デジタル技術による社会変革を意味する「DX」(デジタルトランスフォーメーション)という言葉が登場してからは久しく、本格的なDX推進に取り組む企業も多く見られるようになってきています。
しかし、本当の意味でのDXを成し遂げるには人材の「リスキリング」が不可欠です。
そのため「どこから手を付ければよいか分からない」と頭を悩ませる管理者の方もまだまだ多いのではないでしょうか?
そこで本記事では、DX時代にリスキリングが重要視される理由や、東京都が取り組むDX人材育成の支援制度についてご紹介します!
目次
「リスキリング」とは、経済産業省の定義によれば「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」。
つまり、「時代の変化に合わせて必要なスキルを学び直す」ということです。
近年、最も大きな社会の変化といえば、やはりDXでしょう。あらゆる業種・職種でデジタル技術の活用が重要視されるようになりました。実際に多くの場面で「リスキリング」という言葉はデジタル人材やDX推進人材の育成という意味で使われています。
リスキリングは、既存のOJTや役職別研修とは異なる点として「今はその会社や業種に存在しない全く新しい職務やスキルを学ぶ取り組み」を指します。
つまり、一部の社員だけでなく全社員が新しいスキルを学び直し、仕事に取り入れるというのがリスキリングの大前提です。そしてリスキリングを通し、業務の全工程を一度にイノベーションすることでその真価が発揮されるのです。
DXの推進にはリスキリングが不可欠といわれ、重要視されています。その理由は、主に以下の3点を挙げることができます。
1つ目の理由は、採用市場にDX人材が乏しい点です。つまり、DX人材を獲得するコストが非常に高いということです。
経済産業省の調査によれば、IT人材の不足は2018年時点で約22万人にのぼり、2030年には最大約79万人にまで拡大すると予測されています。つまり、DXの主要スキルとなるプログラミングやデータ活用に長けた人材の市場は、今後も売り手市場となることが予想されます。
高い経費をかけて広報や採用活動を行い、競合企業よりも高い報酬を提示してやっと欲しい人材が獲得できる、逆にそれができない企業にとっては、DX人材の外部獲得は困難なシチュエーションが続くということです。
したがって、このような状況では既存の社員へのリスキリングが不可欠になります。
2つ目の理由は、デジタル化によって不要になる業務が多くあることです。
つまり、会社からすれば、従業員がそれまで担当していた仕事を失い、大量に人手が余ってしまうことになります。
そこで、先を見越した一部の企業は、新しい業務や職種で従業員が活躍できるよう、リスキリングを積極的に取り入れているのです。
デジタル化によって生まれる業務とは、すなわち新しいデジタル技術を扱う業務です。リスキリングがDXに不可欠というだけでなく、DXが進むことでまたリスキリングが必要になるのです。
3つ目の理由は、企業の成長・拡大を維持するためです。
デジタル化による業務変革は、成功すれば大きな生産性の向上をもたらします。したがって、リスキリングに本格的に取り組まなければ、他社との競合に勝てないと考える管理者の人々が多くいるのです。
DX化の波は、今や避けられない社会の変化として起こってきています。そのような状況で、中長期的な企業戦略としてもリスキリングが重要視されているわけです。
DX人材リスキリング支援事業では、東京都が提供するDXスキルのオンラインコースを、無料で受講できます。
コースの内容は以下の4つ。中小企業が直面しがちな課題にフォーカスした実践的な内容となっています。
サポートも手厚く、DXコンサルタントによる面談やDXスキル診断を経て、個別のユーザーに最適化された100時間もの学習カリキュラムが提供されます。
講師への質問や学習者同士の交流ができるプラットフォームもオンライン上に設けられており、安心して学習に取り組める環境がそろっています。
DX人材リスキリング支援事業の支援対象となる企業は、以下の条件に当てはまる企業となります。
※小規模企業者についても本事業の対象となります。
※個⼈事業主、フリーランスは本事業の対象外となります。
中小規模の企業であれば、ほぼ全ての企業が応募条件に当てはまりそうですね。
2023年度のDX人材リスキリング支援事業では、以下の流れで支援が行われました。
講習前後では、プロのコンサルタントによる充実したサポートも受けられるので、計画的に学習と振り返りが進められそうですね。
2022年度は約250社の支援枠がほぼ一杯となり、多くの企業が充実したプログラムを受講できました。公式サイトには受講企業事例集もありますので、自社での活用を検討する際には、参考にしてみてください。
また、東京都はDX人材育成に取り組む中小企業や個人事業主を対象に、経費の一部を助成する「DXリスキリング助成金」を用意しています。(2023年度より公益財団法人東京しごと財団が運営しています)
対象となる研修やeラーニングを施行する際に、受講料や教材費を補助してくれるのです。
DXリスキリング助成金とは、東京都内の中小企業などが従業員に対して、DXに関するセミナー・研修などで、民間の職業訓練やeラーニングを利用した際に、経費を助成してくれる制度です。
助成金額は、対象経費の3分の2。最大64万円まで助成してくれます。
DXリスキリング助成金の対象になるのは、以下の条件に当てはまる企業です。
前述のDX人材リスキリング支援事業とは異なり、中小企業だけでなく個人事業主まで支援対象がカバーされていますね。
※上記はあくまで簡単な分類ですので、詳しい申請条件が知りたい方は「令和5年度DXリスキリング助成金(中小企業人材スキルアップ支援事業)募集要項」をご確認ください。
参考:令和5年度DXリスキリング助成金(中小企業人材スキルアップ支援事業)募集要項
DXリスキリング助成金の補助は、以下の流れで行われます。
※太字は申請者の手続きです。
中小企業や個人事業主にとって、スキルアップにかかる費用のうち経費の3分の2も助成してもらえるのは、かなり大きなメリットといえます。
申請期間は2023年4月1日~2024年2月29日です。助成金の利用を検討している方は、忘れずにチェックしておきましょう。
DX時代のリスキリングと、東京都の具体的な取り組みについて解説しました。
支援制度としては以下の2つをご紹介しました。
どちらも手厚い仕組みで、都内の企業にとってはありがたいですね。各種の制度や助成金を活用して、DX・リスキリングによる改革を進めていきましょう。デジタル人材をいち早く育成することで、自社の拡大にも大きな貢献ができるはずです。