農業DXが推進されている理由とは?成功事例とともに解説

公開日:2023.05.05 更新日:2023.05.05

近年、DX(デジタルトランスフォーメーション)が注目を浴びており、多くの企業が取り組んでいます。DXの推進はさまざまな業界で必要とされており、農業業界も例外ではありません。農業業界には人手不足をはじめとした課題が山積しています。これらを解消すべく農業DXが推進されているのです。農林水産省が2021年に発表した「農業DX構想」では農業DXを推進することが「FaaS(Farming as a Service)」の実現につながるとしています。FaaSとは、デジタル技術を活用し営農の効率・生産性を向上させるサービスのことです。

この記事では、農業DXが必要とされている理由や取り入れるメリット、成功事例を解説します。そのほかにも、農業DXに活用できるサービスもご紹介します。

農業業界の課題と農業DXが必要な背景

まずは、農業業界の課題と農業DXが必要な背景について解説します。

人手不足

農業業界の課題として多くの人の頭に浮かぶのが人手不足ではないでしょうか。農業の跡継ぎ問題は以前より問題視されていましたが、未だ改善されておらず、ますます深刻化しています。農業従事者の平均年齢も年々上がっており、農林水産省が行った調査によると、2020年では基幹的農業従事者の平均年齢は約68歳。高齢化の傾向になっていると発表されました。また、基幹的農業従事者の数も2001年時点では約236万人だったのに対して、2020年では約136万人と半分近くまで減少しています。

農業DXの推進によって、これまでよりも技術継承しやすくなり、農作業の負担も軽減されます。人手不足の解消に向けて参入障壁を下げるためにも、農業DXの推進が求められているのです。

耕作放棄地問題

耕作放棄地の増加も農業業界の課題です。耕作放棄地とは、1年以上耕作する予定がなく、作付けも数年以上行わない土地のことです。農地が放棄されると荒地になってしまいます。荒廃し荒地になってしまうと再び農地として使用するのは難しく、周囲の土地に悪影響を及ぼしたり、病気や害虫の発生源になったりします。異臭や自然環境を破壊する原因になる恐れもあり、地域全体の問題となる可能性もあります。

耕作放棄地が増加している理由は、前述した人手不足の問題や農業従事者の高齢化の進行によって、すべての農地での作付けできなくなるからです。後継者不在で、そのまま放置しているケースもあります。このような課題を防ぐためにも農業DXを推進する動きが広まっています。

海外産との価格競争

海外産の農産物との価格競争も課題のひとつです。国内産よりも安い海外産の農産物が流通するようになると、価格面から日本の農家は不利になります。海外産に負けないためにも品質を向上させたり、価格を考慮したりする必要があり、農業業界の負担増加が懸念されます。近年では、海外から輸入される農作物の関税が撤廃される動きも強まっており、今までよりも市場に海外農作物が流通する可能性が高くなっています。

農業DXの導入により、従来の営農よりもコストを削減しながら効率よく農作物を育てられるようになります。農業DXはこれから起こりうる海外競争に備えるためにも必要です。

農業DXを推進するメリット

農業業界の課題について理解したうえで、農業DXがもたらすメリットについて解説します。

農業DXを推進するメリットは主に以下の3つがあります。それぞれみていきましょう。

人手不足を解消できる

農業DXを推進させるメリットの一つは、人手不足の解消です。デジタル技術を活用し今まで人間が行っていた作業を自動化することで、人手不足の解消につながります。実際に北海道大学などでは、2018年に耕うん整備を自動で行う「トラクターロボット」を市販しています。

農作業の効率化・生産性を向上させる

近年では、農作業に特化したドローンを活用している農家もあり、タブレットを操作するだけで簡単に肥料を散布できるようになっています。そのほかにも、作物の育成情報をデータ管理することで、育成状況にあった肥料の散布も可能になりました。その結果、肥料にかかるコストが削減され、散布時の負担減少につながっています。

技術の継承が容易になる

従来の農作業は経験によって身につけることが多く、技術の継承が難しい点が問題になっていました。しかし、農業DXによって農作業に必要な要素をデータとして保管できるようになれば、経験が浅くても高品質な作物を作ることが可能になります。新規の参入障壁が低くなり、未経験でも作業ができるのもポイントの一つです。技術の継承が簡単になれば人手不足の解消にもつながるでしょう。

農業DXの事例

実際にどのようにして農業DXを推進しているのかイメージがわかない人もいるでしょう。

ここからは、農業DXの事例を2つ解説します。事例を参考にして活用できるところはないか確認していきましょう。

低コストで米を生産した茨城県の米農家

茨城県のある米農家は、デジタル技術を活用して低コストでの生産に成功しました。この農家は、約150haと広大な農地を持っていますが、米生産にかかるコストを平均の約半分まで抑えています。

この農家は、デジタル技術を活用し、以下のシステムを導入しました。

  • タブレットを操作するだけで自動的に給水されるシステムの導入
  • 自動運転田植え機の導入
  • 米の成長状況をデータで管理

これらを行った結果、農作業の効率が以前よりもはるかに向上し、コストを削減できるようになったとのことです。

農産物を直接販売するwebシステム

生産者が消費者と直接つながることにより、生産者の利益を大幅に増加することに成功しました。今まで生産者は、小売価格の3割ほどの利益しか得られませんでしたが、このシステムを利用することで利益が8割に上がったそうです。このWebサイトは、個人(一般消費者)向けと法人(飲食店)向けで使い分けることができるのが特徴です。個人向けでは、生産者が価格面を設定し、消費者がオンラインで購入できます。法人向けは、システムの担当者が希望に沿った農家や農産物を探し紹介してくれます。

農業DXに活用できるサービス

ここからは、農業DXに活用できるサービスについて解説します。農業DXに活用できるサービスは以下の通りです。

クボタの自動運転トラクタ

株式会社クボタは、日本の農機メーカー企業で一位のシェア率を誇っている企業です。クボタでは、無人自動運転を実現するロボトラクタの開発が進められており、耕うんや代かき、肥料散布、粗耕起、播種といったさまざまな作業に対応しています。

導入することで、省力化による人件費の削減、作業能率の向上が図れます。真夏や真冬など厳しい状況下における作業でも、同じパフォーマンスを発揮できるのも強みです。

クボタのKSAS(KUBOTA Smart Agri System)データ管理・分析

もう一つクボタが提供しているサービスを紹介します。KSAS(KUBOTA Smart Agri System)は、圃場管理や作業記録、生育状況といったあらゆるデータをクラウドで一元管理し、スマートフォンやパソコンからの操作が可能になる画期的なシステムです。

最先端技術とICT(情報通信技術)を農業機械に融合させることで、記録の管理はもちろん、圃場ごとの味の違いや収穫量まで把握できるようになります。農業経営者が抱えるさまざまな悩みの改善が期待できるサービスです。

丸山製作所のドローン

株式会社丸山製作所は、消火器、噴霧器等を中心に開発・製造している日本の企業です。丸山製作所のドローンは、4〜9リットルもの薬液を搭載することができ、ドローンの種類によっては5反〜1町歩まで散布できます。自動で離着陸するアシスト機能も搭載されているため初心者でも扱いやすいのもポイントです。

今まで、広大な土地への肥料散布には非常に多くの時間がかかっていました。ドローンであればタブレットを操作するだけで自動散布が行われるため、負担が大きく軽減されます。とくに高齢化が進んでいる農業業界にとって身体の負担を抑えられるのは大きなメリットです

積極的にDXを導入することが農業業界の課題解決につながる

この記事では、農業DXのメリットや農業業界の課題、事例について解説してきました。DX推進は、一般企業だけでなく農業業界にも必要とされています。さまざまな課題を抱えている農業業界がこれから発展していくにはDXの力が必要不可欠です。農業DXを導入し、どのように活用していくのかが今後の農業業界における課題になるでしょう。農業にDXを導入したいと考えている人は、ぜひこの記事を参考にしてください。

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