LMS(学習管理システム)導入の流れ|研修への活用事例や注意点を詳しく解説

公開日:2023.11.21 更新日:2023.11.21

eラーニングの普及に伴いLMSというワードが注目されています。
ただ、その具体的な活用方法は分からず、自社への導入が進んでいないという人事担当者の方も多いのではないでしょうか。
この記事では、上記のような方のために、LMSの概要や導入時に押さえておくべきポイントなどを詳しく解説します。
LMSの導入により、効率的に社内研修を進められるようになります。ぜひ参考にしてください。

LMS(学習管理システム)とは

LMSは「Learning Management System」の略で、日本語では「学習管理システム」とも呼ばれるツールです。
主に企業や教育機関で使用されており、学習・研修の領域に革命をもたらしました。
学習コンテンツの配信、学習の進捗の追跡、レポート作成などの機能を持っており、適切に導入・運用すれば、組織全体の知識とスキルを向上させられるのが特徴です。

LMSで実現できること

LMSでは具体的にどんなことが実現できるのでしょうか。
詳しく解説します。

自動配信による教育のオートメーション化

LMSを利用することで、定期的な研修や教育カリキュラムを自動的に配信できます。
人事担当者が毎回手動で配信する手間が省け、効率的な運用が可能になります。
また受講者の属性や過去の学習履歴に基づいて、パーソナライズされたコンテンツを配信できるので、各社員に最も適した教育を提供することができます。

受講者ごとの学習状況の可視化

学習状況の可視化は、教育・研修を行ううえで最も基本的な要件の一つです。
LMSの導入により、学習進捗やテストのスコアをリアルタイムで確認できるため、受講者ごとの弱点や学習の遅れを早期にキャッチして、適切なフォローアップが行えます。

学習データの蓄積

LMSでは受講者の学習データを長期間蓄積できます。過去の研修や学習履歴を参照し、より詳細な分析を行えるようになります。
データにもとづいた改善ができるので、研修内容の見直しや新たな教育プログラムの作成など、社員の学習効果を高めやすいのも特徴です。
また学習データを蓄積・分析することで、研修や教育に投じたコストに対するリターン(ROI/Return On Investment)も計測でき、教育・研修の効果や価値を明確に示すこともできます。

学習施策の統合・管理

企業内で行われる研修や教育は多岐にわたり、その目的や内容はそれぞれの部署や役職等によって異なります。
LMSの導入により、複数の学習施策を一元的なプラットフォーム上で管理できるため、部署ごとに行うさまざまな研修プログラムの整合性を保ったうえで、より効果的な教育を提供できるようになります。

LMS導入前の確認事項

LMS導入にはさまざまなメリットがありますが、導入を検討する前に確認すべきポイントがいくつかあります。
以下の内容を考慮することで、システム選定から社内調整まで、LMSの導入が成功しやすくなります。ぜひ参考にしてください。

導入の目的

まず何のためにLMSを導入するのか、明確な目的を持つことが重要です。
ここでは、社員のスキルアップ、コンプライアンス教育の充実など、具体的な目標を設定しましょう。
グローバルな教育基盤の構築が目的であれば、文化の異なる社員にも均一な教育を提供するために、多言語に対応したLMSシステムの導入が候補になるでしょう。
また金融系の企業など、厳しい法規制に対応するための教育が目的であれば、最新の規制情報やケーススタディを定期的に配信できるシステムが必要になるかもしれません。
LMSを導入する際は、目的を達成するために必要な機能は何なのか、またその機能を持つLMSはどのようなサービスなのかを検討する必要があります。
まずは目的を明確にすることを意識しましょう。

導入コスト

LMSの種類や規模により、導入・運用のコストは異なります。

導入コストは、大きく以下の2つに分けられます。

  • 初期導入コスト
  • 運用コスト

上記のコストはオンプレミス型(自社内のサーバーにシステムを構築・運用する)かクラウド型(ベンダーのクラウドサーバー上のシステムを、インターネットを通じて利用する)かで異なるので、予算内での導入が可能か、事前に確認しましょう。

オンプレミス型、クラウド型ともに発生する初期コストとして、ソフトウェアのライセンス料金があり、これは購入型なのかサブスクリプション型なのかで違いがあります。

オンプレミス型は、必要に応じてハードウェアの購入費用も発生します。

またセットアップ・インストールを自社で行うのか、ベンダーへ依頼するかも事前に相談が必要です。ベンダーへ依頼する場合はコストが発生するので、事前に金額を確認しておきましょう。

オンプレミス型は自社の環境にシステムを導入する分、カスタマイズ性が高くなりますが、上記のように初期コストが高額になりやすいのが特徴です。

一方のクラウド型は初期コストが低くはありますが、運用コストがかかります。基本的にサブスクリプション制なので、定期的な利用料が発生します。

他にもソフトウェアの更新やアップグレードに伴う費用、必要に応じたサポート・トレーニング費用も考慮しておきましょう。

上記のコストに加えて、機能とのバランスや将来的な拡張性も踏まえたうえで、総合的にシステムを検討する必要があります。

運用の規模

何人の社員がLMSを使用するのか、またどのようなコンテンツをどれだけ提供するのかなど、運用の規模を明確にすることも重要です。
受講者数次第では、必要なサーバーの性能やデータベースの容量が大きく異なります。
各部署やグループから、LMSの利用想定や必要なコンテンツに関する情報を収集して、運用規模を大まかに見積もりましょう。
トライアルが用意されているLMSも多いので、模擬的に運用して必要な規模や性能を把握することをおすすめします。

学習管理機能の豊富さ

具体的な学習管理機能として、以下のようなものが挙げられます。

  • 進捗管理
  • 成果評価
  • レポート生成

自社の利用目的に合った機能が備わっていることが大事ですが、機能を確認する際には将来的な追加や拡張の可能性も考えておきましょう。

たとえば、新しい学習方法の導入や新たな評価指標の追加の可能性など、先の展望を踏まえたLMS選定が求められます。将来的な自社の教育方針を踏まえたうえで、その変更に対応できるようなLMSを選んでおくことで、自社の要望を実現しやすくなります。

導入の実績

LMSの提供会社の実績や評価もチェックしておきましょう。
サービスの公式サイトに導入企業例が掲載されている場合も多いので、参考にすると良いでしょう。
特に自社の事例に近いものをチェックすることで、導入イメージがつきやすくなります。

LMSの導入の流れ

導入前に押さえておくべきポイントがわかったら、LMSの導入を進めます。
以下に導入の流れの一例を挙げますので、参考にしてください。

システム選定

市場にはさまざまなLMSが存在するので、よく比較・検討することが大切です。
前述のLMS導入前の確認事項を参考にして、自社に必要な項目を洗い出したうえで、要件に合うものをリストアップしましょう。
そこから機能や利便性を確認します。実際に操作しないとわからないこともあるので、デモやトライアルを活用しましょう。

契約の締結

導入するシステムが決まったら、ベンダーと契約を締結します。
ベンダーから提供される契約書以外にも、社内のレギュレーションに沿って同意書などを用意する必要があるか、情報セキュリティ部門など、該当の部署に事前に確認しましょう。

環境構築

契約を締結したら、システムのセットアップや初期設定を行います。
必要に応じて、ベンダーにも相談し、サポートを活用しながら進めましょう。

オプションの追加やカスタマイズをする場合は、追加で開発が必要になることもあるので、あらかじめ工数を見積もっておきましょう。

以下はオンプレミス型における、LMSの環境構築を行う際の基本的なステップです。

  1. ハードウェア・サーバー設定
  2. ソフトウェアインストール
  3. 初期設定
  4. テスト環境の構築

まずは使用するサーバーの性能や容量を確認し、LMSの要件に合わせて設定を行います。

その後ソフトウェアをサーバーにインストールします。ここでの設定やパラメータの調整が、後々の運用の安定性を左右するので、丁寧に確認しておきましょう。

最後にユーザーアカウントの作成、学習コンテンツのアップロード、テストやアンケートの設定など、実際の運用に必要な設定を行います。

一方のクラウド型ではソフトウェアのインストールは不要で、ベンダー側が構築した環境でセットアップ、初期設定を行うだけ環境構築は完了です。

運用開始

運用の準備が整ったら、次は実際の運用フェーズに移ります。

運用に移る際には、以下のような点に気をつけておくと良いでしょう。

  • 受講者への導入案内
  • 導入後のサポート体制の構築

まずはシステムの基本的な使い方や学習の進め方などのオリエンテーションを提供して、受講者が学習に集中できるようサポートします。

LMSにはメールの自動送信機能が搭載されていることが多いので、対象となる社員へ運用スタートのお知らせもLMSを通じて行うと良いでしょう。

また運用スタート後に問題が発生することも考慮して、社内にサポート体制を構築しておくことも重要です。

特に運用初期には予期しない問題が起きることも考えられるため、社内での対応が難しい場合は、ベンダーにサポートを求められるようにしておきましょう。

LMSの導入事例

LMSは実際に多様な研修に活用されています。
よくある事例をいくつか紹介するので、自社での活用ケースに当てはまるものがないか確認してみてください。

新入社員研修

LMSの代表的な活用事例として、新入社員への研修が挙げられます。

LMSを活用することで、新入社員それぞれの学習進捗や成果をリアルタイムで確認できるので、研修担当者は必要に応じて個別のフォローアップやサポートを行うことができます。

オンライン教材とより実践的なワークショップの組み合わせにより、企業文化やポリシーを効率的に伝えられるので、研修期間も短縮できるでしょう。

たとえば会員制フィットネスクラブ「TOKYU SPORTS OASIS」や温浴施設「港北天然温泉スパガーディッシュ」などを運営する、株式会社東急スポーツオアシスでは、新人研修にLMSを導入することでスタッフの時間に余裕を生み出しました。

今までは店舗スタッフの教育に時間をかけられていなかったようですが、LMSにより新人研修を行うことで、教育担当者がOJTにかける時間を半減させることに成功しました。

参考:〔株式会社東急スポーツオアシス〕“お客様対応第一”の店舗において顧客サービスと新人教育を両立する方法|株式会社ライトワークス

上記のように店舗を持つ企業など、さまざまな新人研修の場面でLMSが活用されています。

能力開発研修

社員のスキルアップのための研修にも、LMSが使用されるケースは多くあります。

特定のスキルや資格取得を目指す研修など、多様な教材を提供できます。

たとえば、社員が自ら学ぶ意欲を持てるように、ゲーミフィケーション(ゲームの要素を取り入れ、ユーザーの関与を高める手法)を取り入れた教材や、実際の業務で活用できるケーススタディなどが挙げられるでしょう。

また多くのLMSには研修スケジューリングやリマインダーの機能が搭載されており、研修の日程や期限を自動的に通知できるので、社員の学習計画を管理しながら効率的に研修を進めることができます。

社員の能力開発にLMSが活用されている事例として、アサヒビール株式会社では自社内のさまざまな職種の人を紹介するコンテンツを構築しており、その人たちの経歴やスキルセットを紹介しています。

このコンテンツの活用により、社員たちは特定の職種の人たちが業務から何を得たのかを知ることができるので、目標とする人をベンチマークにして、今どのようなスキルを身につける必要があるのかを明確にすることができるでしょう。

参考:〔アサヒビール株式会社〕利用率が12倍に!マイナーな存在だったeラーニングから成長を後押しするLMSへの転換を成功させた4つの要因|株式会社ライトワークス

役職別研修

管理職やリーダー層向けの研修も、LMSを活用して提供できます。

管理職やリーダー層向けの研修では、LMSの機能を活用して実際のビジネスシーンを模倣したシミュレーションやケーススタディとなるような教材を取り入れることで、現場での即時性や応用力を養えます。

役職別の研修にLMSを活用している事例としては、株式会社日経BPの事例があります。

主に社長の右腕となるような人材の育成を目的したeラーニングサービス「社員の学び場 GOKUU(ゴクー)」を活用して、経営幹部向けにコンテンツを提供しています。

日経BPのように幹部の育成が課題になっている企業は多く、特に中小企業で顕著です。上記のようなケースでもLMSがその一助となっており、汎用性の高さがうかがえます。

参考:株式会社日経BP導入事例|LMS・クラウド型eラーニングシステム「etudes(エチュード)」

まとめ

LMSは現代の企業において、社員教育を効果的に行うための強力なツールですが、その効力は事前の準備により大きく変わります。

導入をする際は、自社のニーズや予算をしっかりと確認し、適切なシステムを選択することが重要です。

ぜひこの記事を参考にLMSを導入して、社員のスキルアップや組織全体の成長を目指しましょう。

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