デジタル人材とは?育成や採用に必要なことを解説

公開日:2023.06.21 更新日:2023.06.21

現在、業種業界問わず、多くの企業が「デジタルトランスフォーメーション(DX)」を推進しています。経済産業省も「デジタルガバナンス・コード2.0」を発表し、DXの動きを加速させる施策を行うなど、官民問わずDXへの関心は非常に大きくなってきました。

こうしたDXを推進していくためには「デジタル人材」の登用が不可欠ですが、日本ではデジタル人材がまだまだ不足しているのが現状です。

本記事では、デジタル人材が不足している背景、企業が育成や採用を行うポイントについて解説していきます。

デジタル人材の定義とは

デジタル人材の定義は明確に定まっているわけではありません。経済産業省の「デジタル人材に関する論点」(令和3年)においても、デジタル人材を画一的に定義することは難しいとしています。

しかし、DXを推進していく中での”リーダー的な役割を持つ人材”であることは間違いありません。DXを推進する目的は、「企業がデジタル技術を活用して、ビジネスモデルや組織や企業文化を変革させ、市場における競争上の優位を確率すること」(引用:経済産業省「デジタルガバナンス・コード2.0」)と定義されています。

つまり業務のIT化が目的ではなく、ビジネスにおけるイノベーションの創出が求められているのです。

そのためデジタル人材には、ITに関する高い知識に加えて、最先端のデジタル技術に関する知識、データサイエンススキル、プロジェクト管理スキルなどが求められます。

最先端のデジタル技術を活用して、企業に新たな価値を提供できる人材が「デジタル人材」であると言えます。

日本でデジタル人材が不足している背景

IPA(独立行政法人情報処理推進機構)の日本企業におけるDXの取り組み状況や課題等の把握を目的としたアンケート調査(東証一部上場企業1,000社中92社回答)によれば、DX推進人材は大幅に不足しているという回答が最も多くなっています。

出典:IPA「デジタル・トランスフォーメーション推進人材の 機能と役割のあり方に関する調査」

総務省が発表している「令和3年版情報通信白書」でも、DXを進める上での課題の中で人材不足を感じている企業が5割を超えています。こうした人材不足の背景には、以下の2点が主に考えられます。

  • 教育体制が整っていない
  • デジタル人材の求人倍率が高い傾向にある

前章で解説したように、デジタル人材には最先端のデジタル知識に加えて、プロジェクト管理スキルなど多角的なスキルが求められますが、日本では、こうした人材を育成する制度が整っているとはいえません。教育体制が整っておらず、デジタル人材の育成が遅れているのです。

またDX推進が求められる中でデジタル人材の需要は非常に高く、各企業で奪い合いが発生しています。求人倍率も他職種と比較すると高い傾向にあり、多くの企業が必要なデジタル人材を確保できないのが現状です。

デジタル人材になるために必要なスキル

デジタル人材になるために必要なスキルとして、主に以下の3つが挙げられます。

  • ソフトスキル
  • ハードスキル
  • マネジメントスキル

それぞれのスキルについて解説していきます。なお、2022年12月に経済産業省からDX推進におけるデジタルスキル標準を策定したとして、「デジタルスキル標準 ver.1.0」が発表されています。

あわせて参考にしてみてください。

 ソフトスキル

ソフトスキルとは、コミュニケーション力や課題解決能力といった、仕事の進め方や考え方などを指すスキルです。DXを推進していく際には、最先端のデジタル技術の知識や活用に加えて、全社的な取り組みとして行なっていく必要があります。部門を超えた連携や調整が不可欠になるため、スムーズなコミュニケーションや調整が行える人材であることが求められます。

 ハードスキル

ハードスキルとは、その名の通りITに関する知識やプログラミングスキルなどの技術的なスキルを指します。デジタル人材にはDXを推進する役割が求められ、AIやIot、ビッグデータなど最先端のデジタル技術を活用できるスキルが必要です。つまり、従来の知識に加えてITのトレンドに関する情報やスキルを常にアップデートできる人材であることが求められます。

マネジメントスキル

マネジメントスキルとは、DXを推進する際に必要なプロジェクトを適切に管理し、進行させるスキルのことです。DXの推進は全社的に行う必要があり、企業の経営層から現場の従業員に至るまで、全員の協力が必要です。加えて導入するシステム等によっては、社外の人間との調整も必要になります。

プロジェクトメンバーのモチベーション管理や進捗管理、現場の従業員の意見集約、経営層への協力依頼など、マネジメントスキルもデジタル人材には欠かせないスキルとなります。

デジタル人材になるためにおすすめな資格

デジタル人材として企業側に認知される資格は、いくつかあります。以下の3つは、とくに代表的な資格です。積極的に取得を目指すと良いでしょう。

  • ITコーディネータ試験
  • ITストラテジスト試験
  • プロジェクトマネージャー試験

それぞれの資格について解説していきます。

 ITコーディネータ試験

ITコーディネータ試験とは、経済産業省が推進している資格で、経営的な視点からITスキルを活かす知識が身につく資格です。

前章でも解説したように、DXを推進していくためには全社的な協力体制が必要です。その際には、デジタル人材が、さまざまな分野や部門の人たちをコーディネートする必要があります。

ITコーディネータの資格を持っていることで、経営的な視点からのDXに関する知識を有している、戦略的なDX推進を取り組めることなどが証明できます。

 ITストラテジスト試験(ST)

ITストラテジスト試験(ST)とは、情報処理技術者試験の中でも最高ランクのレベル4にあたる国家資格です。デジタル人材にとっては、最も取得したい資格と言っても過言ではなく、ITを活用した経営戦略などが可能な人材だと客観的に評価されます。

最高峰の試験のため、難易度の高さや分野の広さが特徴で、情報セキュリティから経営戦略マネジメントなどが含まれています。

プロジェクトマネージャー試験(PM)

プロジェクトマネージャー試験(PM)とは、プロジェクトマネージャーとしてのスキルを証明するための資格です。ITストラテジストと同様に、情報処理技術者試験のレベル4に分類されているため、難易度が非常に高い試験です。

試験内容はプロジェクトマネジメントの基礎から応用まで出題され、ITプロジェクトの品質やコスト、進捗管理などを適切に行い、成功へ導ける存在かが問われます。

デジタル人材を育成するには?

自社でデジタル人材を育成するためには、以下の3つの方法を推進していくと良いでしょう。なお、デジタル人材の育成には長い時間がかかります。長期的な視点で育成していくことが大切です。

  • スキルアップ環境の提供
  • 人材の配置転換
  • 資格取得のサポート

スキルアップ環境の提供

外部研修や内部でのOJT、スキルアップにつながる業務への割り振りなど、しっかりした環境の提供が大切です。

たとえば質の高い外部研修を提供したとしても、社内で最先端のデジタル技術に触れられない、研修で学んだことを活かせない業務ばかりに割り振っていては、デジタル人材の育成にはつながりません。

インプットとアウトプットができる環境を整えることで、デジタル人材のスキルアップにつながっていきます。

人材の配置転換

人材の配置転換も有効です。たとえばタレントマネジメントなどを活用して、既存の従業員を適切な配置に転換する方法です。

タレントマネジメントとは、従業員のスキルを最大限に活かすための人材戦略で、日本でも導入をする企業が増えてきています。従業員のスキルやノウハウを可視化することで適切な人材配置に活かし、デジタル人材の育成につなげていきます。

資格取得のサポート

デジタル人材に必要なスキルや知識は多岐にわたります。スキルや知識の証明のために資格取得を目指す従業員がいるなら、十分なサポート体制を整えておくのも大切です。

費用面のサポートや資格取得時の手当てなど、従業員が取得を目指しやすい環境の整備がデジタル人材の育成へとつながっていきます。

デジタル人材を採用したい場合のポイント

デジタル人材を採用したい場合、以下のポイントを押さえた採用活動が大切です。

  • 採用ターゲットの明確化
  • 戦略的な採用手法
  • 社内環境の整備

それぞれのポイントについて解説していきます。

採用ターゲットの明確化

デジタル人材は広域な定義のため、どのような人物像が自社に適切かを洗い出して明確化することが大切です。必要な人物像があいまいな状態で採用活動を進めたとしても、応募が来ない、入社後のミスマッチが生じるなど不利益につながってしまいます。

自社の経営戦略からどのようなDXを推進したいのか、そのためにはどのような人材が必要なのかを落とし込み、必須のスキルや条件、所持していれば嬉しいスキルや必要のない条件まで明確にすると良いでしょう。

ターゲットを明確にすることで、求めるデジタル人材の採用基準にもブレがなくなります

戦略的な採用手法

現状、デジタル人材は市場において奪い合いが起こっていますから、確保するためには戦略的な採用手法が必要です。たとえば大手求人サイトへ募集を出して応募を待つだけではなく、SNSの活用やリファラル採用を取り入れるといった手法です。リファラル採用とは自社の従業員に対して、募集をしている求人にマッチしている人材を紹介してもらう手法で、多くの企業で導入が進められています。

採用ターゲットが明確になっていれば、求める人材の要件に合わせて求人媒体の選定やツールの選定、社内体制の整備などを戦略的に行えます。「待ち」ではなく、「攻め」の採用手法を意識すると良いでしょう。

社内環境の整備

デジタル人材に自社に入社したいと感じてもらえるように、社内環境の整備をすることも大切です。たとえば社内のデジタル化がまったく進んでおらず、紙での業務が多い場合、求職者から「この環境ではスキルを活かすのは難しい」と判断される場合もあります。

他にもワークライフバランスが整っていない、評価体制が整っていないなど、求職者にとって魅力的ではない環境のままでは、採用には至りません。デジタル人材は確保することが目的ではなく、自社のビジネスに変革を起こしてもらうことが目的です。入社後、すぐに離職されてしまうような環境になっていないか、現状の洗い出しと改善も大事になります。

まとめ

デジタル人材とは、ITに関する高い知識に加えて、最先端のデジタル技術に関するスキルなどを持ち、自社に新たな価値を提供してくれる人材のことです。

企業側はどのような人材が自社に適しているのかを明確にしたうえで、高い需要を誇るデジタル人材確保のために、採用方法や育成方法など、長期的な視点から考えていくと良いでしょう。

ぜひ、自社が将来的にどのような姿になっていたいか、そのためにはどのようなDXの推進が求められているか、そのDXの推進のためにはどのようなデジタル人材が必要かまで落とし込んで、考えてみてください。

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