DX(デジタル・トランスフォーメーション)が推進されている現在では、DXやデジタル技術へのスキル・知識が求められるようになっています。
しかし、DXへの知識が乏しく、DXがどのようなものなのか、DXをどのように推進すればいいのか、理解できていない人が多いのも事実です。
このような現状を踏まえ、経済産業省とIPA(独立行政法人情報処理推進機構)が策定したのがデジタルスキル標準というガイドラインです。
今回はデジタルスキル標準の内容や策定の理由について解説します。最後にデジタルスキル標準に準じたサービスも紹介するので、参考にご覧ください。
目次
デジタルスキル標準は、令和4年6月の閣議決定で示された「デジタル田園都市国家構想基本方針」によって、策定されました。
すべてのビジネスパーソンがDXに関連する基本的なスキルや知識、マインドを得るためのガイドライン「DXリテラシー標準」と、企業でDXの推進を担当する専門的なスキルや知識、マインドを持つ人材を育成したり、採用したりするためのガイドライン「DX推進スキル標準」の2種類によって構成されています。
近年、データ活用やデジタル技術の進化に伴い、産業構造に変化が発生している状況にあります。企業が他社との競争において優位に立つためには、変化しやすい社会情勢や顧客のニーズ・課題を捉えることが重要になり、DXの推進が欠かせないといえるでしょう。
一方、DXのスキルや知識、専門性がある人材は多くなく、国内の多くの企業でDXの推進が遅れているのが現状です。
必要性の高いDX推進が遅れている現状を打破するべく策定されたのが、デジタルスキル標準です。
デジタル関連の指標として、2002年に経済産業省が策定し、IT関連のスキルを評価する「ITスキル標準(ITSS)」というものがあります。
ITスキル標準とは、ITに関連するサービスを提供するために求められるスキルや知識を明確に体系化した指標です。
ITスキル標準の目的は高度IT人材の育成で、対象となるのはITエンジニアです。一方、デジタルスキル標準はすべてのビジネスパーソンが対象で、両者は明確に異なる枠組みとなります。
前述のとおり、デジタルスキル標準は「DXリテラシー標準」(DSS-L)と「DX推進スキル標準」(DSS-P)から成り立っています。
それぞれどのようなものなのか、詳しく解説します。
DXリテラシー標準(DSS-L)とは、すべてのビジネスパーソンが習得するべき能力や知識である「DXリテラシー」における標準的な基準を示したガイドラインです。
DXを進めるうえで、必要になる考え方や知識、スキルが体系的にまとめられているのが特徴で、社会人がDXに参画して成果を挙げられるようになる学習項目が整理されています。
DXリテラシー標準の全体像として策定された主な項目は、以下の4つです。
「Why」ではDXの必要性や重要性の理解に不可欠な知識、「What」ではDXに関連するデータやデジタル技術への知識、「How」ではDX関連のデータ・デジタル技術の活用方法に関する知識、「マインド・スタンス」で常に変化が起きる社会において新しい価値を創出するための意識・姿勢・行動について、それぞれ示されています。
DX推進スキル標準(DSS-P)とは、実際にDXの推進を担う人材を対象に、役割の分類やそれぞれの人材が得るべきスキルが示されたガイドラインです。
求められるスキルが体系的にまとめられており、人材育成の仕組みに結び付けることで、リスキリングの促進や実践的な学びの場の創出、スキル・能力の可視化ができるよう策定されています。企業は人材の配置や育成、採用にこのガイドラインを活用できます。
DX推進スキル標準では、DXを進める際に必要となる人材・役割について示しています。具体的には、次の5つの人材類型が記載されています。
人材類型 | 定義 |
---|---|
ビジネスアーキテクト | DXの取組において、目的の設定から導入、効果検証までをワンストップで推進する人材 |
デザイナー | 製品・サービスの方針、開発プロセスを策定し、それぞれの在り方をデザインする人材 |
データサイエンティスト | DX推進において、データ収集・解析する仕組みの設計・実装・運用を担う人材 |
ソフトウェアエンジニア | DX推進に置いて、デジタル技術を活用した製品・サービスを提供するためのシステム・ソフトウェアの設計・実装・運用を担う人材 |
サイバーセキュリティ | デジタル環境におけるサイバーセキュリティーリスクの影響を抑えるための対策を担う人材 |
参考:独立行政法人情報処理推進機構「 DX推進スキル標準(DSS-P)概要」
加えて、DX推進に欠かせない知識やスキルに合わせて、15個のロール(役割)とロールごとに求められる知識・スキルの重要度が示されています。なお、知識・スキルを得るために必要な学習項目は共通スキルリストで確認可能です。
人材類型 | ロール(役割) |
---|---|
ビジネスアーキテクト | ・新規事業開発 ・既存事業の高度化 ・社内業務の高度化・効率化 |
デザイナー | ・サービスデザイナー ・UX/UIデザイナー ・グラフィックデザイナー |
データサイエンティスト | ・データビジネスストラテジスト ・データサイエンスプロフェッショナル ・データエンジニア |
ソフトウェアエンジニア | ・フロントエンドエンジニア ・バックエンドエンジニア ・クラウドエンジニア/SRE ・フィジカルコンピューティングエンジニア |
サイバーセキュリティ | ・サイバーセキュリティマネージャー ・サイバーセキュリティエンジニア |
参考:独立行政法人情報処理推進機構「 DX推進スキル標準(DSS-P)概要」
デジタルスキル標準にて示された知識やスキルの習得をサポートする研修やサービスを紹介します。
人工知能や機械学習を含めた先端技術に関する教育事業を展開する株式会社キカガクでは、DX人材ラーニング・アセスメントプラットフォーム「キカガク for Business」を提供。これまでに700社以上の導入、85,000人以上の受講実績があります。
キカガク for Businessでは、すべての社員が対象になる「DXリテラシーアセスメント」、DX推進に携わる専門人材が対象の「DX推進スキルアセスメント」の2種類で構成された「デジタルスキル標準アセスメント」が2023年8月26日にリリースされました。
「DXリテラシーアセスメント」では、DXリテラシーレベルを定量的に測定できるテストで、DX推進のために求められるマインドやスタンス、知識、思考力を問うことで、各社員のリテラシーレベルを可視化できます。
「DX推進スキルアセスメント」は、デジタルスキルを定量的に測定できるテストで、DX推進スキル標準で示された人材類型別にスキルレベルを判定可能です。
ABEJA Platformを基幹にしたデジタル版EMS(Electronics Manufacturing Serviceの略称、電子機器の受託生産サービスのこと)の提供する株式会社ABEJA DXでは、企業のDXを実現できる人材の育成をサポートするサービスを展開しています。
同社が蓄積してきたノウハウを駆使し、DX推進のプロジェクトへの伴走や知識研修、ワークショップなどを実施することで、DXのキーパーソンの育成を目指します。
また、役職者に合わせたDXの基礎について研修を行う階層別サービスも展開しており、全社員のデジタルアレルギーの払拭や、企業内のデジタル組織文化の醸成をゴールにしています。
IT技術者の育成やITに関する企業教育サービスを展開するインターネット・アカデミー株式会社では、さまざまなIT研修を提供しています。
無料相談ができて、企業が抱える課題に応じて最適なIT研修プランを提案してもらえるのが特徴。複数の研修を組み合わせてカスタマイズされた研修プランの受講も可能です。
オンライン研修や集合研修、eラーニングなど、さまざまな研修スタイルに対応している他、学習管理システム(LMS)を利用できるなど、従業員教育に対するサポートが手厚いのもポイント。DX推進に成功した実績も豊富で利用しやすい研修サービスとなっています。
デジタルスキル標準はDX推進の道標となる指針です。DXを推進する立場にあるデジタル人材からDXリテラシーを求められる一般社員に至るまでの知識やスキルが示されており、幅広く活用できます。
今後、企業でのDXの流れはさらに強くなっていくことから、デジタルスキル標準をもとにしたスキルアップやリスキリングが重要になるでしょう。
こちらのコラムでもデジタルスキル標準について触れつつ、DX人材に必要なスキルについて解説していますので、ぜひご覧ください。