ゼロトラストセキュリティとは?DXとの関連や意味をわかりやすく解説

公開日:2023.05.02 更新日:2023.05.02

近年、「DX」がビジネスの世界でバズワードになりつつあります。

しかし、DXの基礎となる技術や概念はどれも難しく、特に重要な「ゼロトラストセキュリティ」については、その意味を掴みかねている担当者の方も多いのではないでしょうか?

本記事では「ゼロトラストセキュリティ」の意味や登場の背景、メリットなどについて解説していきます。

DXの話題で出てくる「ゼロトラストセキュリティ」とは

「ゼロトラストセキュリティ」とは、情報セキュリティの新しい考え方の一つで、「全ての通信を信用しない」という原則にしたがって作られるシステムのことを意味します。

従来の情報セキュリティでは、社内と社外のネットワークを分離し、両者の間での不正アクセスを防ぐ境界線を確保することによって、安全性を保つ考え方が一般的でした。

それに対し、ゼロトラストセキュリティでは、社内・社外に関わらずシステム上のすべての通信をアクセスのたびに検証し、ユーザー認証ができなければ遮断します。

ゼロトラストセキュリティが必要とされる理由

DXにおいてゼロトラストセキュリティが重要視される要因に、DXによってネットワークの使い方が多様になったことが挙げられます。

さまざまな場所から、さまざまな接続先の情報にアクセスすることが増え、社内ネットワークと社外ネットワークの間に境界線を設ける従来のやり方ではセキュリティの対応が難しくなっているのです。

また、従来の情報セキュリティでは、コンピューターウイルスなどのマルウェアが一度ファイアウォールを抜けて社内ネットワークに侵入してしまうと、アクセスを許可されたものとして自由に行動でき、大きな被害につながるという危険もありました。

新しい技術を使い、新しいビジネスモデルを構築する「DX」においては、ゼロトラストセキュリティの導入は重要な要素なのです。

特に、具体的な理由として挙げられる社会の変化は以下の2つです。

  • リモートワークの増加
  • クラウドサービスの利用の増加

それぞれ解説していきます。

リモートワークの増加

新型コロナウイルスの蔓延以降、リモートワークの普及が進み、社外からの社内ネットワークへの接続が多くなりました。

従来のセキュリティを使っている場合、社外からの接続には「VPN」という仕組みを使い、仮設の専用ネットワークから行います。しかし、VPNには同時接続数の制限があるため、多くの企業がVPN渋滞とよばれる接続不良に陥りました。

このように、従来のセキュリティは社外の大量のアクセスを想定していないため、回線に大きな負荷がかかりやすいのです。この問題を解決するには、ゼロトラストセキュリティに基づいたネットワークの構築が有効です。

クラウドサービスの利用の増加

企業においてクラウドサービスを利用する機会が増えてきていることも、要因の一つです。

たとえば、これまで社内で保持していた情報を外部のクラウドに保管するような場合、リモートワークの場合と同じく、外部システムへのアクセスが常態化します。

そのため、ゼロトラストセキュリティの仕組みを構築し、接続先のアプリごとにアクセスを許可することが重要になります。

従来のセキュリティとゼロトラストセキュリティの違い

従来のセキュリティとゼロトラストセキュリティのおおまかな違いは、「従来のセキュリティはネットワーク単位、ゼロトラストセキュリティはアクセス単位で安全性を検証する」点にあります。

従来のセキュリティシステムでは、ネットワーク単位でセキュリティのレベルを分け、社内のネットワークは安全、インターネットなどの社外のネットワークは危険という前提に立ち、外側からの通信を制御することでセキュリティを確保していました。

ゼロトラストセキュリティでは、社内外にかかわらず、すべての通信を一回一回検証します。これにより、あらゆる場所から場所にアクセスを行うような状況にも柔軟に対応可能なセキュリティが実現できるのです。

ゼロトラストセキュリティのメリット

ゼロトラストセキュリティを導入することによるメリットとは何でしょうか?それは以下の2点です。

  • 情報漏洩リスクの低減
  • 利便性の向上

情報漏洩リスクの低減

ゼロトラストセキュリティの第一のメリットは、セキュリティ向上による情報漏洩のリスク低減です。

ゼロトラストセキュリティでは、すべてのユーザーがアクセスする度に認証を行う必要があり、アクセスできる領域も必要最小限の範囲に限られます。つまり、社内のPCがウイルス感染していたり、何らかの方法で外部からの不正アクセスがあった際にも漏洩しうる情報は最小限に抑えられるということです。

また、アクセスのたびに認証手続きと履歴の記録を行っているため、不正侵入があった場合の原因特定もスムーズになります。

このように、ゼロトラストセキュリティであれば従来のセキュリティよりも情報漏えいの被害を小さく抑えられ、迅速な解決も可能になるのです。

利便性の向上

ゼロトラストセキュリティの利点として、利便性の向上も挙げられます。あらゆる場所やデバイスからシステムにアクセスしやすくなるのです。
たとえば、従来のセキュリティシステムにおいて、社外から社内のシステムにアクセスする代表的な方法はVPN接続ですが、この方法では使用するデバイスごとに個別の設定が必要で、手間がかかります。しかしゼロトラストセキュリティではその必要はありません。
また、従来は別々のシステムにアクセスする際にシステムごとにIDとパスワードを設定し、それぞれ管理する必要がありました。しかし、SSO(シングルサインオン)とよばれるゼロトラストセキュリティに基づいたクラウド認証機能を使えば、1つのパスワードで複数のシステムに安全にアクセスできます。
このように、ゼロトラストセキュリティはリモートワークやクラウドシステムの連携など近年の新しいビジネス環境と親和性が高いため、多くの企業で導入が求められているのです。

ゼロトラストセキュリティのデメリット

重要性が認識されているゼロトラストセキュリティですが、未だに多くの企業が課題を抱えていることも事実です。ゼロトラストセキュリティのデメリットは以下の2つが挙げられるでしょう。

  • システムの開発コスト
  • 導入にともなう社員教育のコスト

システムの開発コスト

ゼロトラストセキュリティ導入の最大のデメリットは、費用や時間がかかることでしょう。

ゼロトラストセキュリティは従来のセキュリティとは構造的に異なり、また高度な技術が必要となる仕組みです。そのため、エンジニアの大きな工数をかけて開発する必要があります。また、運用にも大きなコストが掛かるでしょう。

既存のシステムをゼロトラストセキュリティに対応させるという場合であれば、なおさらです。

そのため、ゼロトラストセキュリティの導入に取り組む場合には事前に目的と効果を明確化しておくことが重要になります。

導入にともなう社員教育のコスト

ゼロトラストセキュリティの導入に伴って、社員全体に対する教育も必要になります。

社員が認識しておくべきセキュリティリスクや、システムの使い方が大きく変わることになるからです。システムを使う全社員に対して教育を行うため、大規模な組織であればあるほど教育コストは大きくなります。

安全かつ生産性の高いシステム運用を実現するには、それに見合う予算・人手の配分ができるよう、社員の教育計画を十分に立てる必要があるでしょう。

まとめ

ゼロトラストセキュリティの意味や目的、メリット・デメリットについて解説しました。

DXのトレンドを背景に、基盤技術であるゼロトラストセキュリティを導入する価値はますます高まっています。

リスクと効果を正しく理解し、成果につながるシステムの構築を目指していきましょう。

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