【事例あり】LXPとは?LMSとの違いや導入のメリット、デメリットを解説

公開日:2023.10.31 更新日:2023.10.31

従業員の学習手法の1つとして、LXP(ラーニング・エクスペリエンス・プラットフォーム)が注目を集めています。企業の人事部や教育担当部門の方の中には、LXPに関心があるものの、どのようなシステムなのか把握していない方もいらっしゃるでしょう。

そこで今回はLXPの概要やメリットについて解説します。また、LXPを導入するメリットや導入事例も紹介するので、参考にご覧ください。

LXPとは

LXPとはラーニング・エクスペリエンス・プラットフォーム(Learning Experience Platform)の略称で、日本語で学習体験プラットフォームを意味します。AIやIT技術により、何かを学びたい学習者のニーズに対して、最適な学習プログラムを提供できるツールのことです。

LXPの最大の特徴は、AIを活用して個人の目標や過去の活動、学習スタイルを判定し、データをもとに学習内容をパーソナライズできることです。目標を達成するために時間を注ぎやすくなるため、効率的な学習が可能になります。

LXPとLMSの違いとは

LXPとよく似たものにLMSがあります。

LMSとはラーニング・マネジメント・システム(Learning Management System)の略称で、学習管理システムのことを指します。企業や教育機関で実施されるeラーニングやオンライン研修などを提供するためのプラットフォームです。

LXPとLMSの違いは、LXPが学習者の体験に重点を置いている一方、LMSは管理者の意図(目的)に重点が置かれている点です。また、LMSは社内に導入するシステムで、学習・管理のすべてがシステム内で完結しますが、LXPは外部コンテンツに自由にアクセスできる他、学習者自身が学習内容を選ぶ点で異なります。

どちらが良いということではなく、異なる学習システムとして活用されていますが、最近ではLXPへのニーズが高まりを見せています。

学習者の体験に重きを置く理由

LXPでは学習者の体験を重視しますが、それは学習者の体験こそが重要であるという研究結果があるためです。

アメリカの調査機関のロミンガー社によれば、経営幹部としてリーダーシップを発揮できるようになった人材に「役に立ったこと」について聞いたところ、70%が「経験」と答えました。これは、人材育成における「70:20:10」の法則(ロミンガーの法則)として知られています。

このことから、学習の効率化や効果アップを図るために、学習者の経験と学習内容を紐づけることが重要視されるようになりました。

LXPのメリット

LXPを導入することで、次のようなメリットがあります。

  • 個人に合わせて学習機会をカスタマイズできる
  • 学習者の学習モチベーションがアップする
  • 企業課題に応じてカスタマイズできる
  • 場所を選ばない学習機会を提供できる
  • 他のシステムと統合できる
  • 学習が必要な領域を把握しやすい

個人に合わせて学習機会をカスタマイズできる

LXPを導入すれば、個人に合わせた教育プログラムや学習機会を提供できます。

キャリアアップや特定のスキル習得など、学習者の目的はそれぞれ異なりますが、LXPであれば学習者の業務内容や関心、ポジションなどに合わせた学習が可能です。また、学習者の過去の実績をデータ化して、必要な教育を提案できるのもLXPならではのメリットです。

教育内容をパーソナライズできることから、従業員のキャリア形成や組織の底上げにつなげられます。

学習者の学習モチベーションがアップする

LXPでは強みの強化や弱みの改善につながる学習が可能になるため、学習者のモチベーションアップにつながりやすいというメリットがあります。

LMSを活用した画一的な研修では、従業員が意欲的に取り組めないケースがありますが、LXPでは学習者自らコンテンツを選択できるため、前向きな学習が可能です。

また、LXPに搭載されている学習コンテンツは数分程度の短い動画も多く、休憩時間や通勤時間など空いた時間で学習しやすいため、効果的に勉強できるのも魅力です。

企業課題に応じてカスタマイズできる

LXPを利用することで、企業がかかわる課題に応じてカスタマイズした学習機会を提供できます。

たとえば、マネジメントに課題を抱える企業の場合、マネジメント関係のセミナーなどの学習コンテンツを充実させることが可能です。自社の課題に合わせて学習コンテンツをカスタマイズすることで、従業員のスキルの効率的なアップを期待できるでしょう。

もちろん、学習内容をカスタマイズできる特徴を生かし、企業の強みを伸ばすための学習を重点的に行うこともできます。

場所を選ばない学習機会を提供できる

LXPを導入することで、場所を限定されない学習機会を提供できます。

LXPにはスマートフォンやタブレット、パソコンなどのモバイルデバイスからアクセス可能です。従業員はオフィス以外の任意の場所で学習コンテンツにアクセスできるため、場所を選ばずに学習できます。

また、LXPには時間を問わずにアクセスでき、勉強ができる場所へ移動する時間を削減できることからも、効率的な学習が可能になります。

他のシステムと統合できる

他のシステムと統合したり、外部のコンテンツを追加できたりするのも、LXPを導入するメリットです。

たとえば、LXPに翻訳ツールを導入すれば、国境や言語の壁を越えてさまざまな学習コンテンツを受講できるようになります。

また、有益な学習コンテンツがあれば、LXPに追加できます。LMSでは対応できなかった領域についても学習できる可能性があり、従業員のスキルアップを期待できるでしょう。

学習が必要な領域を把握しやすい

LXPでは、従業員ごとに学習が必要な領域を把握しやすいといったメリットもあります。

これまでの学習内容をデータ化して蓄積できるため、各学習者の進捗状況を簡単に把握できます。また、強化したい領域に対して管理側が適切な学習コンテンツを自由に追加できるため、従業員のスキルアップにつながりやすいといえるでしょう。

LXPのデメリット・注意点

LXP導入にはさまざまなメリットがありますが、同時にデメリットや注意点も存在します。具体的には次に挙げるデメリットや注意点があります。

  • 導入コストがかかる
  • 管理側の業務負担の増加

導入コストがかかる

導入時にコストが発生するのが、LXPを利用するデメリットです。

LXPは新しい学習体験プラットフォームで、さまざまな機能が搭載されていますが、有料利用となるケースが多いといえます。そのため、学習対象者が多いと導入コストが膨大になる場合があり注意が必要です。

LXPを導入する場合は、いきなり全従業員を対象とするのではなく、知識やスキルの強化が必要な特定の人材、または特定の部署に絞って提供するなど、スモールスタートで始めて成果が見えてきたら対象者を増やしていく、といった方法を利用するといいでしょう。

管理側の業務負担の増加

LXPを導入した場合、学習を管理する側の業務負担が増加する可能性があります。

プラットフォームの使い方のレクチャーやガイダンスの開催の他、学習コンテンツの管理・追加などの業務対応が必要です。
従業員がストレスなく学習できるようにするためには、管理側の準備も重要になるため、専用の部門を設置するなど、工夫が求められます。

また、管理者だけが負担になることがないよう、利用者が自ら積極的に使い方を学ぶなど、社内全体で協力する意識が重要になるでしょう。

LXPのサービスの一例

現在では、さまざまなLXPサービスが提供されています。ここでは、LXPサービスの事例として次の2つのサービスを紹介します。

  • Adobe Learning Manager
  • Totara Learn

Adobe Learning Manager

illustratorやPhotoshopで有名なAdobeが提供する「Adobe Learning Manager」には、LXP機能が搭載されており、LinkedIn Learning、Harvard ManageMentor、getAbstractなどの大手プロバイダーのコースにアクセス(追加購入)して、LMSに直接統合できるのが特徴です。

そのため、他のアプリケーションを移動することなく、1つのプラットフォーム内で250以上の既成の学習コンテンツを提供可能。プラグインも不要のため、さまざまな種類のeラーニングコンテンツを簡単に閲覧できます。また、学習者ごとの効率的な学習プランが可視化されているため、学習者は時間を無駄にすることなく、安心して学習に集中できます。

参考:Adobe Learning Manager (旧Adobe Captivate Prime)

Totara Learn

「Totara Learn」は世界49ヶ国の1,800の企業、1,600万人が利用するLMS・LXPサービスです。LMSとしての基本的な学習管理機能に加えて、LXPサービスとして企業内での人材育成ニーズに特化した機能を追加・強化しているのが特徴です。

また、オープンソースとなっており、サブスクリプションでのサービス提供となっていることから、利用コストを低減できるのも同サービスの魅力。導入費用やランニングコストに優れているため、中小企業から大企業まで、さまざまな企業で利用しやすいサービスといえるでしょう。

参考:LMS・LXP導入~Totara Learn~企業の人材育成に|実績多数|ヒューマンサイエンス

日本企業のLXP導入事例

最後に、国内企業のLXP導入事例を2つ紹介します。

  • 株式会社日立アカデミー
  • 旭化成株式会社

株式会社日立アカデミー

株式会社日立アカデミーでは、ジョブ型人財マネジメントの転換を目的にdisce社が提供するLXP「degreed」を導入。これまで研修用に提供してきたコンテンツに加えて、インターネット上の多様な学習コンテンツを連携して、さまざまな領域について学習できるようにしました。

LXP導入前のPoC(概念検証)では、日立グループ社員300人のうち、3分の2以上から導入に対して前向きな意見があったとのこと。「自発的に学習したいと感じた」「以前から克服したいと考えていた分野の知識を習得できた」など、学習意欲に結び付いたといった声も多かったようです。

参考:自分のキャリアを自分でつくる。 学びをもっと身近に、LXPによる新しい学習体験。|株式会社日立アカデミー

旭化成株式会社

旭化成株式会社では、2022年に創業100周年を迎え、次の100年に向けた挑戦の礎として、コーナーストーン社(cornerstone)のLXPシステムを導入しました。

同社の中期経営計画の中で「Peopleのトランスフォーメーション」として力を入れているのが各種人材施策で、その一環となるのがLXPプラットフォーム「CLAP」です。

社内の既存コンテンツに加えて社外の学習コンテンツと連携している他、おすすめを共有できるコミュニケーション機能が搭載されており、同社内には学びの輪が徐々に生まれているとのことです。人事部が導入した際の想定を超える反応や行動が見られているようです。

参考:旭化成(株)の事例 |コーナーストーン・ラーニングCSX

LXPの導入が企業力アップのきっかけに

LXPは新しい学習プラットフォームとして注目を集めています。学習者自ら意欲的に学習できる仕組みとなっているため、従業員のスキルアップはもちろん、企業全体の底上げにも効果的といえます

モバイルからアクセスでき、時間や場所を選ばず自主的に学習できる機会が提供できるLXPは、導入を検討する価値があるといえるでしょう。

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