リスキリングとリカレント教育の違いってなに?よくある間違いについてもご紹介

公開日:2023.03.13 更新日:2023.03.13

近年、社会人の学びなおしとしてリスキリングという言葉を耳にする方は多いのではないでしょうか。また、似たような言葉でリカレント教育やアップスキリングという言葉もあります。

この記事では、リスキリングの意味や目的、違いなどについてご紹介していきます。「聞いたことはあるけれども意味や違いについてはよくわからない」といった方は、ぜひ参考にしてください。

リスキリングとは

リスキリング(Reskilling)とは、職場で求められるスキルの変化に対応したり、新しい職種や業務に就いたりするために必要な知識やスキルを身につけることを指します。

たとえば、近年急成長しているデジタル分野では人手不足が問題視されています。このような分野の労働人口を増加させるためには、リスキリングが必要不可欠です。

そのため、2022年10月3日に岸田内閣総理大臣はリスキリング支援として5年間で1兆円を投資する考えを発表しました。今後も、時代や需要の変化について行くためには継続したリスキリングが必要になるでしょう。

リスキリングと「リカレント教育」の違い

リスキリングとリカレント教育の違いは、スキルアップする環境や目的にあります。リスキリングは、企業主導のもと社員が新しいスキルや知識を身につけられるように、人材育成を行うことです。一方、リカレント教育は個人が自主的に学びスキルや知識を身に付けることを指します。

リスキリングの特徴として、企業が従業員に対して行うため働きながら学習できることが挙げられます。反対にリカレント教育は個人で学習しなくてはならないため、一時的に休職もしくは退職を行うことが多いのが特徴です。

また、リスキリングの目的は所属している企業の利益や成果を出すことですが、リカレント教育は自分自身のキャリアアップや成長のためであることも大きく異なる点です。

リスキリングと「スキルアップ」の違い

リスキリングとスキルアップの大きな違いは、スキルアップのために勉強する分野にあります。スキルアップとは、すでに持っているスキルに新たなスキルを身につけることです。一方でリスキリングは、新たな環境で仕事をするために新しいスキルや知識を身につけることを指します。

そのため、スキルアップは特定分野に対する既存スキルを向上させ生産性や成果を生み出したり、専門分野を増やしたりすることを目的としています。

反対にリスキリングでは、今までほとんど経験してこなかった分野について学習しスキルを身につけることで、従来とは異なる業界・職種で活躍することが目的です。

リスキリングと「アップスキリング」の違い

リスキリングとアップスキリングの違いは、スキルアップの目的に大きな違いがあります。アップスキリング(Upskilling)は、現在の仕事をより効率的・効果的に行うために新しいスキルや知識を身につけることを意味します。

たとえば、マーケティングを担当している社員が市場データをより正確に分析できるように、AIについて学習することなどがアップスキリングに当てはまります。

反対にリスキリングは、現在とは異なる職業に就くために新しい知識や技術、スキルを身に付けることです。たとえば営業職の社員が、ITエンジニアになるべくプログラミングなどを学習することなどがリスキリングに当てはまります。

まとめると、アップスキリングは現職の中でより成果や価値を創出するために必要な取り組みであるのに対し、リスキリングは個人が新しい環境に適応し成果や価値を創出することです。

リスキリングが話題になっている理由

リスキリングは近年とくに耳にするようになった言葉でしょう。ここからは、リスキリングが話題になっている理由について3つご紹介します。

企業のDX推進が加速していること

リスキリングが話題になっている理由の一つに企業がDX推進を進めていることが挙げられるでしょう。DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、2004年にスウェーデンの大学教授であるエリック・ストルターマン氏が提唱した「ITの普及が、人々の暮らしをよりよく変化させる」という考えがもとになっています。

その後、現在DXの定義は「最新のデジタル技術を活用し、社会全体に浸透できるようあらゆる企業や組織の活動を変革・改善していく」となっています。DXが推進されることにより、今まで提供していたサービスの内容など企業全体を大きく変化させなければなりません。

企業がDXを推進する理由は主に3つあります。

1つ目は、企業の中で使われている既存システムが老朽化や属人化することによって生み出される損失です。現代は少子高齢化の影響もあり、どの業界も人手不足が問題視されています。

そのため、企業が厳しい競争の中で生き残るためにはシステムの属人化を防ぎ、限られた人材で多くの業務を効率よくこなすことが重要です。

現在、多くの企業がこの既存システムの老朽化と属人化問題に直面していると経済産業省が2018年に「DXレポート~ITシステム『2025年の崖』の克服とDXの本格的な展開~」にて発表を行いました。

これらの問題を解決できない場合、2025年には年間12兆円もの損害が出てくると予想されており、企業の早急な対応が必要となっています。

2つ目は、市場の変化に対応できる企業にするためです。近年では、新しいデジタル技術が日々生み出されており、私たちの環境は目まぐるしい速度で変化しています。その中で社会に必要とされる企業になるためには、環境に適応したサービスの提供が必要です。

したがって、企業が環境に適応し生き残っていくためにはDXの推進は必要不可欠と言えるでしょう。

3つ目は他企業との競争で優位性を保つためです。現在、多くの企業は国内だけでなく海外も含めたグローバルな事業展開を行っています。より競争が激化している現代社会において企業の組織体系や業務、サービス内容を変革することによって他企業と差別化され、企業の優位性も向上していくでしょう。

既存の体系やサービスに依存することなく、新しい価値を生み出していく企業がこれからの社会では特に必要とされます。

コロナ禍による働き方の変化

2020年のコロナウイルス流行で日本の働き方は大きく変化しました。今までは多くの企業が在宅勤務を導入し、取引先への訪問などもインターネットを通じて行われるようになっています。そのため企業は、ITインフラの整備やIT・デジタル分野に秀でた人材を確保する必要がでてきました。

そのような中で、ITやデジタル技術を使用した新たなビジネスの創出や推進、人材の採用や育成に注目している企業が増加しています。コロナ禍による働き方の変化で、より一層ITやデジタル技術の重要性が認知されたこともリスキリングが話題になっている理由です。

デジタル人材のコスト削減

デジタル人材を確保するための採用コストを削減できることもリスキリングが推進されている理由の一つです。現在、日本ではデジタル人材の不足が問題視されており、企業がこれからの社会に適応するためにはデジタル人材を確保することが大きな課題です。

しかし、新しく高度な技術を持った人材を採用するのはコストがかかってしまいます。リスキリングを行い社内でデジタル人材を育成できれば、採用コストも削減でき人手不足も解消できるため、非常に注目されています。

まとめ

ここまで、リスキリングの概要やリカレント教育との違いなどについてご紹介してきました。リスキリングやリカレント教育、アップスキリングも個人の成長につながります。これらの共通点は、現在行っている業務とは違うことを学び、将来的な課題に対応するということです。

デジタル技術が推進されていく社会では、リスキリングが今後ますます必要とされていくでしょう。新しい価値やサービスを創出するためにも、リスキリングやリカレント教育を実施していくことが重要です。

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