健康経営のメリットとは?デメリットや企業事例も解説

公開日:2023.08.02 更新日:2024.01.12

労働者の働き方に対する意識の変化や、デジタル化によるビジネスの急速な変化、新型コロナウイルス感染症拡大などによる社会情勢の変化など、さまざまな変化が起こっている現代において、企業が持続的成長を続けていくためには、労働力の確保や生産性向上は欠かせない課題になっています。

そこで注目されているのが「健康経営」です。企業が従業員の健康に対して投資する考え方である健康経営は、経済産業省も推進するなど官民を挙げて取り組みが進んでいます。

本記事では健康経営の概念からメリットやデメリット、実際の企業事例までを解説していきます。

健康経営とは

健康経営とは、企業が従業員の健康管理を経営的な視点で捉え、投資を行なっていく経営方法です。アメリカの臨床心理学者ロバート・ローゼン博士が提唱した「ヘルシーカンパニー」に基づいた考え方で、従業員が健康であることが会社の業績向上に直結するというものになります。

たとえば、企業は従業員の健康状態を把握し、職場環境の改善や労働条件の見直しを行うことで、生産性向上につながるといった考えです。心身が充実している従業員が多い企業ほど組織全体のパフォーマンスに優れ、成果を挙げているという事例も増えてきており、広がりを見せています。

健康経営のメリット

健康経営のメリットとしては、以下の4点が挙げられます。
  • 労働生産性の向上
  • 人材の確保
  • 企業ブランドイメージの向上
  • 医療費の削減

それぞれのメリットについて解説していきます。

労働生産性の向上

企業の人手不足が深刻化していく中、従業員の労働生産性を向上させることは全ての企業の課題であると言えます。健康経営を促進することは、従業員の健康状態を維持し、最大限のパフォーマンスを発揮させる環境の整備につながるため、全社的な労働生産性の向上が期待できます。
日本経済新聞グループが主導で行なっている「スマートワーク経営研究会」が発表した調査結果によれば、「健康経営については、ROA(総資産経常利益率)とROS(売上高営業利益率)のいずれでも、実施の後に利益率が上昇している状況が見られるため、健康経営を実施することにより利益率が上昇する効果が現れる可能性が示唆される」(出典:経済産業省「第19回健康投資WG 事務局説明資料」)とされています。
反対に健康状態が悪い従業員が多い職場だと、従業員の休職や退職が増加し、一部の従業員へ仕事の負担が増えてしまいます。その結果、さらに健康状態を悪くしてしまうという悪循環に陥ることが懸念されます。

人材の確保

健康状態の悪い従業員が多い職場では、慢性的な人手不足に悩まされるでしょう。心身の不調は仕事を行う気力を奪い、離職につながるケースも多々あるからです。
健康経営を促進することで、従業員の健康が保たれ、欠勤や離職のリスクは大幅に低下します。経済産業省の「健康経営の推進について」では、以下の図の通り健康経営度の高い企業は一般の企業よりも離職率が低い傾向にあると発表しています。

出典:経済産業省ヘルスケア産業課「健康経営の推進について

健康経営は、求職者に対してのアピールポイントにもなります。採用活動において、積極的な健康経営の実施をアピールできれば、他社との差別化にもなり、優秀な人材を確保できる可能性も高くなります。
離職率の低下と採用時のアピールというメリットにつながり、必然的に自社の人材確保に貢献できるのが健康経営です。

企業ブランドイメージの向上

健康経営を実践している企業は、ホワイトカラーの企業であると積極的に発信できます。ブラック企業が社会問題として取り上げられることが多い中、従業員に優しい企業経営はブランドイメージの向上に寄与します。
さらに健康経営銘柄や健康経営優良法人に認定されれば、ホームページやプレスリリースによって社会全体にアピールできます。社会的に従業員が働きやすい環境を提供している企業だと認知されることは、人材の確保や日々の業務においても優位に働いていくでしょう。健康経営の実践が、社会的信用の獲得につながっていきます。

医療費の削減

健康経営の促進は、従業員の意識変化ももたらします。従業員が日頃から自身の健康を気遣うようになれば、病院などにかかる機会が減少し、医療費の削減につながります。
企業は従業員の医療費を社会保険料によって負担しているため、企業側にとっても従業員が病院にかかる機会が減るのはメリットとなります。

健康経営のデメリット

健康経営のデメリットとしては、以下の2点が挙げられます。

  • 効果測定が難しい
  • 従業員の理解が得られないケースもある

それぞれのデメリットについて解説していきます。

効果測定が難しい

健康経営のデメリットの一つが、効果測定が難しい点です。健康経営は長期的な視点での取り組みとなるため、導入開始後すぐに効果が現れることはありません。また全社的な取り組みが従業員個々に浸透するまでに時間がかかる場合もあります。さまざまな施策を行なったとしても、どの施策が効果につながったのかの関連性を判断しにくいケースも少なくありません。
経済産業省では、健康経営の効果が現れるフローとして「健康経営の実践」「健康のアウトカム」「業務パフォーマンス」「企業価値」を掲げています。
健診受診率やストレスチェックの結果などを把握し、従業員の生産性にどれほどつながっているか、業績にどのように貢献しているかなどを多角的に見ていくことが必要です。

従業員の理解が得られないケースもある

従業員の中には自身の健康情報を知られたくないという人もいます。また、自分の仕事へのスタイルが確立している、残業をしていても仕事をするのが好きだという従業員だと、なかなか理解につながらないケースもあるでしょう。
健康経営は従業員の協力がなければ達成できないため、丁寧な説明と制度設計が必要になります。無理に健康経営を進めてしまい、かえって従業員にストレスがかかる環境となってしまっては本末転倒です。メリットや行う意義について、コミュニケーション取りながら進めていくことが大切です。

健康経営実施の企業事例

本章では健康経営の事例として、以下の3社を紹介します。
  • サッポロホールディングス株式会社
  • 株式会社佐野テック
  • 株式会社笠間製本印刷

サッポロホールディングス株式会社

サッポロビール株式会社などを傘下に持つサッポロホールディングス株式会社では、定期健康診断の徹底や喫煙者へのサポート体制の構築などを行なっています。

喫煙者の禁煙までの道のりをサポートする際には、禁煙体験プログラムを会社側が全額負担する、禁煙外来の自己負担額を2万円補助するなど、喫煙者を減らす取り組みを2017年から続けています。

こうした取り組みが評価され、健康経営優良法人認定制度の中からさらに優秀な取り組みを行なっている企業に送られる「ホワイト500(2022年)」に選出されています。

 株式会社佐野テック

株式会社佐野テックは、三重県に本社を構える社員数67名の企業です。

健康経営の取り組みとして、有給休暇の100%消化と、従業員の名札に健康に関する目標記載を行なっています。有給休暇を取得しやすい環境を作るために、管理職が率先して有給休暇を活用する、有給休暇の取得理由を問わないといった施作を行なっています。

健康に関する目標記載は、「LDLコレステロールの数値を下げる」など、1年後に達成したい健康目標を掲げる取り組みです、

これらの取り組みが評価され、2022年に健康経営優良法人制度に選出されています。

株式会社笠間製本印刷

石川県に本社を構える株式会社笠間製本印刷では、残業時間を含めた部署の業績目標設定や、経営層による健康経営への積極的な関与を行なっています。

残業時間の目標を事前に設定し、達成した際には賞与に反映させる仕組みで、モチベーションの向上につなげています。他にも定刻になるとパソコンを強制シャットダウンする仕組みやRPAの導入など、残業時間の削減に向けた取り組みを推進しています。

また、経営層の金沢マラソンへの参画や、代表取締役が管理する経費内でスポーツジムとの契約を結び、従業員への利用を働きかけるなど、経営層が健康に対する積極的な姿勢を見せています。

まとめ

健康経営の取り組みは、企業にとっても従業員にとってもwin-winの関係になり得ます。とくに企業側にとっては、人材の定着や採用活動におけるアピールポイントとなるなど、多くのメリットが期待できるでしょう。

今後、さらなる人材獲得競争の加速が予想されます。健康な従業員を増やし、優秀な人材を確保するためにも、健康経営の促進を検討してみてください。


組織の健康データを見える化するなら、mediment(メディメント)

おすすめの
パートナー企業