材には、大きく「クラウドの基礎知識」「システム設計力」「エンジニアリング力」の3種類のスキルが求められます。

クラウドの基礎知識

クラウド人材は、クラウドの専門用語や主要サービスの種類、企業の導入事例など、これからクラウド活用を本格化させるうえで基礎となる知識を身につけておく必要があります。

また、クラウド関連のテクノロジーは日々進化しており、求められるシステム要件も技術の進歩に合わせて変化するため、クラウド人材はITトレンドにもアンテナを張っておくべきです。


たとえば以前は、オンプレミスのサーバーをクラウドに移行する比較的シンプルなクラウド導入が主流でしたが、現在では複数のクラウドを使い分けるマルチクラウドやオンプレミスとクラウドを連携させるハイブリッドクラウドなど、導入方法がより複雑になっています。

クラウド技術の変化にいち早く対応するためには、これまでのサービスに関する基礎知識と最新トレンドの両方が必要不可欠と言えます。

システム設計力

ラウド人材には、自社サービスに適したクラウドシステムを設計できるスキルが必要です。

たとえば主なクラウドベンダーのサービスとして、AWS(Amazon Web service)やMicrosoft Azure、GCP(Google Cloud Platform)などが挙げられます。各サービスにはセキュリティや他製品との連携のしやすさなどに違いがあり、クラウド人材には各社のサービスの強み・弱みを理解したうえで設計・運用する能力が求められます。

エンジニアリング力

クラウド人材には、設計に沿ってシステムを実装できる高いエンジニアリング力(技術力)が必要です。具体的には、サーバー・ネットワークの構築スキル、プログラミングスキル、アプリケーション開発スキル、自動化技術など幅広い実装スキルが求められます。

特に、マルチクラウドやハイブリッドクラウドが主流となりつつある今は、インフラやミドルウェアなどクラウド以外のITスキル・開発経験も持っている人材の需要が高まっています。

クラウド人材を育成するには?

自社でクラウド人材を育成するために必要な3つの取り組みを紹介します。

人材育成計画の策定

クラウド人材育成では、まず自社の事業戦略やビジョンなどに沿って「どのようなスキル・経験を持った人材がいつまでに何人程度必要なのか」という明確な育成計画を立てることが重要です。

たとえば、株式会社NTTデータは2025年までに数万人程度のクラウド人材育成を目指しており、一つのクラウドを極めたExpert人材と複数のサービスに精通したマルチクラウド人材の両方を育成する方針を採用しています。

参考:クラウド人材1万人の育成に向けた取り組み | NTTデータ | DATA INSIGHT

参考:グローバルクラウド人財の育成とスキル向上施策|株式会社NTTデータ

人事評価制度の整備

クラウド人材のスキルアップを促すには、技術レベルに応じた人事評価制度も必要になります。習得したスキルを活かせる業務へのアサインや昇進・昇給につながる制度をつくれれば、仕事に対するモチベーションが向上しやすくなるためです。


たとえば株式会社サイバーエージェントでは、特に注力すべき技術領域において優れた技術を持つエンジニアを選出する「Developer Experts制度」を設けています。同制度で選出されたクラウド人材は、グループ全体の成長や人材育成への貢献が期待されており、活動費のサポートを含め会社から全面的なバックアップを受けられるようになっています。

参考:Developer Experts制度|株式会社サイバーエージェント

定期的な社内勉強会の開催

クラウドサービスは技術変化が速く次々と新サービスが登場しているため、長期にわたって活躍できるクラウド人材を育成するには、定期的に社内勉強会を開催して最新技術をキャッチアップできる仕組みが必要です。


たとえば株式会社野村総合研究所では、毎週AWS勉強会を開催しています。勉強会の企画や運営、参加は社員の自発性に任されており、平均30〜40人がアップデート情報の読み合わせや実験結果のアウトプット、失敗談の共有などを行なっています。また、社内勉強会への参加を後押しするために、年に数回は数百人規模の勉強会も実施しています。

参考:実例:クラウド人材の育成は難しい?自発的にクラウドを学ぶNRIの取り組み

参考:年間40回社内AWS勉強会を運営してみた|株式会社野村総合研究所

クラウド人材育成におすすめの研修サービス

クラウド人材育成の研修サービスを提供している企業を6社ピックアップし、具体的な研修内容やサービスの特徴などをまとめました。

株式会社アイ・ラーニング

人材育成研修事業を展開する株式会社アイ・ラーニングは、クラウド人材育成の目的別に「クラウドネイティブ」「ベンダーサービス」「Red Hat」の3つのプログラムを提供しています。

クラウド全般の知識を身につける「クラウドネイティブ」では、オープンソースのOS「Linux」の基本コマンドやアプリの開発環境構築を効率化するコンテナ技術、クラウド移行の要件定義、クラウドセキュリティなどを学びます。


「ベンダーサービス」は、AWSやMicrosoft Azure、GCPなどクラウドサービス別の基礎・応用スキル習得に特化したプログラムです。「Red Hat」では、クラウド技術サービスを提供するRed Hat社のクラウドサービスの知識や活用方法を学びます。

参考:クラウド/クラウドネイティブ|株式会社アイ・ラーニング

株式会社インソース

社会人教育・コンサルティング事業を展開する株式会社インソースは、クラウドコンピューティングの基礎知識からアプリケーション開発、クラウドのサービス活用まで、幅広いテーマの研修サービスを提供しています。

また、プログラムのラインナップにはAWSやMicrosoft Azure、GCPなどクラウドサービス単位の学習講座もあります。

参考:クラウドコンピューティング研修ラインナップ|株式会社インソース

インターネット・アカデミー株式会社

IT教育事業を展開するインターネット・アカデミー株式会社は、クラウドに関する体系的な知識と導入事例を学び、AWSとMicrosoft Azureのサーバーの立ち上げ方を習得するクラウド研修サービスを提供しています。


クラウドの基礎知識を身につけてから実践に入るカリキュラムであり、エンジニアに限らずプロジェクトマネージャーやDX推進担当者、システム部門の社員などさまざまな人材層の育成に活用できます。

参考:クラウド研修|インターネット・アカデミー株式会社

クラスメソッド株式会社

クラウド導入やデータ活用のコンサルティング・人材育成支援を行うクラスメソッド株式会社は、AWSのトレーナー認定を受けたエンジニアからAWSの活用・運用方法を学べるサービス「AWSトレーニング」と、トレーニング後の運用サポートサービス「クラスメソッドメンバーズ」を提供しています。


また、クラスメソッド社のエンジニアがAWSのナレッジをまとめたガイドブックも提供しており、複数のAWSを活用する場合のガバナンス方法を知ることができます。

参考:クラウドを自社が活用できるように人材育成をしたい|クラスメソッド株式会社

株式会社Schoo

社会人教育事業を展開する株式会社Schooは、AWSとGCPに対応したクラウド研修パッケージを提供しています。

AWSの研修は、クラウドの基礎知識を学ぶ初心者向けのパッケージと、運用課題の解決を目的とした実践的な内容のパッケージの2種類があります。GCPの研修では、立ち上げに必要な基礎知識やサービス開発方法を学べます。

参考:IT研修|株式会社Schoo

トレノケート株式会社

人材育成を専門に企業研修事業を展開しているトレノケート株式会社は、クラウドの基礎知識と技術力、設計力の3つのスキルを体系的に学べる研修サービスを提供しています。


基礎知識のコースでは、講義と演習を通してクラウドコンピューティングの概要やクラウドビジネス、セキュリティについて学習します。技術力のコースでは、実機演習を中心にAWSやGCPの開発、運用・管理、自動化などを学びます。設計力のコースでは、クラウドデザインパターンや各種クラウドサービスのアーキテクチャについて学習します。

参考:クラウド人材育成|トレノケート株式会社

株式会社リスキル

社員研修事業を展開する株式会社リスキルは、クラウドのメリット・デメリットや導入事例などを学んでクラウドの全体像を把握する研修と、AWSに特化した研修、GCPに特化した研修の3種類のサービスを提供しています。


研修カリキュラムには同社が運営するインフラエンジニア育成スクールの教材と学習ノウハウが使われており、クラウドを基礎から学び始める人でも理解しやすい内容となっています。

参考:クラウド研修|株式会社リスキル

まとめ

クラウドサービスを利用する企業が増える中で、クラウドの設計・導入・運用に対応できるクラウド人材の需要が高まっています。自社でクラウド人材を育成するには、戦略的な人材育成計画とスキルレベルに応じた人事評価制度の策定、最新情報をキャッチアップする勉強会の開催などの取り組みが必要になります。


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