【事例あり】教育DXとは?メリットや課題、活用できるサービスも解説

公開日:2023.06.16 更新日:2023.12.05

あらゆる業界でDXが進むなか、学校や塾などの教育現場でもさかんにDXが推進されています。

教育におけるDXの意味について、気になっている教職員や塾運営者の方も多いのではないでしょうか?

そこで本記事では、教育DXのメリットや課題点、社会背景、教育現場における具体事例などについて解説します。

教育DXとは

教育DXとは、教育現場におけるDXのこと。DXは「ディーエックス」と読み、「デジタル・トランスフォーメーション」の略で、IT技術を活用した社会変革を意味します。

教育現場においても、最新のデータ分析やAIなどITの最新技術を活かし、教育手法や教員の業務システムを刷新していくことで、さまざまな課題が解決できるといわれています。

教育業界の課題と教育DXが必要な背景

教育業界の課題

昨今、教育現場はさまざまな課題を抱えています。特に大きな課題が以下の2つです。

  • 子どものニーズの多様化
  • 教職員への過剰な業務負担

子どものニーズの多様化

日本の教育現場においては、特別支援を必要とする子どもや、日本語指導を必要とする外国人の子ども、学校に通うことが難しい不登校の子どもなど、さまざまなニーズを抱えた子どもが増加しています。

多様なニーズを抱えた子どもに対し、平等な教育の環境を用意する重要性が問われるようになってきている現代では、子どもに対して多くの個別対応が必要とされます。

時代の変化とともに、子どもの多様なニーズに教育側が応えることが課題になっているといえるでしょう。

教職員への過剰な業務負担

2つ目の課題は、教職員の業務負担の大きさです。

OECDによる国際比較でも、事務作業や保護者対応など多様な業務を担う日本の教員は、ストレスが高いことが明らかになっています。前述した子どものニーズの多様化や、教員不足などの時代背景とともに、この問題はますます顕在化しているのはないでしょうか。

教育業界の仕組みを改善しなければ、長期的には、さらなる教育人材の不足と教育の質の低下を招く可能性もあり、大きな課題となっています。

教育DXが必要な背景

教育のDXが必要とされる背景には、以下の2つが挙げられます。

  • 最適な教育を提供するため
  • リモート教育のインフラを整えるため

最適な教育を提供するため

前述したように、近年では子どもの教育ニーズが多様化しており、さまざまな事情や能力に合わせて最適な教育を提供することが必要となっています。

また、教育内容の面でも、時代とともにあらゆる業界でICTやDXが普及し、情報技術を学ぶ必要性が増しています。デジタル技術が普及した社会で生活し、活躍していくためには、子どものITリテラシーやITスキルを高める必要があるのです。

これらの事情から、最適な教育を提供する手段として教育DXが注目されているのです。

リモート教育のインフラを整えるため

コロナ禍をきっかけとして、世界各国でオンラインによるリモート教育のニーズが高まりました。また、リモート教育は地方と都市の教育機会の差を埋める役割もあるといわれており、新たな価値にもつながる動きといえます。

今後も、環境の変化やさまざまな目的により、リモートで授業や宿題を提供する必要が生じるでしょう。

リモート教育のインフラを整えるために、教育DXの推進が必要とされているのです。

教育DXを推進するメリット

教育DXを推進することで、教育現場には具体的にどんなメリットがあるのでしょうか?

以下の4点が挙げられます。

  • 生徒一人ひとりの個別対応がしやすくなる
  • 教職員の業務負担をカットできる
  • デジタル教育が促進できる
  • 遠隔授業が可能になる

生徒一人ひとりの個別対応がしやすくなる

教育DXを進めることで、生徒に合わせた個別対応がしやすくなります。

教育DXの一つとして、たとえばタブレット端末やパソコンを使ったWebテストを導入することにより、生徒一人ひとりの進捗度合いを可視化したり、端末を通して質問やコメントのやり取りをしたりすることも可能となります。

各生徒の進度やつまづきポイントに合わせて、カリキュラムや指導を効率よく提供できるのは大きなメリットですよね。

教職員の業務負担をカットできる

過負荷が懸念されている教職員の業務をカットできることも、教育DXのメリットです。

たとえば、前述のようにタブレット端末やパソコンを使ったWebテストを行う場合、採点や平均点、偏差値の計算、順位の算出がすべて自動化できます。

他にも、教材の発注、進路指導のための成績データ分析、保護者会や補習授業などの出欠確認、緊急時の連絡など、教職員が行う事務作業の多くは、デジタル化によって負担を軽減できます。

雑務をカットできれば、よりよい授業づくりや生徒とのコミュニケーションなど、より有意義な仕事に多くの時間を掛けられるようになります。

ジタル教育が促進できる

教育DXの推進により、ITリテラシーやプログラミングなど、デジタル人材の育成に必要な教育を促進することができます。

デジタルを活用した教育現場では、生徒が日常的にデジタル技術にふれ、自分の身を守るためのインターネットとの付き合い方や、プログラミング的思考を養うことができます。

近年、小中学校の教育カリキュラムに加わった情報教育をより効果的に行うためにも、教育システムのDXと教職員のキャッチアップは必要な要素となっていくでしょう。

遠隔授業が可能になる

デジタルツールを活用することで、オンライン上で授業が受けられるため、遠隔地からでも授業に参加できるようになります。たとえば、台風などの災害発生時でも、生徒は自宅から安全を確保した状態で授業を受けることができます。また、怪我などで通学できない生徒が自宅から授業に参加できるようになれば、勉強に遅れてしまうといったことも起こりにくいでしょう。

教育DXを推進する際の課題やデメリット

教育DXの推進はメリットの一方で、いくつかの課題やデメリットもあります。

具体的には、以下の3点が挙げられます。

  • インフラを整備しなければならない
  • 破損・故障のリスク
  • 提供者のITリテラシー向上が必要

インフラを整備しなければならない

教育DXは、IT技術やデジタルツールなどの導入によって行われるため、インフラの整備が必要不可欠です。インフラの例としては、生徒や教員が使用するデジタル機器をはじめとしてネットワーク環境の整備、セキュリティ対策などが挙げられます。また、LMS(学習管理システム)のようなシステムの導入も必要です。これらのインフラ整備にはコストがかかります。場合によっては各家庭で費用を負担するケースもあるため、経済的に余裕のない家庭にとっては大きな負担となるでしょう。

破損・故障のリスク

デジタル機器は、破損や故障のリスクがあり、実際に故障した時などの対応策を検討しておかなければなりません。特に子どもが利用する場合、うっかり落としてしまう、飲み物をこぼしてしまうといったトラブルが起こりやすいと考えられます。破損や故障した場合、修理費用や買い替え費用が発生するため、そういったコストも考慮しておかなければなりません。

提供者のITリテラシー向上が必要

教育を提供する教員などのITリテラシーが低いと質の高い教育を提供することはできません。たとえば、教員がツールの利用方法を十分に理解していないと、授業がスムーズにできません。また、情報管理に対する意識が低いために起こる情報漏洩などの可能性もあるでしょう。このような事態が発生すると、業務効率がかえって低下してしまうため、教育DXによるメリットが弱まってしまいます。

教育DXの事例

学校や塾などの教育現場で、実際に教育DXを実践し、効果を上げている例を6つ紹介します。

TERAKOYA:AIによる学習カリキュラムの個別最適化

1979年に創業し、愛媛県を中心に事業を展開している寺小屋グループ。同グループが運営する学習塾「TERAKOYA」では、AIを用いた学習システム「atama+」を使い、学習効果の改善に成功しました。

タブレット端末を通して生徒一人ひとりに最適化したカリキュラムで学習を指導し、約3ヶ月間のトライアル導入で複数の中学生生徒の成績アップを達成しています。

佐賀県立致遠館中学校・高等学校:デジタル化による学校教育の改善

佐賀県立致遠館中学校・高等学校では、学校全体の業務をシステムでサポートするサービス「Classi」を活用し、学校教育の改善に成功しました。

具体的には、以下のような施策を行いました。

  • 授業内でのWebテスト活用
  • 学習記録を利用した学習時間調査
  • 生徒カルテを利用した進路指導
  • 臨時休校時のコミュニケーション
  • 配布プリントや日報のデジタル化

特に、コミュニケーションツールの活用は高く評価されており「欠席した生徒や、不登校の生徒が授業内容をキャッチアップできる」「自分の意見をあまり表に出さない生徒の意見や思いを知ることができる」といった利点があったとのことです。

戸田市教育委員会:定着度の確認にツールを活用

埼玉県の戸田市教育委員会では、 学習eポータル+AI型の教材ツールである「Qubena」を活用し、学習内容に対する問題演習や定着度の確認などに取り組んでいます。Qubenaは、さまざまな問題を生徒の定着度、理解度に応じて出題することが可能です。教員は生徒の定着度や学習状況を踏まえて声かけができるため、より質の高い教育を提供できます。

鷗州塾:学習に関するデータ管理を一括化

広島・岡山・山口・大阪を中心に展開している学習塾の鷗州塾では、データの一括管理を目的として、「Comiru」を導入しています。こちらの塾では以前から生徒の成績や授業方法のノウハウなど、さまざまなデータの計測・管理を手作業で集計しており、従業員への負担の大きさが課題となっていました。Comiruを導入したことで、データの一括管理が可能となり、データの多角的な分析も行うなど、より効果的にデータを活用できるようになっています。

練馬区立関町北小学校:職員室のクラウド化で業務負担を軽減

東京都の練馬区立関町北小学校では、職員室のクラウド化を実現することで教育のDXに取り組んでいます。具体的には、プレゼンテーションソフトを活用して学級だよりを、表計算ソフトを使用して連絡帳を作成し、学習支援ソフトで配信をするというものです。学級便りがオンライン上で配信されるようになったことで写真や動画をたくさん掲載できるようになり、保護者は子どもの様子をより詳しく知ることができるようになりました。そのほかにも、個人面談などの日程調整もクラウド上で行うようにしたことで、職員の業務負担軽減につながっています。

新潟市立小新中学校:1人1台の端末で探究活動に取り組む

新潟市立小新中学校では、1人1台の端末を活用した探究活動に取り組んでいます。同中学校では、学習場面に応じた端末活用に学校全体で取り組みを進めています。
特に、何かを調べたりまとめたりして表現するような際に端末が活躍しているそうです。調べた情報はクラウドでの共有やデータの蓄積ができるため、学習の再構成や学びを深化させるのに役立っています。調べた学習を発表する際には、プレゼンテーションソフトや動画ソフトなども使用して、家族に向けて発表する機会なども設けているそうです。
教師は生徒の成果物をクラウド上でいつでも確認できるため、より効率よく業務に取り組むことができます。3年間の成果として、それまでに学んだ内容を電子書籍として公開する取り組みも行っているそうです。

教育DXに活用できるサービス

教育DXに活用できる便利なサービスが多く登場しています。ここでは6例のサービスを紹介します。

atama+(アタマプラス)

1つ目のサービスは「atama+(アタマプラス)」です。「atama+」は、前述のTERAKOYAをはじめ、全国3,200以上の学習塾の教室で採用されている学習システムです。

最大の特長は、AIが生徒一人ひとりの弱点を把握し、生徒専用のカリキュラムを提供してくれる点。学習カリキュラムの中では、生徒がつまづいたポイントに対し原因の分析や解説まで行ってくれます。

各生徒に最適化した教育の提供をサポートしてくれるサービスなのです。

参考:atama+(アタマプラス)

Classi(クラッシー)

2つ目に紹介するのは「Classi(クラッシー)」です。「Classi」は学校教育の包括的なICTに取り組む、佐賀県立致遠館中学校・高等学校も活用したサービスです

Classiでは、生徒の目標管理や学習記録の把握、Webテスト、生徒カルテの可視化などさまざまなデータ活用をスムーズに行うことができ、学校の業務全般を改善できます。

また、英語やプログラミングなど、各分野のパートナー企業が提供する教育コンテンツとも多く連携しており、各学校のニーズに合わせた連携サービスを利用することも可能。

生徒指導にかかわる負担を軽減し、教育の質を上げてくれるプラットフォームといえるでしょう。

参考:Classi(クラッシー)

Schoo Swing(スクー スウィング)

3つ目のサービスは「Schoo Swing(スクー スウィング)」です。「Schoo Swing」は、学習状況を可視化することで生徒1人1人に応じた教育の提供を可能にする学習プラットフォームです。コメントやリアクション、クイズといったさまざまな機能が生徒の学習をサポートしてくれます。また、出席状況や課題提出状況、テストの結果といったデータの管理もできるため、学習記録に基づいて教育活動の検証や分析を行うことも可能です。

参考:Schoo Swing(スクー スウィング)

Qubena(キュビナ)

4つ目のサービスは、前述した戸田市教育委員会が活用している「Qubena(キュビナ)」です。「Qubena」は、学習に関するデータをはじめとした各種データの利活用を実現してくれる学習eポータル+AI型教材ツールです。生徒の学習状況や過去の間違いといったデータを解析し、個別最適化された問題を出題してくれます。基礎から応用まで幅広いレベルに対応しているため、さまざまな教育現場で活用できるでしょう。使えば使うほど最適化が行われ、教員の問題作成や採点業務の負担も軽減してくれます。

参考:Qubena(キュビナ)

Comiru(コミル)

5つ目のサービスは「Comiru(コミル)」です。「Comiru」は、欧州塾も導入している学習塾におけるコミュニケーションや業務管理をサポートしてくれるシステムです。たとえば、専用アプリやLINEとの連携ができ、システムから保護者のスマートフォンに直接メッセージを送れるため、コミュニケーションが取りやすくなります。また、請求書の自動作成や成績管理、座席管理など、塾の業務では欠かせない便利な機能も備わっており、業務負担の軽減につながるでしょう。

参考:Comiru(コミル)

まなびポケット

最後に紹介するサービスは、全国12,000校以上の主に公立学校で利用されている「まなびポケット」です。「まなびポケット」は、教職員や児童・生徒が1人1つのアカウントを持ち、さまざまなシーンで多様な教育コンテンツを利用することができる教育ICTプラットフォームです。学習コンテンツの提供や学習履歴管理の他に、教職員と保護者、教職員と児童・生徒間の連絡や情報共有を支援するコミュニケーション機能が備わっています。学校から保護者へ発信する各種お便りの配信や出欠席の連絡なども「まなびポケット」上でできるため、より早く正確な情報伝達が可能になります。教職員の業務効率が上がるだけでなく、保護者や生徒にとっても利便性の高い、ICTを活用した教育の実現を支援するサービスです。

参考:まなびポケット

まとめ

教育DXについて解説しました。教育業界のシステム変革は文部科学省を主体にさかんに推し進められており、変化は確実に起こりつつあります。長期的な視点をもち、優れたサービスも活用しながら、効果的な教育DXに取り組んでいきましょう。

以下のコラムでは、教育現場におけるAIについて解説しています。こちらもあわせてご覧ください。

教育現場にAIが与える影響とは?メリット・デメリットや事例を解説|リスキリングナビ
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