銀行業界において、DX(デジタルトランスフォーメーション)はますます重要性を増しています。銀行DXとは、顧客中心主義、イノベーション、デジタル技術の活用によって、顧客体験を向上させ、より効率的なサービスを提供することを目的としています。
銀行DXによるサービス向上は、顧客にとってはより使いやすく、便利な銀行サービスが提供されることを意味し、銀行にとっては顧客獲得や顧客ロイヤルティを高めるために必要不可欠な要素です。
そこで今回は、銀行DXの概要や必要とされる背景、銀行DXを進めるメリットなどについて詳しく解説していきます。
目次
銀行DXとは、デジタルトランスフォーメーションの一環として、銀行業界において顧客体験を向上させるために、顧客中心主義、イノベーション、デジタル技術の活用を目的としています。
銀行DXの推進により、従来では達成できなかった効率的で使いやすい銀行サービスの実現が期待できます。こうしたサービス向上によって、顧客獲得や顧客ロイヤルティの向上が可能となります。
さらに、より効率的なサービス提供が可能になり、コスト削減や競争力の向上につながるとされています。
次に、銀行におけるDX関連の課題について整理した上で、銀行DXが必要とされるようになった背景について確認していきましょう。
銀行のDX関連の課題は以下の通りです。
銀行の業務において、顧客の個人情報や財務情報を保護することが重要だというのは言うまでもありませんが、近年、デジタル技術の導入により、ハッキングや不正アクセスといった脅威が増加しています。このため、銀行は顧客データの保護とセキュリティの確保に、より一層取り組む必要があります。
社員教育に関しては、銀行の社員はデジタル技術の導入による新しいシステムやツールを学び、知識を身につけなくてはなりません。しかし、社員の教育には時間とコストがかかるため、銀行は社員教育を効果的かつ効率的に行う方法を模索する必要があります。
また、デジタル技術を導入する際には、既存のシステムとの統合性を確保しなくてはなりません。これは、システム間のデータの整合性を確保することで、顧客に正確かつスムーズなサービスを提供するためです。
デジタル技術の導入によってサービス品質の向上はかなうものの、コストが増えてしまうという面も課題の一つです。銀行は、DXによるコスト増加を最小限に抑えながらも、生き残るためにサービスの品質向上を実現する方法を模索する必要があります。
銀行にDXが求められるようになった背景は、主に3つあげられます。
1つは、顧客ニーズの変化です。現在、銀行の顧客ニーズは急速に変化しており、銀行業界はそれに合わせて変化する必要があります。たとえば、若年層の顧客に向けたスマートフォンアプリを活用したモバイルバンキングサービスの提供が求められています。
2つ目は、テクノロジーの進化です。社会のテクノロジーが急速に進化したことに伴い、銀行業界においてもデジタル技術を活用したサービスの提供が可能になっています。AI技術を活用した顧客サポートや、ビッグデータを分析した顧客ニーズの把握といったものです。
3つ目は、市場における競争激化があげられます。国内で長く存立し続けてきた銀行業界も例外ではなく、従来よりも他社との差別化が求められます。デジタル技術を活用したサービスの提供は、顧客の満足度やリピート率を高め、競争力の向上につながります。
銀行DXを推進するメリットは、主に以下の4つです。
銀行DXの推進により、これまでよりも使いやすく、便利な銀行サービスの提供が可能になって顧客体験が向上します。たとえばオンラインバンキングサービスであれば、顧客は自宅や外出先など、自分の都合の良い場所で銀行サービスを利用できるため、利便性の高さから銀行に対する満足度が向上します。
また、銀行DXによって、顧客ロイヤルティを高めることもできます。顧客は高い満足度を得られる銀行に対して良いイメージを持ち、長期間にわたって利用してもらえる可能性が上がります。
銀行DXによって、従来の紙ベースの手続きをデジタル化すれば、より迅速かつ正確なサービス提供が可能になります。顧客側はスムーズにサービスを受けられ、銀行側も効率的な業務運営ができるため、コスト削減や競争力の向上につながります。
銀行DXによって新しいビジネスモデルの構築が可能になります。たとえば、AI技術を活用した顧客サポートやビッグデータを分析して顧客ニーズを把握することで、従来のビジネスモデルでは実現できなかった付加価値の提供ができます。新たな市場の開拓が期待できるでしょう。
銀行DXによって組織文化の変革が可能になります。デジタル技術の活用により、従来の業務プロセスや組織構造を見直し、より柔軟な組織文化を構築することができ、社員のモチベーション向上や組織全体の生産性向上につながります。
以上のように、銀行DXの推進によって、顧客満足度の向上やコスト削減など、さまざまなメリットが得られます。今後も、銀行業界はDXを積極的に取り入れ、より良いサービスを提供していくことが求められていくでしょう。
次に、銀行DXの具体的な事例をご紹介します。
日本のメガバンクである三菱UFJフィナンシャルグループでは、会社のパーパスに基づくデジタル化の推進を掲げています。
同社の経営戦略を見ると、中期計画は「挑戦と変革の3年間」と位置づけ、金融とデジタルの力でROE(自己資本利益率)の改善を目指すとしています。
具体的には、Web3.0の推進やデジタル人材の育成プログラムの開発により、スピーディーに変化するIT環境に適応しようと取り組んでいます。
ソニー銀行は、各種システムの導入により早期に銀行DXに着手してきました。
同銀行では、2013年から銀行業務の中の帳票管理やリスク管理、管理会計のような周辺系システム開発環境などを構築しています。
また、一般社内業務システムを段階的にパブリッククラウド上に構築することにも成功しています。
銀行DXに活用できるサービスは、以下の通りです。
オンラインバンキングサービスは代表的な銀行DXのひとつです。
顧客は、自宅や外出先など、自分の都合の良い場所で銀行サービスを利用できます。銀行はオンラインバンキングサービスの提供により、顧客の利便性を向上させることができます。
オンラインバンキングサービスの「三菱UFJダイレクト」では、残高照会や振込、住所などのステータス変更などがオンラインで手続きできます。
スマートフォンアプリを活用したモバイルバンキングサービスの提供によって、顧客はいつでもどこでも銀行のサービスが利用可能です。銀行は、顧客との接点を増やし、顧客ロイヤルティを高めることができます。
三井住友銀行の「SMBCダイレクト」では、残高照会や振込等の取引をアプリやWebで完結できます。専用アプリ「三井住友銀行アプリ」は普通預金口座があれば面倒な申し込み手続き等も不要なので、利用者がすぐにインターネットバンキングサービスを利用できるようになっています。
AI技術を活用して、顧客サポートを提供することができます。たとえば、チャットボットを活用して、顧客からの問い合わせに対して迅速かつ正確な対応ができます。
また、AIによるカスタマーサービスを進められれば、人件費の削減にもつながるでしょう。
Bank of Americaでは、モバイル端末向けアプリにAIを搭載した仮想アシスタントの「Erica」を導入しています。同アプリでは、仮想アシスタントによる音声認識、テキスト読解、ジェスチャー操作などが可能で、これまでより複雑なコミュニケーションを使ったカスタマーサービスが提供できるようになりました。
ビッグデータを分析することで、顧客のニーズを把握できます。これによって、銀行は顧客が必要とするニーズを客観的に把握でき、より市場ニーズに合ったサービスの提供が可能になります。
横浜銀行では、これまでの個人向けスマートフォン銀行アプリを刷新し、ビッグデータを活用したアプリを導入しました。同サービスでは、振込など基本的なネットバンキングの機能に加え、基本属性や預金データから最適な金融商品を提案するとのことです。
銀行は現在、メガバンク、地方銀行ともに経営状態が厳しい会社が多く、大量の早期退職勧奨なども報道されています。
こうした中で今後も生き残っていくためには、業務の効率化や人件費の削減が期待できる銀行DXの推進が重要な鍵となります。
顧客のニーズに適正に応えるためにも、今後も銀行DXの必要性は増していくでしょう。