「企業研修」は、人材育成における重要手段です。
「どんな目的や内容で企業研修を実施すべきか」は、人材育成の担当者にとって成果に大きく関わる課題であり、悩みのタネでもあるでしょう。
そんな方に向けて、本記事では企業研修の手法や具体的な事例について解説していきます。
目次
企業研修とは、企業が自社の社員のスキルアップを目的とし、教育の機会を設ける取り組みのことを指します。
具体的には新入社員研修などの階層別研修や、IT研修などのスキル研修などがあります。
人材の流動化やグローバル競争の激化によって、多くの企業が人材育成の体制を整える必要性を感じています。
変化の多いビジネス環境で、競合他社よりも早く社員に新しいスキルを身につけさせることや、社員の自己実現によって優秀な人材の流出を防ぐことが急務となっているのです。
企業研修の目的は、社員のスキル向上です。スキルは大きくハードスキルとソフトスキルに分けることができます。
ハードスキルとは、定量的に評価できる専門スキルのことです。
プログラミングや簿記など、実践的なスキルを教育することで、企業全体の生産性を底上げすることができます。
ソフトスキルは、特性などの定性的スキルのことです。具体的には、コミュニケーション力や思考力などがこれにあたります。
ソフトスキルを向上することで、企業の中核人材を担う社員を育てることができ、長期的に企業を存続させることにつながります。
企業研修には以下の2種類があります。
社内研修とは、教材や場所、設備などの用意を自社で行う研修を指します。企業研修を通し、自社で培った知識やノウハウを次世代に向けて教育します。
また、同じ社内研修でも人手不足から、講師を呼ぶなどして一部の仕事を外部に依頼するという場合もあります。
いずれにしても、企業独自の研修を作成するため、後述する外部研修に比べ、柔軟なカリキュラムを組めるという利点が大きいでしょう。
外部研修は、社外の企業に委託して行う研修です。講座やセミナーを提供している企業に教材や場所などの依頼をし、研修を行います。
外部研修のメリットは、社内に不足するスキルや知識を効率よく学べる点です。プロの講師による指導や洗練された教材を使った教育を受けられます。
デメリットとしては、研修内容が一般化され、企業独自の研修を実施することが難しい点が挙げられます。
企業研修には、どのような種類の内容があるのでしょうか?ここでは、企業の階級別研修にみられる最も一般的な研修を大きく2つに分けてご紹介します。
身だしなみや言葉遣い、メールの作法、名刺交換など、社会人に必須のビジネスマナーは数多くあります。その他にも、プレゼンや接客など、業務内容によって異なるマナーが存在するでしょう。
ビジネスマナーは、社内外の人間関係を円滑にするためにも、最初に身につけるべきものです。
OAツールの活用も、新入社員にとって最初に覚えるべきスキルです。
WordやExcelなどのOfficeツールや、GoogleスプレッドシートなどのOAツールは、ほぼすべての職種で関係なく使用することになります。
自社で使用するOAツールのスキルが不足していると、チーム全体の業務に支障が出ることもあります。OAスキルは、ビジネスマナー同様、新入社員に教育すべきスキルといえるでしょう。
報連相(報告・連絡・相談)をはじめとするコミュニケーションは、業務の基本です。
新入社員のコミュニケーションスキルをしっかりと育てることで、企業全体のコミュニケーションが円滑になり、業務の効率を上げることができます。
また、コミュニケーションは社員同士の信頼関係構築にもつながるので、社員の士気が高まったり、組織の課題が明らかになったりといったメリットもあるでしょう。
管理職が身につけるべきスキルの代表例は、チームでプロジェクトを進めるための「マネジメントスキル」です。
管理職にはリーダーや監督を任されるケースが多いでしょう。その際にはリーダーシップを発揮し、チームに対するフィードバックや調整を行う必要があります。
しかし、マネジメントスキルは日常業務で身につけるのが難しい能力でもあります。そこで、企業研修を通して効率良くマネジメントを学ぶ必要があるのです。
コーチングとは、部下に対し、主体的な行動を促す対話スキルのこと。
相手の自主性を尊重しながら、反省を促すことで、最大限の成果と成長をもたらす手法です。
コーチングスキルを使うことで、部下の前向きな行動が増え、チーム全体のモチベーションと生産性の向上につながります。
管理職になれば、部下の育成やキャリアアップをサポートする必要も出てきます。
部下の目標達成のために、フィードバックを行ったり、メンタリングを行ったり、直接業務を指導したりすることもあるでしょう。将来、経営層のような高い役職についた場合も、人材育成スキルは重宝します。
小田急電鉄株式会社では、管理職向けの社内研修に取り組み、成功を収めています。
鉄道事業者では「助役」とよばれる役職が現場業務の全般を担う中間管理職にあたります。小田急電鉄では、助役のモチベーション低下から起こる、チーム全体の士気の低下やヒューマンエラーがみられ、課題となっていました。
同社はこの原因をコミュニケーション不足であるとし、「助役真髄塾」という研修計画を打ち立てました。研修内容としては、助役の社員を集め、仕事の内容やポイントを定期的に話し合っては、それを同僚や自分の所属する区に持ち帰って、共有するというもの。
これにより、ベテラン社員が若手社員へ経験談を話したり、自らの経験を振り返ったりする機会が生まれました。結果として、助役社員の積極性が向上したり、仕事へのモチベーションが高まったりといった効果があったようです。
参考:「自分が主役」という意識が組織を変える【小田急電鉄の中間管理職マネジメント】
サントリーホールディングス株式会社では、若手社員に向けた研修制度として「トレーニー制度」を実施し、成功しています。
この制度では、グローバル人材の育成を目的とし、若手社員を海外のグループ会社に1年間派遣。海外勤務での経験を通じて、語学力や異文化理解、コミュニケーション力など、さまざまなスキルを磨きます。
研修の成果として、単なる業務遂行能力だけでなく、周囲を巻きこみながら成果を出す「リーダーシップ」が成長していくとのことです。
参考:海外トレーニー経験でグローバル人材は育つもっと有効な活用を
企業向けの研修を提供する企業を、2例ご紹介します。
株式会社リクルートマネジメントソリューションズは、1963年の創業以来、人材採用、人材開発、組織開発、制度構築の4つの分野において幅広い事業を展開し、人事課題の解決をしてきた実績に強みがある会社です。
研修内容では「ビジネススキル習得」や「管理職層のマネジメント力強化」などの一般的な階級別研修から「グローバル人材育成」「次世代リーダー育成・選抜」など幅広いテーマがそろっています。
ヒューマンホールディングス株式会社は、有名な「ヒューマンアカデミー」の事業を中心に、教育分野でさまざまな事業を展開しています。
柔軟なカリキュラムが特長で、企業向け研修では日程や会場、研修内容や講師にいたるまで、ヒアリングをもとに提案してくれます。研修内容は「ビジネススキル・資格」や「Office・ビジネス」「IT・プログラミング」など、スキル別なのが特徴です。
企業研修のポイントや事例について解説しました。
社員の成長課題を正しく把握し、適切な手法を選ぶことで、研修を着実に自社の業績につなげることができます。
本記事の内容を参考に、自社にふさわしい企業研修を作り上げていきましょう。