「リスキリングを導入した企業事例は?」「国内企業でリスキリングが成功した事例はある?」などと気になっていませんか?
DX時代の到来でリスキリングの導入を検討しているものの、まずは成功事例を知りたいと考える方も多いかと思います。
海外企業は積極的に導入しているリスキリングですが、国内での導入事例はまだ少ないのが現状です。導入を検討する場合、事業内容に合わせたDX人材の育成プログラムを準備する必要があります。
本記事では、リスキリングを導入している日本企業の成功事例をまとめました。日本と海外におけるリスキリングの取り組み状況とあわせて、導入を検討している方はぜひ参考にしてください。
目次
リスキリングを導入する前に、まずは他の企業がどのような形で実施をしているかを知りましょう。一社ごとに解説していきます。
大手情報通信機器メーカーとして有名な富士通では、社内ポータルサイト「Fujitsu Learning EXperience(FLX)」を設けています。IT技術やビジネスに役立つスキルなど、幅広い分野を学ぶことが可能です。
2022年5月にはDX企業への転換の一貫として、全社員のリスキリングを実施しています。学べる研修内容やスキルの習得範囲を広くし、社員の学ぶ意欲や動機を高めることが目的です。
社内教育にかける費用もこれまでより4割増やしていることから、会社全体の成長が見込める事例と言えます。
大手電機メーカーでもある日立製作所は、2019年からデジタル教育に力を注いでいます。専門研修を社内にて実施し、メンバーシップ型ではなくジョブ型雇用への切り替えを目的とした取り組みを行っています。
2022年10月には、AIを用いた「学習体験プラットフォーム(LXP)」と呼ばれる新システムが導入されました。システムを使えば社員全体のスキルが把握でき、外国語の習得やデジタル知識の習得を促すことも可能です。
リスキリングの大切さを社内全体に伝えるという課題を抱えているものの、大きな社内改革が期待されています。
大手食品企業として有名な味の素では、「スピードアップ×スケールアップ」を図る手段としてDXを推奨しています。社内全体でデジタル改革を起こし、2030年までにDXビジネス人材を増やすことが目的です。
育成プログラムでは業務に必要となるデジタル技術の基礎を学べることから、従業員の半数以上が受講しています。DX関連のスキルに興味を持つ社員が多く、2030年には全社員がプログラムを受講することを目標としています。
積極的に取り組む社員が多いことから、リスキリングに成功している事例の一つと言えるでしょう。
インターネット企業最大手の一つであるヤフーは、2022年に全社員8,000人の再教育を行うと発表しました。AIを実務で活用できるようにするのが目的で、2年という歳月をかけて教育を行う方針です。
IT人材が豊富なイメージのヤフーですが、レガシーのHTML技術者が大半を占めます。企業全体が成長していくためには、データサイエンティストやデータアナリストといった新しいスキルが必要です。
グループ企業横断でAI人材の育成を目指す「Z AIアカデミア」という研修を行い、外部の部署と連携しながら従業員は日々新しい知識を学んでいます。
大手電気通信事業者でもあるKDDIは、2022年に新たな働き方改革とともにリスキリングの導入を実施しています。DXに特化した社内大学「KDDI DX Universit」を設立し、通信とライフデザインの融合を目標として掲げました。
社内にDX人材を増やすことを目的とし、人財マネジメントサイクル「4Dサイクル」を取り入れた研修内容が特徴の一つです。DXに関する知識やスキルはもちろんのこと、社内外のDX案件に合わせた実践形式のプログラムを受講できます。
三菱UFJ銀行は大きく変化する現代に対応できる人材を確保するため、リスキリングの導入を実施しています。2022年には教育研修費用として約30.9億円、そのうちデジタル研修費用として約5.4億円の投資を進めている状況です。
全社員が受講できるeラーニングの実施や階層別のデジタルセッション、ワークショップなども行っています。デジタルリテラシー向上に励みつつ、評価システムを導入し社員のモチベーションを考慮しているのも注目されている要因です。
三井住友フィナンシャルグループはDX研修として、「SMBCグループ全従業員向けデジタル変革プログラム」を導入しました。全社員が受講対象で、DXを自分ごととして捉えられるように研修内容にも工夫を凝らしています。
個人で取り組むのではなくチームで励まし合いながら学習し、途中で挫折しない仕組みを採用しているのも特徴の一つです。DXを導入して業務効率化を図りつつ、顧客へのデジタルソリューションの提案やデジタルビジネスの共創を目標としています。
キリンホールディングスはDX人材育成強化のために、2021年7月より「DX道場」を開講しました。高度なデジタル人材の育成が目的で、ITリテラシーの低い従業員も多いためレベルに合わせた3つのコースを設けています。
講義では実践ベースの研修も行われ、卒業した人の中にはDXプロジェクトを立ち上げる人もいるほどです。DX人材の育成によって、これまでにない新たなビジネスを生み出す可能性を秘めています。
空調機・化学製品メーカーのダイキン工業は、DX人材が不足していることからリスキリングの導入を実施しています。競合他社が増え、差別化のために新しいビジネスモデルの創出が必要となったため、社内で研修を実施することになったのです。
AIやIoTといったデジタルスキルを学ぶ場として、ダイキン工業は「企業内大学」を大阪大学と一緒に設立しました。企業内大学ではAIやIoTなどの知識が学べ、2023年度までには従業員1,500人が受講予定となっています。
仕事を変えるためにも、まずは人を変えることに踏み切った事例です。
パソナグループは2021年、DX人材育成プログラムとして「リスキリング・イニシアティブ」を導入しました。プログラムではDXの基礎を学び、課題解決に必要な実践的なアプリ開発に取り組むことができます。
企業理念として「社会問題を解決する」と掲げるパソナグループですが、「人を活かす」を目標としています。リスキリングの実践による、デジタルに詳しいイニシアティブを発揮可能なリーダーの創出も目的の一つです。
2023年現在、国内においてリスキリングを導入している企業はそこまで多くありません。言葉自体は浸透し始めたものの、世界と比べてかなり遅れているのが現状です。
リスキリングの取り組みが遅れている要因としては、以下が関係していると考えられています。
リスキリングを導入すればスキルの大幅な変化が見込まれるものの、技術的失業を懸念する人もいます。そのため、リスキリングの導入を実施するのであれば、目的を明確にしつつ社員へ共有することが大切です。
日本に比べて、海外におけるリスキリングへの関心度は高めです。新型コロナウイルスの影響もあって、企業は非対面型のサービスへと展開していきました。
結果、事業戦略の見直しが行われ、DX人材育成に力を入れる企業が増えたのです。大規模なパンデミックにより職を失った人も増え、デジタルスキルの重要性に気づく人も増えていきました。
国によってはリスキリング支援制度を実施する国もあり、日本との差は広がる一方です。そのため、日本の企業は海外の取り組みを一つの学びとし、リスキリングの導入をどうするか、検討を進めるべきと言えるでしょう。
海外企業は積極的に導入しているリスキリングですが、国内での導入事例は少ないのが現状です。導入を検討する場合、事業内容に合わせたDX人材の育成プログラムを準備する必要があります。
企業の成長を目指すのであれば、DX人材の確保・育成は必要不可欠です。本記事を参考にして、リスキリングの導入を検討してみてはいかがでしょうか。