2022年2月、経済産業省が「GXリーグ基本構想」を発表しました。背景には、2021年6月に政府が成立させた「改正地球温暖化対策推進法」と「2050年カーボンニュートラル」の実現があります。
本記事では「GX(グリーントランスフォーメーション)」とはどのようなものかという基本的な部分から、GXリーグについての詳細や参画するメリットなどを解説していきます。
目次
GX(グリーントランスフォーメーション)とは、環境の意味を持つ「グリーン」と、変革の意味を持つ「トランスフォーメーション」を組み合わせた造語です。
温室効果ガスの削減を目指し、化石燃料を用いたエネルギー政策から太陽光発電や風力発電などのクリーンエネルギー政策へ転換し、地球環境への貢献や産業構造の変革および経済成長を実現するための取り組みをさしています。
背景には地球温暖化が進み、世界各地で気候変動が頻発していることが挙げられ、各国で地球温暖化の原因である温室効果ガスの排出量削減が大きな課題となっています。日本も2050年までに温室効果ガス排出量を実質的にゼロにする「カーボンニュートラル」を宣言しました。まずは、2030年度に温室効果ガスを2013年度比で46%削減することを目標にしています。
日本ではカーボンニュートラルの達成に向けた持続的な取り組みのために、「GXリーグ」が立ち上がりました。GXリーグは、「産(産業界)・官(行政)・学(大学等の学界)・金(金融)」が連携して取り組む場となっています。2023年2月現在、GXリーグには679社の賛同が集まったと西村経済産業相が明らかにしています。
GXリーグは、カーボンニュートラル達成に向けて以下の4つの取り組みを行なっています。
「自主的な排出量取引」では、2050年のカーボンニュートラル(CN)を達成した未来像や、そこに至るまでの移行像を示します。参画企業が自ら掲げた目標に対して、GX投資・GHG(温室効果ガス)削減の取り組みや社会に対しての開示を【実践】していく場となっています。
「市場形成のためのルール形成」では、官民が連携して将来の健全な市場を【共創】していくことを目的としています。未来像を踏まえ、新たなビジネスモデルの構築や市場のルール作りを行なっていきます。最終的には「GXスタンダード」として、国内外に発信し、国際的な標準モデルと国内の制度化を目指していきます。
「ビジネス機会の創発」では、2050年CNが実現した未来の社会経済システムを「ビジネス機会」として描き、官民を問わず参画企業の中長期的な取り組みや経営戦略など、業種を超えた【対話】を行っていきます。
「GXスタジオ」は、2050年CNの実現に向けた連携を推進するための【交流】の場となっています。気候変動対応に関する企業の関心や実務における課題などをディスカッションしていきます。
企業がGXリーグに参画するためには、まずは以下の参画する条件を確認しましょう。
(※募集状況に関しては「公式サイト」をご確認ください)
そのうえで、以下の手順で進めていきます。
自社がGX参画条件を満たしているのを確認したうえで、参画申請書を事務局に提出します。GXリーグ参画申請書に必須項目の実施内容の記載や現状報告を行っていきます。
提出した申請書を基にして、事務局による審査を行い、問題や不備がなければGXリーグ参画企業として登録されます。
無事に登録されたら、企業としての目標や基準年度排出量などのデータを記入し、事務局に提出します。以上の手順でGXリーグへの参画が完了です。
GXリーグへの参画にあたり重要になるのが、参画する条件にも提示された以下の3つの「GXリーグ参画企業に求める取組」です。
それぞれの取り組みについて具体的に解説していきます。
2050年のカーボンニュートラル達成に向けた目標設定と、達成するための戦略および取り組み内容の公開が求められます。さらに中間目標として2025年、2030年時点での削減目標の策定も必要です。目標設定に加えて、自社で行う取り組みの具体的な施策や、施策を管理・評価するためのガバナンス体制の構築も必要となっています。
単純な目標設定だけに止まらず、具体的にどのように行なっていくかまでを含めて、目標へのコミットが要求されています。
GXリーグでは、自社だけではなくサプライチェーン全体でカーボンニュートラルを実現することも求められます。
具体的には、「自社製品の生産に関わるサプライヤーの排出量削減の支援を実施するか、計画を策定すること」、「自社製品のCFP(カーボンフットプリント)の表示等を通じてサプライチェーン下流の消費者に対する脱炭素への意識醸成を促進するか、計画を策定すること」の二点です。
自社が提供する製品やサービスを利用する消費者に対しても、環境に対して意識を向上させる施策を行うなど、全体の流れを見据えた施策が必要です。
自社の製品やサービスを展開する際には、グリーン市場への貢献も求められます。具体的には、気候変動に関する対話を地域社会や教育機関、NGOなどと対話を行い、対話から得た学びを経営に活かしていくことです。とくに自社で開発する製品をグリーン製品とするなどして、市場におけるグリーン化に貢献し、自然環境への配慮が必要です。
さらに自社製品を開発する際も、原材料をグリーン製品を積極的に購入するなどして、環境に配慮した商品が流通するように促し、市場を構築していくことが求められます。
GXリーグに企業が参画するメリットとして、以下の3つが挙げられます。
それぞれのメリットについて解説していきます。
GXリーグへの参画によって、環境に配慮した事業活動を行なっていると評価され、企業イメージが向上することが期待できます。昨今では環境に配慮した製品やサービスに価値を見出す投資家や消費者が増えており、GXリーグへの参画は大きなアピールポイントになります。同じように環境問題への取り組みにより、就活生や転職志望者に対してもアピールができます。好意的な印象につながるため、優秀な人材確保の可能性も上がるでしょう。
市場においては、GXリーグへの参画が環境への取り組みを行っている企業としての証明になるため、取引における信頼にもつながっていきます。市場競争力が高まるため、さまざまな部分での企業ブランディングに活用できます。
GXリーグではエネルギー量の削減が求められます。これまで利用していたエネルギー量を減少させることは、必然的にコスト削減にもつながっていきます。具体的には、温室効果ガスを減らすための活動や再生可能エネルギーの生産などです。
他にもGXリーグでは、「カーボン・クレジット市場」を通じて、CO2排出削減量をクレジットとして、取引を可能にする取り組みの実証を開始しています。クレジットとは、企業が森林経営などの取り組みを行った際にCO2や温室効果ガスの排出量削減に貢献したとして、国が認証する制度です。目標を超過達成した排出量に関しては、「超過削減枠」として売却を可能にするなど、市場の整備を進めています。
GXリーグへの参画企業は今後、さらに増えていくことが予想されており、政府も重点施策として今後10年間で150兆円の投資を行うとの方針を示しています。中小企業等の生産性向上に向けた設備投資を支援する「ものづくり補助金」や、思い切った事業再構築を支援する「事業再構築補助金」でも、それぞれ「グリーン枠」「グリーン成長枠」が設けられ、GX推進に企業が参画しやすくなるような仕組みを構築しています。また、石川県の「GX(省エネ・再エネ)設備導入支援事業の公募」、山形県の「山形県中小企業パワーアップ補助金(DX・GX支援事業)」など、自治体においてもGXを支援する動きが見られます。GXへの参画によって、環境に配慮しながら事業拡大の経営計画を策定していくこともできるでしょう。
企業が環境に配慮しながら活動し、経済的な成長を実現させるGXへの取り組みが加速しています。官民が一体となって2050年のカーボンニュートラル実現に向けて動いており、新たな市場形成を担うGXリーグも着々と整備されています。また、政府はグリーン成長戦略を支えるのはデジタルインフラであると、DXの重要性についても述べています。
GXリーグに参画することは、今後持続的に発展していくための手段の一つです。この機会に、GXの推進について、また自社のDXについても考えてみると良いのではないでしょうか。