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東京都では、2025年4月に施行された「東京都カスタマー・ハラスメント防止条例」に合わせて、中小企業のカスタマーハラスメント対策を促進する奨励金制度を開始いたしました。この制度は、顧客からの悪質クレームによる従業員への被害を防ぎ、顧客と働く人がお互いに尊重し合う安心して働ける職場環境を整備することを目的としています。
本制度の対象となるのは、都内の中小企業等(常時雇用する従業員300人以下)で、カスタマーハラスメント防止の実践的な取組を行った事業者です。企業の規模や業種を問わず、適切な対策を講じた企業に対して一律40万円の奨励金が支給されます。
制度の運営は、東京都からの委託を受けた公益財団法人東京しごと財団が担当しており、年間3回の募集を予定しています。初回募集では予想を上回る応募があり、予定期間を待たずに受付終了となったことからも、中小企業における関心の高さがうかがえます。
企業向け奨励金の対象事業者となるためには、常時雇用する従業員が300人以下の中小企業や個人事業主であり、都内に本店または事業所を有し、都内で継続して1年以上事業を営んでいることが条件となります。開業届出済みの都内個人事業主も含まれており、幅広い事業者が対象となっています。
さらに、都税の未納がないこと、過去5年に重大な法令違反がないこと、暴力団と無関係であることなどの要件も満たす必要があります。これらの条件を満たした事業者が、後述する具体的な取組要件を実施することで、奨励金を受け取ることができます。
企業向け奨励金は、対象要件を満たした企業等に対し、1事業者あたり一律40万円が支給されます。これは定額給付の奨励金であり、経費に対する一定割合の補助ではなく、要件の達成に対するインセンティブとしての支給となります。要件を満たせば、原則として全額が支給される仕組みです。
支給要件は、2025年4月1日以降に社内で実施する必要があり、大きく分けて「マニュアル整備」と「実践的な防止策の実施」の両方が求められます。単にどちらか一方を行うだけでは対象とならず、両方を組み合わせて実施することが必須条件となっています。
まず、カスタマーハラスメント対策マニュアルの作成・整備が必要です。自社のカスハラ対策マニュアルを新規作成または改定し、東京都が定める必須項目をすべて盛り込むことが求められます。単なる章立てだけの内容は認められず、実効性のあるマニュアルである必要があります。
作成したマニュアルは社内に周知するとともに、マニュアル中で定めた基本方針を社外にも周知することが必要です。社外周知とは、店頭や自社ホームページでの掲示、取引先への通知等の方法で顧客にも基本方針を示すことを指します。
次に、実践的な防止策として、「録音・録画環境の整備」「AIを活用したシステム等の導入」「外部人材の活用」のいずれか1つ以上の実施が必要となります。これらの取組により、実際にカスタマーハラスメントに対する具体的な対策が講じられることで、職場環境の改善が図られます。
実践的な防止策の選択肢について、詳しく説明いたします。
カスハラ発生時の証拠保全や抑止のため、職場に録音機や防犯カメラ等の録音・録画可能な機器を新規に導入する必要があります。2025年4月1日以降に機器を購入または6か月以上のリース契約を締結していることが条件となります。導入した機器については運用ルールの策定や社外への周知も必要で、録音・録画環境がある旨を店舗掲示等で顧客に知らせることも求められます。
AI技術を用いてカスハラ対策に資するシステムを新規導入します。例えば、AIによる通話内容の自動分析・記録システム等が該当します。2025年4月1日以降にシステムを購入または6か月以上のサービス契約を締結し、AIが活用されカスハラ対策に有効なシステムであることを証明できる資料を備える必要があります。
カスハラ対策推進のため、自社内の課題解決に専門の外部人材を新たに起用します。具体的には、相談対応等の継続契約として弁護士・社会保険労務士・産業カウンセラー等の専門家と6か月以上の顧問契約を結ぶケース、社内研修のスポット契約として外部講師を招へいするケース、警備会社との契約により店舗等の警備体制を強化するケースなどがあります。
いずれの取組についても、単に導入するだけではなく、適切な運用ルールの策定や社内外への周知が求められており、実効性のある対策の実施が重視されています。
申請は電子的な申請システム「jGrants(ジェイグランツ)」を利用してオンラインで行います。郵送や持参による申請は認められていません。申請には事前にGビズID(gBizIDプライム)を取得しておく必要があります。GビズIDの発行には時間がかかるため、余裕をもって準備することが重要です。
主な申請書類として、支給申請書(様式第1号)では申請者情報や事業概要、実施した取組内容等を記載します。法人の場合は登記簿謄本どおりの正式名称・所在地・代表者名を記入し、個人事業主は氏名・住所も住民票記載どおり記入する必要があります。
誓約書(様式第2号)では、法令遵守や暴力団排除等、募集要項の遵守を誓約し、代表者が署名押印する必要があります。事業所一覧(様式第1号別紙)では、都内にある本社および事業所の所在地・従業員数等を一覧化します。
会社案内等として、自社の概要が分かる資料(パンフレットやホームページの写し)を提出し、企業名、代表者、所在地、事業内容が確認できるものを用意します。
最も重要な書類として、カスハラ対策マニュアルの全文をPDF等で提出し、募集要項で定める必須項目が網羅されていることが審査されます。社内周知の実施証跡として、回覧通知や従業員への告知メールなどの写しも求められる場合があります。
実践取組の証拠資料として、選択した実践的取組を実施したことを示すエビデンスを添付します。機器購入の領収書・契約書、システム利用契約書、研修実施報告書や写真、専門家との契約書および業務報告書、録音録画環境を告知する店頭掲示の写真等が必要です。
その他、都内に事業所が存在し事業を営んでいることを示す法人登記簿謄本や個人事業の開業届、都税の納税証明書(直近1事業年度分)等も必要となります。納税証明書で未納が判明した場合は対象外となるため注意が必要です。
2025年度は年3回の募集実施が予定されています。第1回募集は2025年6月30日から8月8日まで予定されていましたが、予想を大幅に上回る応募があったため、7月22日17時に早期終了となりました。募集定員は各回1,000件となっており、定員を超える申請があった場合は期間内でも早期終了する可能性があります。
第2回募集は2025年9月頃開始予定と公式発表されており、具体的な日程は決定次第、奨励金特設サイト等で案内される予定です。第3回募集は年度末までにもう一度実施予定とされており、冬から年度末(12月から翌年2月頃)に行われる可能性があります。
申請後は事務局による書類審査が行われ、必要に応じて追加資料提出や現地調査の要請があり得ます。審査を経て支給可否が決定し、結果はjGrants上で通知されます。支給決定の場合、後日「奨励金請求書兼口座振替依頼書」を提出して振込手続きを行い、約1か月後に指定口座へ奨励金が振り込まれます。
全体の処理期間は申請から支給までおよそ4か月程度(審査3か月+支払1か月)を見込んでおく必要があります。審査期間中は、必要に応じて追加書類の提出や質疑応答が行われる場合もあるため、迅速な対応が求められます。
本制度を活用することで、企業は40万円の奨励金を受け取るだけでなく、実効性のあるカスタマーハラスメント対策を構築できます。マニュアル整備により社内の対応方針が明確化され、録音機器やAIシステムの導入により客観的な証拠保全が可能となります。外部専門家の活用により、より専門的で適切な対応体制を構築することができます。
従業員の安心感向上や職場環境の改善により、離職率の低下や顧客対応の質的向上も期待できます。また、カスタマーハラスメント防止の取組を対外的にアピールすることで、企業イメージの向上にもつながる可能性があります。
東京都は本事業を今後3か年の継続事業として計画しており、延べ1万社の中小企業支援を見込んでいます。制度の成果や課題を踏まえて、今後はより使いやすい制度への改善も期待されます。
中小企業の経営層や人事担当者の皆様におかれましては、従業員の働きやすい環境づくりと企業価値向上の観点から、本制度の積極的な活用をご検討いただければと思います。第2回募集に向けて、早期の準備開始をお勧めいたします。
「カスハラ対策マニュアルにどんな項目を盛り込めばいいのか分からない」
「申請書類の準備や審査対応が不安」
「実践的な取組と奨励金申請を同時に進めたい」
そんなお悩みをお持ちの中小企業の皆様は、株式会社VibesUp(バイブスアップ)の無料相談をご活用ください。
当社は、東京都内の中小企業向けに、カスタマーハラスメント防止奨励金の申請支援実績を有しており、マニュアル作成支援から実践的取組の企画・導入、申請書類の作成、審査対応まで、経験豊富なコンサルタントがワンストップで対応します。
第2回募集に向けて、早めの準備が成功の鍵となります。まずはお気軽にご相談ください。貴社に最適なカスハラ対策・奨励金活用プランをご案内いたします。